語の識別の問題の中で一番難しいのが、「で」の識別です。
いきなり問題にあたっても見当がつきにくいので、「だ」の識別と同様、あらかじめ「で」にはどのようなものがあるかを先に知っておくべきです。
「で」の類別
(1)格助詞の「で」。体言につきます。(例:駅で会う。)
格助詞の「で」は、さらに意味の違いで、場所、手段、材料、期限、原因・理由に分かれます。
(2)補助の関係を表す接続助詞「て」が濁音化して「で」になったもの。
動詞の音便形「い」「ん」に接続する。(例:飛んでいく。泳いでみる。)
ところで、形容動詞と、形容動詞型の活用をする助動詞「だ」は、「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら」と活用します。
そこから、
(3)形容動詞の連用形の一部としての「で」。(例:素敵である。)
(4)断定の助動詞「だ」の連用形の一部である「で」。(例:我輩はねこである。)
おもなものは以上の4種類ですが、その他に、やや特殊なものとして、
(5)副詞の一部である「で」。(例:まるで夢のようです。)
(6)接続詞である「で」。(例:で、その続きは。)
などがあります。
単独の一語で、活用形ではない「で」が、(1)格助詞の「で」、(2)接続助詞の「て」が濁音化した「で」、(6)接続詞の「で」の3つ、活用する語の連用形の「で」が(3)形容動詞の連用形の活用語尾の「で」、(4)断定の助動詞「だ」の連用形の「で」の2つ、そしてその他という3グループに分類できます。
格助詞「で」の類別
「で」の識別の問題がややこしいのは、品詞別に分類したら答えられる問題だけでなく、「で」のうちの一つである格助詞の「で」が、さらに意味によって5つに分かれ、その5つの意味も覚えておかないと解けない問題があるからです。
格助詞「で」は、連用修飾語をつくる助詞であり、その意味は次の5つです。
(1)場所を示す・・・例:公園で遊ぶ。
(2)手段を示す・・・例:自転車で通う。
(3)材料を示す・・・例:紙で作る。
(4)期限を示す・・・例:1週間で終わる。
(5)原因・理由を示す・・・例:風邪で休む。
この5つを、ぼんやりとでもよいので覚えておかないと解けない問題があります。
例題1:
「われわれはいくつかの例でそれを証明することができる。」の傍線部と同じ意味・用法のものを選びなさい。
ア 写真で被害の程度がわかった。
イ 仕事が午前中でかたづいた。
ウ 兄は専門学校の学生である。
エ 図書館の中は静かで、とても落ち着く。
(解き方)
わかりやすいものから選んで解決していきます。
まず、ウの「学生で」の「で」は断定の助動詞「だ」の連用形です。
断定の助動詞のときは、「だ」と言い換えられるますし、言い換えても意味が変わりません。「兄は専門学校の学生だ」と言い換えてもまったく一緒なので、断定の助動詞の「だ」の連用形です。
次に、エの「静かで」の「で」は、「静かで」が「静かだ」とも「静かな」とも活用するので、形容動詞「静かだ」の連用形です。
前の言葉「静か」に「だ」と「な」をつけてみて、「静かだ」、「静かな」の両方が成り立てば、それが形容動詞であることの目印です。
例文の「いくつかの例で」の「で」は、「いくつかの例だ」とは言い換えられないので断定の助動詞ではありません。
「例な」ともならないので形容動詞の一部でもありません。
だから、一語の格助詞だと見当をつけます。
格助詞だと決めたら、今度は意味を考えます。
「いくつかの例で」+「証明することができる」なので、「例で」の「で」は、手段を示す格助詞です。
アの「写真で」+「わかった」の「で」が、手段を示しています。これが、例文と同じ意味・用法の「で」です。
イの「午前中で」+「かたづいた」は、期限を示す格助詞の「で」です。
実際に問題を解くときは以上のような思考経路をたどるのではないでしょうか。
例題2:
「滞在日数が多くなったせいで、すでに夏になってしまった。」の傍線部の「で」と同じ意味・用法のものを選びなさい。
ア 港は波もおだやかで、船出には絶好の日和だ。
イ 家の軒下で、今年もツバメのひながかえった。
ウ 久しぶりの雨で、庭の草木も生気を取り戻した。
エ 乾いた洗濯物をたたんで、家事の手伝いをする。
(解き方)
例文の「多くなったせいで」+「夏になってしまった」の「で」は、原因・理由を示す格助詞の「で」です。
アの「で」は、「おだやかだ」、「おだやかな」と活用するので形容動詞の活用語尾で、違います。
イの「軒下で」の「で」は、場所を示す格助詞の「で」で、格助詞ではありますが意味が違います。
ウの「雨で」+「生気を取り戻した」の「で」が、原因・理由を示す格助詞で、これが同じ意味・用法です。
エの「たたんで」の「で」は、後半の「家事の手伝いをする」に続いていくので、接続助詞「て」が濁音化した「で」であり、違います。
例題3:
次の(1)〜(3)の語の文法的説明として最適なものを、あとのア〜エの中から選びなさい。
「葦で(1)屋根をふいた貧しい農家で(2)、老人と老妻とが住んで(3)いた。」
ア 接続助詞「て」の濁音
イ 断定の助動詞の連用形
ウ 形容動詞の連用形活用語尾
エ 材料を示す格助詞
(解き方)
(1)の「葦で」の「で」は、材料を示す格助詞です。だから、(1)はエ。
(2)の「農家で」の「で」は、「農家」に、断定の助動詞「だ」の連用形がついたものです。(2)はイ。
(3)の「住んで」の「で」は、接続助詞の「て」の濁音化した「で」です。(3)はア。
断定の助動詞の「だ」は、体言に接続する助詞です。
接続助詞の「て」は、用言に接続します。
接続の仕方で、断定の助動詞「だ」の連用形の「で」か、接続助詞「て」が濁音化した「で」かを区別することができます。
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いきなり問題にあたっても見当がつきにくいので、「だ」の識別と同様、あらかじめ「で」にはどのようなものがあるかを先に知っておくべきです。
「で」の類別
(1)格助詞の「で」。体言につきます。(例:駅で会う。)
格助詞の「で」は、さらに意味の違いで、場所、手段、材料、期限、原因・理由に分かれます。
(2)補助の関係を表す接続助詞「て」が濁音化して「で」になったもの。
動詞の音便形「い」「ん」に接続する。(例:飛んでいく。泳いでみる。)
ところで、形容動詞と、形容動詞型の活用をする助動詞「だ」は、「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら」と活用します。
そこから、
(3)形容動詞の連用形の一部としての「で」。(例:素敵である。)
(4)断定の助動詞「だ」の連用形の一部である「で」。(例:我輩はねこである。)
おもなものは以上の4種類ですが、その他に、やや特殊なものとして、
(5)副詞の一部である「で」。(例:まるで夢のようです。)
(6)接続詞である「で」。(例:で、その続きは。)
などがあります。
単独の一語で、活用形ではない「で」が、(1)格助詞の「で」、(2)接続助詞の「て」が濁音化した「で」、(6)接続詞の「で」の3つ、活用する語の連用形の「で」が(3)形容動詞の連用形の活用語尾の「で」、(4)断定の助動詞「だ」の連用形の「で」の2つ、そしてその他という3グループに分類できます。
格助詞「で」の類別
「で」の識別の問題がややこしいのは、品詞別に分類したら答えられる問題だけでなく、「で」のうちの一つである格助詞の「で」が、さらに意味によって5つに分かれ、その5つの意味も覚えておかないと解けない問題があるからです。
格助詞「で」は、連用修飾語をつくる助詞であり、その意味は次の5つです。
(1)場所を示す・・・例:公園で遊ぶ。
(2)手段を示す・・・例:自転車で通う。
(3)材料を示す・・・例:紙で作る。
(4)期限を示す・・・例:1週間で終わる。
(5)原因・理由を示す・・・例:風邪で休む。
この5つを、ぼんやりとでもよいので覚えておかないと解けない問題があります。
例題1:
「われわれはいくつかの例でそれを証明することができる。」の傍線部と同じ意味・用法のものを選びなさい。
ア 写真で被害の程度がわかった。
イ 仕事が午前中でかたづいた。
ウ 兄は専門学校の学生である。
エ 図書館の中は静かで、とても落ち着く。
(解き方)
わかりやすいものから選んで解決していきます。
まず、ウの「学生で」の「で」は断定の助動詞「だ」の連用形です。
断定の助動詞のときは、「だ」と言い換えられるますし、言い換えても意味が変わりません。「兄は専門学校の学生だ」と言い換えてもまったく一緒なので、断定の助動詞の「だ」の連用形です。
次に、エの「静かで」の「で」は、「静かで」が「静かだ」とも「静かな」とも活用するので、形容動詞「静かだ」の連用形です。
前の言葉「静か」に「だ」と「な」をつけてみて、「静かだ」、「静かな」の両方が成り立てば、それが形容動詞であることの目印です。
例文の「いくつかの例で」の「で」は、「いくつかの例だ」とは言い換えられないので断定の助動詞ではありません。
「例な」ともならないので形容動詞の一部でもありません。
だから、一語の格助詞だと見当をつけます。
格助詞だと決めたら、今度は意味を考えます。
「いくつかの例で」+「証明することができる」なので、「例で」の「で」は、手段を示す格助詞です。
アの「写真で」+「わかった」の「で」が、手段を示しています。これが、例文と同じ意味・用法の「で」です。
イの「午前中で」+「かたづいた」は、期限を示す格助詞の「で」です。
実際に問題を解くときは以上のような思考経路をたどるのではないでしょうか。
例題2:
「滞在日数が多くなったせいで、すでに夏になってしまった。」の傍線部の「で」と同じ意味・用法のものを選びなさい。
ア 港は波もおだやかで、船出には絶好の日和だ。
イ 家の軒下で、今年もツバメのひながかえった。
ウ 久しぶりの雨で、庭の草木も生気を取り戻した。
エ 乾いた洗濯物をたたんで、家事の手伝いをする。
(解き方)
例文の「多くなったせいで」+「夏になってしまった」の「で」は、原因・理由を示す格助詞の「で」です。
アの「で」は、「おだやかだ」、「おだやかな」と活用するので形容動詞の活用語尾で、違います。
イの「軒下で」の「で」は、場所を示す格助詞の「で」で、格助詞ではありますが意味が違います。
ウの「雨で」+「生気を取り戻した」の「で」が、原因・理由を示す格助詞で、これが同じ意味・用法です。
エの「たたんで」の「で」は、後半の「家事の手伝いをする」に続いていくので、接続助詞「て」が濁音化した「で」であり、違います。
例題3:
次の(1)〜(3)の語の文法的説明として最適なものを、あとのア〜エの中から選びなさい。
「葦で(1)屋根をふいた貧しい農家で(2)、老人と老妻とが住んで(3)いた。」
ア 接続助詞「て」の濁音
イ 断定の助動詞の連用形
ウ 形容動詞の連用形活用語尾
エ 材料を示す格助詞
(解き方)
(1)の「葦で」の「で」は、材料を示す格助詞です。だから、(1)はエ。
(2)の「農家で」の「で」は、「農家」に、断定の助動詞「だ」の連用形がついたものです。(2)はイ。
(3)の「住んで」の「で」は、接続助詞の「て」の濁音化した「で」です。(3)はア。
断定の助動詞の「だ」は、体言に接続する助詞です。
接続助詞の「て」は、用言に接続します。
接続の仕方で、断定の助動詞「だ」の連用形の「で」か、接続助詞「て」が濁音化した「で」かを区別することができます。
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