小学6年算数『速さ』の問題の考察、続きです。「まっとうなやり方で速さの問題を解く」をテーマに書いてみます。


3つの公式

速さ=道のり÷時間、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さ、この3つの公式は、楽をしないできちんと覚えましょう。
式の覚え方として、距離を求めるときだけ「かける」、速さ、時間を求めるときは距離を「わる」と、距離に着目すると忘れにくいと思います。


速さの公式を覚える前に

ただし、公式を覚える前に、前提条件があります。言葉の意味をちゃんと把握しておくことです。
「道のり」「速さ」「時間」の3つの語の意味が曖昧なまま式を立てようとする子は、いくら式を暗記していても、実際の問題になると使い方がわかりません。それで解けないのです。


用語の意味を正しくつかむ

まず、「速さ」の意味を徹底して自覚させます。
速さには、時速と分速と秒速が使われること。
時速とは、「1時間にどれだけ進むか」の意であること。時速40kmと言えば、自動車などが1時間に40km進むことを表していること。だから、2時間だと80km進むし、80km進むのには2時間かかること(この段階で、意識しないで速さの公式を使いこなせています)。
分速、秒速も同様に、「1分で進む距離」「1秒で進む距離」だと徹底しておきます。

「道のり」「距離」の意味は説明しなくても大丈夫です。
同じ意味で使っている「距離」と「道のり」、本当は違うんだよ(距離は直線距離、道のりは実際の道に沿って進んだときの道の長さ)なんて雑談は、わりと後までよく覚えてくれています。

「時間」はかかる時間のこと。ここで強調しておくべきは、「時間」の中に、1時間、2時間の時間と、分と、秒の、3つが含まれるということです。

このように、説明の冒頭で、言葉の意味を最初に徹底して理解させておけば、3つの公式を無理やり暗記する必要はなくなります。


実際の数字で先にイメージをつくっておく

問題にとりかかる前の準備としてもう一つ、身近な例で、実際の数値の例を教えておくべきです。
人の歩く速さは時速4〜5kmが普通であること、自動車の速さは40km前後だということ、高速道路では車は80kmで走り、100kmを超えるとピイピイ警告音がなること(この辺は子どもは経験してよく知っています)。電車の速さはだいたい時速100kmくらい、新幹線は300kmを超えること。飛行機はさらに1000km近くになること。こういった実際の数値は、こどもたちも興味を持って聞いてくれますし、1回で覚えてくれます。また、後で、自分の答えを確認する際、大きな助けになります。


どこで子どもたちは間違えるのか

前に、公式を覚えていないから子どもたちは速さの問題ができないのではないと言いました。実際の問題例で、その検証をしてみましょう。

「速さ」を求めさせる問題
単純に時速、分速、秒速を求めさせる問題は誰も間違いません。手が止まるのは次の問題です。

(1)324kmを3時間で走る電車があります。時速、分速、秒速を求めなさい。

324÷3=108kmで、時速は全員正解します。
分速で手が止まります。時速は1時間で進む距離、分速は1分で進む距離、時間より分のほうが小さい単位であり、60分の1になるはずだから108÷60で求める方法と、1分で進む距離だから3時間=180分として、324÷180で求める方法とが考えられます。
後々のことを考えると、前者で教えたほうがよいと思います。
時速を分速になおすときは、小さい「分」になおすんだから60で割る、分速を秒速になおすときも、「分」よりさらに短い「秒」になおすんだから60で割ると、ここでしっかり覚えさせるべきでしょう。

「距離」を求めさせる問題
ここでも、単に距離を求める問題は間違いません。ほとんどの子が最初できないのは次のような問題です。

(2)時速78kmで走る電車が1時間30分に進む道のりを求めなさい。

この問題は、算数の基本原則、「単位はそろえないと計算できない」がわかっていない子は無理です。
わかっている子だけが次のどちらかの方法で解くことができます。
時速とは1時間に進む距離のことだから時間に統一しないと計算できないと考えて、1時間30分を1.5時間になおして78×1.5とする。
1時間30分は90分であり、「分」と計算できるのは分速であると考えて78÷60=1.3kmと分速を求め、その後1.3×90とする。

(3)分速300mで走る人は2時間で何km走るか。

300×2=600kmとか、300×120=36000kmと求める人が続出します。
「単位が違うものは計算できない」から分速と計算できるのは「分」である、あるいは2時間と計算したかったら分速は時速になおさなければならない、それがわかっていない人は前者、「答えの単位は式の前の項と一致する」を失念している人は後者の間違いをおかしてしまいます。
分速300mを×60で時速18000m、18000m=18kmにして18×2=36キロとするか、300×120=36000m=36kmが正解です。

「時間」を求めさせる問題
公式を使いさえすれば解ける、単に時間、分、秒を求めさせる問題を誰も間違えないことは前の二者と同じです。できないのは次の問題です。

(4)分速300mで走る自転車は4.5kmの道のりを進むのに何分かかるか。

300÷4.5とする人が何人か出てきます。「先に書いてある数字を後の数字でわる」、「見かけの大きい数字を小さい数字でわる」、ゆとり教育で大量発生した、Simple is best.の考え方から逃れられない子どもたちです。
正解は、「単位は一緒にしないと計算できない」、4.5km=4500m、4500÷300=15分です。

(5)1920kmを2時間で飛ぶ飛行機は、640kmを飛ぶのに何分かかりますか。

1920÷2=960kmで時速を求めることは全員できます。問題はその後です。最後の「何分」に着目して、「分」と計算できるものは分速であると気づいた人しかこの問題は解けません(まだこの段階では「比」は習っていません)。
960÷60=16km(分速)、640÷16=40分が正解。ほとんどの子が解けない問題です。

(6)秒速14mの鳥が2100m飛ぶのにかかる時間

2100÷14=150、答え150時間とする子が出てきます。答えには単位をつけないといけない、ぱっと問題の最後の「時間」の語を見つけて、よし150時間とする子です。「秒速で出てくるのは同じ単位の秒である」、「時間には、時間も分も秒もふくまれる」がわかっていない子です。


ここを治せば速さの問題は解ける

上記のように、子どもたちが解けない問題は、速さの公式がわかっていないから解けない問題ではありません。速さの公式を完璧に覚えていても、それだけでは何の助けにもならない問題ばかりです。

子どもたちが解けない本当の理由は、誰でも知っておかなければならない、「単位の違うものはそのままでは計算できない」、「答えの単位は式の前の項の単位と一致する」の大原則と、そこから派生する「時速と計算できるのは時間、分速は分、秒速は秒」、「大きい時速を小さい分速になおすには60でわる、分速は60でわると秒速になる」がわかっていないことに尽きます。

何度も言いますが、速さの3公式を覚えていないから速さの問題が解けないのではありません。
前の黒板に、「単位をそろえないと計算はできない!」、「時速は時間と、分速は分と、秒速は秒と」、「時速を60で割ると分速、分速を60で割ると秒速」とでも大書しておくと、だんだん正解率は上がっていきます。