2005年08月22日

Outer Tactical Vests

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   クラフトフェルトもいよいよ本格的にマリーンの軍装に準ずる事になり、2004年後半からメキメキとマリーン化が進んでいます。ところで、テレビのニュースなどで報道されるマリーンを見ると、必ずと言ってよいほど、全員、インターセプターを着けています。MOLLEのFLCだけ、なんて兵隊は一人も見かけません。という事は、我が隊でもOTVを着けなければいかん、ちゅう事なんです。「使い易いかどうか」とか「サバゲーに要るかかどうか」じゃなくて「マリーンで使ってるかどうか」これが我が隊制式装備の基本的な考え方であるからであります。


=調達=

   実物のインターセプターは輸出規制などもあって、通常の手段では入手出来ません。というか、実物は5~6万しますから、まず手が出ないです。ついでに言うと、必要なサイズが確実に手に入る方法もありません。さらに重要な事は、「中身入り」の実物は激烈に重くて着てるだけで死にそうになる、という事です。まぁ、実弾が飛んでくる戦場では、大ケガしたくなかったら嫌でも着なきゃならんわけで、「ほんとにほんとにご苦労ね」の世界ですな。
   それはさておき、コントラクトナンバーの入ってないカバーだけなら、海外通販で入手する事が出来ます。それがOTVです。

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   これが送られてきたOTV COVER KIT。いいですか、「インターセプター・ボディーアーマー」でなく「Outer Tactical Vests」。そう、これ、ベストなんです。そういう事になってるんです。しかもカバー・キット。だから輸出規制に引っかからないんでしょうな。でも、どっから見ても、インターセプターです。コントラクトナンバーが入ってないだけで、出来栄えはポイントブランク製と変わりません。

 

=選定に当たって=

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2004年の半ばくらいまでは
旧ウッドランドのインターセプターが多かった

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2005年辺りからコヨーテに置き換わる
ウッドランドでもコヨーテを付ける

 

   このカバー・キット、色は最初からコヨーテと決まってました。ちょっと前までは、マリーンでも旧ウッドランド柄のインターセプターをよく使ってたみたいですが、最近はこれ一色になってます。マーパットのウッドランドでもデザートでもコヨーテのインターセプターを着けてます。砂漠ではともかく、森ん中では目立つんじゃないか(ちなみ、旧陸軍のカーキ色の夏衣袴はジャングルの中では目立ちまくったとか)と思うんですが、マリーンがそうしてるからウチでもコヨーテで通します。

   さて、大事なサイズ選びですが、試着もしないで通販するのは危険なので、とあるお店に置いてあった実物のインターセプターを着させて貰いました。着てみてビックリしたのは、それはLサイズだったにもかかわらず、丈が短かった事。股間ガードが股間の先くらいまでしか来ず、「これじゃチ○コに弾飛んできたら、チ○コなくなってまうやん!」って感じでした。写真などで見るマリーンがチンチクリンなインターセプターを着けてるのが多いのは、意外とサイズのちっこいのを着ているからかもしれません。これでは具合が悪い、という事で、各自いま来ている衣袴より1サイズ上を頼む事にしました。
(ポイントブランクのマニュアルによると、胸囲のサイズで選ぶようです)

 

=到着したブツ=

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   到着したブツを着込んで大はしゃぎする仮想軍人の皆さん。しかし、問題がいくつか。まず、カバー・キットと言うだけあって、エリのパーツが入ってなかった事。エリがないと、ご覧のとおり、ただのチョッキにしか見えず不細工です。そしてカバー・キットだけに中身がなくペナペナで、かなりみっともない事。これで弾嚢とか付けたら、もれなくブラブラになってしまいそうです。

 

=インサートの作製=

   さて、いよいよ本題です。とにかく中に何か入れよう、という事で、まず素材選びをしました。昔のM1ボディーアーマーのレプリカなどは綿が入っていたみたいですが、綿とか布きれでは締まりがないので不可。ウレタンみたいなのが良いだろう、という事で、東急ハンズの素材コーナーに行きましたが、50センチ角の物しかなく、しかも5ミリで450円もして少々コストがかかりすぎる。そこで思い出したのが、キャンプの時に使う「銀空マット」です。あれなら厚みも1センチくらいありますし、人が寝れるくらいの大きさはあります。しかも値段は1000円くらいです。

 

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   作成、といっても、要はカバーに合わせてマットを切るだけです。難しいのは、このカバーは立体裁断になっていて、しかも前面と背面のパーツがストラップでくっついてますので、所々、たわんでいる部分の下絵を描くのが難しい事です。

 

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   下絵は、まずカバーを置いて、その周りをマジックで点を打ち、後でイイ感じに線を引きます。カバーにマジックのインキが付かない様に、細心の注意が必要です。

 

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   切り出したマット。下絵はカバーの外側を沿う形でしか描けませんから、切り出す時は下絵の線の内側を切る様にします。ただし、小さく切ってしまうとやり直しが利きませんから、あまり切り込まない様に。また、前面のパーツはどういう訳か、右と左ではサイズが違って、左の方が右より左右寸法が2センチばかり短い様です。
   背面のパーツはデカイ事もあって、下絵を描くのも切り出すのも大変ですが、忍の一字で慎重に切り出します。

 

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   さて、切り出したマットを入れてみます。するとどうでしょう、それまでフニャってたOTVが、いきなりビビビーンとスティールボディーに。一気にボディーアーマーっぽくなりました。もっとも、この写真ではロボコンにしか見えませんけどねぇ。。

 

=インサートの改良=

   OTVのインナーにはキャンプ用の銀空マットが比較的向いている事が判りました。確かに巻けるくらいに柔らかい素材ではあるのですが、実際に入れてみると、やはり少々硬く、前屈みになるのもキツイくらいです。これでは機動的な戦闘はさぞかしやりにくいでしょう。しかも、断熱材である銀紙が恐ろしく保温性が高そうです。

   そこで、まず「しっかりしてて、かつ柔らかそう」な銀空マットを探しました。一様に銀空マットと言っても、売っている店によってメーカーが異なっている事が判りました。いくつかサンプルを調達し、具合を検査した結果、ニッピンで扱っている「キャンプロールマット」なる銀空マットがもっとも「しっかりしてて、かつ柔らかそう」という条件に適合しました。

 

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   銀空マットの「銀」の部分は、アルミ箔で地面からの冷気を通さない為についています。しかし、OTVの中に入れると、「体温を外に逃がさない」働きをしてしまうので、思い切って剥がしてしまう事にしました。

 

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   ただし、全面を剥がしてしまうと、マットの腰がなくなってフニャフニャになる恐れがあったため、端っこを2センチばかり残して剥がす事にしました。カッターナイフで切れ込みを入れて、そこから剥がすのですが、思いの外、カッターの刃が入ってしまうので、突き抜けない様に注意します。

 

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   一皮剥けた銀紙。ロールマットによっては、この銀紙がキレイに剥がれない物もあり、銀空マット選びは意外とシビアです。断熱材である銀紙を取ったことで、保温力が格段ダウンします。

 

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   続いて、マットに穴を開けていきます。この穴は、通気口の役割を果たす訳ですが、穴を開ける事でさらにマットにソフティさが増し、一石二鳥の効果を発揮します。ちなみにこの穴は、後述する保冷剤の冷気を通す穴にもなります。

 

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   前回に比べると、ソフティ度が数段アップ! 屈伸運動も楽々です。ノドアーマーと股間ガードも作り直したお陰で、ストレスなくOTVを着れる様になりました。

 

=ヨーク・アンド・カラーの作製=

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   さて、OTV本体はどうにかなりましたが、エリをどうにかしないといけません。当初、エリなしでも良いか、という話しもありましたが、やっぱりエリがないとタダのチョッキに見てしまう事から、エリを付けようという事になりました。しかし、そのエリはあまり出回ってない代物で、今回、サンプルに確保したエリも旧ウッドランド柄しかありませんでした。実はこのエリにコヨーテカラーの布を貼り付けてしまうつもりだったのですが、サンプルを見て「これなら作れる」というO伍長の一声で、隊内生産する事に決まりました。

 

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   まずはサンプルを参考にエリの部分の型紙を作り、それに合わせて布地を断裁します。ちなみに、このヨーク・アンド・カラーはサイズがある様なんですが、やはりサイズに合わせてエリの大きさも変わるんでしょうかね? これからの研究課題です。

 

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   二枚の布を縫い合わせてひっくり返します。ただ、そのままではご覧の通り、かなり膨らんでいますので、アイロンでプレスします。エリの中身はウレタンゴムのシートです。5ミリの物を二枚重ねて入れています。

 

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   ノドアーマーを取り付けるホックです。市販の物がそのまま使えます。ちょこっとさびている様に見えるのは、目の錯覚でしょうかね? ところで、この布地、よく見れば織り目が大きいですね。布の発色も、ギラギラしていて、コヨーテ・ゴールデンって感じです。仕方ないんです、一番コヨーテカラーに近い布がこれしか無かったんですから。

 

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   今度はヨークの部分にチャレンジです。実物のヨークは中にバリスティック・インサートがはいってますが、厚みがあるとクビ周りを圧迫してしまうので、我が隊のは省略しています。また、この部分の役割は、OTV本体との接合ですから、形は必要最低限似せる程度にしています。

 

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   カラーとヨークの縫いつけ。カラーを丸く取り付けるため、縫いしろの部分に切れ目を入れています

 

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   ここまできたら、あとはひたすらミシンで縫いまくるだけです。ホッチキスで仮止めしてバリバリ縫いつけます。

 

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   おおよそ完成のクラフト技研製ヨーク・アンド・カラー。出来損ないのてるてる坊主か、クラゲみたいです。

 

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   実物とクラフト技研製の比較。クラフト技研製のエリは、実物よりも薄くなっています。これはエリを立てていても、あまりクビを圧迫しない配慮と、エリを倒しやすくする為です。

 

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   OTVに取り付けてみました。いやはや、ズバコンの出来栄えです。アメリカのリエナクト団体でも「3メートル離れて実物と見分けつかなかったらOK」という規定があるそうですが、それでいきゃ、パーフェクトな出来栄えです。

 

=クーリング・システム=

   さて、イイ感じにここまで実用化が進んできましたが、最後は「如何に夏場の激烈な暑さに対応するか」という難題に取り組みます。夏はじっとしているだけで暑い上、こんな上半身を覆う様なベストを着て、しかも鉄砲持って走り回る訳ですから、オーバーヒートしてしまうのは火を見るよりも明らかです。

 

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   そこで考えたのが、SAPIプレートを入れるスペースに、何か冷たい物を入れてしまう方法。氷でもアイスノンでも何でも良いんですが、安くて使い回しがきき、かつ扱い安い物という事で、ホームセンターのアウトドアコーナーに置いてあるジェルタイプの保冷材を使う事にしました。

 

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   その保冷剤をSAPIプレートのサイズに切った銀空マットに貼り付けて、冷凍庫で凍らせて……と思いましたが、よほどの大きな冷蔵庫でないと、プレートのサイズは入らないみたいです。というか、いくら外から見えないとはいえ、この外観ではクラフト技研の検定を通過しないので却下。ちょっと頭を使う事にしました。

 

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   そこで考えたのが、背中のSAPIプレートを入れるポケットに、保冷剤を仕込んだプレートを入れる事。銀空マットをベースに、黒の帆布でカバーを被せ、ポケットを設けて保冷剤を入れれるプレート、すなわちPICS(パーソナル・アイス・クーリング・システム)を自作してみました。
……結果は、大失敗! ウレタン・インサートがまったく冷気を通さず、かえって暑くなったくらい。速攻やめて、保冷剤はブラウスの胸ポケットに入れる事にしました。この方が全然涼しいです。

<OTVは暑いのか?>
   暑くない、といえばウソになりますが、少なくとも2005年の夏に関しては、思ったほど暑くない、というのが実感です。もちろん、着込めば全身汗だくになるのですが(文字通り、頭から水被った様になる)、この発汗作用が意外と体を冷やしているのかもしれません(その代わり、キャメルバッグに氷入れて、好きなだけ冷水を飲みます)。あと、ウレタン・インサートに穴ぼこを開けるのは大正解です。ここから熱気が放出される様で、穴が開いてないと、OTVの内側に熱気が籠もります。

 

=OTVの染め方=

   ところで、SDSからOTVが届いた時から気になっていたのは、ポイントブランク製に比べると、色が明るくて黄色味がかってるなぁ、という事。一応、コヨーテブラウンの筈なんですが、どっちかというと、コヨーテタンといった方がよく、出来れば色をブラウンに近づけたいものだ、と思っていたのです。しかし、OTVの布地は言わずもがなナイロン。そんなモンに色つけるのは無理だろうと思っていた訳です。
   ところが、「求めよ、されば与えられん」で、O伍長が耳よりな情報をキャッチ。なんと、ナイロン生地を染めてしまう染料が売っているとの事。それはダイロンというメーカーのマルチという染料。イギリス製です。しかも近所の店で売っているとの事でしたので、さっそく購入。チャレンジしてみる事にしました。

 

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   買ってきたのは、茶系のコーヒーと緑系のジャングル・グリーン。どうして二色かというと、ポイントブランク製のOTVはSDSに比べるともっと茶っぽい感じがする、でも、ちょっとは緑がかっても見える、という微妙な色合いであったからです。そして、まずはコーヒーで茶っぽく染めてみて、緑が欲しかったら後でジャングル・グリーンで薄染めすりゃいいや、という風に考えていたからでした。

 

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   早速トライ! といっても生まれて初めての染め物ですので、まずはテストで小物から。染料の取説によると、まずは生地を濡らさねばなりません。ところがOTVの生地は撥水力がすごくてタダの水では染みません。そこで洗濯洗剤を投入。こうすれば面白い様に生地が濡れていきます。十分湿ったらしっかり洗って洗剤を洗い落として下さい。

 

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   続いて、70~80度の熱湯で染料を溶きます。染料は粉ですので、この位の熱湯でないと十分溶けません。溶かしたら、次に塩を入れます。染料と塩の量ですが、一応、取説には具体的な例が書いてあるのですが、実際にはよう判りませんでした。ただ、塩を入れるあたり、どうも電解によって染める原理の様に感じましたので、染料の入れる量よりも生地を漬けている時間の長さの方が、染めの濃淡に影響する様に思います。

 

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   いよいよブツを染めます。気分はもう錬金術師です。取説では、70~80度の熱湯の中に手を突っ込んで生地をモミモミする様に書いてあるんですが、いくら軍人野郎でもツラの皮ほど手の皮は厚くないので、割り箸使ってかき回しています。なんか良い感じに染まっています。取説では10分ほど漬ける様に書いてあったのですが、薄染めにしたかったので3分で切り上げました。終わったら、水洗いして、陰干しします。

 

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   はい、仕上がりです。コーヒー一色で染めたのですが、かなり茶色になりました。もちょっと薄く、で、ほんの少し緑が欲しい、という事で、コーヒーの染料にジャングル・グリーンを少し混ぜて本番に臨む事になりました。

 

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   ダイナミックにシンク全部を使ってOTVを染めるO伍長。最初は一気に2枚のOTVを染めるつもりでしたが、さすがにやりにくいという事で、1枚ずつに変更。というのも、シワなった部分は染料が乗りにくく、ムラになってしまう可能性があるので、出来れば広げてまんべんなく染める必要があったからです。

 

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   洗面台で水洗いする本官。実はこの時、シンクの方には異状が発生! なんと、1枚目のOTVを引き上げてみると、染料のお湯の色が一気に薄くなってしまっており、2枚目はちゃんと染まるんかなー、という状態になっていたのです。しかし、ここで染料を追い足しする訳にもいかず、そのまま全部染めてしまいました。

 

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   ポーチとか付いてるOTVが染めてないOTVです。薄染めしようと染料を少なめにし、漬ける時間を短くしたのが裏目に出て、全然染まってません(爆)
   それでも、ナイロン生地を染める染料と染め方を発見したのは大収穫でした。次回はもっと上手にやります。

 

=OTVのLとXLの違い=

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上がL、下がXL

   「XLじゃデカすぎたので、やっぱLにしよう」という事で、わざわざ改めて取り寄せられたOTV。ところが並べてみてビックリ。なんと、パーツの大きさはまったく同じで、違っていたのは背中のウェビングの位置というか幅。ご覧の通り、XLはすごく幅が開いていて、MOLLE IIのウエストパックは付けられません。つまり、XLは幅が広い分、横の長さがLよりも長いというい事で、その分腹が出てても大丈夫、という事になっているのです。
   察するに、XLを着る様なビッグボンバーは米軍にもそうそういなくて、そんなマイノリティーの為にわざわざ別個にソフトアーマーを作るのが面倒だったので、Lのパーツをそのまま使ってXLにしてしまったのかもしれませんね。



armee_kf at 00:00│ このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote クラフト技研