ある物体を真上に持ち上げるときは、その物体にはたらく重力(重さ)と同じ大きさの力で持ち上げることができます。
ある物体を持ち上げないで横に引いたり押したりして動かそうとするときは、ある物体と床の面との間に「横に動くのをさまたげる力」=「摩擦力(まさつりょく)」がはたらいており、その摩擦力と同じ大きさの力で押したり引いたりすると物体を横に動かすことができます。
摩擦力の特徴
知っておかないといけない摩擦力の特徴には次のようなものがあります。
(1)摩擦力の大きさは、物体を横に引いたり押したりする力と等しい(引いたり押したりしないときの摩擦力は0である)。
(2)摩擦力は、面の種類・状態と物体の重さによって決まる。
(3)摩擦力は、接触している面積の大小とは関係しない。
(4)物体を引いても押しても動かないときの摩擦力を静止摩擦力、引いたり押したりしているときにはたらいている摩擦力を動摩擦力という。
摩擦力の図示
摩擦力は、物体と面との接触部にはたらく力であり、物体を引いたり押したりする力とつり合う力なので、接触面の中心から、引いたり押したりする力と反対の向きに図示します。
(疑問点)
2つの力がつり合っているときの3条件は、2つの力が(1)同一直線上にあり、(2)向きが逆で、(3)大きさが等しい、ことです。
ところが、どのテキストでも、物体を引く力と摩擦力は「つり合っている」と記述されています。しかし、この2力は、向きは逆で、大きさは等しいのですが、同一直線上ではありません。
大いに疑問を感じるところですが、この点を説明しているテキストは見たことがありません。
摩擦力の大きさ
摩擦力は、物体を横に押したり引いたりする力と等しい大きさの力です。
引く力が0のとき、摩擦力の大きさも0です。
引く力がAで物体が静止したままのとき、摩擦力の大きさはAです。
引く力がBで物体が横に移動しているとき、摩擦力の大きさはBです。
摩擦力を決定するもの
摩擦力は、摩擦力=摩擦係数×抗力の式で求めることができます。
摩擦係数は、ふれあう面の種類と面の状態によって決まります。
例えば、接触している物質が銅と鉄のときの摩擦係数は0.53、銅とガラスのときは0.68です。
一般に、すべりやすい物質の摩擦係数は小さく、すべりにくい物質の摩擦係数は大きいとイメージすることができます。
また、摩擦力=摩擦係数×抗力の式のうち、抗力は、重力に比例し(特に水平な面に置いた物体の場合、抗力=重力)、重力は質量に比例します。
つまり、同じ物質であれば「重いものほど摩擦力は大きい」といえます。
(参考)
摩擦係数は、左図のように斜面に物体を置き、ACの長さをかえて測定したときの、物体がすべりだしたときのAC/BCの大きさで求めます。
例えば、AC=5cm、BC=10cmのとき、摩擦係数は5/10=0.5です。
AC/BCの値は、(すべり落ちる力)/(斜面をおす力)の値と一致します。
また、図でわかるように、斜面をすべり落ちる力=摩擦力です。
摩擦力と接触する面積
ふれあう面積が大きくても小さくても摩擦力は変わりません。
つまり、同じ物体の置き方を変えて接触する面積が変わっても、摩擦力の大きさは変わりません。同じ力で、横に動かすことができます。
静止摩擦力と動摩擦力
中学生範囲の問題ではあまり見かけませんが、実は摩擦力は静止摩擦力と動摩擦力に分かれます。
物体にひもをつけて横に引くとき、 途中まで物体は動きません。
引く力を大きくしていき、引く力がある大きさに達すると物体は横に移動を始めます。
物体が動かないときの摩擦力を静止摩擦力、物体が動き始めてからの摩擦力を動摩擦力といいます。
物体が動き出す前は、摩擦力=物体を引く力より、引く力を大きくすると摩擦力も比例して大きくなり、物体が動き始める直前に摩擦力は最大になります(このときの摩擦力を最大静止摩擦力といいます)。
物体が動き始めると、最大静止摩擦力>動摩擦力となり、動き始める直前の物体を引く力より小さい力で物体を移動し続けることができます。
摩擦力と仕事
仕事の大きさを求める一般的な公式は、仕事(J)=力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)です。
物体を持ち上げるときは、仕事(J)=重力の大きさ(N)×持ち上げた高さ(m)と言い換えることができます。
物体を面にそって動かすときは、仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)となります。
仕事の大きさを求めるときは摩擦力だけを考慮すればよく、物体の重さは仕事を求める式には表れません(摩擦力が重さに比例することと混同しないようにする必要があります)。
例題:水平な面の上に置いた質量400gの物体をばねはかりで水平に引いた。次の問いに答えなさい。
(1)引いているとき、ばねはかりは1Nを示したが物体は動かなかった。このとき物体がされた仕事は何Jか。
(2)物体が動き始めると、ばねはかりは3Nを示していた。物体と面との間にはたらいている摩擦力の大きさは何Nか。また、物体が50cm動いたとき、物体がされた仕事は何Jか。
(解き方と解答)
(1)引いているとき、ばねはかりは1Nを示したが物体は動かなかった。このとき物体がされた仕事は何Jか。
摩擦力=引く力より、摩擦力は1Nですが、「動かなかった」ので、移動した距離は0です。
仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)の式にあてはめると、仕事=1N×0m=0
答えは0Jです。
(2)物体が動き始めると、ばねはかりは3Nを示していた。物体と面との間にはたらいている摩擦力の大きさは何Nか。また、物体が50cm動いたとき、物体がされた仕事は何Jか。
まず、摩擦力=引く力より、摩擦力の大きさは3Nです。
次に、仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)の式にあてはめて、仕事=3N×0.5m=1.5J
物体がされた仕事は1.5Jです。
この問題では、物体の質量400gを考慮する必要はありません。
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ある物体を持ち上げないで横に引いたり押したりして動かそうとするときは、ある物体と床の面との間に「横に動くのをさまたげる力」=「摩擦力(まさつりょく)」がはたらいており、その摩擦力と同じ大きさの力で押したり引いたりすると物体を横に動かすことができます。
摩擦力の特徴
知っておかないといけない摩擦力の特徴には次のようなものがあります。
(1)摩擦力の大きさは、物体を横に引いたり押したりする力と等しい(引いたり押したりしないときの摩擦力は0である)。
(2)摩擦力は、面の種類・状態と物体の重さによって決まる。
(3)摩擦力は、接触している面積の大小とは関係しない。
(4)物体を引いても押しても動かないときの摩擦力を静止摩擦力、引いたり押したりしているときにはたらいている摩擦力を動摩擦力という。
摩擦力の図示
摩擦力は、物体と面との接触部にはたらく力であり、物体を引いたり押したりする力とつり合う力なので、接触面の中心から、引いたり押したりする力と反対の向きに図示します。
(疑問点)
2つの力がつり合っているときの3条件は、2つの力が(1)同一直線上にあり、(2)向きが逆で、(3)大きさが等しい、ことです。
ところが、どのテキストでも、物体を引く力と摩擦力は「つり合っている」と記述されています。しかし、この2力は、向きは逆で、大きさは等しいのですが、同一直線上ではありません。
大いに疑問を感じるところですが、この点を説明しているテキストは見たことがありません。
摩擦力の大きさ
摩擦力は、物体を横に押したり引いたりする力と等しい大きさの力です。
引く力が0のとき、摩擦力の大きさも0です。
引く力がAで物体が静止したままのとき、摩擦力の大きさはAです。
引く力がBで物体が横に移動しているとき、摩擦力の大きさはBです。
摩擦力を決定するもの
摩擦力は、摩擦力=摩擦係数×抗力の式で求めることができます。
摩擦係数は、ふれあう面の種類と面の状態によって決まります。
例えば、接触している物質が銅と鉄のときの摩擦係数は0.53、銅とガラスのときは0.68です。
一般に、すべりやすい物質の摩擦係数は小さく、すべりにくい物質の摩擦係数は大きいとイメージすることができます。
また、摩擦力=摩擦係数×抗力の式のうち、抗力は、重力に比例し(特に水平な面に置いた物体の場合、抗力=重力)、重力は質量に比例します。
つまり、同じ物質であれば「重いものほど摩擦力は大きい」といえます。
(参考)
摩擦係数は、左図のように斜面に物体を置き、ACの長さをかえて測定したときの、物体がすべりだしたときのAC/BCの大きさで求めます。
例えば、AC=5cm、BC=10cmのとき、摩擦係数は5/10=0.5です。
AC/BCの値は、(すべり落ちる力)/(斜面をおす力)の値と一致します。
また、図でわかるように、斜面をすべり落ちる力=摩擦力です。
摩擦力と接触する面積
ふれあう面積が大きくても小さくても摩擦力は変わりません。
つまり、同じ物体の置き方を変えて接触する面積が変わっても、摩擦力の大きさは変わりません。同じ力で、横に動かすことができます。
静止摩擦力と動摩擦力
中学生範囲の問題ではあまり見かけませんが、実は摩擦力は静止摩擦力と動摩擦力に分かれます。
物体にひもをつけて横に引くとき、 途中まで物体は動きません。
引く力を大きくしていき、引く力がある大きさに達すると物体は横に移動を始めます。
物体が動かないときの摩擦力を静止摩擦力、物体が動き始めてからの摩擦力を動摩擦力といいます。
物体が動き出す前は、摩擦力=物体を引く力より、引く力を大きくすると摩擦力も比例して大きくなり、物体が動き始める直前に摩擦力は最大になります(このときの摩擦力を最大静止摩擦力といいます)。
物体が動き始めると、最大静止摩擦力>動摩擦力となり、動き始める直前の物体を引く力より小さい力で物体を移動し続けることができます。
摩擦力と仕事
仕事の大きさを求める一般的な公式は、仕事(J)=力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)です。
物体を持ち上げるときは、仕事(J)=重力の大きさ(N)×持ち上げた高さ(m)と言い換えることができます。
物体を面にそって動かすときは、仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)となります。
仕事の大きさを求めるときは摩擦力だけを考慮すればよく、物体の重さは仕事を求める式には表れません(摩擦力が重さに比例することと混同しないようにする必要があります)。
例題:水平な面の上に置いた質量400gの物体をばねはかりで水平に引いた。次の問いに答えなさい。
(1)引いているとき、ばねはかりは1Nを示したが物体は動かなかった。このとき物体がされた仕事は何Jか。
(2)物体が動き始めると、ばねはかりは3Nを示していた。物体と面との間にはたらいている摩擦力の大きさは何Nか。また、物体が50cm動いたとき、物体がされた仕事は何Jか。
(解き方と解答)
(1)引いているとき、ばねはかりは1Nを示したが物体は動かなかった。このとき物体がされた仕事は何Jか。
摩擦力=引く力より、摩擦力は1Nですが、「動かなかった」ので、移動した距離は0です。
仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)の式にあてはめると、仕事=1N×0m=0
答えは0Jです。
(2)物体が動き始めると、ばねはかりは3Nを示していた。物体と面との間にはたらいている摩擦力の大きさは何Nか。また、物体が50cm動いたとき、物体がされた仕事は何Jか。
まず、摩擦力=引く力より、摩擦力の大きさは3Nです。
次に、仕事(J)=摩擦力の大きさ(N)×力の向きに動いた距離(m)の式にあてはめて、仕事=3N×0.5m=1.5J
物体がされた仕事は1.5Jです。
この問題では、物体の質量400gを考慮する必要はありません。
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