位置エネルギーと運動エネルギーは相互に移り変わります。
また、位置エネルギーと運動エネルギーの和は常に一定です(力学的エネルギー保存の法則)。

この稿では、位置エネルギーと運動エネルギーの移り変わりについて、入試によく出題される発展問題の解き方を考察します。
(エネルギーの基本事項に関してはこちらを参照してください。)

考える際のポイントは次の2つです。

ポイント1
位置エネルギーは、高さ質量比例します。
物体の質量は変わらないので、位置エネルギーを考えるときは高さに目をつけます。
運動エネルギーは速さの2乗質量比例します。
物体の質量は変わらないので、運動エネルギーを考えるときは速さに目をつけます。

ポイント2
どの位置に物体があっても、力学的エネルギー保存の法則より、位置エネルギー+運動エネルギー=一定です。
だから、位置エネルギーが0のときに物体が持っている運動エネルギーは、最初、運動エネルギーが0のときにその物体が持っていた位置エネルギーと等しくなります。


力学的エネルギー保存の法則の発展問題

例題1:
図のような斜面で球体である物体を転がす実験をした。摩擦や空気による影響はないものとして、あとの問いに答えなさい。
力学的エネルギー保存
実験1、A点から球体を静かに転がし、斜面CF上での球体の到達点の高さを測定した。

実験2、斜面CFの傾斜をゆるくして斜面CGとし、実験1と同様の実験をおこなった。

(1)実験1で、球体の到達点はどこか。

(2)図2は、実験1で、A〜E点間を運動する球体の位置エネルギーの変化を表したものである。このときの球体の運動エネルギーの変化を図2にかきなさい。
図2







(3)実験2で、球体はG点から飛び出した。そのあと、A点の高さまで到達するか。



(解き方)

(1)実験1で、球体の到達点はどこか。


位置エネルギーの大きさを求める公式がありますが(
位置エネルギー(J)=物体にはたらく重力(N)×基準面からの高さ(m))、この問題は、公式をもちいて実際の位置エネルギーを求めさせる問題ではありません。

位置エネルギーは高さ質量比例すること、物体の質量は変わらないので、結局、位置エネルギーを考えるときは高さだけに注目すればよいこと、この2点をもちいて考察する問題です。

最初、手をはなしたときに球体のもつエネルギーは、高さ目盛り3で表される位置エネルギーのみです(手をはなした瞬間の運動エネルギーは0です)。

図のBで速さが最大になることで運動エネルギーは最大になり、このときの位置エネルギーは、基準面に到達したので、0です。
そして、図のCまで運動エネルギーはそのまま。
そこから坂道をのぼることで、速さは小さくなり、運動エネルギーは減少し、かわりに基準面からの高さが増すことで位置エネルギーが増加していきます。

力学的エネルギー保存の法則より、位置エネルギー+運動エネルギー=一定高さの目盛り3で表される位置エネルギー

最後に球体が止まる場所をたずねる問題ですから、そのときの運動エネルギーは0、つまり、高さの目盛り3で表される位置エネルギーをもつ場所まで到達します。

答えは、F点です。


(2)図2は、実験1で、A〜E点間を運動する球体の位置エネルギーの変化を表したものである。このときの球体の運動エネルギーの変化を図2にかきなさい。

運動エネルギーを求める公式、運動エネルギー()=1/2×質量(kg)×速さ(m/秒)×速さ(m/秒)を使う問題ではありません。

運動エネルギーそのものを求めることはできないのです(正確に言うと、「中学生にそこまでは要求されない」)。

しかし、力学的エネルギー保存の法則、位置エネルギー+運動エネルギー=一定、この問題だと、位置エネルギー+運動エネルギー=一定=高さの目盛り3で表される位置エネルギーより、運動エネルギー自体は求められないものの、運動エネルギーが、高さの目盛りに象徴される位置エネルギーどれだけ分に相当するのかは求められます。

運動エネルギーそのものはわからない⇒位置エネルギーに置き換えて考える⇒位置エネルギー自体もその量を求める必要はない⇒位置エネルギーは高さに比例するから、高さの目盛りで位置エネルギーを推測する、という順になります。

長々と書きましたが、要するに、この球体のもっているエネルギーは常にその和が目盛りの高さ3相当分であるということですべての問いを解いていくということです。

位置エネルギー+運動エネルギー=一定=高さの目盛り3で表される位置エネルギーより、問い(2)の答えは次の図になります。
例題1解答









(3)実験2で、球体はG点から飛び出した。そのあと、A点の高さまで到達するか。

位置エネルギー+運動エネルギー=一定=高さの目盛り3で表される位置エネルギーより、点Aの高さまで到達し、その地点での運動エネルギーが0になるように運動するのであれば、点Aの高さにまで到達できます。しかし、そうなるには球体が次の図のように運動する必要があります。
解答2




これはありえません。

実際の球体の動きは次のようになるはずです。
解答3




つまり、球体が一番高くなったときでも、球体の速さは0ではないので、運動エネルギーも0ではありません。ということは、
力学的エネルギー保存の法則より、位置エネルギーが高さの目盛りの3相当分になることはないということです。

飛び出した球体が点Aの高さまで到達することはありません。


例題2:
例題2図のように、質量の等しい2個の鉄球P、Qを、それぞれなめらかな斜面上のA点、B点に置いて同時に静かに手をはなすと、鉄球P、Qはどうなるか。次のア〜エから選び、記号で答えなさい。ただし、区間ABと区間BCの距離は等しい。
ア 鉄球PはC点に達する前に斜面上で鉄球Qに追いつく。
イ 鉄球PはC点で鉄球Qに追いつく。
ウ 鉄球Pは水平面上で鉄球Qに追いつく。
エ 鉄球Pは鉄球Qに追いつかない。


(解き方)

やはり、次の2つのポイントをもちいて考えます。

ポイント1
位置エネルギーは、高さ質量比例します。
物体の質量は変わらないので、位置エネルギーを考えるときは高さに目をつけます。
運動エネルギーは速さの2乗質量比例します。
物体の質量は変わらないので、運動エネルギーを考えるときは速さに目をつけます。

ポイント2
どの位置に物体があっても、力学的エネルギー保存の法則より、位置エネルギー+運動エネルギー=一定です。
だから、位置エネルギーが0のときに物体が持っている運動エネルギーは、最初、運動エネルギーが0のときにその物体が持っていた位置エネルギーと等しくなります。

まず、区間ABの距離と区間BCの距離が等しいことから、Aの高さはBの高さの2倍です。
Aの高さを2の高さ、Bの高さを1の高さとします。
鉄球Pは、手をはなした瞬間、高さ2で表される位置エネルギーを持っています(このときの運動エネルギーは0です)。
鉄球Qは、手をはなした瞬間、高さ1で表される位置エネルギーを持っています(このときの運動エネルギーは0です)。

鉄球Pが点Bに到達したとき、高さ1で表される位置エネルギーを失い、それが運動エネルギーにかわっています。このときの運動エネルギーは、高さ1で表される位置エネルギーに相当するエネルギーです。
鉄球Qが点Cに到達したとき、やはり、高さ1で表される位置エネルギーを失い、それが運動エネルギーにかわっています。このときの運動エネルギーは、高さ1で表される位置エネルギーに相当するエネルギーです。
ということは、点Bに到達した鉄球Pと、点Cに到達した鉄球Qの運動エネルギーが等しいということです。
質量の等しい2つの鉄球の持っている運動エネルギーが等しいということは、点Bに到達した鉄球Pと点Cに到達した鉄球Qの速さも等しいということです。
だから、
ア 鉄球PはC点に達する前に斜面上で鉄球Qに追いつく。
イ 鉄球PはC点で鉄球Qに追いつく。

の2つは、ありえません。

次に、鉄球Qは点Cに到達したあと、高さ1で表される位置エネルギーに相当する運動エネルギーをもったままで水平面を動き続けます。
鉄球Pは点Cに到達したあと、高さ2で表される位置エネルギーに相当する運動エネルギーをもったままで水平面を動き続けます。
鉄球Pの持つ運動エネルギーが鉄球Qの運動エネルギーの2倍だということは、点Cに到達して水平面を移動し始めると、鉄球Pのほうが鉄球Qよりも速いということです。
だから、
ウ 鉄球Pは水平面上で鉄球Qに追いつく。
ということになります。


例題3:
AD、DE、EFの3本のレールを図のようにつなげ、水平部分から1mの高さに重さ10Nの小球をおいて静かに手をはなしたところ、EF上のある高さまでのぼって再び滑り降り始めた。水平部分を基準面とし、摩擦や空気の抵抗はないとして、次の問いに答えなさい。
例題3(1)一般に、基準面から30cmの高さにある質量1kgの物体のもつ位置エネルギーは、基準面から20cmの高さにある質量1.25kgの物体のもつ位置エネルギーの何倍か。
(2)小球がC、D、Gの各点にあるとき、小球のもつ運動エネルギーは、それぞれ何Jか。
(3)小球がD点にあるときの速さは、G点にあるときの速さの何倍だったか。
例題3の2(4)レールEFを、図のように短くて傾きが急なEHにかえた。H点から飛び出した小球は、そのあとどのような運動をするか。図のア〜ウから選び、記号で答えなさい。


(解き方)

(1)一般に、基準面から30cmの高さにある質量1kgの物体のもつ位置エネルギーは、基準面から20cmの高さにある質量1.25kgの物体のもつ位置エネルギーの何倍か。

位置エネルギーは、高さ質量比例する」を使って求めます。

30cmの高さにある質量1kgの物体のもつ位置エネルギーは、20cmの高さにある質量1.25kgの物体に比較すると、高さで30÷20=1.5倍、質量で1÷1.25=0.8倍。
1.5×0.8=1.2倍。


(2)小球がC、D、Gの各点にあるとき、小球のもつ運動エネルギーは、それぞれ何Jか。

この問題の場合、運動エネルギーを直接求めることはできません。

力学的エネルギー保存の法則、位置エネルギー+運動エネルギー=一定を使って考えます。
「位置エネルギーが0のときに物体が持っている運動エネルギーは、最初、運動エネルギーが0のときにその物体が持っていた位置エネルギーと等しくなる」を活用します。

この小球が最初B点でもっていた位置エネルギーは、
位置エネルギー(J)=物体にはたらく重力(N)×基準面からの高さ(m)
より、
10N×1m=10J。

つまり、この問題では、常に、
位置エネルギー+運動エネルギー=10J
です。

C点のとき

小球がC点でもっている位置エネルギーは、10N×0.4cm=4J。
だから、C点でもつ運動エネルギーは10−4=6J。

D点のとき

基準面に達したので、位置エネルギーは0。
だから、運動エネルギーは10J。

G点のとき

G点で小球がもつ位置エネルギーは、10N×0.75m=7.5J。
だから、G点でもつ運動エネルギーは10−7.5=2.5J。


このように、運動エネルギーそのものを求めないで、まず位置エネルギーを求めて、その結果から運動エネルギーを推測するのが解くときのコツです。


(3)小球がD点にあるときの速さは、G点にあるときの速さの何倍だったか。

問い(2)で求めたことから、D点の運動エネルギーは10J、G点の運動エネルギーは2.5J。
運動エネルギーは、10÷2.5=4倍。

「運動エネルギーは速さの2乗質量比例する」から、速さの2乗が4倍ということになり、速さは2倍。


(4)レールEFを、図のように短くて傾きが急なEHにかえた。H点から飛び出した小球は、そのあとどのような運動をするか。図のア〜ウから選び、記号で答えなさい。

例題1の(3)で考察したように、運動エネルギーが0ではないので、もとの高さまで到達することはありません。

答えはア。



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