August 2005
August 31, 2005
鮮度の意味するもの
NHKの党首討論をみた。歯切れのよい小泉節は相変わらずだ。それに比べて野党、特に民主党は今一つパッとしない。岡田さんの明瞭な話し方に好感がもてても、またその内容を理解できても、小泉を批判すればするほど、自民党の後塵を拝する印象はぬぐえない。もちろん郵政法案の対案を出せなかったのも原因だ。しかし理由はもっと深いところにある。
今の自民党はとにかく分かりやすい。経世会も壊滅し、抵抗勢力も今回の解散で追い出した。残っている抵抗勢力ですら今は大きな声もあげられない。まさに今こそが小泉が自ら目指す構造改革を行える環境だ。これに対し民主党は党内で抱える右派と左派の問題、それとたまに見える小沢副代表の影。小沢の政策は一流でも、彼が喋れば喋るほど党の抱える問題は浮き彫りになる。
国民は見てきた。たとえ中味がなくパフォーマンス上手だと言われても、既存勢力と戦い、壊し（旧橋本派）、そして追い出し（旧亀井派）てきた小泉。一方で左派の問題を抱え、小沢の顔色を全く無視の出来ない岡田。
政権交代の魅力は、なんと言ってもその新鮮さ。本来野党にあるべきその鮮度、はたして今の自民党をどれだけ上回ることができるのだろうか？
August 29, 2005
August 27, 2005
ぬか喜び？
24日、つくばEXが開通した。守谷〜秋葉原間32分、地方と都市の時間的短縮は本当にありがたい。
喜んでいるのは、利用する我々だけではなく地元の商工会も同様。駅前再開発に絡めた企業の誘致やテナントの活性による経済効果を期待している。沿線の街からの集客も期待しているようだが、ここでよく考えて欲しい。近隣から集客できるとしたら、その逆ももちろん起こりうる。まして秋葉原まで約30分となれば、気のきく人なら都内に足を延ばすはず。
時間的距離の短縮は時として地元の消費を他の地域(都心）にさらわれることも覚悟しなければならない。TXの開通に少々うかれ気味の商工会、聞くところによると世代交代もおぼつかない様子。都心に負けない魅力ある駅前開発ができるのか、いずれにしてもここ数年で勝ち組と負け組みははっきりする。
August 25, 2005
またまた縄文
縄文の原始美と宇宙観は以前にもここで記したが、縄文美を堪能するなら埼玉県寄居町「さいたま川の博物館」でおこなわれている「蘇る縄文」展がお勧め。（9月19日まで開催）
先日行った国立科学博物館での「縄文ＶＳ弥生」展とは規模では比較にならないが、展示されている土器や土偶などの質と稀少さにおいては遥かに勝っている。
中でも長野県曽利遺跡の「水煙土器」や山梨県の御所前遺跡の「誕生土器」は一見に値する。誕生土器は名前のとおり女性の出産を表現している。このような直接的表現のみならず、火焔土器や水煙土器に見られる燃えたぎるエネルギーのスパイラルは生命の神秘と宇宙観を彷彿させる。縄文美、それは脈打つ生命の現れ。
その後数千年の時を経て興るアールヌーヴォー。ラスキンやモリス、彼らが縄文に魅せられたという文献を目にしたことはないが、彼らが縄文を知っていたはずと思うのは私だけだろうか？
※写真上：誕生土器
August 23, 2005
縄文VS弥生 Part��
縄文VS弥生で思い出すのは建築界で行われた伝統論争。
これは1950年代半ばに起こったモダニズムと伝統建築をめぐる議論で、多くの建築家を巻き込んだ。中でもその代表が先日他界した丹下健三。彼は自らの論文「現在日本において近代建築をいかに理解するか−伝統の創造のために−」で伝統を精神としてではなく表現として、いわゆる創造の理論としての実践を説いていた。その中での「美しいもののみ機能的である」という有名な言葉は、彼の手による広島のピースセンターの陳列館が高床の正倉院や伊勢神宮をモチーフにしていることの現われであり、またその後発表した香川県庁舎に示される木割りの美しさを鉄筋コンクリート構造に統合する手法こそが、今日われわれが理解する最も弥生的な現れだった。
これに異を唱えたのが白井晟一。彼はこれまでの議論の対象が弥生的伝統のみであることに疑問を抱き対極である縄文的伝統を提示した。日本の建築界が縄文的なるものを初めて意識したのはこの時だった。しかし美術界においては既に岡本太郎が縄文文化における原始的な宇宙観とその美を見出し、その呪術的神秘美との戦いを行っていた。
やがて、この弥生的代表の丹下と縄文的代表なる岡本があるプロジェクトを通して対峙することとなる。1970年大阪万国博覧会、丹下は基幹施設プロデューサー、岡本はテーマプロデューサーとして参加した。万博のテーマは「進歩と調和」。これに対して丹下はお祭り広場を覆う“大屋根”（地上30メートルで大きさは108ｍ×292ｍ）で表現した。一方岡本は、「進歩と調和」に染まるモダニズムに大きく反発した。彼の創った“太陽の塔”こそ最も原始的なものの現れであり、中央に位置する顔は我々日本人が持つコンプレックスの象徴である団子鼻をモチーフにし、背中に広がる黒い太陽はまさにアニミズムそのもだった。
岡本太郎は縄文なるものを用い進歩の破壊を試みた。その表現こそが大屋根を突き抜ける太陽の塔だった。当時この案は誰もが否定的だった。やがて彼のプリミティブなエネルギーは弥生的なるものを乗り越え、太古の姿態が大屋根を突き抜けそびえ立つこととなる。そして大阪万博は大成功のもとに幕を閉じた。
大阪万博から35年、当時のお祭り広場に残っているのは進歩の象徴でも日本を代表した建築家のモダニズムでもない。両手を宇宙にめがけて広げ太古を臨み見る原始的なるもの、すなわち縄文そのものである“太陽の塔”。
我々はこれを見て何を思うのか。岡本太郎の見たもの、それは真の美しさであり真の価値だった。彼はそれらを表現する“自由”との格闘をし続けた。それも極めてフェアな戦いを。いま思うこと−真の自由を持ち続けて戦うもののみに凱歌はあがる。
August 22, 2005
宇宙の始原
国立科学博物館で催されている“縄文VS弥生展”に行ってきた。展示ブースも大き過ぎず、見学者参加のイベントや子供でも理解しやすいイラストつきの解説など、工夫のある内容でよかったと思う。
ただしこれはあくまでも歴史的見地における各文化の違いを理解するという意味においてのみ。残念ながら考古学ならびに美術的な部分に関しては全く物足りない。とにかく土器や土偶などの展示品が少なすぎた。私のように縄文の火焔土器に見られる原始美を堪能したい者にとってはなおさらだ。
縄文土器を見て思うのは、「ヨーロッパのプリミティブ、メラネシア、スキタイ、アイルランドのケトル・・・地球上のおよそかけ離れた地域、そして時代もばらばら、それぞれが独自に開かれている美をもつにもかかわらず、何ゆえこのように通いあう表情を持つのだろう。」
うねり（渦巻き）の中に潜む今にも爆発しそうなエネルギー、それはブラックホールをも呑み込むスパイラルとなり地球いや宇宙の連鎖を創造する。これはまさに宇宙の始原。時代、地域を越えた普遍のメンタリティーによる産物、これこそが美の呪力であり神秘的ダイナミズムだ。
※上の写真は私の使っているJALグローバルクラブのカレンダー11月、火焔土器の紹介です。
August 19, 2005
カラフル、ワンダフル！
今一番楽しんでいるのがこれ。フェリシモのカラーミュジアム、500色からなる色鉛筆。
描き味はFaber-Castelにかなわなくても、その色の豊富さは描くことを忘れさせ、観る者を楽しませてくれる。楽しみはそれだけにとどまらず、500色の色の名前がまた魅力的。
Curtain on a Moonless Night / Jealousy / Clown's Tears / Veil of Sighs / Ancient City at Moonlight Night ちなみにこれらは数ある紫色の一部です。微妙な色の違いはもちろん、名前からしたその色のイメージ、そして名前の作者自身を想像するだけでも楽しいものです。
※上の写真の一ケースが25色ですから、実際には20ケースになります。
August 17, 2005
破壊
今まで積み上げてきたものを壊すということは、非情に勇気がいる。ましてそれが実績として評価されてきたのであればなおさらだ。
"壊す”この行為の本質は、現在の矛盾を全身で表現することであり、妥協の余地はない。 ピカソが何ゆえピカソで在り得るかというのは、青の時代からバラの時代になり、キュビズム、新古典主義、超現実主義、抽象主義、超現実的創造と・・・変革を遂げてきたからであり、そこには自分に対する矛盾への馴れ合いなど存在しなかった。
「アヴィニョンの娘たち」 この作品は、まさにそれまでのヨーロッパ美学と伝統へのピカソの決別だった。一見目茶苦茶なように見えながら、完璧なコンポジシオン。迫力の中に潜むデリケートな諧調。そして何よりもゾッとする美しさ。これこそがヨーロッパ美学への挑戦であり、極めて高度なモラルの証明だった。その意味ではピカソを語る上でのゲルニカを越える歴史的記念碑だ。
今、日本でも派閥、自民党そして安っぽい常識が壊れようとしている。今回の解散が何を意味するものなのか、小泉の行動が日本の因襲を越えた高次元なモラルを生み出すきっかけとなることを信じたい。
August 15, 2005
60回終戦記念
TVをつけると、どこでも閣僚等の靖国神社参拝問題ばかり。訊くことは公人か私人か、毎年同じことの繰り返し。この質問に一体何の意味があるのだろう？ 公人であろうと私人であろうと、本人が参拝している事実に変わりはない。10年前ならまだしも、今になってもこんな質問しかできないマスコミのレベルの低さに呆れてしまう。
明らかに日本は変わった。不況といえども相変わらず高い水準の生活レベルと平和があたりまえのように思う、のほほんとした日本人が戦争などおこせるはずもない。60年という時は我々に富と快楽を与え、武力と偏った愛国心を一掃した。
そんな今、閣僚の靖国詣でがかつてのファシズムを啓蒙し軍国主義への足がかりとなるというのは、ナンセンス以外の何ものでもなく、仮に政府がその道へ誘導しようとも、富と平和に呆けた我々がそんな政党を支持するはずもない。その意味では有事の際にどうあるべきかを事前に論じることさえも許されないのが今の状況だ。
靖国神社、その器に何の意味もなし。そこにいるはずの英霊に敬意をはらうのみ。英霊がA級戦犯であろうがなかろうがあまり意味を持つとも思えないが、またそれ以上に西南戦争で朝敵（賊軍）とみなされた西郷隆盛でさえ奉ろうとしない靖国に何の意味があろうか。所詮そんな程度の靖国、目くじら立てるほうが次元の低さを際立たせる。
終戦記念日、靖国参拝、公人、私人、そんなことを問うよりも、不戦の誓い、平和のため、そして最悪の有事において我々は何をすべきか9条改正を含めてタブーを越えた論議が必要だ。
August 13, 2005
ガンバレ！
クラス会を仕切るＦ君から電話があった。Ｓ嬢が今回の衆院選に出るので浄財を募ろうとのこと。
むろん大賛成、しかし今回のマスコミの報道には顔をしかめたくなる。状況から小泉の刺客と言われるのは仕方ないにしても、彼女の学歴や経歴をネタに面白可笑しく報じることは不愉快だ。近い将来このような状況になるのは彼女も予想していたはず、しかしその時がこんなに早くこようとは夢にも思っていなかっただろう。
彼女は今までの女性閣僚のような“お飾り”とは確実に一線を画している。やたら過去の話題とその美貌に集中しがちだがその実力は霞ヶ関でもおりがみつき。もし彼女が国政に出たのなら、女性初の総理大臣になることを確信して疑わない。だからこそ、今回の自民党のごたごたの中で彼女の実力と真の姿が圧殺されることだけは是非避けて欲しい。
さつき、がんばれ！
