「英語の勉強の仕方なんて簡単だよ。教科書本文の暗唱につきる。うちの塾では全員に教科書の文章を暗唱させるだけ。それでほぼ全員がテストで満点近くとってくる。騙されたと思って真似をしてごらん。」塾で教え始めたときに同業の先輩から言われた言葉です。

この言葉は真理だと私も思っています。

しかし、暗唱だけでいいと一言で片づけられるほど実は物事は簡単ではありません。

英語が全くできない子はローマ字を理解していない

ローマ字と英語とは全く別物です。しかし、何か最初によりどころになるものがないと勉強は出発できません。文字と発音とのつながりを体系化したフォニックス法もありますが、初心者に教えるのに有効かどうか確信が持てない。やはり小学4年生で学んでいるローマ字を手がかりにしたほうがどの子にも通用しそうな気がします。

英語が全くできない子は、ローマ字もほとんど書けません。penはペンだからpe(ペ)-n(ン)という思考回路をたどりません。電話番号と同じように、ペンはp(ピー)-e(イー)-n(エヌ)と覚えようとします。電話番号を100も200も覚えることは不可能です。

ところが例の『ゆとり教育』で、小学校で徹底的にローマ字を習う機会がありません。1日で通り過ぎてしまう学校が多いと聞きますし、小学校4年生用の国語の塾専用教材でも、ローマ字にはよくて2ページほどしかさいていない。私の塾では、4年生で習うときと、6年生の最後に、ローマ字の学習に時間をかけるようにしています。

最初からローマ字がきちんとわかっている子は、例えば、「つづりを間違えやすいから高校入試に最もよく出る英単語はkitchen台所だよ、私はキットチェンと覚えたよ。」とか、「英語のOはオと発音することは少ない、またつづりのalの発音はオーだから、workがワーク、walkがウォークだよ(英語の苦手な子はたいてい逆に読みます)。」なんて話に、ついてこれます。

小さいときから英語を習っていながら中学校のテストで思ったほど点数がとれない子が増えていますが、その原因はローマ字が書けない、だからつづりが身についていないからです。

英文法を活用しないと入試では得点できない

高校入試の英語の文法問題でよく出題されるものに、「もし明日が晴れなら」の英作文があります。日本人の感覚では未来のことを言っていながら未来形のwillが使えない。If it is fine tomorrow が正解です。英文法をほとんど無視しているようにみえる最近の教科書を使って、英文法にほとんどふれなくなった中学校で、こんな事例をどう説明しているのだろうといつも疑問に思っています。また、5文型を教えないまま目的語を2つとるgiveなどの授与動詞の文が出てきたり、補語という語を知らないまま「〜を〜にする」という意味でmakeが出てきたりと、かえって子どもにはわかりにくいのではないかと常々感じています。

高校生になったら英語の先生はいきなり文型や文法用語をばんばん使って授業を進めていきます。高校入学直後にさっぱり英語がわからないと言ってほしくないので、塾では中学生にもわかりやすく、できるだけ英文法に基づいた指導を心がけなければなりません。

塾は英語の指導に関しては保守的

このように、塾での英語の学習は、(英文法を意識した)「読み」、(何度も書かせて単語や連語を覚えさせる)「書き」にまだ大きな比重をおいています。それに対して、少なくとも今の中学校の英語の教科書は、「聞く」「話す」に比重を置きすぎていると言ってよいでしょう。小学校での英語の必修化はさらにその流れを加速するものです。

英語は暗唱だという言葉の正しい意味

保守的な塾の人間として、「書けなくても、理屈はわからなくても、英語が話せたらよい」という意味で暗唱をとらえるなら(今の学校での英語教育はこちらを向いています)、暗唱至上主義は誤りであると、私は(実際の指導経験から)言い切ることができます。

しかし、本当の意味で学力をつける、成績を上げることが目的の塾でも、やはり最終目標は暗唱なのです。単語が書けて、英文法も理解した上で、最後には教科書本文を暗唱できるまで覚えないと、定期テストでも入試でも、高得点は望めません。

そういう意味で使うのであれば、「英語は暗唱につきる」、この言葉は真実をついていると言えるのです。