「模擬実験をする」、「あれこれ頭の中で試行錯誤をする」の意味にあたる言葉を書こうとして、書いている私がどっちだったっけ?と悩むのが、「シミュレーション」と「シュミレーション」です。

冷静に考えたら英語のsimulateの名詞形だからsimulationシミュレーションに決まっているのに、特にしゃべっているときなどシュミレーションと言ってしまいそうになります。

「的を射る」と「的を得る」と違って、シュミレーションは明らかな誤りであり、間違って使ってしまったらいいわけできません。


頑張るシュミレーション

グーグルで検索したとき、シミュレーションでhitする記事は3290万件、シュミレーションでhitする記事が1450万件(「もしかしてシミュレーション?(あなた間違っているんじゃないの?)」の注記があるにもかかわらず)。

このインターネットの世界に、とくとくとしてシュミレーションと書いて誤りと気づかずに記事をあげている日本人が1450万人もいるのです。
頭がくらくらしてきます(自分も、どっちだったっけ?と迷う人間なのは棚にあげて)。

ここまできたら、シュミレーション頑張れ!と言いたくなる。


見栄っ張りの言い訳

当然、私自身も思うのが、「シミュレーションって言葉、わざわざ見栄を張って使わなくていいじゃん。同じ意味の適切な日本語を使いなよ。」

ところが、シミュレーションにあたる適切な日本語が、探してもないのです。

simulateをgoo辞書でひくと、「シミュレートする、模擬実験をする」と書いてある。
simulationが研究社の新英和中辞典だと、「模擬実験、シミュレーション」とある。

私たちがシミュレーションと言いたいとき、「模擬実験」とまで意味を限定したいわけではない。
「模擬実験」でなかったら、シミュレーションの意味はシミュレーションだと辞書に断言されているわけで、またまた頭がくらくらしてきます。


混迷の犯人は大学教授と高級官僚

かくも日本国民を混迷のふちに追い込んだ犯人は、私見によると、文書にむやみやたらと新規の外来語をまぶす大学教授とキャリア官僚です。

大学の先生の文章と官庁の報告文書にけったいな外来語が最初に使われ始めて、それがいつのまにか流行になって、私たちはその言葉を使わないと時代遅れになると勘違いして、使わざるをえなくなる。

われら庶民は、「公約」を「マニフェスト(@民主党)」と言いかえられたらころっと騙され、さらに「アジェンダ(@みんなの党)」と叫ばれると嬉々として投票してしまうのです(2010年現在)。

それまでは、「頭の中でいろいろ考えてみたのですが、・・・」と言っておけば用が済んで平和だったのに、シミュレーションという言葉を聞きかじったばかりに、「いくつかシミュレーションをくりかえした結果、・・・」などと舌をもつれさせて苦労しないといけないことになってしまったのです(運がよければの話。運が悪かったら「いくつかシュミレーションをくりかえした結果」と発言して失笑をかうはめになる)。


私の提案

大学の先生や偉いお役人が、「おまえたち庶民とは違うんだよ」とばかりに外国産の新語を使いたがる心境を理解できないこともありません。
また、世の中には、外国から新しい概念が入ってきて、それを表すのにふさわしい日本語がない場合があることも承認します。

しかし、われら庶民が知ったかぶりをしたときに恥をかくような環境を国の指導者が作ってはいけない。

そこで、両者を止揚する私の提案です。

小学生や中学生が知らないレベルの外来語を使うときは、その言葉は原語のつづりで表記せよ。

「たこ焼きの焼き方についていろいろsimulationしたところ・・・」というふうに表記することを提案します。

偉い人は自尊心をさらに高級な方法で満足させられるし、読むわれら庶民は「お、またわけのわからん新しい言葉だぞ」という目印になって警戒もできるし、一石二鳥だと思いますが、如何?


追記:simulate,simulationには、もう1つ、「ふりをする(こと)」「まねをする(こと)」という意味があります。サッカーでイエローカードを出されるシミュレーションは「痛がるふり」で、こちらの意味ですね。


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