血まみれになったレイヤーカフェにたたずむ青白い男。
そして、対峙する三人の娘の姿があった。

壁に空いた大きな穴からは風が吹き付けてくる。

青白い男は余裕の表情で、店内にあるロリ漫画「あけびましゅまろう」を
読み始めた……。

「キミたちが俺に勝てる見込みは無い。せいぜい作戦でも
練って、あがいてみるのだな。今のままでは圧倒的過ぎて、私のほうも
戦いが面白くない」

「俺がちーちゃん萌えしている間に何か考えてみるかね……?」

黒い髪の少女は、余裕をぶっこいている青白い男のほうを向いて
腕を前に突き出し、すごい形相で啖呵を切った。

「下らねえ奴だ! さっさとケリを付けやがれ!!」

メイド風の少女がムクっと起き上がり、亜莉巣の背後から
彼女の腰に手をやった。
そして後ろから後頭部に顔をくつけ、青白い男にわからない小声で
囁いた。

「(亜莉巣さんでしたっけ、これはチャンスですわ)」

「(!! お前死んだはずじゃ……!?)」

「(サイコパワーで受身を取っていたのです。ダメージは
かなりありますが。念動力で内出血を止めていますので、
ある程度は大丈夫です)」

「(なるほどな……でも、あの青白いやつをどう倒すんだ?
まるで俺たちの攻撃が効かないぜ。アンタの超能力も……)」

「(私たち三人の力を合わせれば、倒せる可能性は少しはありますわ)」

亜莉巣とメイド風の少女が小声で作戦を立てる中、青白い男は
店内の椅子に座り、脚を組ながら二人を見て余裕の表情である。

「フッ、どうした。俺に勝てないからって二人で身を寄せ合って
恐怖をごまかしているのかね?
それともキミたちには百合フラグが立っているのかな?」

青白い男が、ゆっくりと前傾姿勢で二人の少女に近づく。
そして、メイド風の少女の顎を、漫画を持っていない左手で持った。
顔を近づけてマジマジと少女の顔を観察する。

「よくみるとキミは綺麗な顔をしているな。ただ殺すには
惜しいかもしれない……小柄でおとなしめの外見。俺好みだよ……。
クックック」

メイド風の少女は、勢いよく男の手を払った。
黒い髪の少女を後ろに隠し、何を思ったか青白い男へ向かって
拳法のような構えを取った。

キッと男を睨み付けながら言う。

「貴方の相手は私ひとりで十分です。さあ、かかってきなさい」

青白い男は顔を手で覆いながら嘲笑した。

「ハッハッハ、冗談にしては面白くないな。先ほど、キミのサイコパワーは
俺に全く通じないことが判明したというのに」

「サイコパワーが駄目でも私には中国拳法があります」

「フッフッフ……ムフフフ、笑いを堪えるのが難しいよ。
キミの華奢で小さい体に、俺を突き倒す力はないはず!」


メイド風の少女は青白い男に拳法で接近戦をしかけた。
だが、男は漫画を読みつつあまった左手で少女の攻撃を
全て受け流していた。
筋力、技術ともに差がありすぎるのは明らかであった。

黒い髪の少女は、無言で傍観を続けるリサの元へと近寄る。

リサは、呆然としながら無謀な戦いを続けるメイド風の少女を
見つめていた。

「朝宮……このままじゃ朝宮が死んじゃう……」

「リサ!」

「亜莉巣!? いつのまに」

「今から、俺とメイドさんで考えた作戦を伝える。
お前が鍵なんだ。頼んだぜ」

「作戦って……」