ゆとり教育を推進した官僚の言葉

ゆとり教育が導入されたとき、文部科学省に寺脇研という超有名高級官僚がいました。毎日のようにテレビや雑誌、新聞などのマスコミに登場し、ゆとり教育がどれだけ素晴らしく、どれだけ日本の子どもを幸せにするか、文部科学省の方針を口から泡を飛ばす勢いで主張していました(寺脇研氏は現在、京都造形芸術大学芸術学部教授、いまだに多方面で活躍中)。

今となってはほとんど空しい彼の発言の中で、私の記憶に強く残っているのは「指導内容の3割削減で、みんなが100点をとれるようにする」という言葉でした。ゆとり教育で、できない子はいなくなる、「それができなかったら、国民は文部科学省、学校を焼き討ちしてください」とまで述べて、自信満々でした。


働き蟻(アリ)の法則

『働き蟻の法則』といわれるものがあります。

働き蟻は大きく分けると3つの蟻に分類される。よく働く蟻、普通に働く蟻、まったく働かない蟻。この比率は、よく働く蟻(20%)、普通に働く蟻(60%)、まったく働かない蟻(20%)で、不変である。
巣から、20%の働かない蟻を取り去ってしまうと、不思議なことに、残った優等生の蟻のうち20%が働かない蟻にかわってしまう(つまり、また2:6:2の割合になってしまう)。
この法則は、人間の世界にもそのままあてはまる。
これが、働き蟻の法則です。

「みんなが100点をとれるようになる」という彼の発言を読んだとき、まっさきに私の頭に浮かんだのがこの『働き蟻の法則』でした。
みんなが「よくできる子」になることなどありえない。どれだけ学習内容をやさしくしようと(逆に、難しくしても)、必ず、よくできる子、普通の子、ほとんどできない子の、3者ができる。これが、(寺脇氏に比べたらアリ並みの知能しかないであろう)私の予測でした。

結果は、言うまでもなく、愚者、私の勝ちです。昔も今もかわらずに、できる子と、普通の子と、できない子がいるのは皆様もご存じの通り。


一つだけ現実化した寺脇研氏の言葉

結局、何一つとして世の中に実現しなかった寺脇氏の発言の中で、一つだけ世の中を変えた言葉がある。それもこの「みんなが100点をとれるようになる」「それができなかったら学校を焼き討ちしてください」です。

昔は、他の子ができるのにできなかった子は、「こんなこともできないのか!」と大人に怒られた。ところが今、できない子の中に、「こんなことができないのは誰のせいだ!」と大人を責める子が出現してきている。
あなたのクラスにもいませんか?「わからへん!」と叫んで、それ以後はふてくされたり、何もしようとしなくなったりする子が。


「正義は我にあり」

「わからん!」と叫んだ瞬間から、正義は、わからない自分のほうに移ります。今まで勉強してこなかった自分にまったく責任はない、わからない自分を(自分は何も努力する気はないが、おまえが)なんとかしろ!
彼(または彼女)こそ、焼き討ちの権利があると錯覚させられた、ゆとり教育のかわいそうな犠牲者です。

「お馬鹿タレント」が恥ずかしげもなくテレビに出演し、世にもてはやされる風潮も、寺脇研氏の置き土産かもしれません。

余談:
ちなみに、「受験勉強はますます熾烈になってその弊害が大きい。たとえば、ストレスが強くなってキレやすい子が増えた。」と言ってゆとり教育を推進した寺脇研さんは、文部科学省を退官後、「土曜も休まず、学習指導要領にとらわれないカリキュラムを組み、大手進学塾とも連携して現役合格を看板に大学進学に力を入れる」新設校の理事にも就任し、頑張っておられます。
「恥知らず」という言葉は日本人にとって最大の侮辱語であるはずですが、彼には通用しないようです。



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