木津川アート2010

2010年11月18日

<木津川アート2010>取材後記

遅ればせながら「木津川アート2010」の取材後記を掲載します。
掲載が遅れたのは、新聞社から同イベントの取材依頼を受けており、
記事が出た11月13日(土)まではアップするのを見合わせたからです。

なお、この文章は新聞記事をそのまま転載したものではなく、
私の主観をより強調して新たに書き起こしたものです。

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今年は地域型アートフェスの当たり年で、私も「瀬戸内国際芸術祭」を
皮切りに、「あいちトリエンナーレ」、「六甲ミーツ・アート」、「BIWAKO
ビエンナーレ」、「奈良アートプロム」、「西宮船坂ビエンナーレ」そして
「木津川アート」と、立て続けに取材を続けて来ました。

それらに順位をつけたら「木津川アート」は何番目か?と聞かれたら、
私は「第2位」と答えます。もちろん、フェスごとに予算や組織の規模、
開催の背景、有料か無料かなどの相違点があり、単純に比較できない
ことは承知の上です。

第1位は「瀬戸内国際芸術祭」です。「瀬戸内」は、内容、規模、動員数、
世間に与えたインパクト、事前のプロモーション、マスコミ対応……、
あらゆる面で圧倒的でした。

では、他のフェスと比較しても低予算・小所帯に入る「木津川アート」が
何故2位なのか。それはホスピタリティ(歓待の精神)が他より上回って
いると感じたからです。

まず、事前に入手した四つ折りのパンフレットが、たいへんよくできて
いました。簡略ながら十分な実用性を持つ地図、他所からの来訪者に
とって非常に嬉しいバスの時刻表、そして各会場の作家リストなどが
上手にまとめられており、実際に取材で現地を回った際も重宝しました。
また、必要以上に格好をつけることなく、分かり易さと親しみやすさに
徹したデザインも評価されるべきです。

次に、JR木津駅の改札口に「木津川アート」のスタッフがいて、上記の
パンフレットや別の地図を配布したり、案内を行っていたことです。
これは一見他愛もないことに思えますが、私が出かけたアートフェスで
実践できていたのは、「木津川」と「瀬戸内」と「あいち」ぐらいです。
(「瀬戸内」は各島の港に必ず案内所があり、「あいち」は市中に大勢の
ボランティアスタッフを配置していました)

実は、駅構内にコーナーを設けるのは簡単ではなく、自治体や地元を
代表する企業など、よほど信用のある組織の介添えがなければ、
(つまり、公共性を担保してくれる存在がいなければ)鉄道会社は場所を
提供してくれません。また、地元住民も積極的に協力してくれません。

他のアートフェスでは、この点で非常に苦労しているケースがありました。
イベントのホスピタリティを向上する上で大きな関門となる、自治体や
住民との良好な関係をきちんと築けたことが、「木津川アート」を高く
評価する一番の理由です(少なくとも、私の目にはそう見えました)。

ここまで読んで「なんだ、結局官製イベントを評価するのか」と毒づく方が
いるかもしれませんが、それは違います。私は官製が良いと言っている
のではありません。地域型アートフェスは、「地域」と「住民」の絆をアート
を触媒にして刷新することが大きな目的です。その両者と日頃最も密接
に関わっているのが自治体なのだから、自治体とのパートナーシップ抜き
に地域型アートフェスの目的は達成できない、と言っているのです。

例えば、アーティストやキュレーターが自治体の援助を一切受けず、
自分たちでスポンサーを見つけるなりしてアートイベントを開催したと
します。彼らの意気や実行力は買いますが、それらを一連の地域型
アートフェスと同列に並べられるでしょうか。私は別物だと思います。

話が長くなりました。ここらで話題を変えましょう。
もう一つ「木津川アート」を評価する理由を挙げたいと思います。

取材中、「木津川アート」には裏テーマとでも言うべき、もう一つの側面が
あることに気付きました。その切実さ、リアリティが、他のアートフェスより
も遥かに深く私の胸に突き刺さったのです。

会場の一つ「鹿背山エリア」は、豊かな自然環境が大きな魅力となって
います。緑濃い山並みと、その麓の民家の連なり、地元名産の柿畑
などが、この地域ならではの景観を形作っているのです。作品展示を
見るためにエリアを歩いていると、「まるで楽園にいるみたいだ」と幸せな
気持ちになりました。

ところが、「大仏鉄道遺構付近」から「梅谷公民館」へと移動する途中で
衝撃的な風景に出くわしました。山がごっそり削られて、宅地開発が
始まっているのです。付近に工事の概要を示す看板があったので
チェックすると、最終的には「大仏鉄道遺構付近」まで開発が進む予定に
なっています。ついさっきまで私が喜びに浸っていた「鹿背山エリア」の
豊かな環境が、あと数年で失われてしまうかもしれないのです。

木津川市(3年前に合併するまでは木津町と山城町と加茂町)の
JR木津駅周辺は、この20年間で大きな変容を遂げました。
大阪・京都の通勤圏に組み込まれ、大規模なベッドタウンが幾つも
誕生しています。そして次なる開発地が、駅東側の山林に当たる
「鹿背山エリア」という訳です。

その事実を生で見た私は、「今以上の開発はやめてほしい」と
思いました。それに、人口減少時代に入った現在、高度成長期の
ような大規模開発を行って、果たして元が取れるのでしょうか。

しかし、地元民の間では、特に地権者の間では、開発を望む声も
少なくないそうです。日本は民主主義の国ですから、住民の多くが
反対していれば計画は止まっていたはずです。現在も開発が進んで
いるということは、それが木津川市民の過半数の意見なのでしょう。

「木津川アート」では、この事実に対し中立の立場を取っています。
ただ、地元には無関心な人も少なからずいるらしいので、是非この
機会に木津川市の今を知ってもらい、地元の現在と未来に関心を
持ってほしいそうです。開発が成功して市が栄えても、逆に造成地が
売れず借金が増えても、最終的に責任を取るのは住民です。
アートフェスを通じて市民の意識が高まるなら、また、他所から来場
した観客が「自分の故郷はどうなっているのかしら」と考えるきっかけに
なれば、それだけで「木津川アート」は成功と言えるでしょう。

地域型アートフェスと聞くと、“地元の魅力を再発見”とか“アートで
町興し”的なスローガンを連想しますが、「木津川アート」ではそれらに
加えて“変わりゆく郷土への思い”が込められています。この重層性、
含蓄の深さこそ、私が「木津川アート」を高く評価するもう一つの理由
なのです。

来年もしくは数年後に2回目の「木津川アート」が開催されたら、
鹿背山エリアの一部はすっかり景色が変わっているかもしれません。
その姿を見るのはつらいですが、一方でやってほしい気もします。
自然か開発かの構図が露わになるので、エコロジーの看板を盾に
抗議する人(主に他所者)が増えるかもしれません。そんなリスクを
冒してまで自治体が協力してくれるとは思えませんが、もし実現したら、
「木津川アート」は日本のアート史上で特別な評価を獲得するかも……。
そんな夢物語でこの原稿を締めたいと思います。

「木津川アート2010」公式サイト
http://kizugawa-art.com/
「木津川アート2010」ブログ
http://kizugawa-art.jugem.jp/

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2010年11月04日

<木津川アート2010>取材2日目 木津本町エリアの古い建物

今日回った木津本町エリアには、古くて味のある建物が沢山あります。
番外編として、それらの一部をご紹介します。アート作品だけでなく、
街並みや自然を楽しむのも地域型アートフェスの醍醐味。是非こちら
もお見逃しなく。

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今回の特集では、原稿の依頼を受けたという事情から敢えてテキストを
省いて掲載しています。しかし、フォトアルバムのような体裁で終わる
のは忍びないので、後日何らかの形で自分なりの総括をするつもりです。
仕事の記事が世の中に出て、しばらく経ってから取り組むつもりなので、
「木津川アート2010」が終わってからの掲載になるかもしれませんが、
気長にお待ちいただければ幸いです。

「木津川アート2010」公式サイト
http://kizugawa-art.com/

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<木津川アート2010>取材2日目 木津本町エリア

昨日に続き、「木津川アート2010」の取材に出かけました。
今日回ったのは木津本町エリア。JR木津駅からほど近い市街地が
舞台です。会場は5カ所なので決して多くはありませんが、
26組の作家が参加しているので結構見応えがあります。
歴史のある古民家、商家、料亭、銀行の支店跡に入れるのも魅力です。
3時間もあれば全会場を巡れる手軽さも長所と言えるでしょう。
では、昨日同様、画像で様子をご覧ください。

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今日は実行委員会のリーダーである佐藤さんにアテンドしてもらいながら
会場巡りをしました。貴重な話を幾つも聞けたので、(新聞の)記事に
厚みを持たせられそうです。佐藤さんとスタッフの皆様に感謝します。

「木津川アート2010」公式サイト
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2010年11月03日

<木津川アート2010>取材1日目 鹿背山エリア、上狛エリア

京都府木津川市の街中と山間部を舞台に開催される
「木津川アート2010」が今日からスタート。さっそく取材に出かけました。

今日の朝にアップした記事にも書きましたが、今回は新聞社から
仕事を請け負っているので、現時点でリポートはできません。
なので、画像のみで今日の様子をお伝えします。

以下は鹿背山エリアの様子です。展示場所は6ヵ所あります。
所要時間は約4時間です。

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以下は上狛エリアの様子です。ここは松原邸の1カ所のみです。

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今日、は午前11時から午後5時まで、約6時間かけて取材しましたが、
それでも木津本町エリアまでは回れませんでした。
徒歩では1日で全エリアを回り切れないということがよく分かりました。
どうしても1日で回りたい人は、自転車を持参するか、バイクや自動車で
出かけるべきでしょう。ただし、自動車は駐車場所に難儀するし、
それ以前にイベントの趣旨と合わないので、おすすめしません。

明日は、実行委員会の代表である佐藤さんに取材すると共に、
木津本町エリアを取材します。今日と同じスタイルで報告しますので、
ご期待ください。

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