昨日(2024年11月9日)の重信房子さん(元パレスチナ解放闘争活動家)の講演会は約50人が盛況でした。3時間を超えてパレスチナの歴史と今後を学びました。
 2016年5月に開始した「たんぽぽ舎」<浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座>の学習会。重信さんは昨年12月25日に続いて2回目の講演でした。テーマは「パレスチナとともに 米大統領選後の中東」。
 午後2時開会。いつもあるテーブルをなくして、椅子だけで50数人が参加。最初にたんぽぽ舎の柳田真(まこと)共同代表が挨拶。続いて私が約10分、連続講座の説明とガザ報道について報告。
重信さんは2時間近く講演。10月19日の同講座での板垣雄三東大名誉教授の講演を受け、28ページに及ぶ詳しい資料を配付し、パワーポイントを上映しての講演でした。

 [ ガザでの犠牲者が4万2000人を超え、80%が女性と子ども。3500人の子どもたちが栄養不良や食料不足で命を落とす危険にさらされています。12,000人の負傷者は、治療のために海外に渡航する必要があり、 12,500人のがん患者は死に直面し、治療を必要としています。様々な疾患の3,000人の患者様が海外で治療を必要としています。 避難の結果として感染症に感染した人、1,737,524人。 ]

 米国新大統領の新中東政策について、トランプ時代の政策」の資料も配布。

[ 今後のトランプ時代は、イスラエルに有利に暴力的に迅速にガザ抹殺と破壊の上の停戦が進む可能性があります。トランプは、これまでネタニヤフの仕事を最後までやらせろと発言して来ました。ネタニヤフは、ガザ、ヨルダン川西岸地区、レバノン、イランと激しく虐殺攻撃や対立を拡大し続けることで、バイデン政権の無能を晒しトランプの大統領選勝利を支援してきました。ネタニヤフは、トランプ政権の下でトランプに花を持たせて停戦し停戦後を有利に進めようと企んでいるでしょう。そして、ネタニヤフらは、トランプを立ててサウジアラビア・サルマン皇太子などトランプとの親和的な関係を活かして国交樹立、「アブラハム合意」拡大へと戦略的に描いているでしょう。イスラエルの占領に合法性を与えた上で。これは国連と益々対立するイスラエルの孤立を助けるでしょう。
そこで描かれるガザは、ネタニヤフ構想「ガザ2035」に示される米、サウジ、エジプトらと組んだガザをドバイのような都市に再建し、ガザ沖の「ガザ・マリーン」の油田を開発し、サウジの未来都市「NEOM]と結ぶイスラエルの下に中東経済活性化の構想の推進です。占領に反対する勢力を圧殺破壊しながらそれは勧められます。
かつてトランプの中東政策は、ネタニヤフの望む中東政策であった。ネタニヤフはトランプの再選を「歴史上最大の逆転」と最大級の言葉で褒めたたえ期待を示しました。これからもイスラエルの政策が「米中東政策」となる時代です。イランとの対立など、ドラスチックに変わる要素はイスラエル側にあります。イスラエル側の思惑が今後規定していく傾向を否めません。 
ネタニヤフは、トランプとガザ占領破壊の上に、サウジアラビア、米国と結び「ガザ2035」構想を推し進めるでしょう。それはガザを破壊しイスラエル占領を許さない勢力を根絶やしにし、占領を合法化する道です。そううまくいかないでしょうが。 ]

[ 今ガザの虐殺に対して、在日パレスチナ人、アラブ人、アジアのムスリムや若い日本の学生、市民が多く参加し、街頭行動、イスラエル大使館抗議行動を行っています。
国際的な連帯運動として各地でBDS運動(イスラエル占領地の製品Bボイコット、D投資引き上げ、S制裁)は、広がりを作り出している。市民の抗議行動は、伊藤忠子会社のイスラエル最大の軍需企業エルビットシステムズとの契約を2月に停止させるという決定を引き出すことに成功しました。更に日本のなかでその活動を広げていく必要。それが効果がある為。イスラエル兵が占領地を監視するためこれまではジープから出て撃っていたが、車輌の上にロボットのパーツを載せて、乗ったままパレスチナ人を狙って打つことが出来るテクノロジーの進化。このパーツは日本の企業から買っている。
日本政府がジェノサイドを批判しない中で、市民レベルでパレスチナ連帯を育て、BDS運動を日本でも広げていきたい。そのためにもまず、何よりも、パレスチナの現実と歴史を知ってほしいと心から思います。
米欧のバイヤスのかかった情報はこれまでパレスチナの歴史と現実を公正に報道していない。
パレスチナを知るところから、自分の生活圏にある連帯、パレスチナやアラブの映画を観たり小説を読んだり、BDS運動で実行しているイスラエル製の製品を買わないことや、署名、連帯集会やデモに好奇心をもって参加するなど日本で出来ることから始めて欲しいと願っています。大阪万博には反対ですが、大阪万博にイスラエルが参加する事を拒否することも足元の闘いです。近くに反ジェノサイドの連帯がいくつもあります。いのちを、人間の尊厳を謳った世界人権宣言の「抵抗権」!をパレスチナ連帯から足元の闘いへ!こうした日常から更にまた国際連帯へと育てたい!
同じ人間としてパレスチナのジェノサイドを許さない!
核戦争の危機の中、被団協がノーベル平和賞を受けました。反原発を不退転に闘い続けて来たたんぽぽ舎の闘いもみな一つに連関しています。
たんぽぽ舎の闘いに敬意と連帯を表します。共に! ありがとう! ]

 休憩の後、私のコメントの後、重信さんが会場からの書面での質問に丁寧に回答。最後に、重信さんが、自身の作品であるガザで生きる女性についての詩を力強く朗読。柳田さんが「各地で、ガザの停戦、パレスチナ解放を支援する運動がある。全国的なネットワークづくりが必要ではないか。重信さんが訴えた国際的なBDS(Boycott, Divestment, and Sanctions=ボイコット、投資撤収、制裁)運動などでイスラエルにジェノサイドを止めさせよう」と問題提起しました。
 重信さんの近著『パレスチナ解放闘争史 1916-2024』 (作品社、2024年3月)は10冊、すぐに完売しました。
 詳しく包括的に書かれた資料、とても見やすいパワーポイントを用意されて、すばらしい講演でした。重信さんのパレスチナの詩の朗読で、会場全体が一つになったと思います。
 柳田真さんはじめたんぽぽ舎のスタッフのみなさんい感謝します。
 講演会の後、私にまで、感謝の意を言ってくれた参加者が複数いました。
 講演会の後、懇親会。重信さんの大学時代の先輩の元河出の編集者の岡村さんと元北海道新聞記者の黒田理さんが参加。岡村さんは、私が尊敬する松下竜一さんの『記憶の闇』の編集者。黒田さんは元カイロ特派員。道新の記者有志での勉強会に私を招いてくれた時に知り合いました。
 重信さんは学生運動、パレスチナ現地でも闘いなど様々な経験をされ、特に20年間も不当に投獄された後に、今なお社会全体、人民に向けて、自らの思いを発信されていて、すごいと思います。知的刺激を受けています。「浅野さんが声帯を失っても、AI音声、パワーポイントなどを使ってスピーチしているのを見て、パワポを使うことを考えた」と言ってくれました。今回も元気をもらいました。

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