公立高校数学の入試問題では、図形の総合問題が必ず出題されます。その解き方を考えてみましょう。

1、問題を解けるかどうかは解き始める前の準備で決まる。問題を読む段階でどのような準備をしてから解き始めたらよいのかを考えます。

2、図形問題を解くときの道具は、合同相似三平方の定理方程式、そして小問の連続性である。解くための道具を使い方を考察します。

3、証明問題や解く過程を記述する問題書き方を学びます。


例題:図1、図2において、四角形ABCDはAB=13cm、AD=8cmの長方形である。Eは、辺ADにあってA、Dと異なる点である。四角形EBFGはEG//BFの台形であって台形EBFG≡台形EBCDであり、台形EBFGの辺FGは長方形ABCDの2辺AB、ADと交わっている。Hは辺FGと辺ABとの交点であり、AH=3cmである。Iは辺FGと辺ADとの交点である。

図1
次の問いに答えなさい。

(1)図1において、
[1]台形EBFGの辺FGの長さを求めなさい。   
[2]△HFBの面積を求めなさい。
[3]△AHI∽△GEIであることを証明しなさい。
(証明)
[4]線分EDの長さを求めなさい。






(2)図2において、Jは、直線ABについてFと反対側にあって△HJB≡△HFBとなる点である。
図2このとき、Jは台形EBCDの内部の点となる。Kは、線分HJと線分EBとの交点である。
台形EBCDの内角∠EBCの大きさをa度とするとき、△KBJの内角∠KBJの大きさをaを用いて表しなさい。求め方も書くこと。必要に応じて図2を用いてもよい。
(求め方)








問題を読み進めながらの書き込み

問題文をきちんと読まないといけないのはもちろんですが、よく読めば解けるというものでもありません。与えられた図に、いかに問題文の内容を書き込むかで解けるかどうかが決まってきます。
実際の問題を読み進めながら、どのように図に書き込みをするかを区切って説明します。

問題文:図1、図2において、四角形ABCDはAB=13cm、AD=8cmの長方形である。
この段階で図への書きこみをしない人は予選落ち、多分、問題は解けません。
過程1失敗例

左図のように書き込んだ人は、解けるかもしれませんが後で苦労します。

問題ではAB、ADと言っていますが、どちらも近辺がごちゃごちゃしています。こちらに数字を書き込むと、あとで他の書き込みが増えてきて、わけがわからなくなります。

ほとんどの人が書く範囲を表す線(図の点線で表した部分)、これもいりません。混雑してくるとわけがわからなくなります。

下の図が、かしこい書き込みの仕方です。
過程1
最初の書き込み図と比較してください。ずいぶん、すっきりしてきたでしょう?

問題がABと書いてあるからといって、ABにこだわる必要はありません。DCのほうが空いているので、こちらに書き込みます。同様に、ADよりも書き込むのはBCです。
こちらに書いておくと、AB=13cm、AD=8cmであることも、かえってわかりやすくなります。

また、あってもなくてもよい線は、極力書き込まないようにします。

(余談:この問題は大阪府の入試問題ですが、大阪府公立高校の入試問題は多分、全国で1番難しい。ただし、出題内容が難しいのではなくて、問題文の意地悪さが日本一なんです。この問題も、問題文にBC=8cm、CD=13cmと最初から書いてあれば、やさしい問題になります。意地悪っ子にはそれなりの対策をたててから対抗しないと、いじめられっぱなしになってしまいます。)



問題文:図1、図2において、四角形ABCDはAB=13cm、AD=8cmの長方形である。Eは、辺ADにあってA、Dと異なる点である。四角形EBFG はEG//BFの台形であって台形EBFG≡台形EBCDであり、台形EBFGの辺FGは長方形ABCDの2辺AB、ADと交わっている。


太字の部分を読んでの新たな書き込みは、2つだけです。

過程2EがAD上であること、EG//BF、FGがAB、ADと交わっていること、すべて図を見たらわかるので、何も書き込む必要はありません。(ちゃんと図に各点が書いてあるかどうかの確認は必要です)。

(数学の問題では、問題を解くときに使う事柄でなくても、約束事としてこのような問題の書き方をします。)

ただし、台形EBFG≡台形EBCDだけは重要です。EBFGとEBCDは合同だ、同じものだ、折り返しの問題ということだ、くらいをきちんと頭に残しておきます。
さらに、(これが最も大切なことなのですが)何秒後かの「未来の自分」への心づかい、親切として、合同ということからわかる長さ、FB=8cm、FG=13cmを書き込んでおきます(FG=13cmのほうは、後で見にくくならないように、大きく外に書くなど、書き方を工夫しておきます)。


問題文:図1、図2において、四角形ABCDはAB=13cm、AD=8cmの長方形である。Eは、辺ADにあってA、Dと異なる点である。四角形EBFG はEG//BFの台形であって台形EBFG≡台形EBCDであり、台形EBFGの辺FGは長方形ABCDの2辺AB、ADと交わっている。Hは辺FGと辺 ABとの交点であり、AH=3cmである。Iは辺FGと辺ADとの交点である。

問題文の最後の太字の部分で、さらに追加の書き込みをします。
過程3
AH=3cmを記入しますが、もっと大事なことは、当然わかってくるHB=10もその場で忘れずに(自分への親切として)書き込んでおくこと。
それが勝敗を大きく左右します。





ここまでで、問題を読むと同時に書き込むことをわかってもらえましたか?
すぐ後に問題を苦労して解かないといけない自分自身のために、最初に心配りをしておくという姿勢が大切です。



では、問題を解いていきましょう


(1)図1において、
[1]台形EBFGの辺FGの長さを求めなさい。   
[2]△HFBの面積を求めなさい。
過程4
解答

[1]台形EBFG≡台形EBCDだったので、DCと同じ13cmです。

[2]数学の基本は、求めたいものをxとおいて、方程式を立てて解くことです。
ここでは、△HFBが直角三角形であることに気づいて、三平方の定理を使って解きます。
(気づいた段階で、90度の角に印をつけておくと、後で役に立つかもしれません。)
三平方の定理の基本形、
三平方
で解いてもよいのですが、三平方の定理を使うときは、特別な辺の比である3:4:5と、特別な角30度・60度のときの1:2:√3、45度のときの1:1:√2と優先的に使うべきです。
△HFBの2辺が8と10で、4:5になっていることに注目して、3:4:5の比を使うほうが速い。x:8=3:4またはx:10=3:5より、x=6cm。

したがって、面積は8×6÷2=24平方cm。

[1]も[2]も、準備としての書き込みがしてあれば簡単に求められますが、準備をしていないと難しい問題であることに気づいてください。


[3]△AHI∽△GEIであることを証明しなさい。

過程6
この問題を解く段階で、図は左のようになっているはずです。
新たに何か書き加えなくても、すぐに証明を書くことができます。

証明を書く際の注意として、採点される高校の先生がどこに注目して採点しているかを知っておいてください。
「数学は論理の学問である。証明で書いているある事柄と次の事柄との間に、論理の飛躍があって、『なぜそうなるのか』が書かれていない答案は減点する。」何人かの先生にそう聞きました。

自分ではわかっていても、「なぜそうなるのか」の説明をとばした答案は減点されてしまいます。つまり、何かを書く前に、その理由が書いてない答案はだめだということです。「・・・だから・・・」と書くことを徹底しましょう。
そこに注意して、解答例を見てください。

(証明)
△AHIと△GEIにおいて、
長方形の角だから∠A=90度
同様に∠D=90度で、台形EBFG≡台形EBCDだから∠G=90度
よって、∠A=∠G・・・(1)
また、対頂角だから∠AIH=∠GIE・・・(2)
(1)(2)より、2組の角がそれぞれ等しいから
△AHI∽△GEI


[4]線分EDの長さを求めなさい。

数学の鉄則は、求めたいものをxとして方程式を立てて解く、です。図に、xを記入してから解き始めます。
過程7
ここでまた、自分への心配りとして、「当然のこと」、「使いそうなこと」も書き込むのがコツです。

EDが直接求められるはずがありません。合同でEDと等しいEGを求めるはずです。だから、EGもxを書き込みます。

さらに数学の問題の鉄則、「続いている問題は、必ず、先に解いた問題を使う、利用する」。

EDは求められない、求めるのはEGだということから、△GEIで解くことがわかります。
ところが、すぐ前に△AHI∽△GEIを証明したということは、その結果を使え、ということです。
また、AH=3と書いてあったのは、△BHFで見つけた3:4:5から△AHIでAI=4、HI=5であることに気づけ、ということです。
そうすると、△AHI∽△GEIだったのだから、△GEIも3:4:5だということがわかります。わかったらすぐに、IEはEGの5/3倍だから、5/3xだということを図に書き込んでおきます。
こうしてわかったことのすべてを書き込んだのが、この図です。
過程7

1、求めたいものをxとする(書き込む)
2、先に解いた問題を利用する(書き込む)

この2つの鉄則を守って準備をしたら、やっと問題を解くことができます。

最後の鉄則、「方程式を立てて解く」より、図を見て、4+5/3x+x=8。
この方程式を解いて、x=3/2cm(または1.5cm)



(2)図2において、Jは、直線ABについてFと反対側にあって△HJB≡△HFBとなる点である。このとき、Jは台形EBCDの内部の点となる。Kは、線分HJと線分EBとの交点である。
台形EBCDの内角∠EBCの大きさをa度とするとき、△KBJの内角∠KBJの大きさをaを用いて表しなさい。求め方も書くこと。必要に応じて図2を用いてもよい。

図2

やはり、問題が解けるかどうかは準備で決まります。
解き始める前に、書き込んでおかないといけないことを書き込んでおきましょう。












過程8


台形EBFG≡台形EBCDであることから、∠EBCにも、∠EBFにもaを書き込みます。

△HJB≡△HFBだから、∠EBHと∠JBHに同じであるという印(黒丸)をつけておきます。

また、「求めたいものをxとする」だから、∠KBJにxと書き込んでおきます。

∠ABC=90度であることも、わかるようにしておきます。

準備が整ったので図を眺めると、左のaに、xをたしたものの半分(青の点線で表わした部分)からxを引いたものに、右のaをたすと、90度になることがわかります。
(a+x)/2−x+a=90で解けるわけですが、「求め方も書くこと。」とあるので、論理が飛躍しないように、「〜だから・・・」の筋道を追って、わかったことを記述していくだけです。

(求め方)
∠KBJをxとする。
台形EBFG≡台形EBCDだから
、∠EBC=∠EBF=a・・・(1)

また、△HJB≡△HFBだから∠HBF=∠HBJ
∠HBF+∠HBJ=∠FBK+∠KBJ=a+x
よって、∠HBJ=(a+x)/2・・・(2)

長方形だから∠ABC=90度であり、∠HBJ−∠x+∠EBC=90度となる。
この式に(1)、(2)を代入して、(a+x)/2−x+a=90
両辺を2倍してa+x−2x+2a=180
−x=180−3a
よってx=3a−180



(問題は、平成18年度・大阪府公立高等学校・入学者選抜学力検査後期・数学・問題番号4を使用しました。)