一世を風靡した「そうですね」

王貞治選手がホームラン世界新記録の756号を達成したのは1977年です。
テレビでたびたびインタビューが放送されたのですが、アナウンサーの質問に答える王選手は、慎重な人柄ゆえか、必ず「そうですね、…」という言葉を冒頭につけてコメントをしていました。
「そうですね、丈夫な体に産んでくれた両親に感謝しています」「そうですね、チームのみんなの協力あっての記録です」。こんなふうでした。

英語で言うと、「Well,…」にあたる言葉でしょうか。

非のうちどころのない王選手のインタビューの中で、この「そうですね」だけが耳障りで仕方がありませんでした(同じ言葉を繰り返し使うのは、何語でも、耳に心地よくない、ガラスをくぎでこするのに近い)。
それから、まずスポーツ選手が、例外なくこの「そうですね…」を真似して使い始めた。やがて芸能人、政治家…、分野に関係なく「そうですね…」が蔓延していきました。
若い人の言葉の乱れが非難されますが、大人もたいしたことない、人のことは言えません。
この「そうですね」時代は約20年、続いたと思います。
偉大なり、王選手。

最近うっとおしい、「本当に」
1年ちょっと前でしょうか、NHKの連続テレビ小説『ちりとてちん』に私、はまりまして、関連番組も見まくりました。主人公の女性落語家を演じる女優さん、共演者の草々、草原、四草役の俳優さん、マイクを向けられた皆が、「本当にいい脚本で」「本当に共演者に恵まれて」「本当にいい思い出」と、『本当に』ばっかり頻繁に使うことに気づきました。

英語だと、「…,you know,…」ですかね。なんか教養のなさそうな外人さんがしきりに会話にはさむ、あの単語。

『ちりとてちん』の演者だけでは、なかった。一度意識すると、テレビに出てくる若い人のほぼ全員が、台本がないとき、つまり、自分で考えて発言しないといけないときには、この「本当に」を連発することに気づきました。

「テレビを見ていると、本当に、出てくる人、出てくる人、本当に、例外がないんですよ。これって、本当に、よくないなあって。私、本当に、気になってます。」こんな感じです。

いったん気になり始めたら、違和感ありまくり。
耳をふさぎたくなって、困っています。

(この「本当に」という語がなぜ流行っているのか、私流の理屈も考えてあるのですが、それはまた後日。)