キャラ紹介 まおわんの世界の子達
一話 約隔週連載 まおわん(仮) いちのいち
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「魔法が落ち着いて唱えられるまではそうしてな。それまでミミトはしつこいぞ~」
言っているアンクの顔はニヤけていた。ブエルはむすっとしながらもそこを指摘せずにただただミミトのされるがままにされる。そのやり取りの全てを見ていたノースはぽつりと呟く。
「力関係がメチャクチャだな」
「全くね」
張り詰めた空気が一気に弛緩して苦笑いしているノースとカーラにユユは楽しそうに言い切る。
「でもそれがいいんじゃない」
「くえっ!」
「ねー♪」
クーちゃんの鳴き声の意味を分かっているかのようなユユの反応にカーラは頭を抱えた。
「何でこんな時だけ分かるのよ……」
「合ってたっ♪」
嬉しそうに両手を挙げるユユ、マネしてクーちゃんも同じポーズをとる。これにはカーラはどっと疲れた顔になった。
「わふ、皆どうしたの?」
騒がしいのに気付いてミミトが顔を上げる。それに気付いた村の子供達は一斉に顔を背けた。やはり一人必死に治療していたミミトの前ではしゃいでいたのがバツが悪かったようだ。
「わふ?」
反応の意味が分からず困るミミトにアンクは苦笑いして全員にちゃんと聞こえるように言う。
「あー、まぁ、もう気にしないでやってくれ。お互いにそれどころじゃないだろ?」
「そ、そうなのです……かなりブエルがピンチなんですから……」
顔を苦痛に歪めながら擦れた声で訴えるブエルにミミトは不思議そうに首を傾げる。
「アザは多いけど、傷はそんなに深手じゃない?」
「ソウナノカー?」
棒読みのような感情が一切入ってない驚き方をしながらアンクはブエルを見下ろす。
「……でも負けたのは事実なんですよ。そして隙を診て逃げようと」
バレたのでさっきよりも饒舌に言い訳をするブエルだがアンクの目は冷ややかだ。
「それで俺がやって来るまでは子供達がやられそうになっても静観していたと?」
冷静に淡々と事実を積み上げられるとブエルも弱い。目を逸らしながらも口は開き続ける。
「……顔を床にくっつけていたので、そこまでピンチと分からなかったんですよね~」
「あのなぁ……」
呆れ気味にため息を吐くアンク。そんな彼女の耳にカーラの声が大きく響いた。
「竜巻がっ!」
全員が目を向けると紫色の竜巻が徐々に勢いを落としつつも色が薄くなっている。
「これって……どっちだ?」
「知るかっ!」
ノースが迷いながら問いかけると同時にアンクとミミトが竜巻に向けて走り出した。
「ちぃねぇ!」
「ウソだろ旦那っ!」
駆け寄っていく間にも薄らいでいく紫色と竜巻。その中心に着いた時にはただの風になってしまった。
「わふ……居ない」
辺りを見回してもダスクールもサルーのどちにも姿が消えている。ならばと匂いを嗅ごうとしたがミミトはすぐに咳き込んだ。
「苦しい……」
「バカ野郎、毒の魔力付きの風なんか思い切り吸い込むんじゃねえよ」
口は荒っぽいが抱きかかえて背中を擦るアンク。それで徐々に呼吸が落ち着いた所で今度は二人の背後で大きな破裂音が響く。
「わふっ?」
「今度は何が起きたっ!」
尻尾を立たせるほど驚くミミトを小脇に抱えてアンクが振り向くと子爵が呆然とした表情で立ち尽くしていた。その周囲にあった風の膜は消えてなくなっている。
続くもう週間連載 まおわん(仮) じゅーさんのにじゅうくっ!