萌え豚三人娘伝 ~外道ロリコンネットワークの罠

【二条 愛羅】Aira Nijo 文章/イラスト 
ついったーはこちら!!!https://twitter.com/aira_nijo9
キャラクター紹介はこちら→きゃらしょうかい

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寡黙な兵士に四本の剣が襲い掛かる!

その時! 大きな黒い影が棒のようなもので一太刀、四本中三本を
はじき飛ばした。

残る一本を華奢な兵士が銃撃で弾き飛ばす。

「大丈夫ですか、お嬢様」

大きな老紳士は紳士的口調で、寡黙な兵士を引き上げた。

「じいや!」

寡黙な兵士は高い声で嬉しそうに答える。

メットを取り、素顔が露になると……なんと、彼の正体は
太刀川姫子であったのだ。

華奢な兵士が驚いて腰を抜かす。

「お、女の子!? なんということです!」


隊牙は不適な笑みを浮かべながら、姫子のほうを向いて言った。

「ほう、これはこれは姫子お嬢様……まさかあの兵士がお前だったとはね。
驚いたよ。こちらから探しにゆく手間が省けたというもの……クックック」

彼に出来た一瞬の油断と隙をつき、真後ろから大柄の兵士が接近する。

「油断したな隊牙ァァーーッ!! お前の敗因を教えてやるッ!!
それは、自分の強さを過信しすぎたことッーーー!!!」

「オレのパワーは隊の中でナンバー1。夢太郎よりも上だッ!!
てめえのスカした面(つら)をぶっ潰してやるぜェェーーー!!!」

「うおぉぉぉぉぉおお戦重撃(バトル・ハンマー)ッッ!!!」

大柄な兵士は対ムタラ人用ブレードのモードを独自の鈍器モードに切り替え、
右手のブレードをまるで鈍器のような形状に変えていた。
飛び上がり、右斜め上からそれを振り下ろす。

彼の100キロを超える体重と鈍器の重さが重なり、威力は凄まじいもので
あった。隊牙の左頭部へまともに直撃し、彼の頭部もろとも地面に叩きつけた。

地面に大きな、クレーターのような穴が空いてしまった。

「ハァハァ……どうだ。さすがの隊牙でもこの一撃を浴びりゃあ……」

クレーターの中から、大きな男がゆっくりと起き上がる。

「齋藤……い、いくらこの隊牙といえども少しは効いたぞ……」

「なっ!?」

遠くから見ていた夢太郎が、身を乗り出して叫ぶ。

「齋藤さん!!! に、逃げろォーーー!! 逃げるんだッッ!!」

隊牙の拳が、一瞬にして大柄な兵士、齋藤の左腕、右足を吹っ飛ばした。

「ゆ、夢太郎……」

「齋藤さんーーーーッッ!!」

夢太郎が齋藤へと近づく。
息も絶え絶えに、彼は語りだした。

「お、オレとしたことが力及ばず……」

「喋っちゃだめです!」

「隊牙を止めてくれ……ああなっちまったのはオレにも責任が……。
た、たの……」

「……」

大柄な兵士は息を引き取った……。

南太平洋に浮かぶ小島……。

地図にものっていないその地域。
美少女を誘拐し、脳を改造して自分たちの性欲の捌け口とする
"美少女木偶"計画を着々と実行している狂集団……。

「外道ロリコンネットワーク」

の本拠地であった。

「隊長!! 無理です、追いつかれますッ」

黒いヘルメットを被り、全身を防弾スーツで覆った
兵士たちの姿があった。
彼らの目前には人成らざる者、異形の者としか言えないような
奇妙な魔物の軍団があった。

一人、またひとり、魔物の手に掛かり兵士は倒れてゆく。

「ひるむなッ 急所を狙え!!」

奇抜な、赤毛の少年の姿がそこにはあった。

「俺様が"星爆撃"で脱皮したムタラ人の成虫を粉砕するッ!
お前たちはまだ成虫になっていない他のムタラ人を
三人一組になって叩け!!」

ムタラ人の成虫は、少年の約二倍ほどの速さで彼に近づいた。
そして、前傾姿勢ながらも頭頂部に生えている鋭い触覚を
振り回して少年に突進した。

彼は皮一枚切らせて触覚の一太刀を回避し、突進の反動で
明後日の方向を向くムタラ成虫に向かって両手をかざした。

左足で立ち、右足は宙に浮かせたまま、少年の両手が
光輝いた。

「死ねぇぇぇぇーーーーッッ」

「星爆撃(スター・バースト)ッ!!」

少年の両手から放たれた星型の物体は、ムタラ成虫の首筋へ
直撃。一瞬で爆発し、ムタラ成虫の頭部は粉々に爆裂した……。
青い血とみられる液体が爆散し、兵士の黒い衣服やメットへと
付着してしまった。

「ふー。さすが夢太郎隊長だ」

3対1とはいえ、ムタラ人の幼虫は強力である。
押される者、不意を付かれ絶命する者などさまざまであった。

一人の兵士が単独でムタラ人の幼虫に突っ込む。

「お前ッ 無茶だ! やめろ!」

無謀な兵士は、左手につけた銃剣から収納式の
対ムタラ人用接近戦ブレードを突き出した。

ムタラ人は二人掛かりで兵士を囲み、腕を鞭打たせて
襲い掛かった。

左から来る触角をスピードと重さが乗る前に左足を
頭くらいまで上げて蹴り上げ受け流す。

右からくるムタラ人の腕をすばやく接近戦ブレードで
斬り落とした。

「グギャァァィィィ」

ブレードを振り下ろした反動で回転し、ムタラ人の顔を
左脚で一回、右足で一回蹴り飛ばし、接近状態から脱出した。

「……」

辺りの兵士たちは驚愕していた。

「な、なんだアイツ……あんなやついたか?
並みのスピードと身のこなしではないぞ」

「……」

寡黙な兵士は、無言で前方を指差した。


そこには大柄で身長が4メートルはある男が仁王立ちしていた。

「夢太郎よ。貴様、組織を裏切るつもりか……」

赤毛の少年、夢太郎は拳を突き上げて叫ぶ。

「隊牙……雅雪!! てめえ、このムタラ人の大群はどうしたんだ!?」

「わからぬか。ムタラ人こそ我々の忠実なる道具よ」

「他の一般兵はどうした!?」

隊牙は、少し下を向きながら目を瞑り、微笑を浮かべる。

「フッ、お前はムタラ人の材料を知っているかね?」

「なに!? どういうことだ隊牙!!」

彼は懐から一枚の写真を取り出す。それは……。

「あ、愛歌……どうしてお前がその写真を……」

「先ほど夢太郎、お前が爆殺したムタラ人」

夢太郎の顔から血の毛が引き、ゆっくりと後ろを向く。
爆散したムタラ人成虫の遺体を恐る恐る確認した。

「こ、このネックレスは俺様が妹、愛歌にプレゼントした
物じゃねえか……」

隊牙がムタラ成虫の前に座り込む赤毛の少年の元へと近づき、
顔を彼の横にくつけて邪悪な笑みを浮かべた。

「ムタラ人の原材料は人間……我々外道LNに連れ去られた
美少女木偶材料にする価値のない少女、使い物にならん兵士、
さまざまだよ」

「う、うぁぁぁぁああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」

ドガガギャガガッ

隊牙の背中に兵士たちの銃撃が命中した。
しかしそれは貫通せず、地面へと弾が転がってゆく。

寡黙な兵士を中心に、生き残った兵士が陣形を組んでいた。

髭の生えたいかつい、大柄の兵士が叫んだ。

「チィッ、完全に精密射撃が命中したのに!」

もうひとりの華奢で身軽な兵士が続けて喋りだす。

「おかしいですね。この距離で私たち六人の銃撃を
まともに受ければムタラ人幼虫程度なら即死のはずです……が」

動揺する兵士たちをよそに、寡黙な兵士がようやく口を開く。

「…………人間ではない」

隊牙がゆっくりと後ろを向く。そして、猫背気味で兵士たちの
ほうを睨みつける。

「ハッハッハ、ようやく気づいたかね。そう、この隊牙。
肉体を生物兵器として改造しているッ!!
その硬度はムタラ成虫の二倍!! そして、腕力はムタラ成虫の
三倍よ!」

「死ねッッ 暗剣殺(アサシンブレード)ッ!!!」

隊牙は寡黙な兵士に狙いを定め、10本の小剣を一瞬にして
連続で投げた。

「……!」

寡黙な兵士は小柄な体と柔軟性を活かし、二本の剣を回避した。
追撃の三本の剣を対ムタラ人用ブレードと左脚で弾いたが、
一本の剣が利き腕である左手を貫通してしまう。

残る四本が体勢を崩した寡黙な兵士に襲い掛かる。



可愛らしい少女は、寝巻き姿のままでコタツに腰から下を
居れていた。寒そうにしている……。
かじかんだ手を口元に近づけ、息を当てながら、隣に
座っている少年に横目で尋ねた。

「ゆめたろーさん」

「ん? なんだよ。俺様のことは夢太郎と呼び捨てでいいぜ!
なんせ、歳も同じくらいだろ」

「じゃあ、ゆめたろー。貴方もしかして、外道LNの……」

それまで笑顔になっていた少年の顔は、急に先ほどまでの
険しい表情に戻ってしまった。

姫子のほうから目をそむけ、うつむきながらコタツの上に
置いてあるみかん付近に視線をやり、少年は口を開いた。

「ああ。外道LN死天王の夢太郎だ……。姫子、お前を
生きたまま本部に連れ去るのが目的だった」

向かいに座っていた老紳士が、真剣な表情で目を瞑りながら
紳士的に訊いた。

「何故、姫子お嬢様を?」

「外道LNの美少女ネットワークには、全国の美少女が登録されている。
その北関東支部で、我々の理想的な美少女に姫子が選ばれたんだ」

「なんと!」

「いつもの総帥の手段としては、美少女を連れ去り、脳を改造して
他者の命令に完全服従する美少女木偶(デク)に改造することだ!」

少年は急にコタツから飛び出し、その勢いで姫子の方向を向いた。
正座の状態で、両手を彼女の方向に突き出した後、地面にこれを
つけた。そして、頭を地べたにつけた。

いわゆる、土下座……である。

「すいませんでしたぁぁああーーー!!!」

「ゆめたろー、どうしたんですか、いきなり?」

少年は地べたに伏した頭をゆっくりあげる。
その奇抜な赤髪ヘアーの下にある若々しい顔は、青ざめていた。

「俺様は……女は子供を産む道具だと思ってたんだ。
男の命令に従う道具にすればいいと……」

「実姉に性的暴力を振るわれていた……まだ小さい頃だ……。
女なんてみんな、姉みたいに薄汚れた、欲望の塊……カスだと思った……」

「ゆめたろー。あなたは……」

過去を語る少年に、姫子が一歩近づいた。うなだれる肩に
そっと右手を置いた。

夢太郎は顔を上げ、可愛らしい少女と真正面から向き合う。

「でも姫子とじいやさんに会って考えが変わったよ。こんなにも、
気持ちがあたたかい女の子がいるんだな」

姫子のほうから少年に抱きついた。
そして、大きな瞳から涙を流しながら、少年に囁く。

「辛い思いをいっぱいしたんですね……」

「もう、昔の話だぜ」

しばらくして、少年は可愛らしい少女を自分から突き放した。
そして後ろを向き、右手をポケットに突っ込みながら左手を
挙げて歩き出す。

「全く、姫子! お前のせいで組織を裏切ることに
なっちまったじゃねえか」

「ゆめたろー!」

「できねえよ……とても。お前みたいな良い奴をさらって
木偶にするなんてな……」

靴を履き、玄関を空けようとする少年の背中に向かって
遠くから姫子が叫んだ。

「あの、私やリサさんと一緒に、普通の学校生活を送ることは
出来ないんでしょうか!?」

「ゆめたろー、貴方ならまだやりなおせると思うんです!
一度は暗黒の道を歩んだとして……」

「無理だぜ。もう……」

太刀川家を去る少年の姿があった。男の背中であった。
姫子はそれを見送るしかなかった。

当然、組織を裏切れば抜け忍のごとく、追っ手との戦いに
なるであろう。

少年は、姫子やじいやとの触れ合いによって、本当の人の暖かさ、
そして姫子から愛を貰ったのだった。

「太刀川姫子ぉぉぉぁぁぁぁぁあああああ!!!」

ドンッ

太刀川家の玄関(横に空けるタイプ)を勢いよく空ける若い男の姿。
髪は赤く逆立った奇抜ヘアーで、顔こそ美形だが眉毛が無く、背も低かった。

奥のほうから着ぐるみパジャマ姿の可愛らしい少女が出てくる。

「なんですか、騒がしい……」

「ヘェッヘッヘ、てめえが太刀川姫子か! うわさ通りの超美少女!
いい女だぜぇ~」

「いきなり人の家に入ってきて下品なこと言わないでいただけます?」

「ハッ、減らず口を叩いてられるのも今のうちだぜぇ~!
なんたって俺様の目的はお前の体を無理や」

グゥォ~

大きな音が奇抜な赤毛少年の腹から鳴った。
彼は赤面してしまい、可愛らしい少女は思わず笑ってしまった。

「あはは」

「てめえ! 笑ってる場合じゃねえだろがッ!!」

辺りの空気はすっかり和んでしまい、少女は赤毛少年の近くへと
歩いていった。

「お腹すいてるんですか?」

「う……うるせえ! 朝飯食ってくるの忘れたんだよ!」

「いまじいやが朝ごはん作ってますから、よろしければ
食べません?」

「なっ」


しばらく沈黙が続いた後、奥から老紳士が出迎えた。

「これはこれは……朝早くから姫子お嬢様にお客様ですね。
ささ、奥へどうぞ……」

あまりに完璧過ぎる紳士対応に、少年も噛み付く気力を
無くしてしまっていた。

「お、おう」

少年の目に大きなコタツの上にならぶ豪華な和食の数々が
飛び込んできた。

彼は目を丸くしながら横に居る姫子に語りかけた。

「すっげえ!! これ、本当に俺も食っていいのか!?」


「いただきます」

姫子、じいや、少年の三人は、お行儀よく食事を始めた……。

「あら、あなた見かけのわりにずいぶんお作法が上手ですのね」

可愛らしい少女がそう尋ねると、少年は姫子の方向に顔を向けた。
そして、誇らしげな、得意げなうざったい笑顔で答えた。

「ヘッ、こう見えても俺様んちは名主なんでな。
作法から帝王学まで厳しく躾られててよ~」

「まあ、そうだったんですね! ええと……」

「俺様の名は夢太郎!」

自分の名を少年が勢いよく言い放つと、
姫子はにっこり笑い、両手を顔の前で合わせて言った。

「ゆめたろーさん。ですか。とっても素敵なお名前!」

食事も忘れて見詰め合う少女と少年。
それをコタツ越しの距離で見守る老紳士には、これが大変
微笑ましい瞬間に写ったのであった。

リサの脳裏に青白い男の記憶が入り込んでくる……。


……。


薄暗い部屋に男は座り込んでいた。

お気に入りのアニメである"あけびましゅまろう"と
"第参若草物語"をループ再生しながらただ気持ち悪い笑みを
浮かべていた。

小学校の頃、凄まじい"いじめ"を受けた。以来こころに傷を
負った男は、いわばそれを言い訳に働きにも出ず、ずっと
部屋の一室に閉じこもっていたのだった。

いわゆる、不登校からの引きこもりである。

男が風呂へ入りに部屋を出ると、部屋がある二階方面から
かすかな物音が聞こえた。

「な、なんだろう……」

男は烏の行水とも呼べる適当な入浴を終え、薄暗い部屋へ
戻った。

次の瞬間、男は十年ぶりともいえる絶叫をした。

「うあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」

「ぼ、ぼぼぼくのアカウントはどこ??!?!?!?」

「なななななんだよぉぉぉぉあぉあぁぁぁぁぁぁ!!!」

男がハマりにハマっていたネットゲームのアカウントが
きれいさっぱり消えていたのだ。

彼はなぜかパジャマの上を脱いで半裸になり、部屋に
おいてあるベッドの上を転がり回って叫びつづけた。

しゃがれた女性の声がそれを横切った。

「光彦。アンタがやってるゲームの垢、消しといたわよッッ」

「マ、ママ!!??」

「そんなもんがあるから引きこもりになるのよッッ
この屑がッ!!」

女性は彼を罵倒しながら二度蹴りを入れた。

バキッ
ドァッ

「ご……ごはぁッ……」

「いつになったら真面目に働く気になるんだいッ!?
この穀潰しめがッッッ」

うずくまる青白い男にとどめの罵声を浴びせると、女性は去っていた。

彼は泣きながら地べたに頭をつけた。

「僕は駄目な人間だ……死んだほうがいいんだ……死のう」


翌日、ネトゲの垢を消去され何もすることが無くなった青白い男は、
近所の公園へ来ていた。

ひとり砂場にアルル・○ジャ(ょぅι゛ょ)を描いていると、
そこへ小さな女の子が近づく。

男の描いている絵に顔を近づけてこう言った。

「へぇー、お兄ちゃん、絵うまいんだね! 絵描きさん?
Pixivに投稿とかしてる系?」

男は突然のことに驚き、挙動不審になった。

「え、ぼ、ぼぼぼくは絵が好きなだけでぉぁ」

一旦唾を飲んで冷静になり。

「絵描きなんかじゃないよ。僕はただのオタク……引きニートさ。
キミみたいな真っ当な女の子が僕みたいな人間に関わっちゃ
いけないよ」

女の子は両手の握り拳を自分の前に突き出して男に言った。

「もったいない! Pixivに投稿すればいいのにッ!!」

「オタクさん、あなたには絵があるじゃない!
いつまでも引きニートやってないで……」

女の子が突然手を握ってきたので、今までママ以外の女性と
喋ったことすらない男は動揺した。

女の子は勢いよく言い放つ。

「同人作家になればいいと思うよ!」

「ど、どうじんさっか!? 僕が?」

「うん。稼ぐならエロ同人かなー?」

「エロ同人……」

「オタクさん、あなたの画力ならきっとやれる! 壁サークルになれるよ!
やってみない?」

男は一瞬うれしそうな顔をしたが、すぐに暗い表情に戻ってしまう。

「だめだよ……恥ずかしながら、僕は今年23歳になるというのに
未だ彼女すら出来たことがないんだ……」

「えー(笑) 気持ち悪い! もしかして素人童貞?」

「いや……童貞だ……」

「……」

女の子はしまった!という顔をして男に近づく。

「ごめん。聞いちゃいけなかったね」

「いいんだ……僕みたいな屑童貞にエロ漫画が描けるわけ
ないよ……」

男は女の子に背を向け、猫背気味の姿勢で語りだす。

「僕は本当は今日、公園の便器に顔を突っ込んで死のうと
思ったんだ……それが、キミみたいな可愛い女の子と
会話できて……もう満足だ……」

「死ぬか……さよなら」

彼の背中に暖かい温もりがあった。
女の子が男の背中に抱きついていたのだ。

「じゃあ!」

「!?」

「じゃあ、私とエッチしてみればいいじゃない!?」

「えっ……」

情けないことに、抱きつかれた瞬間から男のブラザーは
究極完全体グレー○モスになっていた。

「いいの?」

「うん。それでエロ同人で馬鹿稼ぎできるんなら」

とんでもないことを言っているわりに、女の子はいい笑顔だった。


女の子のほうから男の唇を奪ってきた。

男が二つの小さなアップルを手で包む。手のひらにしっかり収まる
サイズである。

そしてこれをゆっくり揉みしだいた。

女の子はもう耳まで真っ赤になっている。

「気持ちいい?」

「……」

「い、挿れていい!?」

「何いってんのこの馬鹿ッ!! まだ挿れられるわけ
ないでしょ! もう、これだから童貞は……」

「ご、ごめん」

男は、はやる気持ちを抑えながら下に指を走らせた。

女の子はかすかに声を漏らしている。
突起物をやさしく指で撫で続けると、水分を含んでくるのが
わかった。

邪魔な布をズラし、男の超兄貴を女の子の下にあてがった。
濡れてはいるものの、なかなか連結できないで焦っていると、
女の子のほうがエビル兄貴を手に持って誘導してくれたのだった。

女の子の軽い、いい匂いがする体をしっかり持ち、抱きしめながら
腰を振る。
少しずつ女の子の体温が熱くなってきているのがわかる。

下も大洪水になっており、振っていると時おりビクンッと
痙攣するのが、男には面白かった。

経験が浅い男がこの状況に持つはずもなく、すぐに内部から
兄貴へ込み上げてくる衝動があるのがわかった。


男は女の子の中に果てた……。


……。


「どう? これでエロ漫画が描けるでしょ?」

女の子は少し照れながら男のほうを向いて言った。

「ああ……」

男は横に座る女の子の手をとった。そして、

「また会えるかな?」

「明日もこの時間、公園に居るよ!」

ベンチから立ち、男とは反対方向の帰り道へと
向かう女の子に、男は手を振った。彼女のほうもそれに
答えて振り返してくれたのだった。


それが……女の子の最後の姿であった。


一日後。


「可哀想に……犯人は近所の不良だそうよ」

「不良グループの女が罠にハメたらしい」

「何人もの男に回されたあげく殺されたなんて……うう……」

「同級生の逆恨みによる依頼殺人か……」


近所が騒然とするなか、男はテレビのニュースで事件の全容を知った。

被害者は昨日愛し合った女の子。
みるも無残な姿で公園のトイレから発見されたという……。

「うあああああああああぁぁぁぁあああああああああああ!!!」

男は二度目の絶叫をした。
そして、泣いて、泣きつくして、涙も彼果て血の涙が出た。

青白い男は、半年の間、姿を消した。


半年後の少年院……。


女の子を無残に殺害した少年たちはそこに収容されていた。
夜中、物凄い爆発音と共に少年たちの獄中の壁が壊された。

「ちょっ、ちょ、なんだよ!?」

「誰か助けにきてくれたのか!? ヒャッハー」

大きく開いた穴の真中にたたずむ青白い長身の男。

「お前、グループの仲間か? よくやったぜ~!」

「おい、はやいとこズラかろうぜ! 逃げねえと……」

青白い男の横から穴の外へ出ようとした少年の首が、
胴体とお別れした。

首だけになった少年のそれは血しぶきと共に床に転げ落ちる。

「ひっ、ひいいいぃぃぃぃーーー!!」

青白い男は静かに、語りだした。目から光は消え、完全に
暗黒の世界へと落ちているようだった。

「次は貴様の番だ」

「た、たたたしゅけて……」

「助けてくれだと!? お前は……」

「ひいいいやあぁぁっぁぁーー」

「そうやって命ごいをしたあの女の子を!! 無残に殺したというのに!!」

バキッ

男は一瞬で少年の後ろを取り、両手の骨をあっさり砕いた。

「うあああぁぁぁぁーーーーッッ」

ズッ

少年の腹部を男の手刀が貫通した。
彼は声にならない声でもがく。

「あ……あ……」

「無駄だ。貴様はもう助からん。致命傷だ……だがすぐには死なん。
その間、心のなかであの子に謝罪しつづけろッ!!」

「ひ……ゃ……」

青白い男は獄中を後にした……。





リサに流れ込んできた記憶は、ここで終わっていた。

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