「速さ」「平均の速さ」という言葉は、小学6年生の算数と、中学3年の理科の2ヶ所で出てきます(「瞬間の速さ」は中学理科でしか出てきません)。
この稿では、中学3年理科の『運動』の単元で出てくる「速さ」を取り上げます(小学校で学ぶ「速さ」も同じものですが、説明が小学生にはややわかりにくいかもしれません)。


速さ

世の中には、見ただけですぐにわかるものと、ぼんやりとはわかるものの計算をしないと正確にはわからないものとの2種類があります。

わかりやすい例は、長さと面積です。
長さは、定規やものさしをあてただけですぐに正しい数値を求められます。
面積は、正しい値を求めようと思えば、例えば長方形だと縦の長さと横の長さを求めた上で、縦×横の計算をしないと求められません。

速さは、後者と同じで、計算をしないと求められない値です。

面積の式、縦×横を知らない人、難しいと思う人は誰もいません。

同じように、速さを求めようと思ったら、
速さ移動距離÷移動するのにかかった時間
の式を、理屈抜きでまず覚える、
これが速さの問題を解くときの出発点です。

公式が長すぎると思う人は、
速さ距離÷時間
と覚えておけば、それで十分です。


余談:「理屈抜き」で覚えないといけない理由は、速さも面積と同様、「そう決めた」だけであって、そこに理屈はないから、です。
速さという概念があったほうが便利だ、では、距離÷時間を速さとしたら一番使いやすいのではないかと、「そう決めた」だけですから、なぜ「速さ=距離÷時間」なのかを考えてもあまり意味がありません。



次に、理科の公式で重要な単位です。

距離には、km、m、cmの3種類があり、時間には時間、分、秒の3種類があるので、単位はkm/時、km/分、km/秒と、m/時、m/分、m/秒と、cm/時、cm/分、cm/秒の9種類があることになります。

他の公式だと、単位は原則として一つです(例えば、圧力の単位はN/平方mだけを通常は使います)。
しかし、速さの単位だけは、上の9つのどれを使ってもかまいません。
計算の過程をそのまま反映させたらよいだけです。
例えば、ジェット機が2秒で0.4km進んだとすると、速さを求める式は0.4km÷2であり、答の単位は式の単位をそのまま使って0.2km/秒です。

(問題で、解答の単位を指定してあるときは別です。そのときの解き方は別稿で説明します。)

まとめます。

(1)速さの問題を解くときは、速さ=距離÷時間の式を覚えて、常にこの式にあてはめることだけを考える。

(2)速さとは何かと聞かれたときも、距離を時間でわったものですと答えればよい。

(3)速さの単位は、計算で使った距離と時間の単位をそのまま使えばよい(例えばm÷秒であればm/秒)。



「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」

どの教科書やテキストにも、
速さ」とは「物体が一定時間に移動する距離である」、
平均の速さ」とは「物体が同じ速さで動き続けたと考えたときの速さである」、
瞬間の速さ」とは「時間間隔をごく短くしたときの平均の速さである」、
と書かれています。

正直、さっぱりわかりませんね。

信号も何もないまっすぐな道路を、スピードを変えないで自動車で進んだとします。
100kmの距離を2時間で通り過ぎたら、速さは、距離÷時間の公式から100÷2=50km/時です。
このときだけは、「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」の3つがすべて同じで、一致します。

ところが、「スピードを変えないで」自動車を進ませることなど、実際には不可能です。
止まっていた自動車がだんだんスピードを上げて最高速度になり、スピードをあげたり落としたりしながらやがて減速して終点で止まる、というのが現実の姿です。

数学とちがって、理科では現実に運動する物体を対象とします。

だから、「速さ」以外に、「平均の速さ」と「瞬間の速さ」という言葉が必要になってきます。


平均の速さ

いろいろスピードを変えたけれども、最終的には100kmの距離を2時間で進んだわけだから、途中の速さの変化は一切無視して、速さを50km/だと考えようというのが「平均の速さ」です。

この「平均」は、算数の「平均」とは意味が違います。
ある地点では時速100kmで走っていて、次の地点では50kmで走っていたとして、速さは個数ではないので(100+50)÷2=75とはなりません。
進んだ距離によって、「平均の速さ」を表す数値はすべて違ってきます。

簡単に言うと、「平均の速さ」というとき、「平均」の語は、「途中の速さの変化は無視しよう」と言っているだけで、計算上は何の意味もありません。
他に言葉がないから「平均」と言っているだけで、単に「速さ」だと思ってください。


瞬間の速さ

目の前を自動車がすごいスピードで通過したとします。
そのとき、自動車のスピードメーターが90kmを表示していたとしたら、その90kmが、目の前を自動車が通過した瞬間の「瞬間の速さ」です。

ところで、自動車の外に立っている私がその自動車の「瞬間の速さ」を知りたいと思ったら、どうすればよいでしょうか?

目の前の1mなら1mの距離を、自動車が0.04秒で通過したと測定して、速さ=距離÷時間の公式をもちいて1÷0.04=25m/秒。時速になおして、25×60×60=90000m/時=90km/時とするしか方法はありません。

しかし、「瞬間の速さ」といいながら、考えてみればこの場合の時速90kmは真の意味の「瞬間の速さ」ではありません。
0.02秒ときわめて短時間ですが、その間でも自動車の速さは変化している可能性が高い。
この90km/時という速さは、速さが変化しているかもしれない0.02秒間の「平均の速さ」でしかありません。

いくら測定時間を短くしようが、私たちは「平均の速さ」でしか「瞬間の速さ」を知ることはできないのです。


「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」、相互の関係

以上の考察からわかるように、理科で速さを表す3つの言葉、「速さ」「平均の速さ」「瞬間の速さ」は、別物ではありません。
実は同じものです。

現実の運動する物体の速さは刻々と変化しています。

そのことを最初から一切考慮にいれないときに使う言葉が「速さ」です。

刻々と変化することに注目して、注目した上でそれを横において、どれだけの距離をだれだけの時間で移動したかを表そうとする言葉が「平均の速さ」です。

刻々と変化している速さのうち、できるだけ短い時間を取り上げて、そのときの「速さ」を表す言葉が「瞬間の速さ」です。


実際に問題を解くときは

言葉は違っても、同じ式である、距離÷時間で求められるものが「速さ」「平均の速さ」「瞬間の速さ」ですから、実際に問題を解くときは「平均の」や「瞬間の」という言葉は無視していいのです。

どの言葉が問題で使われていようと、常に「距離÷時間」にしぼって、「距離÷時間」の式だけを使って「速さ」求めたらよいということを知っていたら、全然悩まずに問題を解くことができます。



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