夏が終わってしまった。秋風五丈原。

朝日出版社(一般書)メルマガ第10号を配信。50号100号1000号と積み上げていきたいね。

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今号のコンテンツはこちらです。

■書評掲載情報
■今号のイチオシ電子版
■編集部リレーコラム1(第二編集部)
■書店フェア、好評開催中!
■編集部リレーコラム2(第五編集部)
■イベント情報
■あとがき(編集後記)

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■書評掲載情報

○『誰のために法は生まれた』木庭顕 著

○『折る土偶ちゃん』譽田亜紀子 著/COCHAE 折り紙

○『神様の住所』九螺ささら 著

○『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』川添愛 著

○『赤毛のアン』ルーシイ=モード=モンゴメリ 作/岸田衿子 訳/安野光雅 絵


■今号のイチオシ電子版


作者のレーモン・クノーは、1903年生まれのフランスの詩人かつ、小説家。
彼が一躍有名になったのは、1959年の小説『地下鉄のザジ』がきっかけでした。

翌年にはルイ・マルによって映画化され、フランス映画のヌーヴェルヴァーグ運動の先駆けになった作品と言われています。

そして、彼のもう一つの代表作が、この『文体練習』。
ある男が同じ人物を一日に二度見かけるという単純な物語を、99種類の異なる文体で描くという試みで、
その斬新な文学的実験が大いに注目を集めました。

この背景には、創作の源泉として数学に関心を抱き、フランス数学会にも会員登録していたクノーの数学、
あるいは数そのものへのこだわりがあったようです。

本書が高く評価されているのは、原本におけるクノーの発想のすごさはもちろんですが、
朝比奈弘治さんによる翻訳の素晴らしさにもあります。

あとがきで、「クノーの原文に導かれたわたし自身の文体練習の試み」と自ら語っているように、
原意を損なわずに日本人にわかりやすい表現を追求した日本語の巧みさは、
翻訳出版されてから22年を経た今もなお、輝きが衰えることはありません。

「前人未到のことば遊び」をぜひ一度味わってみてください。


■編集部リレーコラム1(第二編集部)

こんにちは。まだまだ暑いですね。第二編集部の大槻です。
『誰のために法は生まれた』は、刊行から10日ほどで重版が決まりました。
(どうもありがとうございます)

『誰のために法は生まれた』は、 劇というものの根本に迫るようなお話もしているので、映画・お芝居が好きという方に、
読んでいただけたら、きっと、ああ、そうか、そうか、と頷くところが、たくさんあるんじゃないかなあと思っています。
(もともと、特別授業を開いていただいた桐蔭学園を知ったきっかけも、
演劇部が頑張っている学校がいいな、ということで探していて、でした。)

私もその影響で、なんか面白そうなお芝居がかかっていたら積極的に見に行こう、と思うようになりました。
それで、いま東京芸術劇場でやっているハイバイの『て』を見てきました。

劇団主宰の岩井秀人さんの家族の物語を演劇にした、私小説ならぬ私戯曲で、岩井さんのインタヴューの言葉をそのまま引用すると、
「家族が久しぶりに全員集合し、団欒を持とうとするも大ゲンカになり、結局わかりあえない」というお話です。

はじめに、男性(浅野和之さん)が出てきて、携帯電話の電源をどうか切ってくださいね~、という前口上を述べ、そのまま、
じゃあはじめるか、という感じでパッとかつらをかぶって、お母さん役をはじめるんです。

そのうち、お父さんが暴君であったことが明らかになるんですが、でも、このお母さんがすごいコミカルで、終始、笑いが絶えません。
やがて家族のあいだで緊迫したムードがどんどん高まっていって爆発するわけですが…
この高まっていくときの会話が、なんかもう、すっごいリアルで。
深刻なんだけどバカバカしくて、会場から、笑い声とすすり泣きが同時にきこえてきます。

私はちょっとだけ「ヤンヤン 夏の思い出」を連想しました。
(「ヤンヤン」は静かな映画なので、雰囲気とかはだいぶ違いますが。)
ある家族の「自分の視点からは見えないもう一つのドラマ」を、彼らの結束点でありながら、その外にいる、いまそこを去りつつある祖母と、
その入り口にたつ少年とを軸に、描いていく作品だからです。

『て』で描かれるのは、ある種の、昭和の父母の典型だなあって思うんですが、
そのほかに、兄姉と弟妹の性格の違いもみどころです。
きょうだいがいる人は、多かれ少なかれ、あ~もう、上ってこうだよな、
下ってこうだよな、と思い当たるところがあるのではないでしょうか。

個人的には、先月、101歳の祖母が亡くなってお葬式にいってきたところなので、
見ているあいだ、祖母のことを思い出したり考えさせられたりしました。
祖母はまちがいなく、それぞれに暮らす人々が一堂に会する唯一の動機でした。

いったい家族ってなんなんですかね、ECDさんの『他人の始まり 因果の終わり』を読んだときも、思ったのですが、
波打ち際の砂のように(?)、ここに描かれたような家族のかたちは消えていくのかもしれないな、とか、
ぼんやり、思ったりします。

ではでは、残暑、乗り切っていきましょう!

追伸:『誰のために法は生まれた』に関連する古典作品を集めた選書フェアもおこなっています。
木庭先生が書いてくださった付録の小冊子を配布いたします。フェアを開いていただける書店さん、大募集中です!


■書店フェア、好評開催中!

○『誰のために法は生まれた』刊行記念・選書フェア

◯3人の研究者たちが深く楽しく案内する「“学びを促す”本たち」フェア
言語学とAI、変形菌の世界、動物行動学と心の進化学び……
それらに軸足を置きながら知識の領域を広げていくような本がたくさんです。



■編集部リレーコラム2(第五編集部)

第五編集部の綾女です。先週、北京国際ブックフェアに出張してきました。

朝日出版社の本の版権を中国の出版社に売ったり、その逆に中国の出版社の版権を買ったりするミーティングに参加するためです。
昨年の一般を含めた来場者は30万人との発表があります。

北京中心部から電車で30分ほど、郊外にある幕張メッセのような会場に広大なフロアが8つ、
大きくは中国の出版社のフロアと海外のそれに分かれています。

中国の出版社は四川省や吉林省など省ごとに分かれていて、大きな「出版集団」の下に小さなインプリントが
いくつも軒を連ねるのが基本的なスタイル。

中国ではISBNを発行=つまり本を出版できるのは国営の版元のみで、民間の版元が本を出版するためには
前者と提携する必要があります(なので「独立出版」は違法)。

特に売れる本のジャンルはビジネス書や自己啓発書(セルフヘルプ)や実用書のようですが、近年は人文社会科学系の専門書、
しかも「読書した感」を味わえる、分厚ければ分厚い本ほど良い、という選好もあるようです。

そんな中国市場を見越してか、日本から出展している出版社も東京書籍や医学書院など、
専門書・教科書・実用書系の版元が目立ちました。

そのほか、過去に行った(国際ブックフェアの中では最大の)フランクフルトと比べてみて感じる違いは……

・ブースのデコレーションにお金も気合も入れまくっている 
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・北京の街と同じで不必要に歩かされている気になる(あり余るスペース感)

・トーク会場からそこはとなく滲み出る結婚式場感 
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・思いがけず立ち現れるゆるゆるすきまスポット 
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・国(共産党)の押し本がやっぱりベストポジション 
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といったところでしょうか……。

ふつう出版社ブースのテーブル席は版権交渉の真面目なディールの場となるのですが、お国柄か、
弁当やお菓子やコーラがわんさか盛られて資料も置けない、知らないおばちゃんがなんとなく
日常カフェ使いしている(たぶん)、といった光景も見られます。

そんな会場の最果てで面白いと思ったのはモンゴルの出版社のブース。

おそらく児童向けのヴィジュアル本シリーズでしょうが、斬新なレイアウトで家畜の解体を
幼年期の脳に向けてなかなかハードコアに教育しています。
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展示品なので買えなかった(週末の一般公開日に買える)のですが、1万円積んでも買うべき逸品だったと激しく後悔しています。


■イベント情報

 「一箱古本市」の不忍ブックストリートによる、本好きも地域の方も楽しめるブックイベントが本年で3回目の開催となります。 会場は駒込の養源寺境内。木が茂るなか、たくさんの本が並ぶさまはとっても素敵です。ぜひ今からご予定ください! 


■あとがき(編集後記)

営業部の橋本です。

8月の終わりが目の前で、たまらなく寂しい気持ちになっています。
夏のあいだに読もうとしてたのに手が出なかった本があれもこれも浮かんで、ため息。

仙台の本屋さんに教えてもらってレジ打ちしてもらった『ドエクル探検隊』、
神保町の三省堂さんで見かけてひと目惚れした『奥のほそ道』(まだ買えてもいない)、
吉川浩満さん新刊『人間の解剖はサルの解剖の鍵である』(これは明日代官山蔦屋書店さんでのイベントに参加できる)、
気づいたら川添愛さん新刊『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』が発売になっている、
ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』は買いたくて読みたくて手が震えてくる……。

そんな夏の終わりです。暑さはまだもう少し続きそうですが。

『最初の悪い男』は新潮クレスト・ブックスシリーズとしての刊行ですが、現在・神楽坂la kaguにて
「新潮クレスト・ブックス」展が開催されています。(HPによると、9月9日まで)

壁面にずらりと並ぶさまは壮観で、海外文学の奥行きや底知れない魅力を体いっぱいに感じることができます。
また、当たり前のことなんですがデザインや紙質というものも大事だなと一冊一冊を手にして、
全体を見まわしてあらためて思いました。

小社も努めていきたい。夏から秋へ、日々。

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朝日出版社メルマガ第10号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ご意見やご感想などお寄せいただけると励みになりますので、よろしければ以下アドレスまでお願いいたします。
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