2010年04月25日

<インタビュー>上田順平さん

一昨年に岡本太郎現代芸術賞の「岡本敏子賞」を受賞。装飾過剰な
陶オブジェが現代日本のハイブリッドな文化を体現しているとして、
高い評価を獲得した上田順平(うえだ じゅんぺい)さん。
そんな上田さんが、今度は五島記念文化財団の「美術新人賞」を受賞。
同賞の助成を得て、秋からメキシコに1年間の海外研修へと旅立ちます。
現在、京都の画廊で個展を開催中の彼に、受賞にまつわるエピソードや
新作の意図、メキシコでの目標について訊ねました。

まずは、五島記念文化賞の美術新人賞を受賞されておめでとう
ございます。受賞の特典はどんなものですか。

賞金と海外研修費です。

自分から申請したのですか。

いえ、自分からは申請できなくて、推薦された10数人の作家の中から
さらに審査をして選ばれるんです。

毎年何人選ばれるんですか。

美術部門は2人です。1人の年もあるそうです。

かなり狭き門ですね。

本当に、ノミネートされただけでも嬉しかったです。僕は一昨年に仕事を
辞めてメキシコに行くつもりでしたが、それだったら自費で行くしか
ありませんでした。たまたま岡本太郎現代芸術賞で岡本敏子賞を受賞し
(2008年)、展覧会を行うことになったので先延ばしにしたら今回の
受賞があったのです。去年はそんな話はなかったし、恐らく来年もないと
思う。不思議な巡り合わせが続いています。

岡本敏子賞の受賞記念展の時、自分は岡本太郎さんに挑戦するつもり
で展示しました。最初は達成感がありましたけど、だんだん太郎さんが
生きていたら「何やってるんだ、お前は!」って怒られるような気がして
来て。それは自分の中に0.001パーセントでも違和感があったのかも
しれないと思いました。

次も同じ方向でやると何かを駄目にしてしまうような気がしていたの
ですが、ちょうどその頃に《振り返る鹿》という埴輪を見ました。その埴輪
は自分が求めている生命感を、自分とは全く違う形で表現していました。
作り込みは全然甘いけど、とても生命感があって、それが今回の作品に
結びついたんです。

新作はこれまでのデコラティブな造形とは真逆のシンプルな
フォルムです。このままだと進歩が止まってしまうという
危機感があったのですか。


そうですね。拡大とか複雑にすることでしか前作を越えられなくなる、と。
そんな表現を僕は求めていません。自分が好きな音楽でも、例えば
ロックには凄く激しいものもあるけど、アンプラグドのギター弾き語りも
あります。今までのは音をいっぱい重ねてグルーヴ感で勝負みたいな
感じですが、新作ではアンプラグドで音が鳴っている時間と鳴っていない
時間を等価に扱う、みたいな表現をしたかったのです。

メキシコに行く前に、これまでの自分をリセットするという気持ちも
あったのでは。

自分をアジャストしたいというのはありました。今回の受賞は本当に
すべての歯車がピタッと決まった感じなんです。ある知り合いからは
「これが一つの節目かもしれないね」と言われたのですが、節目を
間違うと作品を殺してしまったり、惰性でスタイルを保持するために
制作するようになってしまいます。今自分がすべきなのは、感じた
違和感をそのままにせず、少し見えた光を追いかけることじゃないかと
思うんです。

新作の表面には葉っぱの模様がびっしりついていますね。

葉っぱを成形後の立体に押し当てて模様を転写するんです。新作では
できるだけ装飾を排除しているのですが、それでも何か欲しかったん
ですね。葉っぱの葉脈は血管にも見えるし、全体が模様で覆われている
ことで一体感が出せるのではないかと。

新作は男と女と犬と水鳥と魚がモチーフですね。

一番最初に思いついたのは水鳥です。羽ばたいてるんじゃなくて、
水の上に浮かんでいて、ちょっと首が長い。昔の僕の作品で注ぎ口の
形をしたものと少し似ています。自分が好きな形なのかもしれません。

男の像は一番最初に作った作品で、窯の中で倒れたものです。傷跡が
分からないように繋ぎ合せて出品しました。あれは若干の自画像で、
どうしようもない自分が「仲良くしようぜ」と握手を求めているような感じです。

形も今までのような量感のあるものではなく、空ろでありながらも確かに
存在しているような、本当にギリギリの形で行きたかった。美しいものを
作って美しいと思われるのではなく、どこに魅力があるか分からないけど
惹かれるもの、見る人がすっと作品の中に入っていけるようなものに
したくて、敢えて形にはこだわりませんでした。

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「上田順平展 パート2:カンゲン」(5月1日まで開催中)の展示風景

話は変わりますが、何故メキシコに行こうと思ったのですか。

客観的に日本を見つめる機会が欲しいと思ったのです。一定期間海外で
生活して、それでも今まで自分がやってきたステレオタイプでキッチュな
日本像が残るのであればそれでいいし、変わったならそれでもいいと。

メキシコを意識し始めたのは岡本敏子賞を受賞する少し前です。
その理由は「ウルトラバロック」という装飾過剰な建築ががあって、
僕は日光東照宮に近いものを感じていました。

また、その成り立ちが歴史の上で様々な文化のぶつかりの中から
オリジナルを生み出してきた日本文化と共通しているし、メキシコ人の
半分以上はメスチソというスペイン人とネイティブの混血の人たちで
構成されていて、自らのアイデンティティを模索している感覚が
今の日本に近いのではないかとも思っています。

あと、メキシコの仮面ですね。具象の上に具象を重ねてグワーッと
来るエネルギッシュな感じがすごいなと。他にも縄文文化と近い感じが
するマヤ・アステカ文明とか、僕にはないものがメキシコにはあるような
気がします。

メキシコではどこで制作するのですか。

学校みたいな焼き物の施設に受け入れてもらいます。
学生ではなく研究員という名目なので、割と自由に動けそうです。

メキシコでやろうと思っていることはありますか。

そういうのは特になくて、とにかく見たいものがいっぱいあります。
あとは、全身で感じたいということですね。

何故か僕の好きなものはメキシコと縁があって、近年までメキシコで生産
されていたフォルクスワーゲン・ビートルもそうだし、コカ・コーラの消費量
も世界一らしいです。改造車もチカーノ(米国在住のメキシコ人)が
始めたんです。岡本太郎さんも出かけていたし、フリーダ・カーロもいた。
僕が愛用する刺繍の入った上着も後で気付いたらメイド・イン・メキシコ
でした。好きなものがことごとくメキシコと関係しているので、逆にちょっと
怖いぐらいです。

出発はいつですか。

8月中に出国して、9月から活動を始めます。

画廊の方に聞きましたが、それまでの間に日本中を回るんでしょ。

そういえば、日本のことも良く知らないのに海外に行ってどうするんだ
って。まず日本を知ってから海外に行くべきだと。一夜漬けみたいな
ものですが、行かないよりはましだと思いました。

自分が海外生活をするのは少し早い気もしているのですが、人生には
タイミングもあるので、やっぱり今しかない。でも行く前に最低限やって
おかなきゃいけないことがあるので、取りあえず北海道から九州まで
回ることにしました。沖縄は既に何度も行ってるので今回は外しました。
めでたく失業中なので、時間だけはたっぷりありますから。

1年後に脱皮した上田さんの姿が楽しみですね。

脱皮できるんだろうか……(笑)。でもこんな経験は滅多にできないから、
人生の宝物になるかもしれません。とにかく体調にだけは気をつけて、
自分のスタイルを守るんじゃなくて、どんどん壊して行く方向でやって
行きたいです。

破壊的創造って奴ですね。

先日ボブ・ディランのコンサートに行ったんですけど、格好良かった
ですね、あの人は。ずっとやり続けていて、69歳なのに激しかった
ですもん。あんな風になりたいです。

帰国後に展覧会が行われるということなので、楽しみにしています。
本日はどうもありがとうございました。

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「上田順平展 パート1:帰ってきたウラシマピーパーパン」(4月10日で終了)の展示風景

うえだ じゅんぺい
1978年、大阪府生まれ。2005年、京都市立芸術大学
大学院修士課程工芸専攻陶磁器修了。2004年に初個展。
国内外で展覧会多数。2008年、「岡本太郎現代芸術賞」で
「岡本敏子賞」を受賞。2010年、「平成22年度五島記念
文化財団 美術新人賞」を受賞。

上田順平展
パート1:帰ってきたウラシマピーターパン
4月3日(土)〜10日(土)
パート2:カンゲン
4月13日(火)〜5月1日(土) 
11:00〜19:00 日月祝休
イムラアートギャラリー
京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町31
http://www.imuraart.com/

上田順平さんの過去記事
http://www.recommend.ecnet.jp/20080422ueda.html
http://www.recommend.ecnet.jp/20060927ueda.html



artkobujime at 22:40│Comments(0)TrackBack(0) インタビュー 

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