2018610

 

私は69日夜に羽田空港を発ち、10日午前5時ごろシンガポールへ着いた。612日に開かれる金正恩朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)労働党委員長とドナルド・トランプ米大統領の首脳会談を現地で取材する。

 

友人の在日朝鮮人は「612は歴史教科書に載るのは間違いない」「戦後の世界の歴史でもソ連の崩壊、ドイツ統一に匹敵するニュースだ」と評している。私もそう思う。

 

10日正午過ぎ、シンガポール東部に設置された国際メディアセンター(International Media Centre, IMC)でシンガポール通信情報省(MINISTRY OF COMMUNICATIONS AND INFORMATION, MCI)が発行する記者証(MEDIA PASS)を発行してもらった。メディアセンターの2階に記者のワーキングスペースがある。世界各国から記者が来ているが、韓国と日本のメディアが多い。

 

日本以外の国には「記者クラブ制度」(英語でkisha club system)がないので、フリージャーナリストも手続きを踏めば取材できる。私は528日、アカデミックジャーナリストとして、朝鮮新報と人民新聞に記事を書くということで取材を申請し、その許可が9日未明に下りた。

 

実は、米国側から会談中止の発表があった524日にシンガポール政府のMCIメディア部は内外のメディアに対し、「米国・朝鮮首脳会談のためのメディア広報」(Media Advisory for US-DPRK Summit)を送り、米朝首脳会談の取材記者登録(registration for media accreditation)を開始していた。29日午後12時(シンガポール時間)が締め切りだった。同省は「取材登録」に関する報道を禁止していたため、記者登録手続きが進められていたことは報道されなかった。

 

私は19892月から19927月まで共同通信のジャカルタ支局長を務めていたので、シンガポールは何度も行っている。1995年には『天皇の記者』(スリーエーネットワーク)を書くために、日本占領下のシンガポールについて取材に来た。

 

私は524日、シンガポールの記者から取材申請のことを教えてもらい申請した。528日、MCIメディア部へ取材申請をon lineで行い、同部から取材依頼書を受理したというメールをもらった。同部への取材申請はすべてネットで、15分以内に打ち込み、顔写真、パスポートのコピーは指定された電子データで送信するというやり方で苦労したが、うまくいった。 

 

取材申請では、記事・映像を伝える報道機関(媒体)を伝え、媒体の責任者からの取材依頼書(assignment letter)が必要だった。朝鮮総連の機関紙、朝鮮新報の崔寛益・報道局長が依頼書(526日付)を書いてくれた。20055月にバンコクで行われたサッカーW杯最終予選、日本対朝鮮の「無観客試合」の取材をアジアサッカー連盟に申請した際も崔局長にレターを書いてもらった。また、65日に追加で、人民新聞に記事を書くことをMCIに伝えた。山田洋一編集長もアサインメント文書を書いてくれた。
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2018年6月10日 シンガポールのメディアセンター前で

 

私は1998年に朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を初めて訪問して以降、14回訪朝した。朝鮮に行くようになったきっかけは、1998年に同志社大学経済学部学生だった「かりの会」(「よど号」事件)メンバー、若林盛亮さんのきょうだいの訪朝に同行したことだ。政治亡命したメンバーの子どもたちを日本に帰国させることに協力した。その後、京都で故・野中広務さんらと日朝友好運動、朝鮮学校支援などを行った。

 

201611月にベルリンで開かれた「第2回平和・繁栄の朝鮮半島に関する国際シンポジウム」(The 2nd International Symposium on Peace and Prosperity of Korean Peninsula)にも参加し、朝鮮戦争の終結と米朝平和条約締結を求める運動にもかかわっている。その報告が朝鮮新報HPにアップされている。

 

http://chosonsinbo.com/jp/2015/12/sk123-10/

20177月の訪朝レポート(上、下)も朝鮮新報のHPにある。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/08/sinbo-j_170821-2/

http://chosonsinbo.com/jp/2017/08/sinbo-j_170825-2/

 

今年になってからは、「安倍官邸の広報になった平昌五輪報道」

http://chosonsinbo.com/jp/2018/03/0305ib-4/

「平和・統一への願いを冷笑し戦争を煽る大罪」

http://chosonsinbo.com/jp/2017/11/1115ib/

 を書いている。

 

朝鮮新報には訪朝記事、日本のメディア時評(20041月から0512月まで連載)などが多数アップされている。登録すれば誰でも読める。

 

 今年初めから2度の北南首脳会談、史上初の朝米首脳会談の決定など東アジア情勢は非戦・平和の方向に大きく動いた。この間、日本の安倍晋三政権とキシャクラブメディアは、完全に蚊帳の外に置かれ、朝米会談がいったん中止になった時には、「やっぱりそううまくいかない」と喜びを隠さなかった。米大統領の中止決定を「支持」したのは、世界中で日本だけだった。

 

 トランプ大統領は424日に朝鮮戦争に終結に言及している。12日に会談で、朝鮮戦争の終結と朝米国交正常化に基本合意するという見通しになってきた。これについて、「朝鮮戦争の終結にまで言及して、前のめりのトランプ大統領」と日本のキシャクラブメディアの無知なアナウンサー、キャスターは繰り返している。新聞各紙も「ショー的要素が強い」「象徴的な動き」などとケチをつけている。

 

ジャーナリストが65年も続く停戦状態を終わらせることに反対する、つまり非戦平和の東アジアができることに反対するとはおそろしいことだ。いますぐ、報道の仕事を廃業してほしい。新聞倫理綱領、各社の編集綱領などを読めば、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を敵視する発言が不適切か分かるだろう。そこには平和と民主主義、人権の尊重などと書いてあるはずだ。

 

安倍首相は「日本のどこかのいなかに北のミサイルが落ちてくれればいい」と言ってきた。日本の企業メディアは安倍と変わらない。日朝関係では日本人のほとんどがミニシンゾーだ。日本の41年にわたる朝鮮への侵略・強制占領の責任をとろうとしていない。「拉致問題が優先課題」「拉致被害者が生きて帰国しないと解決しない」と報道ステーションの富川キャスターも必ず言う。朝鮮に関しては、朝日新聞、東京新聞も同様だ。それで日朝が友好関係を結べるだろうか。外交はお互いの主張をよく聞くことから始まる。朝鮮の人々の声を聞くことが大切だ。「日本は加害者で共和国は被害者」という朝鮮の言い分は、安倍氏がつまびらかには読んだことのないポツダム宣言を読めば明らかだ。拉致も人倫に反する蛮行だが、日本が1905年から1945年まで朝鮮人民に対して行った日本軍慰安婦、強制連行・徴用、文化破壊などもまた人倫違反する暴挙だった。

 

安倍晋三首相は朝米会談前の日米会談で、「不幸な過去の清算」「北朝鮮の人たちは勤勉」などと口にした。「圧力」という言葉が消えた。「拉致問題の解決なしの日朝国交正常化はない」として「対話のための対話はしない」という路線を変えた。

 

 12日の朝米会談が成功すれば、金委員長とトランプ大統領の会談は数期続く可能性がある。

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メディアセンターの設置を伝えるシンガポールのNEWS ASIA

 

4日間の取材の後、朝鮮新報、人民新聞などに記事を書くことにしている。帰国後、動画をIWJで伝える予定もある。

 

6月17()午後2時から4時まで、東京・水道橋のたんぽぽ舎でシンガポールの主催報告をする。以下は「たんぽぽ舎」のMLからの引用だ。

 

〔 朝鮮敵視政策の偏向報

 ・浅野健一さんが6月12日の朝米首脳会談の取材に行きます。これまでテレビ、新聞はこぞって「思惑」「狙い」「信用できるのか」…と後ろ向きの報道。新聞を読んでいると、「やっぱりね」と思ってしまいませんか?

 ・「南北首脳会談」、そして「板門店宣言」、更に「朝米首脳会談」まさに「歴史が動いた」!

 一貫して朝鮮敵視政策をとる安倍政権とメディアに騙されないために、メディアが伝えない「本当の」最新情勢について緊急報告会をたんぽぽ舎で開きます。

6月17()です。会談が開かれるのは6月12日。

文字通り「最新の」「本当の」話を浅野さんにしていただきます。

 

    6/17()緊急講演会「朝米首脳会談」

    メディアが伝えない「本当の」最新取材報告

 

  お 話:浅野健一さん

 日 時:6月17()13:30開場 14:00より16:00

 会 場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4階)

 参加費:800

 たんぽぽ舎 新HP http://www.tanpoposya.com/ 〕

 

 613日夜、関西空港に戻り、6月14日午後110分から大阪高裁の別館81号法廷で開かれる地位裁判の判決に臨む。支援会が午後2時から5時まで、弁護士会館1004会議室で判決報告集会を開く。

 

日本のキシャクラブメディアは、安倍政権と同様に蚊帳の外だと思う。日本のキシャクラブメディアの取材・報道ぶりも取材したい。

 

私は1905年から45年までに日本による侵略・強制占領の歴史、45年から今日までの日本と朝鮮の関係を踏まえて、日朝関係の改善、国交正常化を目指すべきだとずっと思ってきた。2回の南北首脳会談に続く、史上初の米朝首脳会談を現地で取材し、今後の東アジアの平和・繁栄を構想したいと考えている。
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6月10日のシンガポール サンデータイムズ