朝日出版社営業部(橋)のサケブログ/書店訪問日誌

朝日出版社営業部・酒部に所属している(橋)による、書店訪問日記です。
本屋さんに行くことと安酒を飲むことがライフワークです。
書店イベントにも足しげく通っていますので、そちらもレポします。
【命題】継続は力。非道に生きる。

大好きな9月22日。誕生日だからね。嬉しい。

下の子からお祝いの手紙をもらって、人生の宝ものがひとつ増えた本日。明日はなるべく早く起きて洗濯やお掃除に勤しまねば。

『本を贈る』刊行から十日ちょっと。じわり、じわりと反響があり嬉しいかぎり。もっと、もっと広く手にしてもらえるよう尽力したい。本書での5番目の書き手である、加藤製本・笠井瑠美子さんが啓いてくれたとおり、「本は特別なものじゃない」から。

販売促進はめっちゃするよ。昨日は早起きして渋谷のラジオ「渋谷の本屋さん」へ。
『本を贈る』発行元である、三輪舎・中岡さんと共著者である加藤製本・笠井さんとたのしくおしゃべり。

アーカイブあるから、ぜひ聞いてみてもらえると。
◆渋谷の本屋さん「2018.9.21 本を贈る」


ずっと空回りしている(橋)であるけれど、37歳となった本年はもっとしっかりしたい。
10月10日には神楽坂・かもめブックスさんで『本を贈る』刊行記念トークイベントを開催いただけることになった。

前出の笠井さんと(橋)、かもめブックスととても縁深いふたりがいわゆる表側に立つことになるとは。不思議な感覚であるし、こそばゆく面映ゆいし、でありなにより嬉しい。

イベント名は「『本を贈る』刊行記念 本があなたに届くまで~瑠美子と亮二の場合」。

………えと、説明過多な気もするけど、瑠美子は笠井瑠美子さん(加藤製本)で、亮二は橋本亮二(朝日出版社)であります。

だれがこのイベント名考えたんだという気が今でもするけど、いや、ありがとうございます。このおかげで瑠美子とめっちゃ仲良くなれたという気すらしている。媒酌人じゃないか。

なわけで、最近めっちゃ瑠美子と打ち合わせしてる。だいたいオンラインで、ときに対面で。かもめで。

こんな写真も撮ってもらった。ありがとうマイキー(かもめブックス・前田隆紀さん)。

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フォトジェニックな瑠美子と、呆けた顔した(橋)。や、亮二か。

学祭みたく盛り上がり、相互往復書簡的なものもかもめブックスをポストとして始めてしまった。きっと、かもめメンバーぽかんしていると思う。なにとぞ、お付き合いを。

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イベントまでに4~5手紙して、当日を迎えたいね。早速、このブログをアップしたら2通目書くよ(瑠美子も書けよとプレッシャーをかける)。

すごく嬉しくて。笠井さんと、こんな仲良くなれるとは。本を介在した縁って、めっちゃ強い。深い。上澄みでなく、結ばれる。

みんな来てね! ありがたいことに、満席近く申し込みをいただいていて、増席検討もしてもらっている。早めだととっても助かります!

◆かもめブックス お申込みページ

9月もはや12日。まもなく(橋)も37歳となる。いい数字の並びだね。張りきるぞ日々。

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今号のコンテンツはこちらです。

■第28回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞!
■今号のイチオシ電子版
■編集部リレーコラム1(第五編集部)
■書店フェア、好評開催中!
■編集部リレーコラム2(第二編集部)
■イベント情報
■あとがき(編集後記)

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■第28回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞!

本年6月に刊行された、『神様の住所』(九螺ささら 著)が第28回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞しました。

毎年「ひとりの選考委員」によって選ばれる本賞、本年の選考委員は大竹昭子さんです。
「ジャンルを超えようとする意志」とご選評いただきました。

選評が全文掲載されていますので、ぜひご覧になってください。

○9月9日付・読売新聞読書面「本よみうり堂」でも紹介されました。

○業界紙「新文化」(9月6日発行号)でも受賞記事が掲載されました。 


■今号のイチオシ電子版

『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』
武田砂鉄 著(2015年8月18日配信開始)

このたび、弊社の『神様の住所』(九螺ささら 著)が第28回(2018年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞しました。

この賞は、パリの「ドゥマゴ文学賞」(1933年創設)のもつ先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、
常に新しい才能を認め、発掘に寄与したいと1990年に創設されたもの。
毎年、任期1年の「ひとりの選考委員」によって選ばれるのが特徴です。

実は、3年前の第25回(2015年度)の受賞作が、この『紋切型社会』。
「新しい意味でのジャーナリズムであるとともに文化人類学の範疇に入る」と
その年の選考委員であった藤原新也氏に絶賛されました。

「育ててくれてありがとう」「全米が泣いた」「国益を損なうことになる」「会うといい人だよ」
「ニッポンには夢の力が必要だ」「うちの会社としては」……。

日本人が連発する決まりきった〈定型文〉を入り口に、その奥で硬直する現代社会の症状を軽やかに解きほぐした本書。
著者の武田砂鉄さんは、さらに第9回(2016年)「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」も受賞。

以降、精力的な執筆活動を続ける気鋭の作家の、注目のデビュー作です。


■編集部リレーコラム1(第五編集部)

第五編集部の藤川です。

先月、Harper's BAZAAR主催の「FABULOUS WOMEN AT EVERY AGE」というパーティーに出席しました。

ゲストは作家の川上未映子さん、演出家の奈良橋陽子さん、メイクアップアーティストの
RUMIKOさんという、豪華なお顔ぶれ。

各界第一線で世界で活躍されているお三方による、女性の生き方や美学など、世代を超えたクロストークが展開されました。

作品や化粧品など、形は違えど、何かしら目に見える形として表現し、
世に発信し続けている方々の身から出る言葉には説得力とパワーがありました。

そして、お三方の口から共通して出たのが「努力」という言葉。
普遍的でシンプルなことですが、努力をベーシックにしているということ。

NYを拠点に活躍するRUMIKOさんいわく、NYの女性たちは、「常に考えて」生きているという。
メイクもファッションも自分らしい生き方を追求し、選択し、表現しているから魅力的で、エンジョイしているのだと。

どう生きてきて、どう生きていきたいのか、自分で考える力を身に付けているということです。

確かに、日本ではメディアが親切すぎるのか、ニーズに応えすぎているのか、決まりきった女性像を提示しすぎというか、
年齢で区切ったり、属性でカテゴライズしたり、何かが決めた答えを求めたり、それに沿う傾向が強い。

また、川上さんの話では、最近は、SNSなどで他者から見られることを意識しすぎて、疲れてしまう女性も多いのでは?と。

美しいモノ、ヒト、風景……見たい、見せたいものだけを追い求める日々と、
醜い、汚いモノ、悲しいコトもあるのが真実であり、それが生きるということである現実にギャップがあるということでしょうか。

ある雑誌の寄稿では、
「女性には人間の形をしていない親友がたくさんいます」と綴っておられました。

素晴らしいお仕事をされ、様々な経験をし、本物を追求し、生き方も考え方も奥深く、
知的で洗練された人たちの、言葉に重みがあるのは、もちろん努力からきているのだと感じさせられました。


■書店フェア、好評開催中!

「出版社の人が選んだ『あまり売れてないけど面白い本』フェア」、伊野尾書店(新宿区中井)さんにて開催中!

弊社も参加させていただき、とびっきりの一冊がフェア帯付きで並んでいます(売れています!)。
ぜひ皆さま、開催期間中に店頭へお立ち寄りください。


■編集部リレーコラム2(第二編集部)

こんにちは。第二編集部の鈴木久仁子です。もう9月ですね。

最近観た映画は、ギンレイホールで『シェイプ・オブ・ウォーター』『ナチュラルウーマン』、
仕事関連で『陸軍前橋飛行場』『いのちの深呼吸』『国家主義の誘惑』、
先週水曜は編集部ふたり映画部で『カメラを止めるな!』、
今日は年下の女の子と『SUNNY強い気持ち・強い愛』を観に行きます(韓国版は編集部ふたり映画部で鑑賞)。
近頃いちばん好きな女の子は池田エライザさんです。

今回は7月28~29日に浅草で行われた、44の出展社が「本当に面白い本」を持ち寄る本の夏祭り、BOOK MARKETのことを。
私は28日に店番をしました。

     *

最初に売れたのは『先史学者プラトン』。「タイトルで決めました」と買ってくださる。
『断片的なものの社会学』を、本当に良い本でと手に取る方、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』を読みました、
すごくかわいいと言ってくださる方多数。加藤陽子先生の本への言及も安定。

並んでいる本を見ながら、「あっ」と、『とんでもなく役に立つ数学』角川文庫をバックから取り出し、
「今、読んでいるんです、すごく面白くて」と言ってくださる女性の方がいた。
その方と一緒にびっくりして、文庫担当の方は会ったことはないが良い人なんだということと、
単行本には平山昌尚(HIMAA)さんの絵や文字がものすごい数入っていると話す。
数学の面白さをわかりやすく伝えてくれる本が好きとのこと、『恋愛を数学する』を買ってくださる。

『神様の住所』を話題になってますよね、と手に取る方、『折る土偶ちゃん』を、これなんですか?と尋ねてくる方、
『赤毛のアン』のページを開いて欲しいと口にする方多数(以前、『小さな家のローラ』を私けっこう売ったんだ)。

いちばん売れた本は、『誰のために法は生まれた』。若い人がほとんどで嬉しくなる。
「買わない理由がない」と言って買ってくださった方もいた。

本の説明をして、買ってくれる方と、置いていく方と当然いるのだけれど、それとは関係なく、
あ、伝えられたかな、というときと(1~2割)、この説明では全然だめだと思いながら話していること(8~9割)がある。

最近刊行した本のことは話せるけれど、時間がたつと、自分でも不思議だが、担当した本なのに、なんといえばいいのかわからなくなったりする
(数年前、同じように売り子をして気がついたのだが、説明が難しい本の一番手は末井昭さんの『自殺』)。

『自殺』を手に取った女性の方は、「映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』を見て、
面白そうな人だなって。この人が書いた本なんですよね」と言っていた。
原作者の末井昭という人物を知らずに映画を観たという。
どうして映画を?、冨永昌敬監督が好きで観たんですか、と聞いたら、そういうわけでもない、
昭和っぽい映画が好きで、昭和っぽくてすごく面白かったと。
そうだ、いま進行中の本のことを宣伝しておこうと思い、「冨永監督も○○○で、
そういう自殺に関係する人たちに話を聞いている本をつくっているんですよ」と話したところ、
「……重そうですね」と。先行き不安になる。

数年前、このイベントで初めてお会いし、時々あたたかい声をかけてくださる女性の方がいる。
挨拶しようと思っていたら、ブースに来てくださり、「最近、鈴木さんのことを思い出していて」と言われた。
え、どうしてですか?と聞いたら、死刑の執行があったからだと。
そうだ、この方は初めて会ったとき、隣に座って、森達也さんの『死刑』(2008年刊行。私が初めて企画担当した本)について、
熱心に話してくださったのだった。

執行があって、友人から連絡が来たり、よく会う友だちや編集部の(お)としゃべったりはしたけれど、
出版関係の知り合いの方が声をかけてくださったのは初めてだった。
その方は『誰のために法は生まれた』を買ってくださった。

続編の『死刑2』について、2011年から話し始め、何度か打ち合わせをしていた。現時点まで何もやらなかった。

『文体練習』の装丁がすごくかっこいいですねと言ってくださる方がいて、営業部の(橋)は、
学生のとき初めて書店で見つけたときのこと、お金がなくてその場で買えなかったことを話していた。

『十皿の料理』については、ぼろぼろになるまで読んだことを話していた。
こういうふうに届けられたら、言われたことが記憶に残るだろうし、買った本を
その記憶と一緒に持つことになるだろうなと隣で聞きながら思った。
私も同じようには無理だけど、少しずつでも、もうちょっと伝えられるように話していこうと思った。

ビーナイスさんで『くままでのおさらい』と金華さば缶を、エルマガジン社さんで『東京島の旅』を、
ナナロク社さんで『いのちの花、希望のうた』を購入。

台風の日だったので、奮発して鰻を食べながら、雨が弱くなるのを待って帰った。

近頃刊行された『本を贈る』(三輪舎)で、営業部の(橋)が1章分を書いているのだが、そのなかのエピソードのひとつに、
『死刑』のゲラを持ち歩き、有隣堂横浜駅西口店さんの担当者さんと話したことが書かれている。


■イベント情報

○11月3日(土)「しのばずくんの本の縁日」に出店します!
「一箱古本市」の不忍ブックストリートによる、本好きも地域の方も楽しめるブックイベントが本年で3回目の開催となります。
会場は駒込の養源寺境内。木が茂るなか、たくさんの本が並ぶさまはとっても素敵です。ぜひ今からご予定ください!


■あとがき(編集後記)

営業部の橋本です。

毎月、文芸誌の発売がたのしみで7日になると雑誌コーナーに一直線となります。
実際に手にする前に、新聞広告で特集や対談、掲載新作などをチェックするのもわくわく。
今月の朝日新聞掲載広告はこのような感じでした。
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(2018年9月7日付・朝日新聞東京本社版朝刊2面)

集英社『すばる』は金原ひとみさん・綿矢りささんの新連載とインパクト大。特集「歳月」も魅力的です。
新潮社『新潮』は『百年泥』で第158回芥川賞を受賞した、石井遊佳さん新作「象牛」(180枚)が掲載と
こちらも気になるところ。対談には「人間の外側へ」として村田沙耶香さん×西加奈子さん。
村田さん新作『地球星人』についての話が読めるはず。

ぜひ、お近くの本屋さんや図書館などで手にしてみてください(とっても、読み応えありました)。

     *

横浜の出版社・三輪舎から刊行された『本を贈る』が店頭に並び始めています。
いわゆる「注文出荷制」の出版社なので、津々浦々の書店で置かれるわけではないのですが、
すごく丁寧につくられた長く読まれ得る一冊です。

編集者から装丁家、校正者、印刷、製本、取次、営業、書店員、本屋、批評家まで……
それぞれの持ち場の中でどのように本をつくり、届けているかを綴ったエッセイ・アンソロジーに、
ご縁があり私も寄稿させていただくことができました。

森達也さん『死刑』、岸政彦さん『断片的なものの社会学』刊行の際の話などを本書では書いています。
もしよろしければ、お読みいただけると嬉しく思います。

 * * *

朝日出版社メルマガ第11号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ご意見やご感想などお寄せいただけると励みになりますので、よろしければ以下アドレスまでお願いいたします。
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夏が終わってしまった。秋風五丈原。

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いつものお願いですが、配信登録をなにとぞ。英語雑誌をプレゼントなる豪気な企画もあります。
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■イベント情報
■あとがき(編集後記)

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■書評掲載情報

○『誰のために法は生まれた』木庭顕 著

○『折る土偶ちゃん』譽田亜紀子 著/COCHAE 折り紙

○『神様の住所』九螺ささら 著

○『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』川添愛 著

○『赤毛のアン』ルーシイ=モード=モンゴメリ 作/岸田衿子 訳/安野光雅 絵


■今号のイチオシ電子版


作者のレーモン・クノーは、1903年生まれのフランスの詩人かつ、小説家。
彼が一躍有名になったのは、1959年の小説『地下鉄のザジ』がきっかけでした。

翌年にはルイ・マルによって映画化され、フランス映画のヌーヴェルヴァーグ運動の先駆けになった作品と言われています。

そして、彼のもう一つの代表作が、この『文体練習』。
ある男が同じ人物を一日に二度見かけるという単純な物語を、99種類の異なる文体で描くという試みで、
その斬新な文学的実験が大いに注目を集めました。

この背景には、創作の源泉として数学に関心を抱き、フランス数学会にも会員登録していたクノーの数学、
あるいは数そのものへのこだわりがあったようです。

本書が高く評価されているのは、原本におけるクノーの発想のすごさはもちろんですが、
朝比奈弘治さんによる翻訳の素晴らしさにもあります。

あとがきで、「クノーの原文に導かれたわたし自身の文体練習の試み」と自ら語っているように、
原意を損なわずに日本人にわかりやすい表現を追求した日本語の巧みさは、
翻訳出版されてから22年を経た今もなお、輝きが衰えることはありません。

「前人未到のことば遊び」をぜひ一度味わってみてください。


■編集部リレーコラム1(第二編集部)

こんにちは。まだまだ暑いですね。第二編集部の大槻です。
『誰のために法は生まれた』は、刊行から10日ほどで重版が決まりました。
(どうもありがとうございます)

『誰のために法は生まれた』は、 劇というものの根本に迫るようなお話もしているので、映画・お芝居が好きという方に、
読んでいただけたら、きっと、ああ、そうか、そうか、と頷くところが、たくさんあるんじゃないかなあと思っています。
(もともと、特別授業を開いていただいた桐蔭学園を知ったきっかけも、
演劇部が頑張っている学校がいいな、ということで探していて、でした。)

私もその影響で、なんか面白そうなお芝居がかかっていたら積極的に見に行こう、と思うようになりました。
それで、いま東京芸術劇場でやっているハイバイの『て』を見てきました。

劇団主宰の岩井秀人さんの家族の物語を演劇にした、私小説ならぬ私戯曲で、岩井さんのインタヴューの言葉をそのまま引用すると、
「家族が久しぶりに全員集合し、団欒を持とうとするも大ゲンカになり、結局わかりあえない」というお話です。

はじめに、男性(浅野和之さん)が出てきて、携帯電話の電源をどうか切ってくださいね~、という前口上を述べ、そのまま、
じゃあはじめるか、という感じでパッとかつらをかぶって、お母さん役をはじめるんです。

そのうち、お父さんが暴君であったことが明らかになるんですが、でも、このお母さんがすごいコミカルで、終始、笑いが絶えません。
やがて家族のあいだで緊迫したムードがどんどん高まっていって爆発するわけですが…
この高まっていくときの会話が、なんかもう、すっごいリアルで。
深刻なんだけどバカバカしくて、会場から、笑い声とすすり泣きが同時にきこえてきます。

私はちょっとだけ「ヤンヤン 夏の思い出」を連想しました。
(「ヤンヤン」は静かな映画なので、雰囲気とかはだいぶ違いますが。)
ある家族の「自分の視点からは見えないもう一つのドラマ」を、彼らの結束点でありながら、その外にいる、いまそこを去りつつある祖母と、
その入り口にたつ少年とを軸に、描いていく作品だからです。

『て』で描かれるのは、ある種の、昭和の父母の典型だなあって思うんですが、
そのほかに、兄姉と弟妹の性格の違いもみどころです。
きょうだいがいる人は、多かれ少なかれ、あ~もう、上ってこうだよな、
下ってこうだよな、と思い当たるところがあるのではないでしょうか。

個人的には、先月、101歳の祖母が亡くなってお葬式にいってきたところなので、
見ているあいだ、祖母のことを思い出したり考えさせられたりしました。
祖母はまちがいなく、それぞれに暮らす人々が一堂に会する唯一の動機でした。

いったい家族ってなんなんですかね、ECDさんの『他人の始まり 因果の終わり』を読んだときも、思ったのですが、
波打ち際の砂のように(?)、ここに描かれたような家族のかたちは消えていくのかもしれないな、とか、
ぼんやり、思ったりします。

ではでは、残暑、乗り切っていきましょう!

追伸:『誰のために法は生まれた』に関連する古典作品を集めた選書フェアもおこなっています。
木庭先生が書いてくださった付録の小冊子を配布いたします。フェアを開いていただける書店さん、大募集中です!


■書店フェア、好評開催中!

○『誰のために法は生まれた』刊行記念・選書フェア

◯3人の研究者たちが深く楽しく案内する「“学びを促す”本たち」フェア
言語学とAI、変形菌の世界、動物行動学と心の進化学び……
それらに軸足を置きながら知識の領域を広げていくような本がたくさんです。



■編集部リレーコラム2(第五編集部)

第五編集部の綾女です。先週、北京国際ブックフェアに出張してきました。

朝日出版社の本の版権を中国の出版社に売ったり、その逆に中国の出版社の版権を買ったりするミーティングに参加するためです。
昨年の一般を含めた来場者は30万人との発表があります。

北京中心部から電車で30分ほど、郊外にある幕張メッセのような会場に広大なフロアが8つ、
大きくは中国の出版社のフロアと海外のそれに分かれています。

中国の出版社は四川省や吉林省など省ごとに分かれていて、大きな「出版集団」の下に小さなインプリントが
いくつも軒を連ねるのが基本的なスタイル。

中国ではISBNを発行=つまり本を出版できるのは国営の版元のみで、民間の版元が本を出版するためには
前者と提携する必要があります(なので「独立出版」は違法)。

特に売れる本のジャンルはビジネス書や自己啓発書(セルフヘルプ)や実用書のようですが、近年は人文社会科学系の専門書、
しかも「読書した感」を味わえる、分厚ければ分厚い本ほど良い、という選好もあるようです。

そんな中国市場を見越してか、日本から出展している出版社も東京書籍や医学書院など、
専門書・教科書・実用書系の版元が目立ちました。

そのほか、過去に行った(国際ブックフェアの中では最大の)フランクフルトと比べてみて感じる違いは……

・ブースのデコレーションにお金も気合も入れまくっている 
01

・北京の街と同じで不必要に歩かされている気になる(あり余るスペース感)

・トーク会場からそこはとなく滲み出る結婚式場感 
02

・思いがけず立ち現れるゆるゆるすきまスポット 
03

・国(共産党)の押し本がやっぱりベストポジション 
04

といったところでしょうか……。

ふつう出版社ブースのテーブル席は版権交渉の真面目なディールの場となるのですが、お国柄か、
弁当やお菓子やコーラがわんさか盛られて資料も置けない、知らないおばちゃんがなんとなく
日常カフェ使いしている(たぶん)、といった光景も見られます。

そんな会場の最果てで面白いと思ったのはモンゴルの出版社のブース。

おそらく児童向けのヴィジュアル本シリーズでしょうが、斬新なレイアウトで家畜の解体を
幼年期の脳に向けてなかなかハードコアに教育しています。
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展示品なので買えなかった(週末の一般公開日に買える)のですが、1万円積んでも買うべき逸品だったと激しく後悔しています。


■イベント情報

 「一箱古本市」の不忍ブックストリートによる、本好きも地域の方も楽しめるブックイベントが本年で3回目の開催となります。 会場は駒込の養源寺境内。木が茂るなか、たくさんの本が並ぶさまはとっても素敵です。ぜひ今からご予定ください! 


■あとがき(編集後記)

営業部の橋本です。

8月の終わりが目の前で、たまらなく寂しい気持ちになっています。
夏のあいだに読もうとしてたのに手が出なかった本があれもこれも浮かんで、ため息。

仙台の本屋さんに教えてもらってレジ打ちしてもらった『ドエクル探検隊』、
神保町の三省堂さんで見かけてひと目惚れした『奥のほそ道』(まだ買えてもいない)、
吉川浩満さん新刊『人間の解剖はサルの解剖の鍵である』(これは明日代官山蔦屋書店さんでのイベントに参加できる)、
気づいたら川添愛さん新刊『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』が発売になっている、
ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』は買いたくて読みたくて手が震えてくる……。

そんな夏の終わりです。暑さはまだもう少し続きそうですが。

『最初の悪い男』は新潮クレスト・ブックスシリーズとしての刊行ですが、現在・神楽坂la kaguにて
「新潮クレスト・ブックス」展が開催されています。(HPによると、9月9日まで)

壁面にずらりと並ぶさまは壮観で、海外文学の奥行きや底知れない魅力を体いっぱいに感じることができます。
また、当たり前のことなんですがデザインや紙質というものも大事だなと一冊一冊を手にして、
全体を見まわしてあらためて思いました。

小社も努めていきたい。夏から秋へ、日々。

 * * *

朝日出版社メルマガ第10号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ご意見やご感想などお寄せいただけると励みになりますので、よろしければ以下アドレスまでお願いいたします。
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