さて、お久しぶりです。かな。

暫く前からちと時間がなくなった上に、先々週なんて帰ってくるなり憂さ晴らし(?)にPS2の「極上生徒会」をやって、12エンディングほどしてしまった馬鹿なやつです。

個人的には今の所、銀河久遠と桂聖奈が二大巨頭かなと思ってます。
滅多に見ない異性にナーバスになって、好きな子に悪戯する小学生のように策略をフル活用して主人公を追い詰めちゃう久遠さんがデレるのはなかなか。。。
また、テレビ版では腹黒キャラな役回りだった聖奈さんが恋する乙女モード全開でキュンとしてしまいました。そしてあのラストは……。黒田洋介(脚本)に弟子入りしたい!
とまぁ、こんな感じで…。
先週は先週で。ガガガ文庫で見かけた「携帯電話俺」を読んだりしていましたのですよ。ちょっと読んで、カフカかよ!って突っ込んでたらあとがきで作者本人もいってました。
新刊の2巻まで読んだけど私はけっこー好きかもしれないです。物分りのいい主人公が……ユニーク。

というわけで、結局昔に書き溜めてあったのをアップします。
しかしまぁ、消失世界で書くのはよいけど、あれですね。長門とキョンを絡ませようにも、ある一日を除いて不可能なので、結局は朝倉×長門、朝倉×キョンという書き方になっちゃいますね。まぁ谷口や国木田もしくは他のクラスメイトを出すってのもありですけど。ハルヒや古泉は向こうだし。朝比奈さんもキョンとは12月まで顔を合わせていないので可能な線としては、朝倉×○○の形を取らざるを得ないですね。
そんなこんなで、ちょっと難しいなぁと思いつつ現実世界に朝倉が戻るタイミングを模索中。
では、長い前置きでしたが、どうぞ。

第三話「偶然の朝」

 朝倉にとって、朝と言う時間は大好きな時間であるとともに、とても神聖な時間帯だった。だから、彼女は朝に出会った数々の出来事をしっかりと覚えている。先日の早朝に起きたささやかな奇跡も、日常に埋もれている愉快な景色も。しっかりと。
 その日、いつものように太陽の光が白い光で街を照らす頃に朝倉は自宅のマンションを出た。エレベーターのボタンを押し、しばらく待つ。白いランプが徐々に降りてくる。やがて、5階に明かりが灯り、エレベーターのドアが開いた。
「あ!」
 朝倉は小さく声を上げてしまった。なぜならば、彼女の目の前には数日前に出会ったあの文芸部の少女が、その小柄な身体に不釣合いな山のように積んだ本を頼りなさげに抱えていていたから。

 二人は本を半分に分け合って持ち、通学路を歩いていた。本を半分に分けようと提案したのは勿論朝倉だった。
「同じマンションだったのね」
「そうみたい」
 休符に出会ったオーケストラのような深い沈黙。
「何階に住んでるの?」
「7階」
 光の届かない深海に沈められた孤独を伴った沈黙。
「一人で?」
「そう」
「私もなの。偶然ね。一人暮らしってなかなか慣れないよね」
「わりと」
 妖精が飛んでいるような見事な静けさ……。
 朝倉涼子は少し落ち込んだ。話を広げられない。それでも挫けてばかりはいられない、時間は待ってはくれない。朝倉はもう一度がんばってみることにした。
「それにしても、いつもこんなに本をどうしたの?」
 声を掛けた相手の少女は、その白皙の顔を前に向けたまま表情を崩さなかった。
「引越し」
 朝倉は頭の上にはてなマークを浮かべた。どうして、わざわざそんなことをするのだろうか……。
「引っ越しねぇ……」
「あの部屋だと、かわいそうだから」
 少女の語る言葉はいつも端的だった。ことごとく主語が抜けていたり、言葉を彩る形容詞や副詞が欠けていた。それでも会話が成り立っているのだから不思議だと、朝倉は言葉というものの奥の深さに改めて感心していた。
「私しか読まないと、かわいそうだから」
 少女は横目の端で朝倉の顔をちらと見た。が、すぐに前を向きなおった。
「ふーん」
 朝倉は少女が変わっていると思った。本よりももっと自分の身を心配した方がいい。こんなに大量の本を一人で運ぶなんて危っかしくてしかたないし、なにより本を抱えて通学路の収束点である心臓殺しのハイキングコースを登るのは、金の延べ棒を身体に巻きつけて海に飛び込むようなものだ、と。
「変わってるわね」
「そう?」
「うん」
 朝倉は嫌味のない笑顔で頷いた。その様子を少女はさっきよりも少しだけ顔を朝倉のほうに傾けて、様子を見ていた。けれど、またすぐに前に向き直った。
 朝倉はそんな彼女に野生の小動物的な可愛らしさを感じた。思わず顔が綻ぶ。

 二人は、ハイキングコースに差し掛かると途端に口数を減らして、乳酸の増加を抑えた。正確には朝倉の口数が減っただけで、小柄なショートヘアは先ほどからずっと口数は少なかった。
「……とう」
 小柄な少女は小さく口を開いた。やや躊躇いがあったのだろうか。音声を生成しきれずに、朝倉の耳に彼女の正確な言葉は届かなかった。
「え?ごめん、聞こえなかった」
 朝倉は不意に横から聞こえた言葉に対して心拍数を上げた。はじめて相手からの会話の初球が放られて、少しドキっとしたのだった。
「……この前は助かった」
 この前、雪の降ったあの朝のことだろうかと朝倉が思い返している間に少女は話を続けた。
「一人では大変だった。ありがとう」
「そう」
 朝倉は照れくさくなって、そんな言葉しか出なかった。クラスメイトにはその明るく世話好きな性格から感謝されたりすることもあったが、それは皆のいる前での賞賛であって、勲章のそれに似ていた。だから、こうして改まって感謝をされるのが、なんとなくむずがゆい気がした。朝倉涼子の意外な一面だった。
 ふたりはそれきり黙って、残酷な山登りコースをしっかりとした足取りで登っていった。

 朝倉は軽く上気した身体を下敷で仰いでいた。
 文芸部の部室には椅子に座ってぐったりとテーブルに倒れこんでいる朝倉と、やはり疲れて椅子にもたれかかるように座っている少女。
「長門有希」
 少女は向かいに座るもう一人の少女に向かって、今度は確かなる声を投げかけた。
「長門有希……」
 朝倉は確認するように呟いて、
「あなたの名前?」
下敷で仰ぐ手を止めて正面に座る眼鏡のショートヘアーを見やった。
「そう」
「いい。名前ね。有希」
 少女――有希はコクリと頷いた。
「あなたは?」
「私?ああ、ごめんまだ言ってなかったっけ」
 有希は肯定する。
「私は朝倉涼子」
「そう」
 有希はそれ以上何を話すべきか分からずに黙ってしまった。朝倉の方もその空気に変な緊張を覚えて、何も思いつかなかった。
 時計の針はコチコチと時を刻み、気づけば始業十分前を差していた。朝倉はゆっくりと腰を上げ、スクールバッグを肩にかけた。
「それじゃあ、私は行くね授業始まるし」
 朝倉は有希の白い横顔に言った。
「またきて」
 有希は顔を上げなかったが、言いたいことは言い切れたという表情が浮かんでいた。
「うん。また来るよ」
 朝倉はそういって文芸部室をあとにした。
 きっとまた会えるだろう。それは朝倉の中では確信になっていた。同じ学校で同じマンション。もしかしたら、決して切れぬ必然になるかもしれないと感じていた。