中学生の古文(3)の続き、『気楽に古文を読もう』シリーズの第3弾です。
公立高校入試で出題された文章を、入試問題と身構えないで気楽に読みましょう。

問題文は『九州の道の記』からとられた一文です。
『九州の道の記』は、1592年、豊臣秀吉がおこなった朝鮮出兵(文禄の役)に随行した豊臣勝俊(木下勝俊)が、京都から肥前(佐賀県)名護屋までの旅程を書き残した作品です。
問題文は、筆者の豊臣勝俊が以前親交のあった僧の住まいを訪れたときのことを書いた一節です。

前回述べたように、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。

( )内の平仮名は問題につけてあった読み仮名です。各行の下の小さい活字の部分は、問題に初めからついている注釈です。
また、問題文についていた注を本文のあとにのせているので、注を参考にしながら読み進んでください。


(本文)

かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。


なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親しみ深く感じることよ

とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。


その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。


苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
趣深い

作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうとすれば、これ以外のものは何とか作れよう

これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
・・・・・ ・
どのような・・・・・・・・・・・・・・・・・・及ぶことができなかった

種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば・・・・・・・・・という思いでながめられた

(注)
泉水=ここでは庭園のこと。
離(まがき)=竹などで粗く編んだ垣根。
工(たくみ)の人=植木職人。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

昔の人も私たちと同じ人間です。
私たちと同じように感動し、同じことをおもしろがり、同じように喜んだり悲しんだりしたはずです。
ですから、古文を読むときも私たちの常識に従って読み進み、作者が伝えたい主題を常識にそって読み取ることが肝要です。

しかし、用いられている言葉は違います(だからこそ古文として特別に出題されるわけです)。
現代文とは違う言葉や、同じ言葉でも現在とは違う意味で使われている言葉に注意して読む必要があります。

この文の主題は、岩に生えていた松の木がつくる自然の造形美に対する驚嘆です。
今は亡き友人が丹精こめてしつらえた庭を訪ねた筆者が見た野生の松の木、その松がもつ人工ではない自然本来の美しさに目を見張る筆者の驚きの気持ちを読み取らないといけません。


ワンポイント・レッスン

いと」・・・「ひじょうに」「たいそう」「とても」。
古文で最もよく出てくる語の1つ。この文章でも2回出てきます。

え〜まじ」・・・「〜できない」。
「え」が前にあると、「え〜ず」、「え〜じ」、「え〜まじ」、「え〜で」など、すべて「〜できない」という意味になります。


簡単な現代語訳(上に載せた古文だけのものを少なくとも3回音読したあと、訳を見てください。)

かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。
私が親交のあったお坊さんの庭園は、お坊さんが隅々まで心を配って花や木を植えていた。
なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
亡くなられた方が自ら植えた草木だから、庭も垣根も私には親しみ深く感じられることだなあ。
とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。
と短歌に詠(よ)んだところ、一緒にいた人は皆、浮かんだ涙を
袖でふいていた。
その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。
その庭の中に、たまたまとても大きな石があった。
苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
コケがはえ、なんとなく古びた石の上に、大変おもむき深い松が1本立っていた。
作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうと思えば、この松以外の庭のものは何とか作ることができるだろう。
これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
しかし、この松には、どんな植木職人であっても及ぶことはできなかった。
種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば岩にも松は生えるのだなという思いでながめたことだ。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次は、筆者が親交のあった僧の坊(住まい)を訪れたときのことを書いた文章である。これを読んであとの問いに答えなさい。


かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。

なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親しみ深く感じることよ

とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。

その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。

苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
(1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
趣深い

作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうとすれば、これ以外のものは何とか作れよう

これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
・・・ ・・・
どのような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・及ぶことができなかった

種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば・・・・・・・・・という思いでながめられた

(注)
泉水=ここでは庭園のこと。
離(まがき)=竹などで粗く編んだ垣根。
工(たくみ)の人=植木職人。



問い

1、「涙を流した」という内容を表すことばを、本文中から十字以内で抜き出しなさい。

2、(1)苔むし、物古りたるの意味として次のうち最も適しているものを一つ選び、記号を書きなさい。

ア 苔が傷んで、とても古びた
イ 苔が湿って、みすぼらしく古びた
ウ 苔がはがれて、少し古びた
工 苔が生えて、何となく古びた

3、本文中には筆者が庭に心ひかれているさまが描かれている。その内容を次のようにまとめた。(   )に入る内容を、現代のことばで十五字以内で書きなさい。

筆者は、僧が生前に精魂こめて自分で植栽した庭全体の様子に親しみを感じ、さらに庭の中の(   )の様子に趣を感じている。


解答

1、袖をなむ濡らしける(九字)

2、エ

3、大きな岩の上に自生した松の木(教育委員会発表の解答は「大きな石の上に立つ一本の松」)


(平成22年度大阪府公立高校学力検査前期問題より、配点は80点中12点)



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