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勉強をしている子どもたちが、悩み、知りたい、理解したいと思いながら、今までは調べる方法がなかった事柄を、必要かつ十分な説明でわかりやすく記述したサイトです

速さ

math 速さの問題をもっとも簡単に解く方法(小学算数)

小学生が苦手な「速さ」の問題を楽に解くために、みなさんに提案したい1つの試案です。

速さの問題を、買い物の問題と同じだと考えたら、簡単に解くことができます。


買い物の問題

1個40円のリンゴを2個買ったら代金はいくらか?
誰が考えたって、40×2=80円です。・・・(1)

1個40円のリンゴを何個か買ったら代金が120円だった、何個買ったか?
すぐに120÷40=3個だとわかります。・・・(2)

リンゴを4個買ったら代金は160円だった、リンゴ1個の値段はいくらか?
160÷4=40円、この問題ができない人はいないでしょう。・・・(3)

速さの問題も、まったく同じように解くことができます。


速さの問題

1、距離を求める問題

「時速40kmで進む自動車は2時間で何km進みますか。」という問題を考えてみましょう。

リンゴにも、いろいろな値段のものがあります。
1個40円リンゴとは、そのリンゴ1個40円だという性質をもっているという意味です。

同じように、時速40kmで進む自動車とは、その自動車1時間に40km走るという性質を持っているということです。

だから、1個40円のリンゴを2個買うと代金が40×2=80円になるのと同様に、
リンゴの場合1










時速40kmの自動車が2時間走ると進んだ距離は40×2=80kmとなります。
自動車の場合1








2、時間を求める問題

「時速40kmで進む自動車が、A地から120km離れたB地まで行きます。A地からB地まで何時間かかりますか。」という問題を考えます。

1個40円のリンゴを120円分買ったときにリンゴの個数を求める問題と同じです。
リンゴの場合2
120÷40=3個






自動車の場合2
120÷40=3時間








3、速さを求める問題

最後は、ある自動車が持っている性質=「速さ」を求める問題です。
「160kmの道のりを4時間で走る自動車の速さは時速何kmですか。」

リンゴの場合3
160÷4=40円






自動車の場合3

160÷4=40km








このように、速さ=時速40kmをその車がもっている性質と考えると、やさしい買い物の問題と同じように考えて解くことができるわけです。

時速40km1個40円と同じ
距離代金にあたる
時間個数にあたる


1段階だけ難しい問題を、提案した考え方で解いてみましょう。

例題1:時速96kmで走る列車は15分間に何km走りますか。

(解答)
時速96kmの列車は、列車1個分、つまり1時間で96km進みます。
時速96kmの列車が15分間の分だけあったらいくらになるかと考えます。

「時間」ではなく列車の場合て15「分」なので、15分が、時速96kmの列車の何個分か、つまり何時間分かを調べないといけません。

1時間=60分のうちの15分だから、15分は60分の15/60=1/4、1/4時間です。

よって、96×(1/4)=24kmです。




例題2:時速725kmで飛ぶジェット機は、2320kmを何時間何分かかって飛びますか。


(解答)
2320kmの中に、時速725kmのジェット機が何個分(=何時間分)あるか?と考えます。

飛行機の場合2320÷725=3.2時間です。

3時間と、残りが0.2時間です。
0.2時間は、1時間=60分の0.2倍ですから、60分×0.2=12分。

答えは3時間12分です。


例題3:45分間で21.6km走るオートバイは時速何kmですか。

(解答)
45分で21.6kmだと、1時間(=オートバイ1個分)は何kmになるのかを求めます。

オートバイの場合45分は、1時間(60分)の45/60=3/4です。

3/4倍が21.6だから、
21.6÷(3/4)=21.6×(4/3)=28.8km

時速28.8kmです。





私の意見

ほとんどの人は、「速さ」の問題が何か特別の分野であるような先入観があって、
距離=速さ×時間
速さ=距離÷時間
時間=距離÷速さ

の公式をいきなり覚えたり、さらにはこの3つの公式が覚えにくいということで、キ・ハ・ジとかハ・ジ・キとかで暗記したりしています。

3つの式が不要とまでは言えませんが、距離=速さ×時間、速さ=距離÷時間、時間=距離÷速さの公式をまず覚えないといけない、それだけが速さの問題を解く唯一の方法であるという思い込みは、実は根拠のない固定観念ではないでしょうか。

「速さ」の問題も全然特別なものではなくて、実は買い物の問題などのやさしい問題と同じ発想で解けます。





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math 池のまわりで出会い追いつく問題の考え方(中学数学)

2人が池のまわりをまわって出会ったり追いついたりするとき、時間や速さや場所をたずねる問題があります。


理解しておかないといけないこと

2人が逆の向きに進むとき

頭の中に小さい池を思いうかべてください。その池のまわりにそって池を一周する道があります。

あなたと友だちが、同じ場所から、池のまわりの道をそれぞれ逆の向きに歩いていきます。お互いの姿はよく見えています。

逆の向きに歩いていくと、出会います。

そのとき歩く速さがほぼ同じだと、あなたは池の約半分、友だちも池の半分ほどを歩いているはずです。

そして、2人の歩いた距離を合わせると、ちょうど池一周分になります。

1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ

これが、理解し、知っておかないといけないことです。


2人が同じ向きに進むとき

次に、同じ場所から、2人が同じ向きに進んでいきます。

1人はめちゃくちゃ遅い速さで、もう1人は結構早足で進みます。

小さい池だと、速く進んだ人は、すぐに、ゆっくり歩いている人に追いつきます。
遅い人は、まだほとんど進んでいません。

早足で歩いたあなたは、ちょうど池1周分、遅い人より多く歩いたことに気づくはずです。
言い換えると、2人の歩いた距離のちがいが、池1周分だということになります。

速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ

これが、理解し、知っておかないといけないことです。


問題の例(1)・・・中1の一次方程式の文章題

例題1:池の周りに1周480mの遊歩道がある。この道を同じ地点から同時に出発して、Aは毎分65m、Bは毎分55mの速さで歩く。
(1)2人が反対方向に歩き出すと、はじめて出会うのは出発して何分後か。
(2)2人が同じ方向に歩き出すと、AがBをはじめて追いこすのは出発して何分後か。



(式の作り方と解き方)

(1)2人が反対方向に歩き出すと、はじめて出会うのは出発して何分後か。

まず、方程式で解くために、何をxにするかを決めます。
出発して何分後か。」とあるので、x分後として式を作ります。

次に、方程式は等式です。
求める時間をxとおいたので、左辺も右辺も、同じもの、距離で表わして、等号で結びます。

最後に、この問題だと、反対方向に進む問題なので、
1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ
が使えます。

距離=速さ×時間ですから、
65x+55x=480

この方程式を解けばよいわけです。

65x+55x=480
120x=480
x=4

答えは4分後です。


(2)2人が同じ方向に歩き出すと、AがBをはじめて追いこすのは出発して何分後か。

追いつく時間をx分後とします。

等式を作ることを意識して、左辺も距離、右辺も距離で、式を作ります。

この問題は、同じ方向に進む問題なので、
速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ
が使えます。

65x-55x=480
10x=480
x=48

答えは48分後です。


問題の例(2)・・・中2の連立方程式の文章題

例題2:1周2100mのジョギングコースがあり、A、Bの2人が同じ地点から同時に出発する。反対方向に走ると、出発してから7分後に出会い、同じ向きに走ると、出発してから35分後にAがBを追いぬく。A、Bの走る速さをそれぞれ求めなさい。


(式の作り方と解き方)

問題文の最後に「A、Bの走る速さをそれぞれ求めなさい。」とあるので、Aの走る速さを分速xm、Bの走る速さを分速ymとします。

速さをx、yとしたので、左辺、右辺ともに距離を表わす式で等式を作ります。

反対方向に走るときは、
1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=コース1周の長さ
7x+7y=2100

同じ向きに走るときは、
速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=コース1周の長さ
35x-35y=2100

7x+7y=2100…(1)
35x-35y=2100…(2)

(1)×5+(2)

35x+35y=10500
+)35x-35y=2100

70x=12600
x=180

(1)に代入して、
1260+7y=2100
7y=840
y=120

Aの速さは分速180m、Bの速さは分速120mです。


まとめ

池の周囲をまわる問題を解くときは、

同じ地点から逆の方向に進むときは
1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ

同じ地点から同じ方向に進むときは
速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ

池







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math 池のまわりで出会い追いつく問題の考え方(小学算数)

2人が池のまわりをまわって出会ったり追いついたりするとき、時間や速さや場所をたずねる問題があります。


理解しておかないといけないこと

2人が逆の向きに進むとき

頭の中に小さい池を思いうかべてください。その池のまわりにそって池を一周する道があります。

あなたと友だちが、同じ場所から、池のまわりの道をそれぞれ逆の向きに歩いていきます。お互いの姿はよく見えています。

逆の向きに歩いていくと、出会います。

そのとき歩く速さがほぼ同じだと、あなたは池の約半分、友だちも池の半分ほどを歩いているはずです。

そして、2人の歩いた距離を合わせると、ちょうど池一周分になります。

1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ

これが、理解し、知っておかないといけないことです。


2人が同じ向きに進むとき

次に、同じ場所から、2人が同じ向きに進んでいきます。

1人はめちゃくちゃ遅い速さで、もう1人は結構早足で進みます。

小さい池だと、速く進んだ人は、すぐに、ゆっくり歩いている人に追いつきます。
遅い人は、まだほとんど進んでいません。

早足で歩いたあなたは、ちょうど池1周分、遅い人より多く歩いたことに気づくはずです。
言い換えると、2人の歩いた距離のちがいが、池1周分だということになります。

速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ

これが、理解し、知っておかないといけないことです。


例題1:池のまわりを、AとBが同じ場所から同時に出発して、Aは分速240m、Bは分速260mで同じ方向に進んだところ、BはAをひきはなして、出発後5分ではじめてAを追い抜きました。この池の周囲は何mあるでしょうか。


(解答)
同じ方向に進んだので、
速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ
で解くことができます。

Aの進んだ距離は240×5=1200m
Bの進んだ距離は260×5=1300m
池の周囲の長さは、
1300-1200=100mです。

1つの式にすると、
260×5-240×5=100m


例題2:周囲が2700mある池のまわりを、兄と弟が同じ地点から反対方向に向かって同時に出発しました。兄は分速90m、弟は分速60mで歩くと、2人がはじめて出会うのは出発してから何分後ですか。


(解答)
反対方向に向かって進んだので、
1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ
の考え方で解くことができます。

進んだ距離=速さ×時間ですから、
90×時間+60×時間=2700

分配法則を使って、
90×時間+60×時間=(90+60)×時間=2700

だから、2700÷(90+60)=18分


まとめ

池の周囲をまわる問題を解くときは、

同じ地点から逆の方向に進むときは
1人の進んだ距離+もう一人の進んだ距離=池1周の長さ

同じ地点から同じ方向に進むときは
速い方の進んだ距離−遅い方の進んだ距離=池1周の長さ

池









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math 中学受験 和差算 発展問題

速さの応用問題のうち、和差算の考え方をもちいて解く問題を検討します。


和差算の考え方とは

基本問題:
長さ2mのリボンを2つに切り、一方が他方より8cm長くなるようにするとき、大、小それぞれの長さは何cmですか。

和が200cm、差が8cmである2つの数を求める問題が和差算です。
和差算を解くときは線分図を書きます。
基本
左の線分図より、200cmから差の8cmをひくと、同じものが2つ残ることがわかります。

200−8=192
192÷2=96
短いほうは96cmです。
長いほうは96+8=104cmです。

このように、線分図を書いて、はみ出た部分をひいて、同じ部分2個分を求め、2でわって小さいほうを求めます。
これが和差算の基本的な考え方です。

和差算・・・線分図→ちがい(差)をひく→同じもの2つ分を求める→2でわって小さいほうを求める


この和差算の考え方をもちいて解く、速さの応用問題がよく出題されます。

和差算で解く、速さの応用問題

例題1:
まわりが4200mの池があります。この池のまわりをAとBがまわります。同時に同じところを出発して、反対方向に進むと15分後に出会い、同じ向きにまわると35分後にAはBを追い越します。A、B2人の速さはそれぞれ毎分何mですか。


あなたが友だちと池をまわる場面をイメージしてください。
反対方向に進むとき、あなたの歩いた距離と友だちの歩いた距離の合計が、ちょうど池の1周分になります。
同じ方向に進むとき、あなたのほうが速いとすると、ちょうど池1周分、あなたのほうが多く進んだところで友だちを追い越すはずです。

この問題は、A、B2人の分速をたずねる問題です。
反対方向に進んだとき、
Aの分速×15分+Bの分速×15分=(Aの分速+Bの分速)×15分=池1周分4200m
同じ方向に進んだとき、
Aの分速×35分−Bの分速×35分=(Aの分速−Bの分速)×35分=池1周分4200m
ということになります。

だから、
Aの分速+Bの分速=4200÷15=280
Aの分速−Bの分速=4200÷35=120
となり、和が280、差が120の2つの数を求める問題、つまり和差算だとわかります。

例題1280−120=160
160÷2=80

Bの分速は80m/分

80+120=200
Aの分速は200m/分


例題2:
A町とB町の間は6.3kmあります。太郎はA町を、花子はB町を同時に出発して、2つの町を往復します。2人は出発して50分後にまず出会いました。その後、2つの町に着いた後折り返して、A町から2.1kmのところでふたたび出会いました。それぞれ毎分何mの速さで歩きましたか。

状況を、まず簡単な図で描いてみましょう。

例題21回目に出会ったとき、50分に2人が進んだ距離の合計が6300mだとわかります。

少しややこしいのは2回目の出会いです。
図をじっくりながめると、太郎がB町に着いた後6300−2100=4200m進んでいること、花子はA町に着いた後2100m進んで、そこで太郎と出会っていることがわかります。2人の進んだ距離の違いは4200−2100=2100mです。
また、そのとき、2人の進んだ距離の合計は、A町とB町の距離のちょうど3倍であることもわかります。
50分で2人の合計が6300mだから、その3倍の距離を進むのにかかった時間は50分×3=150分のはずです。

以上をまとめると、
太郎の分速×50+花子の分速×50=6300m
太郎の分速×150−花子の分速×150=4200−2100=2100m

(太郎の分速+花子の分速)×50=6300
(太郎の分速−花子の分速)×150=2100

よって、
太郎の分速+花子の分速=6300÷50=126m
太郎の分速−花子の分速=2100÷150=14m
例題2の2
126−14=112
112÷2=56

花子の分速は56m/分

56+14=70
太郎の分速は70m/分



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science 速さ・平均の速さ・瞬間の速さ

「速さ」「平均の速さ」という言葉は、小学6年生の算数と、中学3年の理科の2ヶ所で出てきます(「瞬間の速さ」は中学理科でしか出てきません)。
この稿では、中学3年理科の『運動』の単元で出てくる「速さ」を取り上げます(小学校で学ぶ「速さ」も同じものですが、説明が小学生にはややわかりにくいかもしれません)。


速さ

世の中には、見ただけですぐにわかるものと、ぼんやりとはわかるものの計算をしないと正確にはわからないものとの2種類があります。

わかりやすい例は、長さと面積です。
長さは、定規やものさしをあてただけですぐに正しい数値を求められます。
面積は、正しい値を求めようと思えば、例えば長方形だと縦の長さと横の長さを求めた上で、縦×横の計算をしないと求められません。

速さは、後者と同じで、計算をしないと求められない値です。

面積の式、縦×横を知らない人、難しいと思う人は誰もいません。

同じように、速さを求めようと思ったら、
速さ移動距離÷移動するのにかかった時間
の式を、理屈抜きでまず覚える、
これが速さの問題を解くときの出発点です。

公式が長すぎると思う人は、
速さ距離÷時間
と覚えておけば、それで十分です。


余談:「理屈抜き」で覚えないといけない理由は、速さも面積と同様、「そう決めた」だけであって、そこに理屈はないから、です。
速さという概念があったほうが便利だ、では、距離÷時間を速さとしたら一番使いやすいのではないかと、「そう決めた」だけですから、なぜ「速さ=距離÷時間」なのかを考えてもあまり意味がありません。



次に、理科の公式で重要な単位です。

距離には、km、m、cmの3種類があり、時間には時間、分、秒の3種類があるので、単位はkm/時、km/分、km/秒と、m/時、m/分、m/秒と、cm/時、cm/分、cm/秒の9種類があることになります。

他の公式だと、単位は原則として一つです(例えば、圧力の単位はN/平方mだけを通常は使います)。
しかし、速さの単位だけは、上の9つのどれを使ってもかまいません。
計算の過程をそのまま反映させたらよいだけです。
例えば、ジェット機が2秒で0.4km進んだとすると、速さを求める式は0.4km÷2であり、答の単位は式の単位をそのまま使って0.2km/秒です。

(問題で、解答の単位を指定してあるときは別です。そのときの解き方は別稿で説明します。)

まとめます。

(1)速さの問題を解くときは、速さ=距離÷時間の式を覚えて、常にこの式にあてはめることだけを考える。

(2)速さとは何かと聞かれたときも、距離を時間でわったものですと答えればよい。

(3)速さの単位は、計算で使った距離と時間の単位をそのまま使えばよい(例えばm÷秒であればm/秒)。



「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」

どの教科書やテキストにも、
速さ」とは「物体が一定時間に移動する距離である」、
平均の速さ」とは「物体が同じ速さで動き続けたと考えたときの速さである」、
瞬間の速さ」とは「時間間隔をごく短くしたときの平均の速さである」、
と書かれています。

正直、さっぱりわかりませんね。

信号も何もないまっすぐな道路を、スピードを変えないで自動車で進んだとします。
100kmの距離を2時間で通り過ぎたら、速さは、距離÷時間の公式から100÷2=50km/時です。
このときだけは、「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」の3つがすべて同じで、一致します。

ところが、「スピードを変えないで」自動車を進ませることなど、実際には不可能です。
止まっていた自動車がだんだんスピードを上げて最高速度になり、スピードをあげたり落としたりしながらやがて減速して終点で止まる、というのが現実の姿です。

数学とちがって、理科では現実に運動する物体を対象とします。

だから、「速さ」以外に、「平均の速さ」と「瞬間の速さ」という言葉が必要になってきます。


平均の速さ

いろいろスピードを変えたけれども、最終的には100kmの距離を2時間で進んだわけだから、途中の速さの変化は一切無視して、速さを50km/だと考えようというのが「平均の速さ」です。

この「平均」は、算数の「平均」とは意味が違います。
ある地点では時速100kmで走っていて、次の地点では50kmで走っていたとして、速さは個数ではないので(100+50)÷2=75とはなりません。
進んだ距離によって、「平均の速さ」を表す数値はすべて違ってきます。

簡単に言うと、「平均の速さ」というとき、「平均」の語は、「途中の速さの変化は無視しよう」と言っているだけで、計算上は何の意味もありません。
他に言葉がないから「平均」と言っているだけで、単に「速さ」だと思ってください。


瞬間の速さ

目の前を自動車がすごいスピードで通過したとします。
そのとき、自動車のスピードメーターが90kmを表示していたとしたら、その90kmが、目の前を自動車が通過した瞬間の「瞬間の速さ」です。

ところで、自動車の外に立っている私がその自動車の「瞬間の速さ」を知りたいと思ったら、どうすればよいでしょうか?

目の前の1mなら1mの距離を、自動車が0.04秒で通過したと測定して、速さ=距離÷時間の公式をもちいて1÷0.04=25m/秒。時速になおして、25×60×60=90000m/時=90km/時とするしか方法はありません。

しかし、「瞬間の速さ」といいながら、考えてみればこの場合の時速90kmは真の意味の「瞬間の速さ」ではありません。
0.02秒ときわめて短時間ですが、その間でも自動車の速さは変化している可能性が高い。
この90km/時という速さは、速さが変化しているかもしれない0.02秒間の「平均の速さ」でしかありません。

いくら測定時間を短くしようが、私たちは「平均の速さ」でしか「瞬間の速さ」を知ることはできないのです。


「速さ」と「平均の速さ」と「瞬間の速さ」、相互の関係

以上の考察からわかるように、理科で速さを表す3つの言葉、「速さ」「平均の速さ」「瞬間の速さ」は、別物ではありません。
実は同じものです。

現実の運動する物体の速さは刻々と変化しています。

そのことを最初から一切考慮にいれないときに使う言葉が「速さ」です。

刻々と変化することに注目して、注目した上でそれを横において、どれだけの距離をだれだけの時間で移動したかを表そうとする言葉が「平均の速さ」です。

刻々と変化している速さのうち、できるだけ短い時間を取り上げて、そのときの「速さ」を表す言葉が「瞬間の速さ」です。


実際に問題を解くときは

言葉は違っても、同じ式である、距離÷時間で求められるものが「速さ」「平均の速さ」「瞬間の速さ」ですから、実際に問題を解くときは「平均の」や「瞬間の」という言葉は無視していいのです。

どの言葉が問題で使われていようと、常に「距離÷時間」にしぼって、「距離÷時間」の式だけを使って「速さ」求めたらよいということを知っていたら、全然悩まずに問題を解くことができます。



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science 地震波の伝わり方とグラフ

地震とゆれの伝わり方

地下の実際に地震が起こった場所を震源、その真上の地表の点を震央といいます。

震源では2つの性質の違う波が発生し、まわりに伝わっていきます。
伝わる速さの速いほうの波をP波といい、P波によって起こる小さなゆれを初期微動といいます。
伝わる速さの遅いほうの波をS波といい、S波によって起こる大きなゆれが主要動です。


ゆれの伝わる速さ

地震のゆれを起こすP波とS波の速さは、速さですから、距離/時間(距離(km)÷時間(秒))で求めることができます。


初期微動継続時間

速いP波がきてから遅いS波がくるまでの時間(初期微動が始まってから主要動が始まるまでの時間)を初期微動継続時間といい、初期微動継続時間は震源からの距離比例します。


以上が、今日の問題を解く際の予備知識です。

では、塾生から質問を受けた問題を取り上げて考えてみましょう。


例題1:表は、ある地震の初期微動と主要動の観測結果である。

地震の表



次の問いに答えよ。

(1)この地震のP波の速さを求めよ。
(2)この地震のS波の速さを求めよ。
(3)この地震が発生した時刻はいつか。



ヒント:速さ=距離÷時間の式がヒント。速さ=距離÷時間の式にあてはまる数値を探せばよい

解答
(1)この地震のP波の速さを求めよ。

初期微動を起こした波がP波です。

表の2地点間の距離は200−80=120km、また、2地点間の初期微動の始まった時刻の差は5:23:35−5:23:20=15秒です。

120kmの距離を進むのに15秒かかったわけですから、速さ=距離÷時間の公式より、
120÷15=8km/秒


(2)この地震のS波の速さを求めよ。

主要動を起こした波がS波ですから、主要動の始まった時刻から(1)と同じように求められます。

距離の違いは120km。
主要動の始まった時刻の差は5:24:00−5:23:30=30秒。

よって120÷30=4km/秒


(3)この地震が発生した時刻はいつか。

今度は時間を求めたらよいので、時間=距離÷速さの式を使います。

80km離れた地点ですと、P波の速さ8km/秒より、P波が届くまでの時間は80÷8=10秒。

初期微動が始まった時刻(=P波が到着した時刻)は、5:23:20。
地震が発生してから10秒たって届いたのが5:23:20だから、地震の発生時刻は5:23:20の10秒前の5時23分10秒。

80kmの地点の主要動の時刻を使って問題を解くと、S波の速さが4km/秒だから80÷4=20秒。
5:23:30の20秒前だから、5時23分10秒。

200kmの地点でも、同じように求めることができます。


例題2:図は、地震波の到着時刻と震源までの距離との関係を示したものである。
震源からの距離のグラフ






















(1)初期微動を起こす波のグラフはA、Bのどちらか。

(2)主要動を起こす波の伝わる速さを求めよ。

(3)この地震の発生時刻は何時何分何秒か。



解答
(1)初期微動を起こす波のグラフはA、Bのどちらか。
先に到着するほう、速いほうが初期微動を起こすP波ですから、AがP波、BがS波のグラフです。


(2)主要動を起こす波の伝わる速さを求めよ。
グラフの問題なので、きりのよい罫線の交点の数値を使います。
例題1と同様、速さ=距離÷時間がヒントです。

S波のグラフで、きりのよい交点2ヶ所を探すと、13:31:20に200km、13:32:10に400kmの地点を通っています。

距離400km−200km=200kmを、時間の差13:32:10−13:31:20=50秒でわればよいことがわかります。

200÷50=4km/秒です。


(3)この地震の発生時刻は何時何分何秒か。

例題1のように、きちんと計算で求めることもできます。

S波のグラフを見ると、200kmのところを13:31:20に通っています。
S波の速さは4km/秒でした。
時間=距離÷速さより、200÷4=50秒。
地震の発生時刻は13:31:20より50秒前、つまり13:30:30です。

もっと簡便な方法もあります。
グラフを延長してみればよいのです。

震源からの距離のグラフ(2)
左図を見たらわかるように、P波のグラフとS波のグラフは距離0のところで交わります。
その時刻を読みとれば、そこが地震の発生時刻です。

地震の発生時刻が13時30分30秒であることがグラフからもわかります。









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mathematics 分数と速さ

何回か時間をかけたことで、「分数と時間」はほとんどの子が完璧です(「分数と時間」についてはこちらを参照のこと)。

次の難関が、「分数と時間がからんだ速さの問題」です。


「速さ」の単元と「分数」の単元では、解き方が違う

例えば、時速90kmで走る電車が50分間に進む道のりを求める問題。

小6の1学期「速さ」の単元だと、時速は1時間に進む距離のことだから50分とは計算できない、50分と計算できるのは分速である、だから時速90km÷60で分速1,5kmにして、1,5×50=75kmとします。

2学期の「分数」の単元では、50分のほうを時間にします。時速と計算できるのは分ではなくて時間である。50分÷60=50/60=5/6時間。
時速90km×5/6=75kmとなります。


子どもたちが苦労する理由

子どもたちが根本的に理解できていないのは、速さの3公式ではありません。「速さ=距離÷時間」、「距離=速さ×時間」、「時間=距離÷速さ」の、どの式を使うかで混乱する子はほとんどいません。

速さの問題だ、よし!「ハ・ジ・キ」の図!!なんて話ではないのです(「ハ・ジ・キ」の弊害についてはこちらを参照ください)。

小学校の最初から、至極当然のこととして徹底しておかなければならない、『単位の違うものは計算できない』という大原則を、今まで誰からもちゃんと教えてもらっていないこと、これが速さの問題に子どもたちが苦労する最大の要因です。
一番大事なことを、今の子どもたちはきちんと習っていないのです(速さの問題を解くための方策については、こちらでも言及しています)。


速と時間速と速としか計算できない

時速と計算したかったらは必ず時間になおさないといけない」、
分速と計算したかったら時間・秒は必ずになおさないといけない」、
秒速と計算したかったらは必ずになおさないといけない」、

分数の単元では、もう一度、このことを徹底しておさえておきます。
言い換えれば、この3つの約束事が理解できてさえいれば、分数の単元の速さの問題は簡単に解けます。


分数の単元での速さの問題の解き方

例題1:
時速45kmで走る自動車が36分間に進む道のりは何kmか。

解き方:時速と計算できるものは時間のみ。36分を時間になおす。36(分)÷60=36/60=3/5(時間)
45×3/5=27km


例題2:
例題2











例題3:
32kmの道のりを、2/3時間で走る自動車の速さは、分速何kmか。

解き方:「分速何kmか」を求める問題だから、分しか使ってはいけない。
2/3時間を分にする。
60×2/3=40分
32km÷40=4/5km(32÷40=0,8kmでもよい)
分速4/5km


例題4:
15kmの道のりを、45分で走る自転車の速さは、時速何kmか。

解き方:「時速何kmか」を求める問題だから、分は使えない、時間になおす。
45分は、45÷60=45/60=3/4時間
15km÷3/4=15×4/3=20km
時速20km


例題5:
時速45kmで走るバスが、30kmの道のりを進むのにかかる時間は何分か。

解き方:「何分か」を求める問題だから、時速は使えない。使えるのは分速のみ。時速45kmを分速になおす。
45÷60=45/60=分速3/4km
30km÷3/4km=30×4/3=40分
40分

または、
30÷45=30/45=2/3(時間)・・・時速で割ったから求めたのは時間
2/3時間は、60×2/3=40分

mathematics 分数と時間

注意:この稿では、分数が数多く出てきます。例えば3分の1をブログ上に書き表すのに、私は1/3と打ち込む方法しか知りません。1/3と表記されていたら3分の1と読んでください。

小学6年生の2学期、「分数のかけ算・わり算」で、時間を分になおしたり、分を時間に換算したりする問題が出てきます。
速さの文章題もからんできて、子どもたちは混乱するし、教えるほうも教え方を悩むところです。


準備運動

理解しにくい単元は、いわば難しい運動のようなものです。いきなりとりかかるとよくない。計算方法を教える前に、しっかり準備運動をするべきです。

子どもたちの頭に時計を思いうかべさせます。黒板に時計の絵も書きます。

時間を分になおす

1/2時間は何分か。

30分
計算はさせません。時計の図から、30分とわかります。






同じように、1/4時間も、計算しないで15分と求めます。
 
15分








わかってきたら、1/6時間、1/5時間、3/4時間の図を書いて、計算なしで10分、12分、45分と求めさせます。

計算なしである程度練習をした後で、では3/10時間は何分か?と、計算をしなかったらわかりにくい問題に発展していき、60×3/10=18分の式を、(できたら自分たちで)見つけさせます。


分を時間になおす

この場合も同様に、時計の絵を使って、できるだけ計算しないで答えを求めさせます。

30分は何時間か?

30分
絵を見たらわかるように、1/2時間です。
このとき、30/60時間だから、約分して1/2時間であることを確認します。




15分は何時間か?

15分
やはり、絵だけで、1/4時間とわかります。15/60時間だから1/4時間だと確認しておきます。





では、27分は何時間か?

ここまでくると、子どもたちも、27/60時間=9/20時間だとわかるようになってきます。

先に計算で求める方法や式の作り方を教えても、子どもたちはすぐに忘れたり混乱したりします。
時計の絵なり実際の時計を使って、計算で求めないでもほとんどわかるという状態を先につくっておくと、計算で求めるときも間違いが少なくなります。


計算で求める方法

例題(1)1/3時間を分で表わせ。

解き方

1/3時間とは、1時間の1/3ということです。
算数・数学で「の」は×(かける)と思ってよい。だから、1時間つまり60分の1/3だから、
60×1/3=20分


例題(2) 4分を時間で表わせ。

解き方

4分は1時間の一部で、1より小さくなるはずだから、4÷60とわり算をする。
小学校5年生で習った、a÷b=a/b を思い出して、
4÷60=4/60=1/15時間

または、60分のうちの4分だから、分数で表わすと4/60となって、約分して1/15。

子どもたちができるようになってきたら、「時間を分に」は「かけ算」で「×60」、「分を時間に」は「わり算」で「÷60」と公式化していきます。

このとき、答えの確認を必ずすること。
そうしないと、準備運動をしていても、どっちがどっちだったか、すぐにわからなくなって、4分=120時間などとする子が出てきてしまいます。


最後に

慣れてきたら、小数でも同じ方法が通用することを確認します。

0.25時間は、60×0.25=15分

6分は、6÷60=0.1時間

mathematics 速さの問題はこれで解ける

小学6年算数『速さ』の問題の考察、続きです。「まっとうなやり方で速さの問題を解く」をテーマに書いてみます。


3つの公式

速さ=道のり÷時間、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さ、この3つの公式は、楽をしないできちんと覚えましょう。
式の覚え方として、距離を求めるときだけ「かける」、速さ、時間を求めるときは距離を「わる」と、距離に着目すると忘れにくいと思います。


速さの公式を覚える前に

ただし、公式を覚える前に、前提条件があります。言葉の意味をちゃんと把握しておくことです。
「道のり」「速さ」「時間」の3つの語の意味が曖昧なまま式を立てようとする子は、いくら式を暗記していても、実際の問題になると使い方がわかりません。それで解けないのです。


用語の意味を正しくつかむ

まず、「速さ」の意味を徹底して自覚させます。
速さには、時速と分速と秒速が使われること。
時速とは、「1時間にどれだけ進むか」の意であること。時速40kmと言えば、自動車などが1時間に40km進むことを表していること。だから、2時間だと80km進むし、80km進むのには2時間かかること(この段階で、意識しないで速さの公式を使いこなせています)。
分速、秒速も同様に、「1分で進む距離」「1秒で進む距離」だと徹底しておきます。

「道のり」「距離」の意味は説明しなくても大丈夫です。
同じ意味で使っている「距離」と「道のり」、本当は違うんだよ(距離は直線距離、道のりは実際の道に沿って進んだときの道の長さ)なんて雑談は、わりと後までよく覚えてくれています。

「時間」はかかる時間のこと。ここで強調しておくべきは、「時間」の中に、1時間、2時間の時間と、分と、秒の、3つが含まれるということです。

このように、説明の冒頭で、言葉の意味を最初に徹底して理解させておけば、3つの公式を無理やり暗記する必要はなくなります。


実際の数字で先にイメージをつくっておく

問題にとりかかる前の準備としてもう一つ、身近な例で、実際の数値の例を教えておくべきです。
人の歩く速さは時速4〜5kmが普通であること、自動車の速さは40km前後だということ、高速道路では車は80kmで走り、100kmを超えるとピイピイ警告音がなること(この辺は子どもは経験してよく知っています)。電車の速さはだいたい時速100kmくらい、新幹線は300kmを超えること。飛行機はさらに1000km近くになること。こういった実際の数値は、こどもたちも興味を持って聞いてくれますし、1回で覚えてくれます。また、後で、自分の答えを確認する際、大きな助けになります。


どこで子どもたちは間違えるのか

前に、公式を覚えていないから子どもたちは速さの問題ができないのではないと言いました。実際の問題例で、その検証をしてみましょう。

「速さ」を求めさせる問題
単純に時速、分速、秒速を求めさせる問題は誰も間違いません。手が止まるのは次の問題です。

(1)324kmを3時間で走る電車があります。時速、分速、秒速を求めなさい。

324÷3=108kmで、時速は全員正解します。
分速で手が止まります。時速は1時間で進む距離、分速は1分で進む距離、時間より分のほうが小さい単位であり、60分の1になるはずだから108÷60で求める方法と、1分で進む距離だから3時間=180分として、324÷180で求める方法とが考えられます。
後々のことを考えると、前者で教えたほうがよいと思います。
時速を分速になおすときは、小さい「分」になおすんだから60で割る、分速を秒速になおすときも、「分」よりさらに短い「秒」になおすんだから60で割ると、ここでしっかり覚えさせるべきでしょう。

「距離」を求めさせる問題
ここでも、単に距離を求める問題は間違いません。ほとんどの子が最初できないのは次のような問題です。

(2)時速78kmで走る電車が1時間30分に進む道のりを求めなさい。

この問題は、算数の基本原則、「単位はそろえないと計算できない」がわかっていない子は無理です。
わかっている子だけが次のどちらかの方法で解くことができます。
時速とは1時間に進む距離のことだから時間に統一しないと計算できないと考えて、1時間30分を1.5時間になおして78×1.5とする。
1時間30分は90分であり、「分」と計算できるのは分速であると考えて78÷60=1.3kmと分速を求め、その後1.3×90とする。

(3)分速300mで走る人は2時間で何km走るか。

300×2=600kmとか、300×120=36000kmと求める人が続出します。
「単位が違うものは計算できない」から分速と計算できるのは「分」である、あるいは2時間と計算したかったら分速は時速になおさなければならない、それがわかっていない人は前者、「答えの単位は式の前の項と一致する」を失念している人は後者の間違いをおかしてしまいます。
分速300mを×60で時速18000m、18000m=18kmにして18×2=36キロとするか、300×120=36000m=36kmが正解です。

「時間」を求めさせる問題
公式を使いさえすれば解ける、単に時間、分、秒を求めさせる問題を誰も間違えないことは前の二者と同じです。できないのは次の問題です。

(4)分速300mで走る自転車は4.5kmの道のりを進むのに何分かかるか。

300÷4.5とする人が何人か出てきます。「先に書いてある数字を後の数字でわる」、「見かけの大きい数字を小さい数字でわる」、ゆとり教育で大量発生した、Simple is best.の考え方から逃れられない子どもたちです。
正解は、「単位は一緒にしないと計算できない」、4.5km=4500m、4500÷300=15分です。

(5)1920kmを2時間で飛ぶ飛行機は、640kmを飛ぶのに何分かかりますか。

1920÷2=960kmで時速を求めることは全員できます。問題はその後です。最後の「何分」に着目して、「分」と計算できるものは分速であると気づいた人しかこの問題は解けません(まだこの段階では「比」は習っていません)。
960÷60=16km(分速)、640÷16=40分が正解。ほとんどの子が解けない問題です。

(6)秒速14mの鳥が2100m飛ぶのにかかる時間

2100÷14=150、答え150時間とする子が出てきます。答えには単位をつけないといけない、ぱっと問題の最後の「時間」の語を見つけて、よし150時間とする子です。「秒速で出てくるのは同じ単位の秒である」、「時間には、時間も分も秒もふくまれる」がわかっていない子です。


ここを治せば速さの問題は解ける

上記のように、子どもたちが解けない問題は、速さの公式がわかっていないから解けない問題ではありません。速さの公式を完璧に覚えていても、それだけでは何の助けにもならない問題ばかりです。

子どもたちが解けない本当の理由は、誰でも知っておかなければならない、「単位の違うものはそのままでは計算できない」、「答えの単位は式の前の項の単位と一致する」の大原則と、そこから派生する「時速と計算できるのは時間、分速は分、秒速は秒」、「大きい時速を小さい分速になおすには60でわる、分速は60でわると秒速になる」がわかっていないことに尽きます。

何度も言いますが、速さの3公式を覚えていないから速さの問題が解けないのではありません。
前の黒板に、「単位をそろえないと計算はできない!」、「時速は時間と、分速は分と、秒速は秒と」、「時速を60で割ると分速、分速を60で割ると秒速」とでも大書しておくと、だんだん正解率は上がっていきます。

mathematics 速さの公式、キ・ハ・ジはキ・恥

小学6年生で習う『速さ』、中学校の数学、理科にも影響する大切な単元です。
算数嫌いの子にとっては最大の難関、指導者もうまく教えられずに苦悩します。

私は、みんなの常識に「嘘」があるというか、現実の子どもと指導の仕方との間に多きな「乖離」があるのではないかと疑っています。今日は、普段感じている疑問を書いてみます。


公式の誤まった覚え方(キ・ハ・ジは役にたつのか)

ご存知のように、速さの単元では、速さ=道のり÷時間、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さの3つの公式が出てきます。
この3つの区別が難しいと一般には思われています。そこで、3公式の簡単な覚え方を工夫しようという流れがあり、その代表的なものが、円の内部を3分割して、キ・ハ・ジと書き込ませ、それを見たら公式がわかるとういうやり方、そして、その亜流です。どこにキ・ハ・ジを書きこむか、その覚え方までいろいろ考案されています。


キ・ハ・ジ大流行

私はこの方式には意味がないと思っているので、教えません。(世間に迎合して、説明ではさらっとふれます。そうしておかないと、「いい方法があるのに、このおっさん、知らんのか」と思うのが子どもたちですから。)
私は教えないのに、学校で速さの単元に入ったら、キ・ハ・ジの図を書いて解こうとする子が続出します。また、中学生だと、数学の苦手な子に限って速さの問題と判断するやいなやキ・ハ・ジを書いて解こうとします。前にも書きましたが、学校でキ・ハ・ジを教えているのでしょう。


キ・ハ・ジで解けるようにはならない

私がキ・ハ・ジに意味がないと思う最大の理由は、使っても問題は解けない、正解にたどりつけないからです。やさしいテスト、問題集でも、キ・ハ・ジを使ってそれだけで解ける問題なんかほとんどありません。
キ・ハ・ジを使ったら解けなかった速さの問題が解けるようになった、わからなかった問題が理解できたという人がいたら是非お目にかかりたいくらいです。

有用性のないやり方を、疑問も持たずに子どもに教え、キ・ハ・ジさえ覚えれば解けるようになると子どもに錯覚させ、使っても問題は解けないから子どもを苦しませ、速さの問題は難しい、できないと子どもの自信を失わせる。
無責任な指導者の極みです。

頭が痛いと苦しんでいる子どもに目薬をさす医者、目薬ですべての病気に立ち向かえと言う医者を、あなたは信用できますか?キ・ハ・ジを嬉々として世に垂れ流している人は、この医者以上の害悪を世の中に垂れ流していると私は思っています(目薬をさしたら目くらいは良くなりますが、キ・ハ・ジは賢い子も馬鹿になるおそれさえあります)。


処世哲学として

もう一つ、キ・ハ・ジを私が忌み嫌う理由は、これさえ覚えたら人が苦労している問題を自分は楽に解ける、そういうものが安易に手に入るという人生哲学を、子どもに植えつけることになるからです。
世の中の詐欺・騙しのほとんどは、この哲学につけこむことで人を苦しめます。偽物ダイエットから、オウム真理教にすがったインテリまで、例はいくらでもあげられます。詐欺師に騙され、人生に失敗する哲学を、勉強を通じて教え込んではいけない。

「苦労しないと成功はできない」「頑張ったらその分成果を得られる」という、まっとうな哲学にのっとった教え方を工夫するほうがいいのではないでしょうか。


では、速さの公式はどうやって覚えたらよいか

では偉そうに人を批判するおまえはキ・ハ・ジに代わるどんないい方法を考案したのか?と聞かれそうですね。

答えは……→                 ない!

たった3つの公式くらい、そのまま覚えましょうよ。
子どもはもっと難しいことや複雑なことを一杯覚えてるじゃないですか。速さの公式を子どもは覚えられないと決めてかかるのは、現実の子どもを知らない、知ってはいても見ようとしない人の戯言です。
キ・ハ・ジなんてのを教えなくても、速さの3公式くらい、子どもはあっさりと覚えてくれます。

実際の子どもは、公式を覚えてないから速さの問題が解けないんじゃないんです。

速さの問題が解けない原因は別にあります。

(この稿、明日に続きます。)
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