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体積

math 回転体の体積・表面積とパップス・ギュルダンの定理

今から2300年も前にエジプトのパップスが発見し、16世紀にギュルダンが再発見した、『パップス・ギュルダンの定理』といわれるものがあります。

回転体と、回転する図形の重心との間に成り立つ定理です。

回転体・・・平面図形を、同一平面上の一つの直線のまわりに1回転させたときにできる立体のこと。円柱、円錐、球などが代表的な回転体です。

重心・・・ある物体を1点で支えられるとき、その点を重心といいます。素朴に言うと、ある図形の真ん中が重心です。
点対称の図形では対称の中心が重心になります。
三角形の重心については、こちらを参照。


パップス・ギュルダンの定理とは

回転体の体積=回転する図形の面積×重心の移動距離

一例として、一辺を軸として長方形を回転させる場合をとりあげます。
円柱1











円柱ができます。
円柱2この円柱の体積は、体積を求める公式
底面積×高さ
で、求めることができます。
2×2×π×5=20π
です。

パップス・ギュルダンの定理
回転体の体積=回転する図形の面積×重心の移動距離
を使うと、
回転する図形の面積は、長方形の面積である5×2=10であり、
重心の移動距離は、半径1cmの円周になりますから1×2×π=2πですから、
回転する図形の面積×重心の移動距離=10×2π=20π
ということになります。


パップス・ギュルダンの定理を使うと簡単に体積が求められる問題

例題1:図のような底辺2cm、高さ3cmの平行四辺形を、1つの頂点を通る直線のまわりに回転させたとき、できる図形の体積を求めよ。
円錐台1











円錐台2左図の、円錐台から円錐をくりぬいた形ができます。

大きい円錐の体積を求めて、上の小さい円錐の体積と、くりぬいた円錐の体積をひいても求められますが、計算がやや煩雑です。
4×4×π×6×1/3-2×2×π×3×1/3-2×2×π×3×1/3
=32π-4π-4π
=24π




円錐台3パップス・ギュルダンの定理をもちいると、簡単に答えが出ます。

平行四辺形の対角線の交点が重心です。

回転体の体積
=回転する図形の面積×重心の移動距離

=(2×3)×(2×2×π)
=24π




パップス・ギュルダンの定理を使わないと中学生には体積が求めらない問題

例題2:図のような半径2cmの円を、円周から2cmの距離にある直線のまわりに回転させたとき、できる図形の体積を求めよ。

トーラス1









左図のような、ドーナツ形(トーラスといいます)ができます。
トーラス2小学生、中学生範囲では、体積を求めることはできません。

パップス・ギュルダンの定理を使うと求められます。

円の中心が重心です。

回転体の体積
=回転する図形の面積×重心の移動距離

=(2×2×π)×(4×2×π)
=4π×8π
=32π^2
(32π2乗)


パップス・ギュルダンの定理と表面積

パップス・ギュルダンの定理は、表面積にも応用することができます。

円柱の側面積を、パップス・ギュルダンの定理を使って求めてみましょう。

円柱側面1長さ4cmの線分を、2cm離れた直線を軸にして回転します。

線分には「長さ」しかありませんが、線分が回転したときの回転体の面積を、うすっぺらい図形が回転したときの「体積」だとみなします。





円柱側面2軸に平行な線分を回転させると、円柱の側面になります。

回転体の面積を、円柱の側面積だと考えると、
4×(2×2×π)
=16π
です。



パップス・ギュルダンの定理を応用すると、
回転する図形の面積は4cmの線分の長さの4、重心の移動距離は半径2cmの円周だということになります。

回転体の体積(この場合は、線分が回転したときの面積ですが)
=回転する図形の面積×重心の移動距離

=4×(2×2×π)
=16π
です。

このように、パップス・ギュルダンの定理は、表面積を求めるときにも使えることがわかります。


軸に斜めの線分が回転する場合を考えてみましょう。
円錐側面1







円錐側面2底面の半径が4cmの円錐の側面積になります。
重心の、軸との距離は2cmです。

回転体の体積(この場合は、線分が回転したときの面積です)
=回転する図形の面積×重心の移動距離

=4×(2×2×π)
=16π


円錐の側面積は、母線×半径×πで求められますが(こちらを参照)、パップス・ギュルダンの定理を使って、同じ式を導くことができるわけです。




*****数学の全目次はこちら、ワンクリックで探している記事を開くことができます*****

math 円柱、内接する球、円錐の体積と表面積

円柱の側面積と、円柱に内接する球の表面積

円柱の側面積と、円柱に内接する球の表面積との間にはおもしろい関係が成り立っています。

円柱の球の表面積底面の半径がrcm、高さが2rcmの円柱に、半径rcmの球が内接しています。

球の表面積は、4πr^2です。

円柱の側面積はどうなるでしょうか。

円柱の側面の面積は、縦が2rcm、横が底面の円の周と等しいのでr×2×πの長方形の面積と等しくなります。
よって、円柱の側面積は2r×2πr=4πr^2です。

つまり、円柱側面積と、その円柱の底面と側面に内接する表面積とは等しいということがわかります。



円柱と、円柱に内接する円錐と、円柱に内接する球の体積の関係

円柱と、円柱の底面と側面に内接すると、円柱の上下の底面に内接する円錐体積の間にもおもしろい関係が成り立っています。

円柱・円錐・球の体積円錐の体積は、底面積×高さ×1/3の公式より、r×r×π×2r×1/3=2/3πr^3です。

球の体積は、4/3πr^3です。

円柱の体積は、底面積×高さの公式より、r×r×π×2r=2πr^3です。

よって、円錐の体積:の体積:円柱の体積の比は、
2/3πr^3:4/3πr^3:2πr^3
=2/3:4/3:2
=2:4:6
=123

円錐の体積:球の体積:円柱の体積=1:2:3となっていることがわかります。




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mathematics 錐体の一部の体積

三角柱や四角柱、円柱など、柱体の体積を求める公式は底面積×体積、三角錐や円錐などの錐体の体積を求める公式は底面積×高さ×1/3です。

体積を求める問題は公式にそのままあてはめればよいので、そう難しい問題はありませんが、知っておかないといけない問題の一つに円錐台など、錐体を切断したあとに残った一部の体積を求める問題があります。


例題1:1辺が6cmの立方体で、点M、Nはそれぞれ辺AB、ADの中点である。こ三角錐台の立方体を4点M、F、H、Nを通る平面で切る。頂点Aを含むほうの立体の辺FM、EA、HNの延長は1点Oで交わる。頂点Aを含むほうの立体の体積を求めよ。


(解き方)
三角錐の上部を切り取って残った部分の体積を求める問題です。

中学生が求めることができるのは、柱体と錐体の体積だけであるというところから出発します。

そうすると、大きな三角錐O−EFHから上の小さな三角錐O−AMNをひけばよいということに気づくことができます。





大きい三角錐O−EFHは、底面が直角三角形EFHで、高さがOEの三角錐です。

三角錐台2底面は∠FEHの直角三角形なので、底面積はEF×EH×1/2、高さのOE=6+6=12cm。

よって、三角錐O−EFHの体積は底面積×高さ×1/3の公式より、6×6×1/2×12×1/3
=72

次に、上の小さい三角錐O−AMNの体積は、底面がAM=3cm、AN=3cmの直角三角形AMNであり、高さOA=6cmだから、公式底面積×高さ×1/3より
3×3×1/2×6×1/3
=9

以上より、求める切り取った頂点Aを含むほうの立体の体積は、72−9=63立方cm。








円錐の上部を切り取った立体(円錐台)の体積を求める問題も同じ要領で解きます。

切り取る前の大きい全体の円錐の体積から、切り取った上部の小さい円錐の体積をひけばよいのです。

さらに、この種類の問題では、中2で習う中点連結定理、中3で習う相似の考え方を使うこともあります。

中点連結定理
中点連結定理中点と中点を横に結ぶと、その線分の長さは底辺の長さの半分になるという定理です。







相似
相似形の等しい図形では、ある対応する辺の長さの比がa:bであれば他の対応する辺の比もa:bになります。








例題2:図において、四角形ABCDは、AD//BC、∠DAB=∠ABC=90度、円錐台AB=12cm、AD=3cm、BC=6cmの台形である。Eは、対角線ACと対角線BDとの交点である。色をつけた部分は、5つの線分AB、BC、CE、ED、DAによって囲まれてできる図形である。色をつけた部分を直線ABを軸として1回転させてできる立体の体積は何立方cmですか。円周率をπとして答えなさい。(大阪府公立高校入試・前期理数科18年1(3))
















まず、必要な長さをすべて書き込んでおきます。
円錐台2

三角形AEDと三角形CEBが形の同じ(相似の)三角形であり、AD:CB=3:6=1:2なので、DE:BEも1:2になります。
さらに、AF:FBも1:2となり、AB=12を1:2で分けるので、AF=4、FB=8です。
また、BE:BD=2:3なので、FEの長さは2cmです。















次に、色のついた部分を、直線ABを軸として1回転させてできる図形を考えます。
円錐台3
下の円錐台は、点Aを頂点とし半径BCの円を底面とする大きい円錐から、点Aが頂点で2cmの半径EFの円を底面とする小さい円錐を取り除いたものであることがわかります。

また、上の円錐台は、頂点がBで半径がAD=3cmの円を底面とする円錐から、点Bが頂点で半径FE=2cmの円を底面とする小さい円錐をとったものです。

よって、(6×6×π×12×1/3−2×2×π×4×1/3)+(3×3×π×12×1/3−2×2×π×8×1/3)
=(144π−16/3π)+(36π−32/3π)
=164π

164π立方cmが答えです。

mathematics 角錐の体積が角柱の3分の1になる証明

中1の体積の授業では、最初に体積を求める公式、角柱・円柱の体積=底面積×高さ、角錐・円錐の体積=底面積×高さ×1/3を覚えてもらいます。
このとき必ず出る質問が、「なぜ、『錐』の体積は『柱』の3分の1になるんですか?」です。

「理屈で求めるのは中学生には無理なんだよ、高校で習う積分を使わないと説明できないんだ。」
「なんか学校でやりましたよ。」
「円柱と円錐の容器に水を入れて、円錐の容器3杯分が円柱になるのを確かめただけと違う?中学生は公式を丸暗記して使うしかないと思うよ。」
と、お茶をにごして切り上げるものの、中学生にわかるように教えてあげられないかなとはいつも思っています。

『錐』の体積が『柱』の体積の1/3になることの証明、円錐だと私の力量では無理ですが、最も基礎的な立体である四角柱だったらなんとか中学生にもわかる説明ができないこともありません。

縦a、横b、高さcの四角柱(直方体)を例に証明してみましょう。

直方体
図の四角柱の体積は、底面積×高さの公式より、a×b×c=abcです。














この四角柱を角錐に分解します。
四角錐3

















まず、下の長方形(縦a、横b)を底面とする四角錐(高さc)と上の長方形(縦a、横b)を底面とする四角錐(高さc)を考えます。
四角錐1四角錐2
四角錐の体積が四角柱の体積のk倍であると仮定すると、それぞれの四角錐の体積はa×b×c×kと表わされます。







もとの四角柱からこの2つの四角錐をとった後には三角錐が2つ残ります。
三角錐2三角錐1
この三角錐それぞれの体積を式で表わします。

1つの三角錐の体積がもとの四角柱の体積のk倍だと仮定すると、三角錐1個分の体積はa×c×1/2×b×kと表わすことができます。








上の図からわかるように、四角柱は2つの四角錐と2つの三角錐、合計4つの角錐に分解できます。

4つの角錐の体積を表わす式の和と、もとの四角柱の体積を表わす式とが等しいはずですから、
(a×b×c×k)×2+(a×c×1/2×b×k)×2=a×b×c
2abck+abck=abc
3abck=abc
k=abc/3abc
k=1/3

四角錐の体積は四角柱の体積の3分の1倍です。


見やすいように、数式ソフトで書いた式ものせておきます。

4つの角錐の体積の合計を求める式・・・
合計の式










方程式・・・
方程式







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