昨日は、子どもキリストが釘で手を傷つける場面を描いたジョン・エヴァレット・ミレイの作品をご紹介しました。
今日は、キリストのこの手足の傷にまつわる絵をご紹介しましょう。
キリストのこの傷のことを「聖痕せいこん)」といいます。
聖痕せいこん)は、キリストが十字架にはりつけにされて処刑された時についたとされる傷のことです。

こちらの絵は、スペインのバロックの画家ベラスケスが描いた《キリストの磔刑》です。
「磔刑(たっけい)」とは、罪人を板や柱などに縛りつけ、槍などで殺す刑罰のことです。
ユダの裏切りによってユダヤ教の司祭達に捕らえられたキリストは、「神の子を名乗って神を冒涜した」という理由で死刑に処せられることになりました。
キリストは鞭で打たれた後、十字架を背負って処刑場であるゴルゴダの丘に向かい、2人の罪人とともに、十字架にはりつけにされて絶命しました。
十字架にはりつける際に、両手足を釘で打ち抜いてはりつけた為に、キリストの両手足に傷がつきました。
また、キリストが亡くなったかどうかを確かめる為に、兵士がキリストの脇腹に槍を突き刺したことから、キリストの脇腹にも傷ができました。
これらの傷が聖痕と呼ばれるものです。

とても痛々しいのですか、こちらの絵を見てみましょう。
キリストの両手足が十字架に釘で打ちつけられていますね。
右の脇腹にも刺し傷が見られます。
一般的な表現では、キリストの両足は重ねられて1本の釘で打ちつけられているのですが、こちらの絵では、セビーリャの伝統的な図像学に基づき、左右の足が別々に釘で打ちつけられています。

理想的な美しい肉体をもって描かれたキリストはすでに絶命しているようですが、うつむいた顔は死してもなお気品を湛え、背景の暗い色に浮かび上がるその姿はまさしく神々しいものですね。
ディエゴ・ベラスケス《キリストの磔刑》
ディエゴ・ベラスケス、《キリストの磔刑》、 1631-1632年頃、248×169cm、油彩・カンヴァス、プラド美術館、マドリード(スペイン)