書かれていない大原則

あまりにも重要すぎて、かえって誰も教えてくれないということが、この世の中には結構あります。

(1)分数は、なぜ約分して答えないといけないのでしょうか?
(2)比は、なぜ整数で答えないといけないのでしょうか?
(3)「式の値」の問題では、なぜ先に式を整理してから代入しないといけないのでしょうか?
・・・・・

すべて、答えは1つ、算数・数学の目的が、「ものごとをできるだけ簡単にする」ことにあるから、です。

だから、答えはもちろん一番簡単な形で書かないといけませんし、途中の式であってもできるだけ簡単にしてから計算しないといけません。

これは算数・数学で守らなければならない大原則です。


「簡単にする」のが算数・数学

数学とは、世の中にある混沌とした現実からある秩序を発見し、それを簡単な式にしてわれわれに示してくれる学問です。
数学者の夢は「世界を1つの式で表す」こと。
Simple is best.です。

数学の目的が複雑な現実を簡単に秩序立てることにあるのですから、「簡単にすること」が常に要求されるのです。


答えは簡単に

5年生では、例えば、5/6+7/6だと、答えは12/6で終わりです。

今の教科書の配列だと、約分を習うのはやっと小学6年生生になってからなので、7/6−5/6=2/6で終わるのはしょうがないとしても、12/6は2として答えるべきです。
なぜなら、そのほうが「簡単な」数字だから、です。
算数・数学の目的に合致するからです。

ところが解答を見たら12/6で、かっこして(2)と書いてある。
かっこを使って2と書くくらいなら、2を模範解答とするべきです。
私はしつこく2に書き直させます。

小学生のときに習わないものだから、中学生になっても12/6xなどと書く人が続出します。中学生になったら、これはさすがにペケです。
「なぜですか?」と聞く子まで出てきます。
「簡単にするのが算数・数学だから」、私はこの説明で押し通します。


途中の式も簡単に

式の値の問題、例えば、「x=2のとき、2(x−1)−3(x+2)の式の値を求めよ。」という問題が出たときに、式はそのままで、すぐにxに2を代入する人が続出します。

これも間違いです。

先に式を整頓して2(x−1)−3(x+2)=2x−2−3x−6=−x−8にしてから代入しないといけません。

私は、式を整頓しないでいきなり代入しているのを見つけたら、必ず書き直させます。

答えは同じなのにうるさいことを言うなァと思われているのは重々承知していますが、算数・数学の大原則を枉(ま)げるわけにはいきません。

そうしないといけない理由の一つは、先に式を整頓してから代入したほうが計算間違いが減るから、ですが(テキストの解説にもそう書いてあります)、もっと本質的な理由は、「簡単にする」のが算数・数学の大原則だからです。

順序が逆です。
「簡単」で「美しい」から、その副次的効果として、計算間違いも減るのです。

小さな「得」をえさに強制すると、本当の大きな「得」を見失わせることになります。


連立方程式と平方根で「簡単にする」を考える

例題1:
十の位の数字が8である3けたの自然数がある。各位の数の和は、百の位の数の6倍で、また百の位の数字と一の位の数字を入れかえた数は、もとの数より396大きいという。もとの自然数を求めよ。


もとの数を100x+80+yとすると、「各位の数の和は、百の位の数の6倍」から、x+8+y=6x
この式を整頓して、−5x+y=−8・・・(1)

「百の位の数字と一の位の数字を入れかえた数は、もとの数より396大きい」から、100y+80+x=100x+80+y+396
この式を整頓して、−99x+99y=396・・・(2)

普通、このあと(1)を99倍してから(2)の式をひき、加減法で解きます。
しかし、それはだめ。

いつも、なんとか簡単にできないかと目を光らせておかないといけない。

(2)の式で、99が2つも現れていることから気がつかないといけません。
(2)の式は、両辺を99でわって、−x+y=4と変形できます。

−5x+y=−8・・・(1)と、−x+y=4・・・(2)で解くべきです。

例題2:
√3×√18÷√6を計算せよ。


3×18=54、54÷6=9だから、√9=3とやってはいけません。

√18を先に「簡単に」して、3√2。
√3×3√2÷√6.
√3×√2÷√6=√1=1だから、答えは3が正しい。

平方根の計算でも、できるだけ先に簡単にしておくべきだから、a√bの形になおせるものは先になおしておくのが原則です。

ところが、「a√bの形になおせるものは先になおす」が平方根の計算の最優先事項なのに、その例外に見える問題が出てきます。

例題3:
√72÷√6を計算せよ。

「a√bの形になおせるものは先になおす」の原則に従うと、√72=6√2。
6√2÷√6=6√2/√6、約分して6/√3、これを有理化して6√3/3、さらに約分して2√3。

間違いではないが、ちょっと遠回りです。

√72÷√6=√12=2√3としたほうが速い。

では、原則の例外か?

いいえ、この場合も「簡単にする」という数学の大原則からすると、√72÷√6=√12で正しいのです。

「a√bの形になおせるものは先になおす」のは、普通はそのほうが「簡単な数」になるからです。
ところが、わり算もその答えは「簡単な数」になる。

どちらか、その問題にふさわしい方法を選べばよい。

問題を眺めて、先にわったほうが簡単になると思ったらわったらよい、ということになります。


「何事もできるだけ簡単にする」のが数学の裏に隠れている大原則です。

計算であろうが、関数の応用問題であろうが、図形の問題であろうが、よい解き方は一番簡単な解き方です。
例えば、自分の解き方と模範解答を比べてみて解き方が違っているとき、なぜ模範解答がそうなっているかというと、そのほうがシンプル、簡単な解き方だからです。

算数・数学では「簡単であるほどよい解き方」であるということを知っておくと、各単元でばらばらに見える解き方に実は統一性があることがわかってきます。


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