週刊文春の『著者は語る』より、『JET STREAM 旅への誘い(いざない)詩集〜遠い地平線が消えて〜』の著者、堀内茂男さんを取り上げた記事です。

JET STREAMは、私が中学生の時に始まり、今も続いているFM東京の看板番組です。



番組冒頭に流れていた故・城達也氏の語りは、おそらくすべての日本人が一度は耳にしたことがあるはずです。

jet streamは「ジェット気流」、対流圏の上層を吹く強い偏西風のことです。
ずっと上昇気流の中を飛び続けることができていた幸せな時代のわが国とともに、この番組は40年以上歩み続けてきました。

堀内茂男さんは、城達也氏が番組内で朗読していたすべての詩を書いた放送作家の方だそうです。


「詩は1〜2時間で完成するときもあれば、2日かけても書けないときもありました。」

「収録は毎週火曜日の午後1時から。絶大な人気を誇り、多忙を極めた城氏だったが、収録サイクルは堅持した。」

「現場では城氏以下、全員がスーツにネクタイ姿。番組のダンディズムとロマンティシズムを、スタッフ全員で体現した。」

「城さんにアドリブは一切なし。ナレーターとしての美学がそれを許さないんです。『堀内の原稿を誰よりも巧く読んでやる』。その熱意が伝わったし、僕もそれに応えるべく原稿用紙に向かう毎日でした。」

「27年間、ふたりで食事にいったりしたことは一度もありません。城さんと僕の間には原稿しかなかった。馴れ合いのない距離感が、かえって僕には心地よいものでした。」

「94年2月、城氏に食道癌が見つかる。収録を続けるも満足のいく声が出せなくなり、自ら降板を決意。同年12月30日、通算7387回目の放送が“ラストフライト”で、2ヵ月後、城氏は還らざる地へ旅立った。」

「僕はね、城さんの声が本当に好きでした。
(この本に載せた)詩も原稿もすべて城さんの声を脳裏に置いて書いたもの。城さんのシャープでいて温かみのある声を思い出しながら読んでいただけたら、これ以上の幸せはありません。」


週刊誌の書籍紹介記事を読んで涙ぐむ人間なんて、私くらいしかいないかもしれん。

深夜12時、城さんの『遠い地平線が消えて・・・』で始まるナレーションを聴いて、ささくれだった心がすうっとしずまって、また明日から頑張ろうと思いながら眠りにつくことができた人間が、私をふくめておそらく何万人、いや何十万人もいたはずです。

私は城さんしか知りませんでしたが、城さんのかげには堀内さんのような方がおられたわけだ。

城達也氏も男、堀内茂男さんも男の中の男、私より20歳ほど年長の方のようですが、私も城さんや堀内さんのような仕事ぶりでありたい・・・。


世は移ろいます。

海外旅行が夢であった時代に始まったこの番組のスポンサー日本航空JALは、いまや経営不振で瀕死寸前のありさまです。
日航のジェット旅客機がテレビの画面に映っただけで心躍った時代があったなんて、今の人にはわかってもらえないかもしれません。


JET STREAMは、ボールペンの商品名にもなっています。

三菱の開発者が数年の歳月をかけて開発した新しいボールペンは、いまやボールペンの歴史を変える商品になりつつあります。
私の周りでも、「ジェットストリームを使い始めたらもう他のボールペンなんか使えない」とおっしゃる方が少なくありません。


堀内さんの記事を読んで、ひょっとすると商品名を考えていた三菱鉛筆の開発者の脳裏にもMR. LONELYの調べと城さんのJET STREAMが流れていたのかもしれないなと、想像してしまいました。







週刊文春平成22年10月21日号・「文集図書館」著者は語る『JET STREAM 旅への誘い詩集〜遠い地平線が消えて〜』(堀内茂男著)より。



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