2021年1月3日

みなさん、新年をいかがお過ごしでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いします。ブログを読んでくださっている方々に、近況報告と今年の抱負を書かせていただきます。長文になりますが、お読みいただければ幸いです。

昨年3月18日に下咽頭がんが再発していることが分かり、4月2日に咽頭・喉頭・頚部食道の全摘手術を受けて9カ月になりました。みなさんからあたたかいお見舞い、励ましの言葉をいただき、ありがとうございました。

咽頭がんは、放射線治療が一度しかできず、生き延びるためには、頚部の咽頭などの全摘手術を受けるしかありませんでした。コロナ禍の中、2014年8月からの主治医ら約10人の医師がオペを担当してくれました。空腸を移植して食道を再建、首に永久気管孔(呼吸のための穴)をつくるなどで、約7時間半の手術でした。

手術で声帯を失い、身体障害者(3級)となりましたが、新たな人生のスタートと捉え、無声ジャーナリストとして「沈黙の声」(14年7月に開始した朝鮮新報の新連載の標題)を発信しています。本ブログでの発信、フェイスブックへの投稿、「救援」「朝鮮新報」、「人民新聞」、月刊誌の「紙の爆弾」「創」「進歩と改革」、ネットのハーバービジネスオンラインなどに記事を書いています。

1月6日頃に発売の「創」2月号に「桜」疑獄報道、「紙の爆弾」に菅政権とメディアについて書いています。ぜひ、書店でお求めください。

私に書かせなくなった「世界」「週刊金曜日」「マスコミ市民」の経営・編集部幹部は、自分たちの雑誌媒体を私物化していると思います。市民革命を経験していない日本国の「左翼・リベラル」の一部には、極右・靖国派・日本会議と酷似した中世的な縁故主義(cronyism)体質が残っています。国全体が臣民社会的体質を持っていると思います。

声が出ないことでの不便、1日3回のネブラーザーでの痰吸引など、大変なこともありますが、家族、友人らのサポートで取材もできています。

手術前57キロあった体重が一時期50キロになりましたが、今は人生で最高の62キロ超あります。テニスも再開し、最近はゲームもできるようになりました。

昨年11月初め、家族の祝い事があり、電車に乗って都内に入りました。電車に乗るのはインディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)に出演した3月27日以来のことでした。IWJのインタビュー<「声帯を失う前にIWJで日本の記者クラブ問題を話したい!」岩上安身による咽頭がんに立ち向かうジャーナリスト浅野健一氏インタビュー! 2020.3.27>のハイライト版は以下のURLで見ることができます。私の声帯を使った最後の公開発言です。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/470970?fbclid=IwAR2L_XliKl4s_2uLwj0VurXO7yr-TzDB_KDgp-MtXJioMHueVyFPK-py_Yo  

ハーバービジネスオンライン(扶桑社)の投稿はネットで読めます。10月7日には、<菅首相のジャカルタ内外会見は、質問と回答が用意された”ヤラセ会見”。現地記者からも抗議の声>と題した記事が掲載されました。
https://hbol.jp/231691?cx_clicks_art_mdl=3_title2

共同通信で記者22年の後、20年間大学院教授を務めた同志社大学(当時の学長は村田晃嗣法学部教授=安倍前政権の選任でNHK経営委員会委員長代行・防衛庁参与)から定年延長拒否=不当解雇された後、年賀状を出すのをやめています。今年も多くの方々から賀状をいただきました。どうか失礼をお許しください。

私は13年12月末から、同志社大学を運営する学校法人同志社に対して地位保全の仮処分と地位確認訴訟と、当時の大学院社会学研究科長だった冨田安信教授(産業関係学専攻)、同僚教授5人(渡辺武達・小黒純・竹内長武・佐伯順子・池田謙一各教授)、同志社と村田氏を被告とした損害賠償請求訴訟を起こして闘ってきました。昨年1月、最高裁で同志社・村田訴訟の上告棄却決定があり、四つの裁判にすべて敗訴しました。菅義偉首相の日本学術会議新会員6人の任命拒否よりも悪質な「同僚による教授職の解雇」「学問の自由の侵害」がヒラメ裁判官たちによって正当化されました。

私の7年間の裁判闘争を支えてくださった弁護士の方々、陳述書を書いてくださった支援者、裁判を応援してくれたみなさんに心より感謝します。同時に、私の闘いを妨害した学内の「左翼・リベラル」教授(しんぶん赤旗や旧新左翼メディアによく登場し、政権批判に熱心です)の板垣竜太・出原政雄・浜矩子各教授たち、「研究科・学部自治に介入するので裁判は支援しない」(佐藤純一書記)と公言した同志社大学教職員組合を永久に糾弾します。

同志社大学は今も、「大学院教授だけの70歳定年」制度を維持するために、65歳定年で退職する20年以上勤続の教職員に70歳まで月額約20万円の「特別給付金」(闇年金)を一般予算(国庫補助金・授業料が財源)から給付しています。対米隷従で安倍晋三前首相、前原誠司衆院議員のお友だちの村田氏のグループが今も跋扈し、リベラルな学風は消えてしまいました。私がいた社会学部メディア学科の教員スタッフ(私を捏造情報で大学ハラスメント委員会へ申し立てた三井愛子・中谷聡両氏らを嘱託講師に任用)は、渡辺武達教授(15年から名誉教授)グループ(文春確定判決で2004年設立)の御用学者で固められ、人民のためのジャーナリズム研究の拠点がなくなりました。私を追放したのは、和田洋一、城戸又一、鶴見俊輔各教授らを擁した同志社・新聞学の破壊でした。小黒氏らは私を追放した後、私が担当していた科目の「新聞学原論」を抹消しました。許しがたい暴挙です。

裁判では負けましたが、私が得たものは多く、今後のジャーナリスト活動に生かします。『同志社大学の犯罪』を近く出版したいと思っています。学生の教育より、教員の既得権益を守ることを優先し、偽装公募で縁故採用の絶えない同志社大学は「行ってはいけない大学」です。みなさんの周りに受験生がいたら、同志社受験は絶対やめるように伝えてください。間違っても社会学メディア学科には入らないようにしてください。

昨年8月、安倍晋三首相が辞意を表明、菅義偉氏が二階俊博幹事長ら4人の密室談合で次期首相に決まり、9月に安倍禅譲・菅政権が誕生しました。菅政権は公安警察官僚と極右・日本会議・靖国派による警察国家体制を進め、異端を徹底排除するネオ・ファシスト体制を敷いています。本来、権力を監視すべき報道機関が大政翼賛体制に組み込まれています。菅氏の言論弾圧は安倍時代よりさらに陰湿化しています。

菅氏に政権移譲した安倍氏は「桜を見る会」疑獄、河井夫妻・吉川両事件などをめぐる検察の捜査で、窮地にあります。「桜」疑獄は安倍氏不起訴、配川博之公設第一秘書の罰金刑だけで捜査はいったん終わり、安倍氏は自民党記者クラブ(平河クラブ)だけを相手にした「記者会見」と自民党がセットした「国会説明」で年内終結を目論見ましたが、人民と政権反対党の追及は今月から始まる通常国会で続きます。私は東京地検に安倍氏を刑事告発(19年11月20日)した「税金私物化を許さない市民の会」の47人の一人です。私たちは1月4日、安倍氏を不起訴とした田渕大輔検事の処分を不当として、検察審査会へ申し立てを行います。同日午後1時から、会の共同代表らが司法記者クラブで会見します。申立書は山下幸夫弁護士(東京弁護士会)が作成してくれました。私も「市民の会」共同代表らと共に、大晦日まで作成にかかわりました。

私は申立と同時に、申立人として、田渕検事の不起訴処分は、安倍事務所への捜索・差し押さえなどを行わない不十分な捜査での結論だと主張した陳述書を提出します。東京地検の山元祐司次席検事らが12月24日午後に行った司法記者クラブへの「説明」(記者会見ではない)を報じた新聞記事、安倍氏の会見と国会質疑の記録などを証拠として添付しました。

安倍氏は12月25日、国会質疑の後、記者段に対し、次期衆院選への出馬表明を行いました。日本の人権とデモクラシー(人民統治)を前進させるために人民と政権反対党の連帯で、「山口4区」(下関市・長門市)に党首級の反安倍統一候補を擁立して闘うべきです。

安倍氏は2000年12月に行われた国際女性戦犯法廷を取り上げたNHK番組を検閲した時点で、政界を去るべきでした。私は12月15日の朝鮮新報に女性法廷から20年の記事を書きましたが、改めて、安倍氏を当時、辞任に追い込めなかったことで、この国の20年にわたる反動化を許したと思います。

年末から新年にかけて新型コロナウイルスの感染者が急増し、医療が逼迫しています。安倍・菅政権が東京五輪開催を最優先し、二階氏が会長を務める全国旅行業協会などの利益のために「Go To」事業を強行した人災です。安倍・菅政治が続くと、貧困層の人民は政治に殺されます。壊憲、日米軍事同盟強化(米占領軍の固定化)、原発再稼働、辺野古新基地建設、学術会議などアカデミズムへの弾圧などの悪政を阻止するため、人民の知る権利に応える国際標準のジャーナリズムを創成する必要があります。

私は声を出ませんが、活字で、「被抑圧者」「少数者」「声なき声」のために生涯一記者として活動します。当面の課題は①犯罪報道の匿名報道主義(公人は顕名・一般市民は匿名)への転換とメディア責任制度(報道倫理綱領と日本報道評議会)の設立 ②キシャクラブ(日本にしかない「記者クラブ」は海外にあるpress clubとの混同を避けるため“kisha club”、“kisha kurabu”と英訳されています)制度を廃止し海外と長野県庁・鎌倉市役所にある広報センターの設置 ③職業ジャーナリスの同盟(協会)の設立―です。

72歳のジャーナリストとして、日本のジャーナリズム改革のために毎日頑張ろうと思っています。私が代表をしている人権と報道・連絡会の発展にも努力します。

2021年も、私の信じる原理・原則を大事にして、進んでいきます。みなさん、共に前進しましょう。
最後に、みなさんの今年1年のご健勝、ご活躍を祈ります。
                                         (了)
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創(つくる)2021年2月号
創出版
2021-01-07









安倍政権・言論弾圧の犯罪
浅野 健一
社会評論社
2015-09-25