1次関数の単元で、子どもたちが最初、よく点数を落としてしまう問題に次のような問題があります。

子どもたちが苦手な問題

(1)1次関数y=3x−1で、xの値が2から6まで増加するとき、yの値はどのように変化しますか。
(2)1次関数y=−4x+1について、xの値が−4から2まで増加したときのyの増加量を求めよ。
(3)1次関数y=2x+1で、xが1から3まで増加したとき、変化の割合を求めなさい。
(4)1次関数y=−2x+1で、xの変域が−1≦x<3のときのyの変域を求めなさい。
(5)1次関数y=ax+6で、xの変域が0≦x≦3のとき、yの変域が3≦y≦6である。aの値を求めなさい。

数学の得意な子にしてみれば簡単な問題ですが、普通の子は、やり方を思い出せなかったり、わからなくて解答欄を空白にしたりする問題群です。

苦手な問題には共通点があった

実は、上の5問は、皆同じ種類の問題です。「xの値が2つ、出てくること」、「式にxの値を代入してyを求めなければならないことを子どもたちが気づきにくいこと」、が共通しています。

正解率を大きく高める小さな工夫

このグループの問題が楽にできるようになる、ちょっとした工夫を思いつきました。
それは、「xが2つ出てきたら、xの下にyの値を書き込んでおく」ことです。


(1)1次関数y=3x−1で、xの値が2から6まで増加するとき、yの値はどのように変化しますか。


(1)


と、x=2のときのyの値5、x=6のときのyの値17を、xの下に書くくせをつけておきます。
そうすると、「5から17まで増加する」と簡単に答えはわかってしまいます。

(2)1次関数y=−4x+1について、xの値が−4から2まで増加したときのyの増加量を求めよ。

(2)



こう書いておけば、x=−4のときy=17、x=2のときy=−7で、yの増加量だから−7−17=−24と頭にうかんできやすくなります。

(3)1次関数y=2x+1で、xが1から3まで増加したとき、変化の割合を求めなさい。

(3)



このときも、変化の割合の公式

1


に、すうっとあてはめやすくなります。

(4)1次関数y=−2x+1で、xの変域が−1≦x<3のときのyの変域を求めなさい。

(4)



子どもたちがやり方をよく忘れる問題ですが、xの真下に数字が書いてあればさすがに忘れないでしょう。
−5<y≦3という正解がすっと出やすくなります。

見た目で判断できるので、数の大きさを見落として3≦y<−5と書いたり、不等号の違いに気づかずに−5≦y≦3とやったりする間違いも大幅に減るはずです。

ちょっとした応用問題、
(5)1次関数y=ax+6で、xの変域が0≦x≦3のとき、yの変域が3≦y≦6である。aの値を求めなさい。

(5)



と書いておけば、下の6とyの変域の6が共通であることから、3a+6=3の式を思いつきやすくなり、a=−1という正解を楽に求められるようになります。


私は今まで、馬鹿正直にx=2のとき、式に代入してy=5、x=6のときy=17、「yの値がどう変化したか」をたずねている問題だから「5から17に増加した」と答えるとか、変化の割合の問題だと、xの増加量、yの増加量を記入した表を作らせたりとかして、教えていました。

早めの時期に、「xの値が2つ出てきたらその真下にyの値も書き込んでおけ」と徹底させておけば、子どもたちは迷わずに、「本能」にしたがって(つまり、あれこれ考えることなく)、無理なく正解にたどりつけるということにやっと気づきました。

増加量と値

もう一つ、子どもたちがよくやってしまう、

(1)y=3x+1でxの値が2のときのyの値…正解はx=2を代入してy=7、

(2)y=3x+1でxの増加量が2のときのyの増加量…正解は、変化の割合3×2で6

の2つの問題のかんちがい・混同も、「増加量」と書いてあれば変化の割合の問題、「」と書いてあれば必ず代入、と徹底させたら、ほとんどなくなります。


2つの工夫

1次関数の応用問題、発展問題に入る前に子どもたちがよく間違えて定期テストで足を引っ張るこれらの問題は、上記2つのこと、

「xの値が2つ出てきたらその真下にyの値を書き込んでおく」

「増加量」と書いてあれば変化の割合の問題、「値」と書いてあれば代入

を徹底すれば、相当正解率が上がるはずです。