電流の単元で、電流によって発生する熱量を求めたり、その熱によって上昇する水の温度を求める問題があります。
電流の単元で熱や水の温度変化が出てくるのはあまりにも唐突(とうとつ)ですが、それには次のような理由があります。
電力量と熱量の関係
熱は、物理学では重要な一分野ですが、中学では熱を単独で取り扱わないので、電流の単元で「ついでに」扱います。
ついでに扱ってよい根拠が、エネルギー保存の法則(あるエネルギーが別のエネルギーに変わってもエネルギーの総量は変化しないという物理学の法則)です。
電流によって消費されたエネルギーは、熱のエネルギーに変わることがあります。
そして、エネルギー保存の法則により、電流の消費した電気エネルギーと、電流によって発生した熱エネルギーとは等しい量であると考えてよいのです。
つまり、電力量(電気エネルギー)=熱量(熱エネルギー)
電流によって消費された電気エネルギー=電力量(単位はJ(ジュール))=電力(W)×秒(s)
だから、電流によって発生した熱エネルギー=熱量(単位はJ(ジュール))=電力量=電力(W)×秒(s)
例題1:電熱線に2Vの電圧を加えたところ、3Aの電流が流れた。この電熱線に1分間電流を流した。
(1)このときの電力量はいくらか。
(2)このとき発生する熱量はいくらか。
(解答)
(1)電力(W)=電圧(V)×電流(A)、そして、電力量(J)=電力(W)×秒(s)より、
電力量=(2×3)×60=360J
(2)熱量(J)=電力量(J)=電力(W)×秒(s)より、6×60=360J
電力量と熱量と水の温度上昇の関係
さらに、電流の単元なのに、突然、水の温度上昇をたずねる問題が出てきます。
その理由は、熱の発生は、温度の上昇によって確かめられ、温度の上昇を調べる方法としては、水を使うのが一番わかりやすいからです(温度、摂氏(セ氏)(℃)自体が水をもとにして決められた単位です)。
そして、1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jであることがわかっています(実験によって求められた数値です)。
1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量が4.2Jであるということは、例えば、100gの水の温度を20℃上昇させるのに必要な熱量は、1gのときの100倍のさらに1℃のときの20倍ですから、4.2×100×20で求められることになります。
これを公式化すると、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
水の温度上昇の問題では、この公式を使います。
例題2:14Ωの電熱線を20℃の水300gの中に入れて42Vの電圧を5分間加えた。
(1)電熱線に流れる電流は何Aか。
(2)水が得た熱量は何Jか。
(3)水の温度は何℃になったか。
(解答)
(1)オームの法則、電流(I)=電圧(V)/抵抗(R)より、42/14=3A
(2)熱量(J)=電力量=電力(W)×秒(s)より、42×3×300=37800J
(3)1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jであり、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
の公式が成り立ちます。
この問題で水が得た熱量は、(2)より37800Jでした。
4.2×水の質量×水の上昇温度=37800だから、
4.2×300×上昇温度=37800
上昇温度=37800÷(4.2×300)
上昇温度=30℃
もとの温度が20℃だったので、水の温度は20+30=50℃になったわけです。
![水と熱](https://livedoor.blogimg.jp/aritouch/imgs/5/2/52b9b3fd.bmp)
J(ジュール)とcal(カロリー)の関係
さらにこの単元では、突然、cal(カロリー)なる単位が顔を出します。
そのわけは、次のようなものです。
現在の教科書は、エネルギー保存の法則を一貫させた単位系である国際単位系(SI)に準拠して書かれています。
国際単位系では、熱量の単位はJ(ジュール)です。
ところが、以前は熱量の単位としてcal(カロリー)を使っていました(現在でも栄養学ではcalが使われます)。
今の教科書でcalを使う必然性はないのですが、以前の「なごり」から、calが顔を出すことがあるのです。
では、cal(カロリー)とはいかなる単位かと言うと、水1gの温度を1℃上昇させるのに必要な熱の量を1calと定義したものがcal(カロリー)です(つまり、1calは、「そう、決めた」だけです)。
このことから、
水が得た熱量(cal)=1×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
という公式が導かれます。
また、
水が得た熱量(cal)=1×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
であり、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
だから、
1cal=4.2J
です。
さらに、1÷4.2=0.238…となるので、
1J=0.24cal
です。
この式は、1Jの熱量で、水1gの温度が1秒で0.24℃上昇することを表わしています。
例題3:抵抗が4Ωの電熱線に6Vの電圧を3分間加えて、電熱線で発生する熱量を調べた。このとき、電熱線で発生した熱量は何Jか。また、この水が3分間に得た熱量は何calか。
(解答)
まず、熱量(J)=電力量(J)=電力(W)×秒(s)の公式を使います。
オームの法則、電流(I)=電圧(V)/抵抗(R)より、電流=6/4=1.5A
熱量(J)=電力(W)×秒(s)
=(6×1.5)×(60×3)
=9×180
=1620
電熱線で発生した熱量は1620Jです。
次に、何calであるかを求めます。
このとき、もっとも簡便な方法は、1cal=4.2Jを使って、比の式を作るやり方です。
求めるcalをxとすると、
1:4.2=x:1620
4.2x=1620
x=385.7…
答えは386calです。
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電流の単元で熱や水の温度変化が出てくるのはあまりにも唐突(とうとつ)ですが、それには次のような理由があります。
電力量と熱量の関係
熱は、物理学では重要な一分野ですが、中学では熱を単独で取り扱わないので、電流の単元で「ついでに」扱います。
ついでに扱ってよい根拠が、エネルギー保存の法則(あるエネルギーが別のエネルギーに変わってもエネルギーの総量は変化しないという物理学の法則)です。
電流によって消費されたエネルギーは、熱のエネルギーに変わることがあります。
そして、エネルギー保存の法則により、電流の消費した電気エネルギーと、電流によって発生した熱エネルギーとは等しい量であると考えてよいのです。
つまり、電力量(電気エネルギー)=熱量(熱エネルギー)
電流によって消費された電気エネルギー=電力量(単位はJ(ジュール))=電力(W)×秒(s)
だから、電流によって発生した熱エネルギー=熱量(単位はJ(ジュール))=電力量=電力(W)×秒(s)
例題1:電熱線に2Vの電圧を加えたところ、3Aの電流が流れた。この電熱線に1分間電流を流した。
(1)このときの電力量はいくらか。
(2)このとき発生する熱量はいくらか。
(解答)
(1)電力(W)=電圧(V)×電流(A)、そして、電力量(J)=電力(W)×秒(s)より、
電力量=(2×3)×60=360J
(2)熱量(J)=電力量(J)=電力(W)×秒(s)より、6×60=360J
電力量と熱量と水の温度上昇の関係
さらに、電流の単元なのに、突然、水の温度上昇をたずねる問題が出てきます。
その理由は、熱の発生は、温度の上昇によって確かめられ、温度の上昇を調べる方法としては、水を使うのが一番わかりやすいからです(温度、摂氏(セ氏)(℃)自体が水をもとにして決められた単位です)。
そして、1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jであることがわかっています(実験によって求められた数値です)。
1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量が4.2Jであるということは、例えば、100gの水の温度を20℃上昇させるのに必要な熱量は、1gのときの100倍のさらに1℃のときの20倍ですから、4.2×100×20で求められることになります。
これを公式化すると、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
水の温度上昇の問題では、この公式を使います。
例題2:14Ωの電熱線を20℃の水300gの中に入れて42Vの電圧を5分間加えた。
(1)電熱線に流れる電流は何Aか。
(2)水が得た熱量は何Jか。
(3)水の温度は何℃になったか。
(解答)
(1)オームの法則、電流(I)=電圧(V)/抵抗(R)より、42/14=3A
(2)熱量(J)=電力量=電力(W)×秒(s)より、42×3×300=37800J
(3)1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は4.2Jであり、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
の公式が成り立ちます。
この問題で水が得た熱量は、(2)より37800Jでした。
4.2×水の質量×水の上昇温度=37800だから、
4.2×300×上昇温度=37800
上昇温度=37800÷(4.2×300)
上昇温度=30℃
もとの温度が20℃だったので、水の温度は20+30=50℃になったわけです。
![水と熱](https://livedoor.blogimg.jp/aritouch/imgs/5/2/52b9b3fd.bmp)
J(ジュール)とcal(カロリー)の関係
さらにこの単元では、突然、cal(カロリー)なる単位が顔を出します。
そのわけは、次のようなものです。
現在の教科書は、エネルギー保存の法則を一貫させた単位系である国際単位系(SI)に準拠して書かれています。
国際単位系では、熱量の単位はJ(ジュール)です。
ところが、以前は熱量の単位としてcal(カロリー)を使っていました(現在でも栄養学ではcalが使われます)。
今の教科書でcalを使う必然性はないのですが、以前の「なごり」から、calが顔を出すことがあるのです。
では、cal(カロリー)とはいかなる単位かと言うと、水1gの温度を1℃上昇させるのに必要な熱の量を1calと定義したものがcal(カロリー)です(つまり、1calは、「そう、決めた」だけです)。
このことから、
水が得た熱量(cal)=1×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
という公式が導かれます。
また、
水が得た熱量(cal)=1×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
であり、
水が得た熱量(J)=4.2×水の質量(g)×水の上昇温度(℃)
だから、
1cal=4.2J
です。
さらに、1÷4.2=0.238…となるので、
1J=0.24cal
です。
この式は、1Jの熱量で、水1gの温度が1秒で0.24℃上昇することを表わしています。
例題3:抵抗が4Ωの電熱線に6Vの電圧を3分間加えて、電熱線で発生する熱量を調べた。このとき、電熱線で発生した熱量は何Jか。また、この水が3分間に得た熱量は何calか。
(解答)
まず、熱量(J)=電力量(J)=電力(W)×秒(s)の公式を使います。
オームの法則、電流(I)=電圧(V)/抵抗(R)より、電流=6/4=1.5A
熱量(J)=電力(W)×秒(s)
=(6×1.5)×(60×3)
=9×180
=1620
電熱線で発生した熱量は1620Jです。
次に、何calであるかを求めます。
このとき、もっとも簡便な方法は、1cal=4.2Jを使って、比の式を作るやり方です。
求めるcalをxとすると、
1:4.2=x:1620
4.2x=1620
x=385.7…
答えは386calです。
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