働きアリ

勉強をしている子どもたちが、悩み、知りたい、理解したいと思いながら、今までは調べる方法がなかった事柄を、必要かつ十分な説明でわかりやすく記述したサイトです

science 凸レンズで成り立つ公式(「レンズの公式」「写像公式」)

この稿で取り上げるのは、凸レンズの焦点距離と、レンズと物体との距離と、レンズと実像との距離の間に成立する、「レンズの公式」「写像公式」といわれる公式です。

(「レンズの公式」自体は高校物理の範囲ですが、私立高校の入試問題ではしばしば出題されますし、知っておいて損はありません。)

凸レンズに関する用語や凸レンズの基本的な性質については、拙稿『凸レンズ』をご覧ください。


凸レンズの作図と相似

凸レンズでできる実像を作図で求めるとき、
作図







この図の中にはいくつかの相似な三角形の組が存在します。
作図2
物体をPQ、実像をP’Q’、焦点をF1、F2、レンズの中心をO、Qから出た光軸に平行な光がレンズの中心線と交わる点をA、Qから出て焦点F1を通った光がレンズの中心線と交わる点をB、焦点距離をf、レンズから物体までの距離をa、レンズから実像までの距離をbとします。


このとき、物体と実像が対応する辺となる、相似な三角形を2組見つけておきます。

三角形QPOと三角形Q’P’Oが相似です。
作図4








三角形AOF2と三角形Q’P’F2が相似です。
作図3









三角形QPOと三角形Q’P’Oが相似であることからできる等式
作図4
三角形QPOと三角形Q’P’Oが相似なので、対応する辺であるQP:Q’P’=PO:P’O

PO=a、P’O=bだから、QP:Q’P’=a:b・・・(1)






三角形AOF2と三角形Q’P’F2が相似であることからできる等式
作図3
三角形AOF2と三角形Q’P’F2が相似なので、対応する辺であるAO:Q’P’=OF2:P’F2

OF2=f、P’F2=b−fだから、
AO:Q’P’=f:b−f

ところが、AO=QPだから、
QP:Q’P’=f:b−f・・・(2)


2つの等式から導かれる、レンズの公式(写像公式)

(1)の式QP:Q’P’=a:bと、(2)の式QP:Q’P’=f:b−fの、
2つの等式の左辺が共通なので、
a:b=f:b−f

比の値を求めると(分数の形に書き換えると)、
a/b=f/b−f

両辺に、分母のb×(b−f)をかけて、
a(b−f)=bf
ab−af=bf

両辺をabfでわると、
1/f−1/b=1/a

1/bを右辺に移項して、
1/f=1/a+1/b

レンズの公式1


















または、

a:b=f:b−fより、

比の式で、外側の項の積と内側の項の積は等しいので、
a(b−f)=bf
ab−af=bf

両辺をabfでわると、
1/f−1/b=1/a

1/bを右辺に移項して、
1/f=1/a+1/b

レンズの公式2














このようにして求めた、焦点距離をf、レンズの中心と物体との距離をa、レンズの中心と実像との距離をbとしたときに成り立つ、1/f=1/a+1/bの式が、レンズの公式、写像公式といわれるものです。

レンズの公式3













虚像ができるとき

物体を焦点より内側に置くと、虚像ができます。

この場合も、実像のときと同じように、公式を導くことができます。

虚像1三角形Q’P’Oと三角形QPOが相似だから、
Q’P’:QP=P’O:PO

P’O=b、PO=aだから、
Q’P’:QP=b:a・・・(1)









虚像2三角形Q’P’F2と三角形AOF2が相似だから、
Q’P:AO=P’F2:OF2

P’F2=b+f、OF2=fだから、
Q’P:AO=b+f:f

ところが、AO=QPなので、
Q’P:QP=b+f:f・・・(2)






(1)の式Q’P’:QP=b:aと、(2)の式Q’P:QP=b+f:fの、
2つの等式の左辺が共通なので、
b:a=b+f:f

比の式で、内側の項の積と外側の項の積は等しいので、
a(b+f)=bf
ab+af=bf

両辺をabfでわると、
1/f+1/b=1/a

1/bを右辺に移項して、
1/f=1/a−1/b

虚像の式















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science 凸レンズの一部をおおったときの像の見え方

凸レンズでできる像についての一般的な説明は、こちらをご覧ください。

この稿では、「凸レンズの一部を紙などでおおって隠したとき、像の見え方はどうなるか?」を考察します。

凸レンズの焦点より外側にものを置くと、凸レンズの反対側に、倒立した実像ができます。
実像実像の位置にスクリーンを置くと、スクリーンで反射した光が私たちの目に届き、実像を見ることができます。



ところで、どこに実像ができるかを調べるとき、上の図のように、通常は、ものの先端から出た光のうち、光軸に平行に進んで焦点を通る光と、レンズの中心を通って直進する光の2つ使って作図します。

ものの先端からは無数の光があらゆる方向に出ていますが、進む方向が確定している光2つだけを使って作図すれば、その交わる点が実像の先端だとわかるからです。

しかし、実際には、ものの先端からは無数の光があらゆる方向に出ています。そして、ものの先端を出て凸レンズを通過した光はすべて凸レンズを通過するときに屈折し、実像の先端の部分に集まっています。

実像2






もとのものが自ら光を発する光源ではないとき、そのものが私たちに見えるのは、光源から出た光がものに当たり、もので反射して私たちの目にとび込んでいるからです。

同様に、ものの先端で反射していろいろな方向に反射した光のうち、凸レンズの方向に反射して進んで凸レンズの鏡面で屈折して進んだ光は、実像の先端の部分に集まり、その位置にスクリーンを置くと、またスクリーンの表面でいろいろな方向に反射します。
その反射した光のうちの一部が私たちの目にとび込んでくるので、私たちはスクリーンの上に、もとのものが上下左右反対になってうつった像を見ることができるのです。

簡単にまとめると、

まず、ものが私たちに見えるのは、光が、光源もの(ここで反射)→私たちの目の順に届いているからです。

次に、実像の位置にスクリーンを置くとスクリーンにうつった実像が私たちに見えるのは、光源もの(ここで反射)→レンズ(屈折して通過)→スクリーン(ここに集まって反射)→私たちの目の順に届いているからです。

ここまでを納得して、やっと本題に入ります。


凸レンズの一部を紙などでおおうと、スクリーンにうつる実像はどうなるか?

凸レンズを、真ん中を丸くくりぬいた紙でおおってみます。
おおう
凸レンズを横から見ると、凸レンズの上と下が隠されて、光が通過しない状態になっているはずです。






その状態で、ものの先端から出た光がどうなっているか、考えてみましょう。

おおう2左図の、凸レンズの表面に緑で描いた部分が紙でおおわれている部分です。
今までレンズを通過していた光のうち、紙に当たった光は、紙にさえぎられてレンズを通過することができません。

そして、上の図から、2つのことがわかります。

(1)紙でさえぎられて凸レンズを通過する光の量は変わるが、紙にさえぎられていない部分を通過した光は実像の位置に集まっている。つまり、凸レンズの一部を紙でおおっても、実像ができることに変わりはない。

(2)凸レンズを通過する光の量が少なくなるから、実像の明るさは暗くなるはずである。

つまり、レンズの一部を何かでおおって光が通過しないようにしたとき、実像はおおわないときと同じものができること、実像の明るさは暗くなることがわかります。

そして、この理屈は、凸レンズのおおい方をかえても(例えば、凸レンズの上半分や下半分、右半分や左半分をおおってみても)かわらないはずだということもわかります。

また、例えば凸レンズの面積の半分をおおってしまうと、凸レンズを通過する光の量も半分になるはずなので、実像の明るさも半分になるであろうこともわかります。


以上より、「凸レンズの一部を紙などでおおって隠したとき、像の見え方はどうなるか?」の答えは、(1)凸レンズをおおう前と同じ実像ができる、(2)実像の明るさは暗くなる、だということになります。


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science 全身をうつす鏡

光の単元で、定期テストでも入試でもよく出る問題に、「全身を鏡にうつすには、どれだけの大きさの鏡が必要か。」があります。


鏡の原理から考える

実際に起こっているのは、光源から出て、実物の表面で反射した光が鏡に進み、鏡面で反射して目に届き、脳で「鏡にうつっている」と判断している過程です。

鏡2









ところが、鏡とは、この稿で述べたように、「鏡を対称の軸にして、実物と対称の位置に像があるように目を錯覚させるもの」です。

鏡1目には、実物とは鏡を基準にして真反対の位置に像が実在するように見えます。

脳が、今までの経験と学習から、実物は像の位置ではなくて目と同じ側にあると修正して判断しています。




ここまでが予備知識その1です。


相似(そうじ)を使う

数学で学ぶことに、相似をいわれるものがあります。

形がまったく同じ2つの図形の関係を相似といいます。
相似のとき、対応する辺の比はすべて等しくなります。

相似左の図で、辺AB:辺DE=辺BC:辺EF=辺AC:辺DFです。

例えば、辺AB:辺DEの長さの比が1:2であれば、辺BC:辺EF=1:2、辺AC:辺DF=1:2です。

これが予備知識その2です。


全身をうつすにはどれだけの大きさの鏡が必要か

上記2つの予備知識を知っていたら、この問題は簡単に解けます。

像まず、鏡は、「鏡を対称の軸にして、実物と対称の位置に像があるように目を錯覚させるもの」です。

鏡を見ている実際の人物の目には、鏡の反対側の、自分と対称の位置に自分の像があるように見えます。

そして、左の図を見たらわかるように、図の真ん中に書いてある大きさの鏡があれば、人物は、自分の頭の先から足の先までの全身を見ることができます。

次に、相似の比を使います。

像2鏡は人物と像の中間の位置にあります。

だから、人物の目から鏡までの距離:人物の目から像の頭の先までの距離=1:2です。

図の、青色の三角形と赤色の三角形は相似(形の等しい三角形)です。

だから、目から鏡:目から像の頭=1:2なら、鏡の長さ:像の全身の長さも同じ1:2です。

つまり、像の全身の半分の大きさの鏡があれば、目は全身を見ることができるということです。
そして、像の全身の大きさは実物の大きさと等しいので、結局、自分の身長の半分の大きさの鏡があれば自分の全身を見ることができるということになります。

以上の理屈は、自分と鏡との距離には関係なく、どんなときにも成り立ちます。



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science 鏡の原理

窓から外を見ているとき

外にある物体を窓越しに見ているときは、図のように、物体に当たって反射した光が目に届き、私たちは物体を見ることができています。
窓

このとき、光は、通過するのに最も時間の短い経路を通ります。

普通、最も時間がかからないのは最も短い道筋をたどるときですから、光は最短距離を通って目に届きます。

そして、2点間の最短距離は、通常は2点間をまっすぐ結ぶ直線になります。

光は、最短時間になる道筋をたどる→最短距離をたどる→直線上を進む(直進する)、ということになります。

また、私たちは、それまでの「見る」という経験や学習を通して、窓というものは光を素通しするものであり実際の物体は窓の向こうにあることや、窓の向こうにある実物までの距離がどれくらいであるかを脳内でわかっています。


鏡でものを見ているとき

窓から外を眺めた経験はあるが、鏡というものの存在を知らない人が鏡を見たらどういうことが起こるでしょうか。

鏡
窓は知っているが鏡を知らない人が鏡を見たとき、その人は、鏡の前面、自分と同じ側に実物があることは想像できません。

窓から外を見たときと同じように、実際にはそこに存在しない像が、あたかもそこにあるように思ってしまうはずです。

そして、その像から、光が直進して目に届いていると「錯覚」してしまうはずです。


しかし、私たちは経験を通して鏡というものがあること、鏡には鏡の前にある実物が映っているに過ぎないことを知っています。

鏡2
「目に」見えているのは、鏡の向こうにある像です。

経験を積み、学習を経た「脳が」、実物は像の側ではなくて鏡を基準にすると自分と同じ側にあり、実物の位置は、経験を通して「目測」からわかっている、鏡から像までと同じ距離のところにあると、「判断」しているのです。




反射の法則

光の単元がわかりにくいのは、以上述べたような、「実際に起こっていること」をすっとばして、いきなり「反射の法則」から入るからです。

反射の法則鏡面に垂直な直線と入射光のつくる角を入射角、鏡面に垂直な直線と反射光のつくる角を反射角といい、つねに入射角=反射角が成り立つことを反射の法則といいます。

しかし、光は、別に「反射の法則」に従いたくて反射しているわけではありません。
実物から出て、鏡を経て、最短距離を通って目にとび込んでくる光を調べてみたら、結果的に入射角=反射角が成り立っていたというだけのことです。


鏡のどこに実物が映っているかを問う問題


鏡3左の図で、実物から出た光がどういう経路を通って目に届くか(鏡のどこに実物が映っているか)を尋ねる問題がよく出ます。

素直な人は、習った反射の法則を使ってこの問題を解こうとします。
しかし、それは無理です。
光の経路がわかった後に、それを記述するのが反射の法則ですから、反射の法則を使って鏡に映る場所を見つけることはできません。


この問題を解くときは、「目は、鏡を使うと実物が鏡を基準に対称の位置にあると錯覚させられてしまうこと」、言い換えると、「脳は、鏡とは、実物が鏡を基準に対称の位置にあるように目に錯覚させてしまう道具だということを知っていること」から、出発します。

(1)まず、実物を鏡を基準に反対側(対称の位置)に移した点を見つけて、その点を実物の像と確定します。
鏡4











(2)次に、その像から出た光が直進して目に届くように作図します。
その直線と、鏡面との交点が、実物から出て目に届く光が反射する点(鏡面に実物が映って見える点)です。
鏡5











(3)最後に、実物と(2)で求めた交点を結び、そして、(2)で求めた交点と目を結ぶと、それが、実物から出た光が鏡で反射して目に届くまでの道筋です。

鏡6














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science ものを見るということ

ものが見える仕組み

太陽や電灯のように、自ら光を発しているもののことを光源といいます。

人が光源を見ると、光源からあらゆる方向へとび出している光のうち、目の方向へとび出した光だけが目の角膜を通過し、目の中のレンズで屈折して、網膜に当たり、網膜に光源のを結びます。
網膜には光を感じとる細胞があり、その細胞が感じとった光を電気信号に変えてへ伝達します。
最後に脳で像として再構成されます。
見えるということ














この一連の過程を、一般に「ものを見る」と言っているわけです。


光源を直接見ることは稀(まれ)です。
では、光源以外の、自分からは光を発していないものを見るときはどうなっているのでしょうか?

見えるということ−2
















光源からは、あらゆる方向に光がとび出しています。
その光のうち、目を向けている対象物(この図では矢印)にあたった光は乱反射し、あらゆる方向にはねかえります。
はねかえった光のうち、目の方向に反射して目にとび込んでくる光を使って人は対象物を見るということになります。

光源を見るときは光源からとび出してくる光を使って光源を見ます。
光源ではないものを見るときは、光源から出て対象物の表面で反射して目に届いた光を使ってものを見ます。
この点だけが、光源を直接見るときと光源以外のものを見るときの違いです。

それ以外の経過は、まったく一緒です。
レンズで屈折→網膜に像ができる→網膜の細胞がとらえた像を脳へ伝達→脳で再構成となります。


目で見ているのではなくて脳で見ている

私たちは普段、ものを目で見ていると思っていますが、実は目はあくまで光の通過点に過ぎません。

実際に「見ている」のは脳です。

目を覚ましているときは常に目を介在させているので、私たちを「見る」という行為を目を使ってものを見ることだと「錯覚」しているだけで、本当は、脳で夢を見たり、過去の思い出を思いうかべるのと同じことを、目を使ってしているに過ぎません。

正確に目で見ることができる確実な実体を持ったものが客観的に自分の外にあって、それを脳がそのまま感じとっているのではなくて、脳で見ていると思っているものが(本当の正体はわからないが)自分の外にあるに過ぎないということです。




人が、ものを目で見ているのではなくて脳で見ていることの一番よい証拠は色です。

私たちは「青いもの」を見たとき、そこに「青という色をしたもの」があると思い込んでいます。

しかし、上で書いた「ものが見える仕組み」からわかように、あるものが青色に見えるのは、そのものが青いからではなくて、そのものから反射した光が人間の脳では青と判断される光だということに過ぎません。

太陽光は、1つの光自体が、いろいろな色の光がまざったものです(すべての色の光を混ぜると、人の脳には太陽光の色、つまり白色光に見えてしまいます)。

プリズムという実験器具を通すと、1つの光だと思っていたものがいろいろな光が束(たば)になってあわさったものだということを確かめることができます。

私たちの目に青色と見えるものは、いろいろな色の束である光がそのものに当たったとき、人の目に青色と見えるものだけを反射しているものに過ぎないということです(他の色の光はそのものに吸収されます)。

そのもの自体に色がついているわけではなくて、光の束の中の、私たちが青色と感じとる色の光だけを反射するものを、私たちは「青いもの」だと脳で判断しているのです。


見ていると思っているものすべてが脳による解釈を経たものである

ものを見ているのは、目ではなくて脳です。

なぜ、こんなことをあらためて言うかというと、目ではなくて脳でものを見ていると考えないと説明できないことが光の単元では多く出てくるからです。

ふだんの生活では、対象物の実体と、脳で見ていると思い込んでいる像との間にずれが生じないので、ものを目で見ていると思っていても混乱することはまったくありません。

ところが、鏡の反射の問題や、屈折、凸レンズの問題は、すべて、脳が見ていると思い込んでいるものと、実際のものとの違いがからんできます。

その具体例については別稿でとりあげます。




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science 顕微鏡の仕組みと物の見え方

顕微鏡をのぞいたとき、端に見えた観察物を視野の中央に動かすにはプレパラートをどの向きに動かせばよいかという問題は、中学1年生1学期の理科の定期テストで必ず出題される問題です。

試料を中心に右上に見えるミジンコを視野の中央に持ってきたいとき、プレパラートをア〜エのどの向きに動かせばよいか?

「それは、イに決まっている。」と答える人は不勉強。

正解はエです。

「顕微鏡は上下左右が逆さに見えているから、反対に動かさないといけない。外に出ていくように動かすと、逆に中央に寄ってきます。」と説明するのですが、勉強に大事な『なぜか?』まではなかなか説明できません。

そこで今日は、なぜ顕微鏡で観察すると上下左右が逆に見えるのか?の説明です。
逆向きに見える理由は、顕微鏡がどういう仕組みで物を見ているのかを知らないと理解できません。

顕微鏡の仕組み顕微鏡は2枚の凸レンズ(対物レンズと接眼レンズ)を組み合わせたものです。

凸レンズの性質から、対物レンズの焦点より外側に観察したいものを置くと、対物レンズの反対側に、まず、上下左右が逆になった実像ができます。

この対物レンズによる実像が接眼レンズの焦点よりは内側、つまり接眼レンズよりにあると、今度は接眼レンズから見たとき同じ側に接眼レンズによる虚像ができます。

この原理から、接眼レンズをのぞく目は、拡大した虚像を見ることができるわけです。

目が見ているのは、上下左右が逆になった実像を拡大した虚像だから、顕微鏡は上下左右が反対に見えているということになります。


顕微鏡の倍率が、対物レンズの倍率×接眼レンズの倍率で求められるのも、理由は同じです。
対物レンズによってa倍に拡大した実像を、さらにb倍に接眼レンズで拡大しているからです。

また、余談ですが、目は、対物レンズでできた実像を拡大した虚像を見ることになるので、観察したいものがきれいに見えるかどうかは、対物レンズの性能に依存します。
高価な顕微鏡は、対物レンズに上等な凸レンズを使っている顕微鏡です。




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science 凸(とつ)レンズ

いよいよ「光」の難所、凸レンズです。
凸レンズが難しい理由は
(1)虫めがね(ルーペ)は誰でも知っているが、虫めがねに使われている凸レンズの本当の働きをほとんどの人は知らない
(2)凸レンズでものが写ったり(ヒトの目、カメラ)、拡大して見えたり(虫めがね)する仕組みが非常にわかりにくい
(3)作図をして理由、法則を見つけ出すという学習の仕方を初めて経験する
(4)凸レンズでできる像、5種類を場合分けして正確に覚えなければならない
という点にあります。
あせらずにじっくり勉強しないといけない単元です。


焦点と焦点距離

まず、言葉の確認から。
虫めがねを使って、太陽の光を集め、紙を焦(こ)がしてみるといういたずら、私もした覚えがありますし、皆さんもしたことがあるでしょう。

焦点2はるか遠くにある太陽から出た光は平行に進んできています。その平行光線は、凸レンズを通ると屈折して左図のように1点に集まります。この点を焦点(紙をこの位置においたら焦げるからその名がついたのでしょう)といい、レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離といいます。

約束事2つ

凸レンズでの、約束ごとの確認もしておきましょう。
凸レンズの屈折
レンズ(ガラス)を通過する光は、本当は左上の図のように2回、屈折しているはずです。
しかし、凸レンズの単元では光の通る道筋を書くとき、左下のように、レンズの中心線で1回だけ曲がるように書きます。
実際とは違いますが、そう書くという約束事ですから、素直に従ってください。


もう一つ、約束事があります。
いろいろな光が、ありとあらゆる方向からやってきてレンズを通り過ぎているはずですが、ほとんどの光は無視します。どこへ行くかわからない光を相手にしても疲れるだけです光の進路から、あるけど「ない」ものとして無視します。

進み方のわかっている光、3本だけ、大事に大事に何度も使います。
その3本の光とは、上の図の光軸(レンズの中心を通る横軸)に平行に進んできた光(必ず焦点を通る)と、焦点を通った光(光軸に平行に進む)と、レンズの中心を通る光(そのまま向きを変えないで進む)、の3つです。
これも、そういう「きまり」ですから、逆らわないで従順に従ってください。


実際の凸レンズでみんなが知っていること

虫めがねでものを拡大して見た経験は誰でもあるはずです(この拡大して見えたものを虚像といいます)。
そのとき、虫めがねを持った自分がものからだんだん離れていくと、どうなりましたか。
まず、あるところから見ていたものがぼやけていき、虫めがねに何も映らなくなります。
さらにものから遠ざかると、今度は見ていたものが逆さ、上下反対向きに小さく見えるようになります(レンズを持った手を伸ばして目から離すとそう見えるようになります)。この、上下がひっくり返って見えるものを、実像といいます。

この順に、なぜそうなるのかを考察していきましょう。


凸レンズでものが拡大される理由

まず、見慣れている経験から。
焦点より内側左のように、見たいものが焦点より内側(レンズに近いほう)にあるとします。ものの先端から出た(反射した)光のうち、光軸に平行な光は焦点を通り、レンズの中心を通り抜けた光はそのまま進みます。

レンズの反対側から見ている目は、光がレンズで屈折していることには気づきません(目は光は直進するものだと常に錯覚します)から、実際のものの左にある(ように見える)大きな矢印の先端から光がきていると騙されてしまいます。
これが、虫めがねでものが大きく拡大されて見える理由です。
このときの、もとのものよりは大きく見える像を、虚像といいます(そこにスクリーンをおいても映らない像だから虚像だという説明をされますが、目がだまされた、嘘の像だから虚像だと覚えてもよさそうです)。


途中でぼやけて何も見えなくなる理由

焦点上ものを焦点上においたとき、やはり平行光線は焦点を通り、レンズの中心を通る光はまっすぐ進みます。

もの(矢印)の先端から出た光はレンズを通り過ぎた後すべて平行に進み、集まらないということは、目には見えない、隠れてしまうということになります。


いよいよ実像です

私の机の中には虫めがねが1つ入っています。
虫めがねを取り出し、ホワイトボードの前にかざします。上手に位置を調節すると、天井の蛍光灯が、並んだままの姿で(逆さ向きですが)ホワイトボードに写ります。
ここで必ず子どもたちはオオオッという声を上げます。私もそうでしたが、ものを拡大して見る以外の使い道が凸レンズにあるなんて誰も知らないのです。
ホワイトボードに蛍光灯の「像」が映しだされていますから、いやでもその理由を考えなくてはならない。
で、やっと説明を聞いてくれるようになります。

焦点の2倍より外側やはり説明に使うのは、矢印の先から出た、進む道のわかっている優等生の光、3本です。平行光線は焦点を通る、レンズの中心を通った光はまっすぐ進む、焦点を通った光は光軸に平行に進む、そうすると3本の光はある1点で交わります。矢印の先から出た光はすべてこの1点に集まっているということです。

空気中は、光は通過するだけです。1点に光が集まっていても、人間の目には見えません。しかし、ここに何か壁をつくってやると(この壁を理科ではスクリーンといいます)、そこで乱反射し、人の目にその光が届きますから、矢印が反対向きになって(倒立といいます)映るのを見ることができます。
これが実像です。

このとき、3本の光のうち2本で出会う場所はわかりますから、普通は3本のうち2本を使って作図します。軸に平行な光と、レンズの中心を通る光の2本をつかうことが多いのですが、問題に指定してなければ焦点を通って平行に進む光を使っても構いません。

また、この図は、もの(矢印)が焦点距離の2倍よりもさらにレンズから遠いところにおかれた場合です。このとき、実像はもとのものより小さい像になります。

焦点の2倍上ちょうど焦点距離の2倍の場所にもの(矢印)をおくと、もとのものと同じ大きさの実像ができます。




焦点の2倍と焦点の間焦点距離の2倍よりはレンズよりで焦点よりは外側にもの(矢印)をおくと、もとのものよりは大きい実像ができます。


もとのものと実像の大きさとの関係は「相似」を使って説明できるのですが、今日は割愛します。

また、このように、凸レンズで実像ができることを応用した道具がカメラであり、カメラとほとんど同じ仕組みで網膜に映してものを見ているのがヒトのであることも知っておきましょう。


最後に、覚えておこう

やっと最後ま到達することができました。
しかしテスト問題を解くにはあと一つ、踏ん張ってしておかないといけないことがあります。5つの作図の結果を、きちんと覚えておかないと満点はとれません。

ものが焦点よりはレンズよりにあるとき 正立虚像ができる
ものが焦点上にあるとき 実像も虚像もできない
ものが焦点よりは外側、焦点距離の2倍よりはレンズよりにあるとき もとのものよりは大きい倒立実像ができる
ものが焦点距離の2倍の位置にあるとき もとのものと同じ大きさ倒立実像ができる
ものが焦点距離の2倍よりさらにレンズから遠い位置にあるとき もとのものより小さい倒立実像ができる

お疲れさまでした。



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science 光の屈折の問題を瞬時に解く方法(光が屈折する理由)

簡単に光の屈折する方向を見つけようとする試みは、
http://blog.livedoor.jp/aritouch/archives/1128112.html
では、失敗しました。

しかし、あきらめてはいけません。
光がどちらに屈折するか、瞬間的にさっと答えを見つける方法を発見しなければ塾講師の名誉にかかわる。
半月間の苦闘(短か!)の末、やっとわかりました!ここに発表します。

失敗したら原点に戻ることです。
なぜ、光は屈折するのか、その原理から考えてみます。車 上から 1

右のように上の方向から車が進んできているとします。
運転手から見て右の前輪(絵では左下)だけ回転を止めるとします。




運転手から見て左の前輪の回転はそのままですから、そちらだけが進んでしまい、車の向きは下の図のように変わってしまうはずです。
車 上から 2

これが、光が屈折する理由です。






右図で、上から下に向かって、幅をもった光が進んできているとします。
Aが車の右の前輪、Bが車の左の前輪にあたります。

Aが先に水屈折の原理(ガラス)に達します。
空気中より水(ガラス)のほうが光の進む速さは遅くなります。
つまり、Aにだけブレーキをかけた状態となり、Bは水面に到達するまでAより速いスピードで進みます。

車の向きが変わるのと同じで、ここで光の向きが変わってしまいます。

Bが水面に達した後は、AもBも、水(ガラス)の中を同じ速さで進みます。


光の屈折の問題では、光は1本の直線で書かれています。だからわかりにくい。
右上の図のように、光に幅を持たせて考えてみてください。
水(ガラス)の中を進む光のスピードは空気中より遅いことを念頭に置いて、自分が車の運転手になったつもりで、自動車を進ませてみましょう。

光がどちらに曲がるか、即座にわかるはずです。
前輪として両手を使って考えると、さらにわかりやすくなるかもしれません。

光がどっちに屈折するかを見つけるコツ、「自動車の運転手になって考えてみよう」法を提案します。



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science 光の屈折 『へ』の法則

光が空気中から水やガラスに入るとき、水やガラスから空気中に出て行くとき、光は屈折します。

この場合、入るときは、そのまま直進したときの線より水面(ガラス面)から遠ざかる方向へ曲がります。空気中へ出て行くときは、直進する方向より水面(ガラス面)に近づくように屈折します。

屈折の仕方の正式な説明は、空気から水(ガラス)に入るときは入射角>屈折角、空気中に出るときは入射角<屈折角、です。

しかし、実際の問題を解くとき、水面に垂線を引いて入射角と反射角を見つけ、さらに入射角と屈折角の関係を正しく思い出してどちらに曲がるかを求めるのは随分遠回りなような気がして仕方がありません。

この面倒くささを解消するのに、「入るとき遠ざかる出るとき近づく」なる覚え方を提案したこともあります。
この覚え方、答えの求め方の欠点は、「遠ざかる」、「近づく」が水面(ガラス面)を基準にした見方であることまで覚えてしまわないといけないこと、直進した場合との比較であることも思い出さないといけないことなど、やはり迂遠であることです。

今朝、目覚めた瞬間なのですが、突然「光の屈折『へ』の法則」なるものが頭に浮かんできました(多分、起きる前に中1の子に理科を教える夢でも見ていたのでしょう)。

光は、水中(ガラス中)に入るときも出るときも、ひらがな・かたかなの「へ」の字の方向に曲がる、これが私の頭にふってわいた「光の屈折『へ』の法則」です。

への字これは覚えやすい、子どもたちは『へ(屁)』が大好きですから。
それに問題を解くとき、瞬時に使える。
覚え方の公式としては最強です。





昼間、懇談が立て込んでいたこともあり、中1の理科の授業になっても忘れていたのですが、屈折の図を見て思い出し、「そうだ、教えなければ」と早速子どもたちに開陳しました。

子どもたちの反応はイマイチでした。

さらに、欠陥も露呈しました。
くの字
長方形のガラスに、光が入って屈折し、その光がガラス内部を通って空気中に出て行くとき、入るときは「へ」の字に屈折しますが、出るときは「へ」ではなくて「く」の字の向きに出て行くように見えてしまい、「へ」とみなすには若干の補正が必要になります。

(補正:水やガラスを下にして眺めたら、必ず「へ」の字の方向に屈折します。)



右手の法則や左手の法則を発見したフレミングのごとく、法則発見者として歴史に名前を残すのは、やはり私の能力では無理なようです。

ま、屁の法則では、名前が残っても恥ずかしいか。


追記:光の屈折の問題を、光が屈折する理由から考えて解く方法について、こちらに掲載しました。

science 光の根本原理は「直進」

光の3つの性質は、「直進」「反射」「屈折」です。
私はこの3つは平等で、同じ土俵の上に乗っていると今まで思っていたのですが、実は違っていたということが今日わかりました。

反射の問題
今年、塾では、説明の部分が詳しい理科ワークを使っています(文系の私には大変ためになります)が、それでも「直進」についてはあっさりとしか触れられていません。

すぐに「反射」に入り、入射光と反射光、入射角と反射角、反射の法則(入射角=反射角)へと続きます。説明はそれで終わり、その後、塾ですから、テストでよく出題されて子どもたちには理解が難しい「自分の全身を鏡で見ようと思えばどれだけの大きさの鏡が必要か?」という問題を取り上げます。

私が生徒のときは、鏡の原理の説明を読んでもさっぱりわからなかったので、答えは「全身の2分の1の大きさの鏡」と丸暗記してテストに臨みました。
教える立場になると、それでは余りにも情けない。

鏡の問題を解くための原理
理科に一番大切なのは、「なぜか?」をつきとめる気持ちを持つこと、私が理科を教え始めてだんだんわかってきたことです。

上の問題を解くためには、「鏡は、物が、鏡を対称の軸に、真反対の位置にあるように目を錯覚させるものである」という説明を思いつきました。それで全身の2分の1の鏡が答えになる理由を納得はできます。が、「鏡は、物が、鏡を対称の軸に、真反対の位置にあるように目を錯覚させるものである」という説明自体、起こっている現象を言い換えたに過ぎません。さらに、それはなぜかの解明が必要になります。
全身鏡











理科と数学と、同じ原理だった
光の反射について書いてみようと思って書くことを考え始めた途端、「なぜか」が、突然わかりました(ものを書くということにはこういう利点があります、書くということは考えるということです、考えないとユニークなことは書けませんから)。

ひらめいたのが、数学の最短距離の問題と同じ原理だ、ということです。

数学では、ある点と別の点との間の最短距離は、2点を結ぶ「直線」の長さです。

理科だと同じことが、光の性質「直進」となります。

さらに、数学で、ある1点aから、別の直線l(エル)に立ち寄って、点bに至る最短距離を求めさせる問題があります。作図の仕方として、lを対称の軸にbの対称点を書き、その点とaを結んで、l上の点を求める、で正解を求められます。aとbの対称点との最短距離は2点を結ぶ直線だということから、解き方の正しさを証明できます。
最短距離















これが光だと、反射の問題にあたるということが、やっとわかりました。
鏡を見る目が点a、鏡が直線l、鏡で見ようとする物が点b、ということになります。
鏡














光が「直進する」ということは、光は常に「最短距離を進む」ということです。
鏡で「反射する」ときも同じです。光は最短距離を進もうとします。だから、その求め方として「鏡を対称の軸としてもとの物の対称点を書き、目とその対称点を結ぶ」で答えを見つけられるわけです。

根本原理は「直進」だけ
ということは、光の根本原理は「直進」だったわけだ。「直進」が基本原理として基礎にあって、その応用形が「反射」で、入射角=反射角なんてのは説明の道具の1つに過ぎなかったってことだ。
こんなこと、理科の先生なら誰でも知ってることなんでしょうね。ああ、恥ずかしい。でも、すっきりしました。

おまけ:さらにつっこんで考えると、光はなぜ直進するのかという哲学的命題も考えられます。光は、もっとも効率のよい進み方をする、が答えでしょう。数学でも、理科でも、正解は一番simpleで美しくすっきりしたもの、のはずです(これも「多分」です、根拠のない自信はあるけど)。
そして、ニュートンなんかがこの直進あたりまでで、それをくつがえしたのがアインシュタインなんでしょうね(全然知らんけど)。アインシュタインが光は曲がるというのを言い始めたって、読んだような記憶があるから、これも当たっていそうな気がします。
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