この稿では、1次方程式の利用の問題のうち、「整数」、「過不足」、「年齢」、「割合」の文章題を取りあげています。「文章題の基礎」については1次方程式の利用(1)を、「速さ・食塩水の問題」は1次方程式の利用(3)を、ご覧ください。

「方程式で文章題を解く」とは、(1)求めたいものをxとする(2)等式をつくる(3)方程式の計算方法にしたがって解を求める、この3つの作業をおこなうことです。
今日は、「1次方程式の利用」でよく出題される問題をとりあげ、3つの作業のうちの2番目、「等式をつくる」を中心に解き方の練習をします。

文章題で式を立てるときは、「等式をつくる」ことに的(まと)をしぼると、楽に式を作ることができるようになります。
もう一つのコツは、等式をつくるとき、問題文の文章をできるだけそのまま活用することです。


整数の問題1
連続する3つの整数があり、その和は96である。この3つの整数を求めなさい。

(作業1)xを決める
 問題の最後を眺めると、「3つの整数を求めなさい」とある。3つともxにはできないから、一番小さい数をxにする。

(作業2)等式をつくる前の準備
「連続する3つの整数」とは、7、8、9のように3つ並んだ整数をいいます。1ずつ増えます。だから、最小の数をxとすると、次はx+1、その次はx+2になります。

等式をつくる
 問題文中の「その和は96である」をそのまま利用します。文章題では、言葉の「〜は・・・」の「」をそのまま数式の「」にしたら、うまくいくことがほとんどです。
だから、「和は96」より「和」=96

x+x+1+x+2=96

(作業3)方程式を解く
x=31

解答を書く
1ずつ増える数3つを求めればよいから、一番小さい数が31、あと32、33

この問題で覚えておくこと
(1)連続する3つの整数は、x、x+1、x+2と表わされる
(2)言葉の「は」を=にすると、楽に式が立てられる


整数の問題2
2けたの整数があり、その10の位の数は6である。この整数の十の位の数字と一の位の数字を入れかえると、もとの整数より36小さくなる。もとの整数を求めなさい。

中学1年生にはやや難しい問題です。

(作業1)xを決める
問題文の最後に、「もとの整数を求めなさい」とあるが、2けたの数の場合、「もとの整数」をxとすることはできません。
文字式で学んだように、2けたの数は、例えば58だと10×5+8だから、普通10x+yと表わします。この問題の場合、「10の位の数が6」と指定してあるから、10x+yのうち、xにあたるのが6、yのかわりが方程式のxになります。
したがって、「1の位をxとする」が正しい。

(作業2)等式をつくる前の準備
10の位が6だから、もとの2けたの整数は10×6+x、つまり60+xになります。

等式をつくる
問題文を読んで、数学的にどうなるんだろうと考えるのではなくて、問題文のどこが左辺になって、どこからが右辺か、という発想をするべきです。「等式をつくるとき、問題文の文章をできるだけそのまま活用する」とは、そういう意味です。

「この整数の十の位の数字と一の位の数字を入れかえると」、「もとの整数より36小さくなる」となっていますから、「この整数の十の位の数字と一の位の数字を入れかえると」が左辺、「もとの整数より36小さくなる」が右辺です。

もとの整数は、10×6+xです。
「十の位の数字と一の位の数字を入れかえると」、6とxを入れかえるわけだから10x+6、これが左辺。

「もとの整数より36小さくなる」に、そのまま当てはめて、もとの整数10×6+x−36、これが右辺。

式は、10x+6=60+x−36

(作業3)方程式を解く
x=2

解答を書く
求める「もとの整数」10×6+xの、1の位が2とわかったから、答えは62

この問題で覚えておくこと
(1)2けたの整数は、文字式では10x+y、方程式では10の位か1の位が問題で指定されているので、10x+yにあてはめて考える
(2)問題文のどこまでが左辺で、どこからが右辺か、という発想で問題を読む


過不足の問題
生徒に折り紙を配るのに、1人に5枚ずつ配ると10枚余り、1人に6枚ずつ配ると4枚不足する。生徒の人数と折り紙の枚数を求めなさい。

(作業1)xを決める
問題の最後を眺めると「生徒の人数と折り紙の枚数」の2つ書かれています。素直に、前の「生徒の人数」をxとします。
(過不足の問題は、人数をxにしたほうがずっと簡単に解けます。)

(作業2)等式をつくる
「1人に5枚ずつ配ると10枚余り」が左辺で、人数をxにしましたから5x+10、「1人に6枚ずつ配ると4枚不足する」が右辺になり6x−4
式は、5x+10=6x−4

問題文中の「、」の、左が左辺、右が右辺になることが多い。
また、問題文に素直に方程式をつくると、「余る」だと+、「不足」だと−と素直に式に書くことができます。

(作業3)方程式を解く
x=14

解答を書く
人数をxとしたので14人。
折り紙の枚数を求めるときも、頭で考えるのではなく、問題文にもどります。「1人に5枚ずつ配ると10枚余る」にそのまま当てはめて、5×14+10=80枚
「1人に6枚ずつ配ると4枚不足する」に当てはめても、6×14−4=80と同じ答えが出てきます。

研究
過不足の問題は、人数でなくて折り紙の方をxにして解くように指定されることがあります。こちらはやや難しくなります(難しくなる理由は、問題文をそのまま使えないからです)。
解き方としては、「等式をつくる」に専念します。
方程式をたてるときの鉄則として、「xにしなかったほうを表わす式をつくれば等式ができる」があります。
この問題では、「人数」と「折り紙の枚数」が出てきました。「折り紙の枚数」をにしたら、「人数」のほうで等式をつくることができます。

「1人に5枚ずつ配ると10枚余る」ということは、人数は折り紙を1人分の5枚で割った数です。「10枚余った」わけだから、折り紙の枚数から10を引いて、1人分の5で割ったのが人数を表わす式です。
右辺も同様に考えて、
(x−10)÷5=(x+4)÷6
つまり、x−10/5=x+4/6 /は分数の横棒

この問題で覚えておくこと
(1)問題文中に「、」があれば、「、」の左が左辺、右が右辺になることが多い
(2)xにしなかったほうを表わす式をつくると、等式ができる


年齢の問題
現在、父は40歳、子は12歳である。父の年齢がこの年齢の2倍になるのは何年後か、求めなさい。

(作業1)xを決める
問題の最後が、「何年後か」なので、何年後かをxにします。

(作業2)等式をつくる
問題文「父の年齢がこの年齢の2倍になる」をそのまま使い、「父の年齢」=「子の年齢の2倍」という等式にします。

気をつけないといけないのは、「誰でも平等に年をとる」ということ。x年たったら、父もx歳、子もx歳、年をとってしまいます。
言い換えると、今の年齢ではなくて、x年後の年齢を使って、「父の年齢」=「子の年齢の2倍」の式に当てはめないといけません。
したがって式は、40+x=(12+x)×2
つまり、40+x=2(12+x)

(作業3)方程式を解く
x=16

解答を書く
16年後

この問題で覚えておくこと
(1)年齢の問題では、父と子、両方の年齢にxをたしたもので等式をつくる


割合の問題
ある品物に、原価の3割の利益を見込んで定価をつけたが、定価の1割引きで売ったため利益は340円であった。この商品の原価を求めなさい。

(作業1)xを決める
最後に「この商品の原価を求めなさい」とあるから、商品の原価をxとします。

(作業2)等式をつくる前の準備
文字式で学んだことが必要になります。
「3割」は0.3ですが、「3割の利益」になると0.3ではありません。「もとの値段よりさらに3割儲けたい」、つまり「もとにあたる割合1よりさらに0.3上乗せしたい」、1+0.3=1.3です。
「定価の1割引」も同様、1割は0.1ですが、「もとの割合から0.1ひく」という意味で、1−0.1=0.9です。
言葉の意味もあやふやな人が多いので説明しておくと、お店をしている人がよそから仕入れたときの値段が「原価」、それに利益を上乗せして売ろうとした値段が「定価」、売れないので値引きをして実際に売った価格が「売り値(売価)」です。

等式をつくる
xを1.3倍して、さらに0.9倍だからx×1.3×0.9、そして、「利益は340円であった」の文言に忠実に。「利益」は、実際に売った値段そのものではなくて、実際に売った値段から人に払った原価を引いた残りが儲け、利益です。
よって、式は、x×1.3×0.9−x=340

(作業3)方程式を解く
x=2000

解答を書く
2000円

この問題で覚えておくこと
(1)「3割の利益」は0.3ではなくて1+0.3=1.3、「1割引」は0.1ではなくて1−0.1=0.9