2010年04月24日

<レゾナンス 共鳴>その4 伊東宣明さん(出品作家)インタビュー

「自分」の境界線や、人間の「生と死」という根源的なテーマを
追求している伊東宣明(いとう のぶあき)さん。
これまでの作品には、人間の髪の毛で代用醤油を作る《≒醤油》や、
自身の尿を配合した石鹸を作る《BODY SOAP》、催眠術をかけられ
独白を始める人物とその様子を真似る人物を映像で対比的に捉えた
《幻視者/質問者と演者》などがあります。
今回の「レゾナンス 共鳴」展では、自身の祖母の昔語りと
最期の様子を伊東さん本人がなぞり、2面のスクリーンで見せる
《死者/生者》を出品。その意図やメッセージについてご本人に
インタビューしました。

――まず、今回、どのような形で出品依頼が来たのか
教えてください。


学芸員の大島さんから電話があって、こういう展覧会をするから
参加してくれませんかと。作品も最初から指定されていました。
私自身はその時点で大島さんと面識はなかったんですけど、
おそらく京都市立芸術大学の修了制作展で見ていただいたんじゃ
ないでしょうか。異存はないので二つ返事でOKしました。

――伊東さんの最近の作品は2つの映像や2枚の絵はがきが
並ぶなど、2つの状態や物を対比的に見せるのが特徴ですよね。
それは系統だったシリーズとして考えられているのですか。

一応はシリーズとして考えています。以前の作品は、髪の毛から
醤油を作ったり、僕自身の尿で石鹸を作るということをしていました。
今の作風になったのは、大学院でドゥルーズ(フランスの哲学者、
1925〜1995)の著作『シネマ』の読み込みを2年ほどやりまして、
そこから映像や鏡像のイメージに興味を持ったのがきっかけです。

――『シネマ』に書かれていることを造形化しているのですか。

いや、そうではありません。例えば石鹸を観客に渡したり、
醤油を舐めてもらった時に人は何かを感じるじゃないですか。
その「何か」を引き出す装置としての映像なんです。

今回の出品作は《死者/生者》というタイトルですが、実際には
死者はどこにも出てこないんです。2つの映像が過去と現在を行き来
している中で、死なるものを作り上げているのは観客自身です。
そういうことを表現する時に、今の手法がとても便利なのです。

――私は今までに何度か伊東さんの作品を見て、この人は自分の
境界線を探し求めているのかなと思ったのですが。


そういうのは実際ありますね。自分だったり、精神の境界線に興味が
あります。境界線を指し示そうとする時、鏡像は非常に使えるんです。
2つの映像が並ぶことで、こちら側と向う側が示されます。

――身体の一部が使われていた頃と最近の作品では、求めている
ものが少し違うように思います。テーマがより普遍的な方向に
行ってるのではないでしょうか。等身大から普遍性へ、みたいな。

身体を扱う以上、死は避けて通れませんからね。実は僕は今、
葬儀会社で勤務しているんです。

――そのことは事前にお聞きしていました。いつからですか。

昨年の4月からなので、もう1年になりますね。仕事の内容は、
お葬式の段取りや進行です。納棺もしますし、ご遺体の搬送もします。
ほぼ毎日通夜と葬儀を担当しています。

――作品で追求していたテーマをさらに極めたいという気持ちが
あったのですか。

極めたいというよりも、僕は大学に随分長く居たので、
そろそろ外に出なきゃいけないという時にどうしようかと。

選択肢は他にもあったと思います。そのまま大学に残る形も
あったかもしれないし、美術関係の仕事、全然関係のない仕事、
いろいろありますけど、自分が今後も作家としてやっていく上で、
生と死を扱いながら無関係なところに身を置いちゃいけないなと
思いました。無関係な場所から作品を作っても、どこか嘘っぽい
というか。「生と死」と言い切るならそれなりの現場にいて、
次の糧にして行かなきゃと。

――1年間勤務した感想をお聞かせください。

葬儀って、人生で最も悲しい瞬間ですよね。その現場に立ち会うと、
不謹慎と言われるかもしれませんが、時々美を感じることがあるんです。
人間が心からの感情を出す瞬間で、ご遺族の方が涙ながらに何かを
訴えているのを見た時に、本当に美しいな、と。

まあ、いろんな体験をしますよ。警察署に引き取りに行った時などは
ご遺体がよろしくない状態だったりしますし、身内のないご遺体で
お坊さんを呼べない時には我々がお経をあげています。

――ほとんど毎日勤務となると、作品を作る時間がないですね。

正直あまりないですね。でも、今後作品を作る時は一見死と関係ない
ものになるでしょう。テーマは一貫して身体なので、身体とか境界から
離れることはないでしょうけど、露骨に「死」ではないと思います。

――今回の出品作品では、実の祖母が亡くなる直前の様子を撮影
されていますが、ご家族の反応はいかがですか。

親父もお袋もすごく喜んでくれました。祖母の死に際を撮影しましたが、
祖母が望んだことでもあったのです。孫の中では僕が一番仲が良くて、
一緒に住んでいた時期もありました。とても可愛がってもらっていたので、
「お祖母ちゃん、撮ろうか」って言ったら、何も頼んでないのにあそこまで
喋ってくれて。病室で臥せっている時も、「お祖母ちゃん、撮るよ」って
言ったら何回かに1回は意識が戻って「いいよ」って。

――それは良かったですね。ああいう状態を撮影するのはご家族の
心情として難しいんじゃないかと思っていました。

祖母はあの映像から1ヵ月ほどして亡くなったんですけど、その時は
両親から「亡くなったお祖母ちゃんを撮らなくていいの?」って
聞かれました。それは違うなと思ったので撮りませんでしたけど。

――今回の展示で以前とは違う部分はありますか。

美術館にお任せしたのですが、ほぼ同じですね。僕が今回のために
したのは、映像の中で祖母が歌う「五木の子守唄」の歌詞カードを
リニューアルしたぐらいです。

――最後に、伊東さんの作品を見るコツというか、観客にこう見て
ほしいというのがあればお聞かせください。

11分ぐらいの作品なんですけど、そんなに長くないし、
とっつきも悪くないと思うので、ぜひ最初から最後まで見てください。
そうすればきっと何かを感じてもらえると思います。

伊東宣明 (1)伊東宣明 (4)

BODY SOAP21+1=1

蟷サ隕冶?・雉ェ蝠剰?・→貍碑?・竕帝・豐ケ
上の2点は「レゾナンス」展に出品されている《死者/生者》。
下の4点は過去の作品。《BODY SOAP》(中左)、《1+1=1》(中右)、
《幻視者/質問者と演者》(下左)、《≒醤油》(下右)

いとう のぶあき
1981年、奈良県生まれ。京都市立芸術大学
大学院美術研究科造形構想専攻修了。
立体ギャラリー射手座、海岸通ギャラリー・CASO
などで個展。2007年、「第10回岡本太郎現代芸術賞
(TARO賞)」入選(川崎市岡本太郎美術館)、ほか
展覧会多数。

レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート
4月3日(土)〜6月20日(日)
10:30〜19:30 ※最終入場は19:00まで。
月休 ※5/3(月)は開館。
当日大人1000円 大高・シニア(60歳以上)700円 中小無料
前売大人900円 大高・シニア(60歳以上)600円
サントリーミュージアム[天保山]
大阪市港区海岸通1-5-10
http://suntory.jp/SMT/

※前売り券は主要プレイガイド、コンビニ、大阪市営地下鉄売店
などで販売。
電子チケットぴあ(Pコード764-010)
ローソンチケット(Lコード59313)
割引優待券付き携帯版サイト
http://suntory.jp/smt/

出品作家
ヴァルダ・カイヴァーノ/アンゼルム・キーファー/
ジャネット・カーディフ/小泉明郎/マルレーネ・デュマス/
草間彌生/ライアン・ガンダー/ヴォルフガング・ライプ/
法貴信也/ポール・マッカーシー/イケムラレイコ/西尾美也/
伊藤彩/小谷元彦/伊東宣明/マーク・ロスコ/金氏徹平/
ラキブ・ショウ/アンドレアス・スロミンスキー/梅田哲也

関連イベント
学芸員と出品アーティストによるギャラリートーク
会期中の毎週土曜日に学芸員が会場内で展示作品の解説を行います。
時間はいずれも16:00〜(約70分)。参加無料。申込不要。定員40名。
ただし展覧会入場料が必要。
※下記の日には出品アーティストがゲスト参加。自作について語る
ほか、参加者とも対話します。
伊藤彩(5/8)、法貴信也(5/15)、金氏徹平(5/22)、伊東宣明(5/29)

キッズ・ワークショップ
小学生を対象としたワークショップを5月23日(日)に開催します。
参加費は一人500円。定員25名。要事前申し込み(4/30まで)。
応募の詳細は美術館ホームページでご確認ください。

展覧会見どころトーク
会期中毎日、ギャラリー入口前のレクチャールームにて展覧会の
見どころを解説します。
開始時間:11:00/12:00/13:00/14:00/15:00/16:00/17:00
所要時間は10分間。無料。定員40名。

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artkobujime at 20:00│Comments(0)TrackBack(0)「レゾナンス 共鳴」展 

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