1次方程式の利用の問題は、さらに1次方程式の利用(整数・過不足・年齢・割合)1次方程式の利用(速さ・食塩水)に、続きがあります。


小学校の算数を忘れよ


例題1、みかんを6個買い、500円硬貨を出したところおつりが80円であった。このみかん1個の値段を求めなさい。

「500円で80円のおつりだから払った代金は420円、6個で420円ということは1個は70円」と考えて求める。
小学生だったら満点です。ところが、中学生だと、もっともまずい解き方です。この発想を捨てるところから中学校の数学がスタートします。

中学校では、すべての文章題を方程式で解いていきます。このことがきわめて重要です。実は、1学期に学習した正の数・負の数や文字式も、方程式で問題を解くための準備に過ぎません。
中学校では、すべての問題を方程式で解く」、このことが中1の最初にわかっていたら、中学校・高校と何の苦労もなく数学を学ぶことができます。

方程式で問題を解くとは

では、「方程式で解く」とは、具体的にはどうすることか?

求めたいものをx」として、「等式」をつくり、「方程式の計算方法にしたがって解を求める」。この3つの作業をおこなうことです。

数学の得意な人でも、方程式の文章題を解くことを、「方程式の計算方法にしたがって解を求める」ことだとかんちがいしている人が少なくありません。完全な誤解です。
求めたいものをx」として、「等式」をつくり、「方程式の計算方法にしたがって解を求める」、この3つがそろわないと、方程式そして数学をわかったとはいえません。

実際の解き方

実際に解くときは、以下のように思考していきます。

例題1、みかんを6個買い、500円硬貨を出したところおつりが80円であった。このみかん1個の値段を求めなさい。

小学生のように、問題文の最初から緊張して読み進める必要はありません。
さっとながめて、「値段の問題だ」とわかればそれで充分です。「おつりが80円だから・・・」と考えてもいけません(それは小学校流です)。

問題文最後の、「みかん1個の値段を求めなさい」に、まず注目します。
中学生は方程式で解く、方程式で解くためには「求めたいものをx」とする。

だから、まだ何も考えないうちに、「みかん1個の値段をxとする」と答案を書き出します。

次が、「等式をつくる」段階です。

方程式は等式です(だから、文字式の最後か、(教科書によっては)方程式の最初に、等式を習うのです。
等式とは、左辺と右辺を=(等号)でむすんだ式です。

等式をつくる(「たてる」とも言います)ときのコツはただ1つ、問題文をそのまま利用することです。

「みかんを6個買い」、そしてみかん1個の値段がxだから6x。

これを左辺と考えると、「500円硬貨を出したところおつりが80円であった」から、右辺は500−80。

6x=500−80

これで式ができました。

あるいは、文字式で習って記憶に残っている、500円出したときのおつりの式は「500−値段」だったという式を使うこともできます。

そうすると、等式は、
500−6x=80
となります。
これも正解です。

あとは、方程式の解き方にしたがってミスをしないように慎重に解くだけです。

6x=500−80
6x=420
x=70


または、
500−6x=80
−6x=−420
x=70


最後に、答えを書きます。

もう一度、問題文の最後を確認して、「このみかん1個の値段を求めなさい」だから、70円と書いて終了です。

ここでの注意点はたった1つ。

方程式の計算問題だと、答えはx=70で、x=を書かないとバツです。方程式の答えは「解」であり、「x=70」が「解」の書き方だからです。方程式の計算問題の答えを「70」と書いてしまうと、ほとんどの先生はペケにします。

文章題は全く別です。この問題の問いは「このみかん1個の値段を求めなさい」であり、値段の書き方は「〜円」のはずですから、ここでは「x=」をつけるほうが間違いで、「70円」と書かないとマルになりません。

以上より、模範解答は、

みかん1個の値段をxとする
6x=500−80
または 500−6x=80
6x=420
x=70

答え 70円


となります。
皆さんが大切だと思っている青字の部分は、実はそう重要ではありません。

大切なのは、最初と最後の赤字の部分です。
特に最初の部分、「〜をxとする」は、皆さんにとってみれば「なんで書かなあかんねん、解けたらいいやん」でしょうが、中学校の数学で最も大切な「中学校からは、すべての問題を方程式で解く」ことを徹底するために最も重要な部分です。
ここを意識できる人だけが、どんな難問が出ようが、これから先の数学を楽に解くことができるようになります。

最初の「〜をxとする」が書けない、意識できない人は、中学校、高校の数学を学ぶのは無理、無駄です。
この部分が、あなたたちのこれからの運命を左右する分岐点です。


「合わせていくら」の問題で今日の復習

例題2、50円のはがきと80円の切手を合わせて15枚買い、840円払った。はがきをと切手をそれぞれ何枚買いましたか。

解き方

まず問題文をさっと読んで、最後に注目です。

「はがきをと切手をそれぞれ何枚買いましたか」を見て、「求めるものをxとする」です。
例題1と違い、ここで悩んでください。
数学の問題文に無駄な言葉は一つもない」、「それぞれ」を見落とすと、その段階でアウトです。
それぞれ」は、数学では「別々」と読み替えます。
はがきと切手の枚数は「別々」なのです。「別々」なものを、同じxで表わすことはできません。こんな場合、普通は、前に書いてあるはがきをxとします。切手の枚数は、まだ保留しておきます。

ですから、答案の書出しは、
はがきの枚数をxとする
です。

次に、問題文の前に戻り、問題文をそのまま素直に数学の式、それも「等式」にしていきます。
「50円のはがきと80円の切手を合わせて15枚買い、840円払った」ですから、
50x+80???=840と頭に浮かびます。

ここで再び頭を使い、悩んでください。

80円切手の枚数はどうなるんだろう。
手がかりになる言葉は、「それぞれ(別々)」と「合わせて15枚」です。
「別々」ですから、はがきと同じxではありません。

もし、はがきが5枚なら、切手は何枚でしょう?「合わせて15」ですから、10枚のはず。
はがきが8枚なら切手は7枚。
こう考えて、片方はxだから、もう一方は15−xだと直感的にひらめく人はそれで正解です。
5枚だったら残りは10枚、10という数字はどういう式から出た数字か?15−5=10だ、ということは、はがきがxだったら切手は15−x、この発想でもかまいません。

数学は訓練の教科でもあります。いくら理屈がわかっても、何度も練習して自分のものにできていなかったら使い物になりません。
ここでの考え方、「合わせて15」のとき、一方がで他方は15−xは、頭に残しておくべきです。
丸暗記しても意味がありません。自分がどうやってxと15−xが理解できたのか、その部分を覚えておくのです。

これで、等式ができます。

50x+80(15−x)=840

方程式を解くと、
50x+80(15−x)=840
50x+1200−80x=840
50x−80x=840−1200
−30x=−360
x=12

最後に、もう一度、問題文の最後を確認して答えを書きます。

「はがきをと切手をそれぞれ何枚買いましたか」、自分ではがきをxとしたわけですから、はがきは12枚です。
では、「それぞれ(別々)」の切手は?
「合わせて15」だったわけだから、はがきが12枚だったら3枚とひらめいてもよいし、15−12=3ときちんと式で解いてもよい。

答え、50円はがき12枚、80円切手3枚