2012年07月25日

「BAR HEATH」の心地よさ

ほろ酔い
 
  平の平和通りの一角。まるで穴蔵へ向かうように階段を下りていく。かつては中華料理店・廬山があった場所。繁華街だが、目立たない。「BAR HEATH」の看板も楚々としている。その声高でない姿勢が合うのだろう。このところは、よく行っている。

 この店のことを教えてくれたのは、行きつけの理髪店のマネージャーだった。
 髪を切りに行くと、必ず店談義が始まる。「最近、夜の街には出てるんですか?」から始まって、「どこかいい店見つかりましたか」、そして「あそこいい店ですよ。気に入ってるんです」となる。そんな流れで「落ち着いていて、いい雰囲気です。飲みに出たら必ず寄ります」と、紹介された。
 ドアを開けると店内は薄暗い。品のいいジャズが流れ、カウンターのなかでマスターが静かに迎えてくれる。席はカウンターだけだが、その幅といい、マスターとの距離感といい、絶妙で落ち着ける。一人で行ける、数少ない店だ。
 オープンしたのは9年前の2003年の12月25日。マスターの齊藤昇さん(44)が東京でバーテンダーの学校に通い、始めた。「HEATH」とはスコットランドに咲く野草。名前をつけ、看板を注文したあとで東京の国立にも「HEATH」というスコッチ・バーがあることを思い出した。少し経って、恐る恐るあいさつに行くと「別に商標登録しているわけじゃないし、構わないですよ。かえって、遠い福島の方に同じ名前をつけてもらって光栄です」と言われた。なんだか嬉しくなった。
 客は40歳以上がほとんど。みんなおとなしく飲んでいく。なかにはいろんなウイスキーをストイックに飲んでいく人もいるが、だいたいはカクテルや水割り、ロックを2杯も飲めば、もういい。会計も2500円から3000円がいいところ。つまみも、せいぜいチーズやピクルス、ドライフルーツぐらいだから、酒と雰囲気を味わう、オーソドックスなショット・バーだ。
 「一時はフルーツカクテルに凝ったんですが、いまはジンベースが多いです。ウイスキーはオールドボトルを見つけるのが楽しいですね。値段に見合った商売をして、ここを気に入ってくれるお客さんを大事にしています。結局は原点に戻るんですね」と齊藤さん。わけ知り顔をしないので、肩肘張る必要はなく、楽だ。居心地がいい。最近は、こういうふうに落ち着ける大人の店がなかなかない。

 この店を教えてくれた理髪店のマネージャーは3.11のあと、子どものことを考えて東京の店に移った。店で偶然会うのを楽しみにしていただけに残念だ。なんとも淋しい。
 



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この記事へのコメント
福島アクアマリン  富原聖一さんの件 許しがたいです。

ぜひ取り上げて戴ければと存じます。
Posted by うさぎ at 2012年07月26日 08:34