ニュートンが発見した運動の3法則といわれるものがあります。

第1法則(慣性の法則) 静止または等速直線運動をする物体は力が作用しないかぎりその状態を保つ。
第2法則(運動方程式) 物体に力がはたらくと、その方向に、力に比例し質量に反比例した加速度を生ずる。
第3法則(作用反作用の法則) 物体が他の物体に力をおよぼすとき、力をおよぼされた物体は、同一直線上にあって大きさが等しい逆向きの力をはたらき返す。

この稿でとりあげるのは、第1法則の慣性、慣性の法則です。


慣性と慣性の法則のちがい

慣性とは、すべての物体が持っている、静止しているものは静止し続けようとし、運動をしている物体は運動し続けようとする性質のことです。

慣性の法則とは、すべての物体は慣性をもつので、物体に力がはたらかないときや、力がはたらいていてもその力がつりあっているとき、静止している物体は静止を続け、運動をしている物体は等速直線運動をし続けるという、運動についての法則です。

「慣性」と「慣性の法則」の2つの言葉の区別はあやふやになりがちですが、「慣性」はすべての物体が持っている「性質」、「慣性の法則」はすべての物体の運動について成り立っている運動の「法則」です。


慣性の法則が成り立っていることが確かめられる実験

コインとトランプコップにトランプをのせ、その上にコインをのせます。

トランプを指ではじいてとばします。

コインはトランプと一緒にとばないで、下に(コップの中に)落ちていきます。

コインには慣性の法則がはたらいているので、静止しているコインは静止し続けようとします。
コインの下で支えていたトランプがなくなったので、静止し続けようとするコインは下に落ちていくわけです。



だるま落としだるま落としとよばれる玩具は、慣性の法則を遊びに利用したものです。

とちゅうのこまを槌ではじきとばします。

はじきとばされたこまの上にのっていたこまは、慣性の法則により、静止し続けようとします。
それで、上のこまはそのまま下にストンと落ちます。


電車と乗客の動き

止まっていた電車が急に動き始めたとき

電車1電車が止まっているとき、電車の中のつりかわも乗客も静止しています。





電車2電車が急に発進したとき、静止していたつりかわと乗客は慣性の法則により静止し続けようとしますが、電車に接着しているつりかわのつけねと乗客の足は電車と一緒に動いてしまうので、つりかわと乗客は図のように電車の進行方向とは逆の方向に傾きます。



走っていた電車がブレーキをかけて止まるとき

電車3電車が同じスピードで走っているとき(等速直線運動をしているとき)、電車の中のつりかわも乗客も等速直線運動をしています。





電車4電車がブレーキをかけたとき、等速直線運動をしていたつりかわと乗客は、慣性の法則により等速直線運動をし続けようとしますが、電車に接着しているつりかわのつけねと乗客の足は止まろうとする電車にくっついたままなので、つりかわと乗客は電車の進んでいた方向に傾きます。



つりさげられた物体につけた糸をひっぱる問題

天井からつりさげた物体の下にひもがついています。そのひもを手で下にひき下げます(どちらのひもも、強くひけば切れる程度の細い糸です)。

ひもをひくゆっくりひいたときと、すばやくひいたときで、物体より上のほうのひもが切れるか、物体の下につけたひもが切れるかがちがってきます。












下のひもをすばやくひいたとき

ひもをひく−2つりさげた物体は、つりさげられた状態で静止しているので、慣性の法則より、そのまま静止し続けようとします。

下のひもをすばやくひくと、物体は静止し続けようとするので、下のひもを物体とひもをひいた手でひっぱりあうことになり、物体の下につけたひものほうが切れてしまいます。




下のひもをゆっくりとひいたとき

ひもをひく−3物体の下のひもをゆっくりとひくと、その力が物体に伝わり、物体も下に動こうとします。

今度は天井と物体がひっぱりあって、物体の上につけたひものほうが切れてしまいます。








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