朝日歌壇鑑賞会【今週の作品】

朝日歌壇や朝日川柳に巣食う、反日サヨクカルト教徒の作品を鑑賞するブログ。

「海道東征」CD聴き比べ

 信時潔の名曲「交声曲 海道東征」は、戦後70年の間演奏される機会が非常に少なかったため、当然、録音されることもほとんどありませんでした。2016年3月まで、一般的にCDで聴くことのできた音源は、以下の2つのみでした。
 
オーケストラ・ニッポニカ 第2集
本名徹次
ミッテンヴァルト
2003-04-23


 これは戦後最初の録音で、2003年のオーケストラ・ニッポニカによる公演のライヴ録音です。我々が聴くことのできる良質な音源がほぼこれ1つである状態が長く続いたため、私はこのCDを「海道東征の標準」と考えてきました。
 実際この演奏は、可もなく不可も無くの、変な癖のない、まずまずの水準です。演奏のペースは全体を通して速めで、特に第6章は相当飛ばしています。長い曲ですから、現代人にはこのくらいのペースが退屈せずに聴き通せる丁度良いものでしょう。
 欠点としては、ライヴ録音であるため観客席の雑音がかなり入ってしまっていること。特に第4章冒頭の、ソロを静かに聴かせるべき箇所で大きな咳払いがするのは残念です。

 

 戦前の昭和16年(1941年)に録音されたSPレコードの復刻盤CDです。指揮者は前年の初演を振った木下保。作曲者信時潔も当然存命でバリバリの現役でしたから、この音源は、作曲者の意図や作曲当時の雰囲気を最も忠実に反映しているものと言えるでしょう。
 SPレコード特有の「ジー、ジー」という雑音が酷いものの、この音源からは「研ぎ澄ましたような緊張感」が伝わってきます。特に第1章冒頭。きっとあの時代特有のものでしょう。これを聴いてから戦後の録音を聴くと、音はクリアなのですが今一つ緊張感に欠ける気がして、「戦後の演奏者はこの曲の精神、あの時代の精神を本当に理解できているのか?」という疑念が湧いてきます。
 ただし、当時のオケの水準は決して高くはなかったようで、現代のオケに比べると音がボコボコ。第3章や第7章の金管楽器なんて、この時代は東京音楽学校でさえこんなレベルだったのか…トホホ(´Д⊂)って感じです。おまけにテンポは非常にゆっくりで、特に第6章は、こんなトロいテンポでよく聴衆が我慢して聴いていられたものです。当時「海道東征」について「冗長」「退屈」という酷評も見られたとのことですが、この演奏ではさもありなんと思われます。

 さてこの4月、名曲「海道東征」のCDが2種発売されました。
 

 2015年11月28日に藝大奏楽堂で行われた公演のライヴ録音CD。芸大が総力を挙げて取り組んだ75年ぶりの蘇演です。この演奏会にあたり、芸大は作曲者信時潔の自筆譜を研究して楽譜を全面的に校訂。特に第4章「御船謡」の冒頭の旋律が、初めて信時の自筆譜どおりにハープで演奏され録音されました。
 SACDハイブリットでの録音が高品質で美しい。SPレコードの時代とは変わりました!
 テンポは信時が楽譜で指定したとおりの、全体的にゆったりしたもの(SP復刻盤とほぼ同じ?)。それに加えて1音1音を丁寧に演奏しているので、非常に重厚な印象を受けます。
 芸大の学生による合唱が若々しく、技量も確かで圧倒されます。オケも優れていますが、合唱やソロを引き立たせるために控えめな演奏をしているようです。
 ハープで演奏された第4章は、ピアノ演奏の音源に比べると音が軽くてすっきりしており、船出の水音を的確に表現しています。第8章は合唱の声の重なりに神々しささえ感じられます。
 欠点としては…声楽ソロが妙に癖のある歌い方をしている箇所が所々見られて気になります。例えば第2章はソプラノなのにずいぶん力んだ歌い方。SP復刻盤もこういう歌い方をしており、悪い所を真似しなくてもいいのにと思います。第8章テノールは声を張り上げ過ぎて息切れしてしまっているかのよう。そして第6章のテンポ遅すぎ。いくら信時がそう指定したとしても、この章をこのテンポで演奏しなければならない必然性は無いはずです。また、真のライヴ録音でなく後から録り直したと思われる章もあり、第8章の最後に拍手が聴こえません。「ライヴ録音CD」なのに拍手が入ってないなんて…。

 
「海道東征」信時潔 作品集
横浜シンフォニエッタ 山田和樹
オクタヴィアレコード
2016-04-22


 2014年の建国記念の日に熊本で行われた公演のライヴ録音CDです。
 このCDで素晴らしいのはオケ(横浜シンフォニエッタ)です。メンバーが皆若いせいか、音が明るく軽やかです。第1章冒頭のフルート、第3章冒頭の木管&金管、第7章の金管&ティンパニ…どれも演奏者の姿が具体的に頭に浮かんでくるほどの輝かしい音で、聴いていて楽しくなってきます。第4章はハープでなくピアノで演奏されていますが、これはこれで十分綺麗な曲に仕上がっています(ただし、もしここがハープだったら、軽やかなオケの音色とよく調和したことでしょう…惜しい)。
 演奏のペースは、芸大盤とニッポニカ盤の中間くらい。
 残念なことは…他の3つのCDと違い、このCDの合唱団は一般公募のアマチュアです。頑張って歌ってはいますが、如何せんアマチュアなので声にばらつきがあります。女声と男声が綺麗に混ざっておらず全く別個のものに聴こえたり、声が揃っていないために歌詞が聴き取りにくい部分があったりします。
 声楽ソリストはプロなので上手です。第2章は芸大盤よりも肩の力の抜けた自然な歌い方で、聴いていてホッとします。しかし第4章のテノールソロが…気持ち良さそうに歌ってるんですが、旧かな遣いの読み方を知らない人らしく、「潮(しほ)」という歌詞を「shi-o」でなく全部「shi-ho」と発音してしまっています。「八潮道(やしほぢ)」は旧かなそのままに「ya-shi-ho-ji」。「八百道(やほぢ)」も「ya-ho-ji」。これ、指揮者も他のソリストも誰も注意しなかったんでしょうか? 昭和の時代だったらこんな間違いをするソリストなんてあり得なかったでしょうが、平成も26年になるとこういう人が出てきてしまうんですね〜┐(-。ー;)┌。…ひょっとしてこのテノール氏は歌詞の意味を全然理解しないで歌っていたのか?(なお、他の3つのCDではどれも正しく「shi-o」「ya-shi-o-ji」「ya-o-ji」と歌っています。)

 【おすすめのCDはどれ?】

 さて、ここまで4枚のCDを比較した感想を述べてきましたが、「では、この中でおすすめはどれか?」「順位をつけるとすると?」「1枚だけ買うならどれがよいか?」等々の疑問が湧くでしょう。果たして…。

 芸大盤CDは、天下の芸大が総力を結集した演奏会のライヴであり、演奏にあたって楽譜を丁寧に校訂し、作曲者信時潔の意図を忠実に蘇らせた歴史的演奏の記録です。しかし、ではこのCDが今後「海道東征」の定番となるかというと…?。今後全国各地のオケが「海道東征」を演奏するとして、この芸大盤のような演奏はなかなかできないでしょう。技術的に無理だというのではなく、こういうスローテンポで重厚に、1音1音をきっちり丁寧に演奏してしまうと、並の聴衆ではついてこられないだろうからです。芸大の公演のように客も相当な覚悟の元に気合を入れて聴きに来るのでないと、第5章あたりで息切れしてしまいます。
 地方オケや東京でも二流どころのオケが、特別辛抱強いわけでもない客向けに「海道東征」をやるなら、ニッポニカ盤くらいの演奏が丁度良いでしょう。可能ならば第4章をピアノに代えてハープで演奏すれば、「海道東征」の曲の良さは十分伝わって客も満足して帰ると思います。

 横浜シンフォニエッタによる熊本公演CDは、4つの録音の中でオケが最も華やかに聴こえます。しかし、ではこのような演奏を他のオケもすべきなのかというと…? 「海道東征」は「交声曲(カンタータ)」、つまりあくまでも声楽が主役の「歌曲」です。ですから本来、オケは脇役に徹して合唱を引き立たせる芸大盤のような演奏の仕方が正統なのです。ニッポニカ盤もそれに近い演奏がされています。
 それなら横浜シンフォニエッタ@熊本の演奏が邪道かというと…? 熊本の公演は合唱がアマチュアで技量が低いので、オケを華やかに盛り上げないと聴かせるものにならなかっただろうと思います。芸大やニッポニカの公演は合唱の技量が高いので、その必要はなかったのです。

 というわけで、先の問いに対する私の答えをまとめますと。
 「古典的資料としての意味合いが大きいSP復刻盤は置いておいて、近年の3つの録音について言えば、一概にどれが良いとは断定できない。その時々のオケ・合唱・客層の状況によって、良い演奏・すべき演奏は違ってくる。この3つの録音は、こういう場合にはこういう演奏をすればよいのですよ、という手本を示してくれているのである。」

【おすすめブログ記事】
 海道東征CDリリースされました!
 熊本公演でバリトンソロを務めた春日保人さんのブログ記事。
 【ディスク 感想】信時潔/交聲曲「海道東征」ほか 湯浅卓雄指揮東京藝大シンフォニー・オケ、山田和樹指揮横浜シンフォニエッタほか
 粟野光一さんのブログ記事。
 信時潔:海道東征
 号外:信時潔作曲 交声曲「海道東征」(録音:2015年)合唱:東京芸術大学
 芸大CDを聴いた方々の感想記事。

2015年「海道東征」観賞〜【その2】11/28東京(芸大奏楽堂)

海道東征芸大 信時潔作曲「交声曲 海道東征」は、昭和15(1940)年11月20日に東京音楽学校(現:東京藝術大学)奏楽堂にて抜粋初演され、同月26日に日比谷公会堂で全曲初演されました。今年は初演から75年・戦後70年・信時潔没後50年という節目とのことで、11月28日に東京藝術大学奏楽堂にて教職員・学生による復活演奏会が行われました。(参考:11/16東京新聞 今回公演の指揮者・湯浅卓雄教授へのインタビュー
 かくも記念すべき公演な上、東京で行われる全曲フル演奏としては2003年のオーケストラ・ニッポニカ以来12年ぶり、さらにライヴ録音されてNAXOSからCDとして発売されるということで、俄然注目の公演となりました。チケットは公演2か月前の9月下旬に完売、当日券は無しと発表されました。
 (しかし実際は当日券が出たようです。しかも後方や2階席には結構空きがありました。藝大奏楽堂は全席自由な上、過去には「チケットを持っていても座席がなくロビーのモニターで見る羽目になる事件」もあったので、その反省からチケットを控えめに売り出したのか?)
 上野公園にある「旧奏楽堂」には何度か行ったことがありますが、現・奏楽堂に入るのは初めてでした。明るくて綺麗なホール。程良く前方でほぼ中央という理想的な席を運よく確保 (⌒-⌒)v!

 最初に、芸大楽理科の大角欣矢教授と慶大の片山杜秀教授によるプレトーク。両教授は舞台左隅に座り、まず大角教授がマイクで話し始めました…が…聴こえない q|゚Д゚|p…。私はかなり前の方に座っていましたが、両耳に手を当てて全神経集中させても言葉が非常に聴きとりづらい。困ったな…と思っていたら、会場から「聴こえません!」の声が。一人が声を上げると次々に「全然聴こえません!ヽ(#`Д´)ノ」「発声練習したのー?」「マイクなしで話して下さい!」等々の怒声が上がりました。もはや完全に学級崩壊状態。せっかくの演奏会なのに、こりゃどうなるんだ(TДT;)と頭を抱えてしまいました。
 片山教授が相当いらつきながらも「マイクを使わないわけにいかないのです!」と懸命に会場をなだめていましたが、やがてプチっとスイッチが入り、声が聴こえるようになりました。たぶんスピーカーのスイッチを入れ忘れたのでしょう。ようやく静かになってプレトーク再開。海道東征の曲についてのお話で、「全8章から成るこの曲を並べると、5章を中心に左右対称をなす」と言っていた他は細かい内容を憶えていませんが、お二人ともこの曲に深い意義を認め、今回の再演を喜んでおられました。

 そして演奏開始。

 第1曲、「Kinder Trio」。信時が東京音楽学校助教授時代の大正6年に作曲したピアノ・ヴァイオリン・チェロの三重奏曲。最近楽譜が見つかり、今回が世界初演。「子供に聴かせるのに適した曲」という意味の題名かとパンフの解説では推測されていましたが、子供向けというほど分かりやすく耳に残りやすい旋律でもありませんでした。華やかさは無いが適度な明るさと落ち着きのある、速すぎず遅すぎない曲。管弦楽曲以外のいろんな曲を作ってみて結局声楽曲に行き着いた信時の、1つの実験作なのでしょう。

 第2曲、「我国と音楽との関係を思ひて」…エッセイの題みたいで音楽の曲名には見えませんが、1927年に没した小山作之助の遺作和歌を1936年に信時が混声合唱&弦楽として作曲したもの。
 パンフの解説によれば、この不思議な曲名は、「天の岩戸」の神話が我国の伝統芸能で繰り返し取り上げられてきたことと、近代日本の国づくりのために音楽が重要な役割を担うこととを、小山&信時が意識していたことによるらしいです。天照大神の神話の詞を讃美歌風のフーガの曲に乗せて歌うという、ある意味珍奇な曲。「信時は牧師の子供だから讃美歌が好きだったんだろうな、フーン( ´_ゝ`)」って感じ。
 しかしこの曲、パンフに歌詞全部が載っておらず、解説の中で歌詞の一部が「岩戸の前の」と「御神楽の音(ね)に」であることが触れられているだけで、歌詞をはっきり聴きとれるような歌い方もされなかったので、会場で聴いた時は何を歌ってるのかさっぱり分かりませんでした。結局、公演終了後に藝大図書館の「海道東征展」(後述)に行って、そこでもらったパンフを読んで、やっと完全な歌詞を知りました。
 「ひとふたみ よはあけにけり わがくには いはとのまへの みかぐらのねに」の繰り返しだったそうです。「ひとふたみ」は「一二三(ひと・ふた・み)」で、アマテラスが隠れた岩戸の前で神様たちが唱えた「ひふみ祝詞」↓を指す模様。
  一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部
  (ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ)
 「祝詞の言葉に導かれて日本の国の夜が明けた」という歌意だった訳で。歌詞及びその意味を事前に知っていればもっと味わって聴けたんですが。ちょっと残念。

 第3曲、「絃楽四部合奏」昨年の熊本公演でも聴いた曲。改めて聴きましたがやはり「地味でゆったりした曲」という感想。音楽の玄人には良い曲に聴こえるらしいですが、残念ながら私にはいまだに十分理解できません。
 (こちらのサイト→「信時潔の問題作 「絃楽四部合奏」 (1920)」によれば、この曲は「海ゆかば」や「海道東征」に見られる質実剛健な作風とは全く違う、日本人離れした作品なのだそうです。)

 休憩の後、最終曲の「海道東征」
 今回第一に特筆すべきは、第4章「御船謡」でした。ピアノのアルベジオ(分散和音)に乗ってバリトンソロが「御船出ぞ〜、大御船出〜」と歌っていく曲ですが、実は信時自筆の楽譜ではここの楽器が「Klavier(arpa)」と指定されていたのです。つまり信時は本当はハープ(arpa)で演奏することを想定していたのに、作曲した昭和15年当時の状況ではハープでの演奏が困難だったため、やむなくピアノ(Klavier)で代替したらしいのです。今回公演では、信時の指定に従いピアノでなくハープで演奏されました。
 出だしの音を聴いた瞬間、 「椅子から転げ落ちるほど驚いた」…などという陳腐な表現では伝わらない衝撃!これまで知っていた第4章と 全 然 違うじゃないかΣ (゚д゚|||) !!!
 昨年の熊本公演でこの箇所をピアノで聴いた時は、「せっかくのオーケストラを休ませてまで何でここをピアノにするんだろう(・ω・)? 信時は唱歌の先生だったからオケが好きじゃなくてピアノを入れて歌わせたのかな?」としか思えませんでした。しかしハープだと違います。ハープ特有のあの「ボロローン、ボロローン」という音が奏でられると、これから漕ぎだそうとする船が港で波に揺れてジャボーン、ジャボーンと音を立てている光景が目の前にはっきりと浮かんでくるのです。まさに「御船出ぞ〜」と歌い出すにふさわしい音色です。
 昭和15年の初演からこれまで、人々は紛い物の第4章「御船謡」を聴かされてきたのです。サンサーンスの交響曲第3番「オルガン付」第2楽章後半をパイプオルガンでなく電子オルガンでずっと聴かされてきたような…どころではありません。単なる音色の違いではないのです。「それにより表現されるもの、聴衆が眼前に思い浮かべるもの」が 全 く 違うのです。初演から75年経って藝大に戻ってきた「海道東征」、今回初めて「信時潔が本当に聴かせたかった海道東征」が演奏されたのです。これは「蘇演」ではなく「第二の初演」です。
 産経の記事によれば今回詰めかけた聴衆は約1000人。私も含めこの1000人だけが「本物の御船謡」を聴いたのです。今回この公演に来なかった人、来られなかった人、また今回の公演を知ることなく亡くなった人は大勢いたでしょう。2015年の今生きて「本物の海道東征」を聴けたことは本当に幸せなことでした。

 もう一つ特筆すべきは、第5章「速吸と菟狭」でした。
 産経新聞主催の大阪公演で児童合唱を歌った「大阪すみよし少年少女合唱団」の顔ぶれを見ると、明らかに小学生と思われる小さい子供は2〜3人しかおらず、どう見ても主体が中学高校生でした。高校生の歌が児童合唱(´・ω・`)?と思いましたが、まあこんなもんかと思って聴きました。
 ところが今回藝大公演の児童合唱「NHK東京児童合唱団」は、(中学生が何人か交じっていたかもしれませんが)確実に小学生と分かる子供の集団でした。そして、「亀の甲に揺られて〜」と歌うその声は間違いなく「子供の歌声」で、「童歌」にふさわしいものでした。大人のソリストや合唱とは明らかに異質な声で、第4章までの曲との違いが際立ちました。
 いくら女の子は声変わりしないと言っても、小学生の声と高校生の声は全然違うのですね。少子化の今、小学生だけの合唱団を組むのは難しいのかもしれませんが、海道東征の第5章は小学生に歌わせなくてはなりません。この曲を高校生に歌わせるのは、オーケストラの曲を作曲者の指定とは違う楽器で演奏するようなものです。歌の内容も高校生が歌うには幼すぎると思われますし。

 その他のこと。
 今回の藝大「海道東征」は、「信時潔の自筆楽譜を忠実に再現する」という方針(おそらく)で行われた学術的な演奏会でした。そのため曲のテンポも、パンフの解説には第1章「♩=60」第2章「♪=120」と言った具合に各章の速度指示が書いてありましたが、おそらくこれは信時自身の指示なのでしょう。そのためSP復刻盤で聴いたのとほぼ同じゆったりテンポで演奏されました。そういう遅いテンポでも第5章までは問題なく聴けたのですが、第6章・第7章はあまりにのろくて聴くのが苦痛でした。私の周囲の観客も、第6章になると「あー長ーい…('A`)」感が漂ってきて明らかにダレ始めていました。
 今回は「信時の楽譜を再現する」という目的の演奏だったから我慢して聴きましたけど、普通の演奏会で海道東征をやるなら第6章と第7章だけはオーケストラ・ニッポニカ盤と同じように速いペースで演奏していただきたいです。昭和15年の日本人にはあのノロノロテンポの第6章でも聴いていられたのかもしれませんが、現代人には退屈でとても聴けたものではありません。(大阪公演はテンポに関しては上等でした。熊本も藝大ほど遅くなかったはず。)

 藝大生のオケは良かったです。熊本公演の横浜シンフォニエッタほどの輝きはありませんでしたが、大阪公演の大阪フィルと称したエキストラだらけの寄せ集め集団とは雲泥の差。息が合っていたし、盛り上げるべき所では(うるさ過ぎない程度に)しっかり盛り上げてくれました。合唱も、若い学生達の瑞々しい集団で、そして人数が多くて(大阪公演の倍はいた?)迫力がありました。
 ソリストは芸大の偉い先生方でした。特にテノールの永田峰雄さんは「イタリア歌曲集」のCDで名前を知っていたので生の歌声を聴けて感激しました。CDでは「O del mio dolce ardor」とか「Tu lo sai」とかを華やかな優しい声で歌っていた方が、今回は「ヤアハレ 青雲や そのそぎ立 その極み こをば〜」と歌っていました。他のソリストも皆素晴らしい歌声でした。ただ残念なことに、舞台上のソリストの位置が大阪公演と同じく、オケと合唱団の間に押しやられてしまっていて、歌声が良く聴こえませんでした。舞台の広さとかCD録音のマイクの位置とかの理由でこういう配置になったのでしょうが、先生方にはできれば舞台最前列で歌っていただきたかったです。

 最終曲第8章が終わると、私は懸命に拍手を送りました。歴史的な演奏に立ち会えた満足感ももちろんですが、アンコールに「海ゆかば」をやってくれるんじゃないか…という期待も込めていました。しかしそれは裏切られました。何度かのカーテンコールの後、オケも合唱も退場を始めてしまいました。戦後70年信時没後50年という節目に「海ゆかば」をやらないのなら、藝大はもう永遠に「海ゆかば」をやる気はないのでしょう。政治的主張をしていると誤解されないよう気を使ったのでしょうが、残念なことでした。
 でも、総じて聴衆の満足度は高かったと思います。退場していくオケや合唱団に拍手したり手を振ったりしているお客さんがたくさんいました。他の演奏会ではあまり見ない光景でした。


 公演終了後、藝大附属図書館で「海道東征展」を観賞。信時潔の自筆楽譜など貴重な資料が展示されていました。
 海道東征の自筆楽譜、第1章は最初「肇国」という題だったのが朱書きで「高千穂」と訂正されていました。「肇国」でも悪くなかったと思うんですが何故「高千穂」に変えたのでしょう?
 興味深かったのは、昭和17年夏の満洲演奏旅行の関連資料でした。満洲国建国10周年慶祝のため東京音楽学校職員生徒総勢137名が満洲と朝鮮を回って「海道東征」やベートーヴェンの「運命」などを演奏した旅行。行程表には旅順、大連、新京(満洲国の首都、現在の長春)、ハルピン、奉天(現在の瀋陽)、平壌、京城(ソウル)の地名がありました。参加者名簿の中には畑中良輔や中田喜直など、戦後日本音楽界の重鎮として活躍した人々の名が見られました。
 公演パンフにあった「海道東征上演記録」によると、この旅行で全20回演奏された「海道東征」は全曲でなく「1,2,4,5,8」章または「1,2,4,5,7,8」章、一度だけ「1,2,5,8」章だった模様。全曲演奏するのはさすがに長すぎて大変だったんでしょう。ちなみに昭和15年11月20日の藝大奏楽堂における抜粋初演は「1,2,4,5,8」。藝大としてはこの5つの章を代表的な曲と考えていたということですかね。7章は8章へ続いている章ですから抜かさない方がいいと思うんですが…。

 「海道東征」は昨年の熊本公演が「戦後3度目の演奏」と言われていましたが、それは「オーケストラによる全曲フル演奏」が戦後3回だけだったという話であって、ピアノ伴奏で合唱団が歌ったのは戦後も結構あるんですね。上記「上演記録」によると、敗戦後はぱったり演奏されなくなったものの、主権回復した昭和27(1952)年から後5年間に全国で延べ12回演奏されています。うち9回が全曲演奏。敗戦後も「海道東征」を憶えていて、主権回復したのち喜びにあふれて演奏した人々、聴きに来た人々は少ないながらもちゃんといたのです。この事実を知って感激しました。日本人は気骨ある人々だったのです。戦争に負けて占領されても決して心まで失ってはいなかったのです。
 昨年の熊本を皮切りに大阪、東京と全曲フル演奏公演が続きましたが、これからも全曲演奏のみならず、合唱団による抜粋演奏も多く行われるようになっていくことを願います。第1章だけとか第2章だけとかなら高校のクラス合唱などでも可能でしょう。

 今回公演のライヴ録音CDは来年春発売とのこと、楽しみにしています。今回公演に来られなかった方々、CDを買ったらまず第4章「御船謡」を聴いてみて下さい。今まで聴いていた第4章とは全く違いますよ!
【今回公演について書かれたブログ記事等】
 今回公演でコンサートマスターを務めた方のブログ
 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記
 Enoの音楽日記

(追記)
 2016.4.13、この公演のライヴ録音CDが発売されました! ぜひお聴きください。
 

2015年「海道東征」観賞〜【その1】11/22大阪(追加公演)

 今年は戦後70年にして信時潔没後50年の節目の年ということで、信時の代表作である交声曲「海道東征」の公演が下記3回行われました。
11月20日(金) 大阪 ザ・シンフォニーホール 産経新聞社主催
11月22日(日) 大阪 ザ・シンフォニーホール 産経新聞社主催
  (※,隆闇笋砲茲訥媛淡演)

11月28日(土) 東京 東京藝術大学奏楽堂 東京藝術大学音楽学部主催
 私はこのうち↓を観賞しました。実際に現地で聴いた者として感想を記します。まずは△砲弔い董

 
 海道東征大阪△亙歇薹呂了嵯仗景垢主催。公演前の宣伝は「建国神話の世界を!」的な色合いが濃く、紙面では「神武天皇・海道東征」という特集を組んで東征の物語やゆかりの土地を詳細に紹介するなど、かなり張り切っていました。
 関係者の期待も大きいもので、公演でプレトークを行った神保祐司先生は2か月前に行った『神武東征と交声曲「海道東征」の復活』と題した講演の中で、「戦後七十年を期して、産経新聞という大きなメディアによって全曲演奏されるということは…戦後レジームからの脱却の象徴的な事件」「今回の大阪における演奏会については、当初の予想よりも大変に反響が大きくて、日本人の精神が大きく変わって来ていることを痛感した」と述べておられました。実際チケットの売れ行きは好調で、11月20日の第1回公演は一般発売開始当日に完売。反響の大きさから急遽22日の追加公演が決定するも、そちらも公演2か月前に完売。

 私もチケットを入手して以降、公演を心から楽しみにしていました。昨年2月の建国記念の日に熊本で聴いた戦後3度目の全曲演奏公演の感激は鮮明でした。熊本公演パンフの「海道東征」対訳付歌詞を見ながら、戦後ただ1度の録音であるオーケストラ・ニッポニカのCDを何度も聴きました。「遥けきは鴻荒(あらき)に属(あ)へり」「谷蟆(たにぐく)のさわたるきはみ」といった難解な歌詞の意味も覚えました。大阪へ向かう飛行機の窓から緑なす山々が見えてきたとき、第8章の「照り美(ぐは)し、我が山河(やまかは)」の部分がスーッと浮かんできました。

 初めて来たザ・シンフォニーホール、綺麗なホールでした。観客は高齢者、それも80歳以上と思われる人の比率が恐ろしく高く、杖をつきつつ客席に入る人がたくさんいました。チケットは完売したと聞いていましたが所々空席がありました。1階席の良い場所が4つ連続で空いていたのは意外。産経の招待客が来なかったのか?

PAP_0017 公演パンフレットはB5判本文10頁(うち1頁は滋慶学園&産経新聞の広告)で、情報量はあまり多くないものの、簡潔な曲目解説がついていました。
 がっかりしたのが、海道東征の歌詞に現代語訳がついていなかったこと(写真右)。昨年の熊本公演パンフ(写真左)には地元の俳人による分かりやすい口語訳がついていました。現代語訳がないと、難解な歌詞の意味がお客さんに十分伝わらないのでは? 産経の人脈をもってすれば、國學院大學あたりの万葉集の先生にでも口語訳を書いてもらうことくらい容易だったはずですが…。

 公演前に神保祐司先生のプレトーク。内容は「海道東征の復活は、日本人が敗戦国としての精神的呪縛から解き放たれつつあることの表れ」といった、神保先生がこれまで産経紙上で何度も主張してこられたことでした。ちょっと気になったのが、「前半の曲は近衛秀麿編曲のベートーベンの運命とのこと、近衛秀麿も当時日本で活躍した音楽家でした…」とさらっと述べたあたり。新保先生は「シベリウスと宣長」という著書もあるくらいシベリウスに傾倒していて、「日本のシベリウス=信時潔」というのが持論です。ベートーベンなんてあまり好きではないはず。「何で海道東征にベートーベン?」「何で近衛秀麿?」と言いたげな様子に見受けられました。

 そして公演開始、前半のベートーベン「運命」が始まったのですが…。あの有名な第1楽章冒頭を聴いた途端、
 「 ・・・ え っ q|゚Д゚|p ? 」
と呆気にとられてしまいました。これまで知っていた覇気のある「ジャジャジャ、ジャーン!」ではなく、何とも締まりの悪い「ボ ヨ ヨ、ヨ〜〜〜ン…」という音でした。「うわ、こりゃ失敗だ!」と思いました。最初失敗したけど持ち直すということもなく、第4楽章の最後まで、音は弛緩し、テンポはのろく、盛り上がるべき所で盛り上がることも無い、精彩を欠く演奏でした。近衛秀麿の編曲で編成を大きくしたという管楽器は奏者が張り切っていたようですが、弦楽器の音のバラバラぶりは酷いものでした。
 何故こんな惨状だったか? 思うに、この日のオーケストラは「大阪フィルハーモニー交響楽団」と称していましたが、中身は全く違う代物だったのです。この日壇上にいた奏者のうち、正規の団員はおそらく各パート主席+αの何人かだけで、残りはみなエキストラだったのでしょう。若い女性奏者がやたら多かったですが、あれみんなエキストラですね。もちろんエキストラは皆音大を出てそれぞれ音楽家として活動している人なので、個々の技量は十分なはずです。しかし寄せ集めでまとまりがない。たぶん曲への思い入れも無い。いくら産経新聞に頼まれて仕方なくやった公演だとしても、こんな杜撰な演奏を「大阪フィルでござい」と言って聴かせていいんですか?
 (注:上記の点については、大阪フィル合唱指揮者・福島章恭先生より「事実と違う」旨の御指摘をいただきました。詳しくは記事末尾の「2016.1.10追記」を御参照下さい。)
 熊本公演の「横浜シンフォニエッタ」の「運命」は、明るく軽やかな素晴らしい演奏だったのに…。あまりの違いに唖然としました。熊本の真似して「運命」なんかやるくらいなら違う曲をやればよかったのに。新保先生お気に入りのシベリウスでもやれば、プレトークで張り切って曲の紹介をしてくれたでしょう。「フィンランディア」や「組曲カレリア」なら素人にも聴きやすかったのでは。
 しかもこの「運命」、楽章が終わるたびに大きな拍手が聞こえました。「拍手は1楽章ごとでなく、その曲が全部終わってからするもの」という、コンサートの常識を知らない人が多かった模様。ああ、今日はそういう客層なのね…と。熊本公演ではこんなことなかったと記憶してるんですが。

 前半「運命」が終わって休憩に入った時点で、「せっかく大阪まで来たのに、何だか高い買い物についたなあ…。この調子で海道東征もやるんだろうか?」と少々落胆していました。1階席の真ん中あたりに新保先生が座っておられましたが、この「運命」をどのようにお聴きになったことか。クラシック音楽に詳しい先生のこと、とても聴いていられなかったのでは。

 それでも気を取り直して、後半の「海道東征」。

 第1章冒頭のフルート、熊本公演では霞たなびく神代の昔が想像されて心深く聴いたものですが、今回はフツーに、どうってことなく過ぎていきました。下手ではないはずなのですが。しかも熊本公演の県立劇場よりもずっと音響の良いホールのはずなのに。
 バリトンソロが「神〜坐(ま)しき〜、青〜空〜と、共〜に高く〜」と歌っていきましたが、このバリトン氏、終始、語尾が尻すぼみになりがちではっきり聴こえませんでした。かなり癖のある歌い方をする人だったのか、あるいは調子が悪かったのか。
 それに、声楽ソリストは通常は舞台前方に並ぶものです。熊本公演ではそうでした。しかし今回はオケと合唱団の間に追いやられていました。合唱団を舞台後ろの座席に配置すべきなのに今回その座席も売られてしまったので(産経事業局の失態か!?)、合唱団を舞台上に置かなくてはならず舞台がいっぱいでソリストの立つ位置がなくなってしまったようです。このためソリストの声が埋もれがちでした。
 
 こんな感じで色々と不満な箇所が目立ちましたが、曲が進むにつれ次第に引き込まれていきました。
 何よりも字幕があったのが助かりました。歌詞の内容がよく分かりましたし、パンフレットに目を落とすことなく舞台を見ることに集中できました。高齢者が多く、また必ずしも普段音楽をよく聴いている客層ではなかったにもかかわらず、“冗長”という批判の多いこの曲が演奏される間、居眠りする人も退屈そうにする人も(少なくとも私の周囲には)いなかったのは、この字幕によるところが大であったと思われます。
 演奏のペースは、昭和16年録音のSP復刻盤CDのようなスローペースだったら第6章・第7章あたりが退屈で聴いていられなくなるところでしたが、今回は2003年録音のオーケストラ・ニッポニカ盤CDより若干遅い程度の、現代的な程良いペースでした。
 ソリストは、アルトとテノールが素晴らしかったです。アルト嬢は若い方でしたが安定した声でしたし、テノール氏は「若い力で頑張ります!」的な、良い意味で民主党若手議員みたいな方でした(←褒めて言ってるんです、悪く思わないで下さい!)。この二人が相当頑張ったので、中だるみしがちな第3章〜第6章が退屈せず聴けるものになった、という印象です。
 合唱も悪くありませんでした。オケ付属の合唱団ですから水準は上等でしょう。
 前半「運命」では駄目駄目だったオケですが、「海道東征」はオケが主役の曲ではないので、こういう終始平板で静かな演奏も悪くありませんでした。信時潔は案外このような地味でおとなしい演奏を良しとしたのではないでしょうか。ただし、数少ないオケの聴かせどころである第3章や第7章くらいは、もっと音量を上げて盛り上げてくれてもよかったのですが…。熊本公演では金管楽器の音が輝いていた箇所でした。

 長い曲でしたが、スーッと終わっていきました。熊本公演では第4章後半あたりから「うーん、長いな…」と感じてしまいましたが、今回は長さを感じることなく、気づいたら「あ、もう終わるのか」という感じでした。熊本では最後の第8章で音量がぐんと上がり、指揮者が全身で棒を振り回して盛り上げていましたが、ここ大阪では最後まで能楽のようにスーッと静かなままでした。こういう海道東征も悪くないと思えました。
 曲が終わると、私はほっとして拍手を送りました。前半「運命」が酷くてどうなることかと心配しましたが、メインの「海道東征」はちゃんと聴けるものだったので、大阪に来たことは無駄にはなりませんでした。ニッポニカのCDや熊本公演とはまた違った、新たな「海道東征」でした。

 最後の曲「海ゆかば」。聴衆が立ち上がって一緒に歌った(歌わされた)ことへの批判がネット上でずいぶんありましたが、実際会場にいた者としてはそんなに違和感はありませんでした。もともと産経新聞の論調に賛同する人が集まっていたのでしたし、「海ゆかば」を大勢で心置きなく歌える場所なんて、ここ以外には日本中のどこにもありませんから。開放感溢れて楽しそうに歌っている人が多かったです。
 ただし、1回目も2回目も聴衆が歌ってしまったのは残念なことでした。1回目は合唱団だけの演奏を静かに聴きたかったです。

 今回の大阪公演(20日22日の両日)について書いている人のブログ記事等を集めてみました。まずは 「関係者」のブログ等。
 【正論】交声曲「海道東征」を聴いた人は、日本の魂の「啓示」を体験したのではないか(新保祐司先生の寄稿)
 大阪フィル合唱指揮者・福島章恭さんのブログ
 チケット100枚買い占めた浪速学院理事長のブログ
 「次世代の党」西村眞悟・前衆議院議員のブログ
 作曲者・信時潔の孫、信時裕子さんのブログ
 昨年の熊本公演の主催者・春日信子さんのFacebook
 立場上、不満があっても「素晴らしかった」としか書けないであろう方々ではありますが…。「海道東征」については絶賛しているのに、前半の「運命」については見事なくらい皆黙殺。「運命」って超有名曲ですから、聴いてそこそこ満足すれば一言くらい「良かった」と書くでしょうにね。

 次いで「部外者」のブログ等。
 youtubeで楽しむクラシックと吹奏楽
 東条碩夫のコンサート日記
 朋庵・茶噺し 2015.11.21 交声曲「海道東征」と寿司折り
 南木隆治さんのFacebook
 マンディ祐子さんのFacebook
 「海ゆかば」について好き嫌いが分かれますが、演奏会や海道東征という曲自体への不満はそれほどなかったようです。

 産経新聞を批判する人が多いですが、産経は悪くありませんよ。自社の思想信条に基づいて企画した公演ですから、「海ゆかば」を大合唱しようが何しようが部外者に文句言われる筋合いはありません。名曲「海道東征」を世に知らしめるために産経のネット記事が果たした功績は絶大なものです。産経には感謝しています。会場でもスタッフの方々がすごく張り切って運営していました。建国神話を題材にした写真つきのカレンダーや新保先生の著書「信時潔」等を熱心に販売していました。
 でも産経がはしゃいでいたほどには大阪フィルは乗り気ではなかったのでしょう。それがあの弛緩した退屈な演奏となりました。聴衆も、通常のクラシックコンサートと違って音楽を分かっている人はそれほど多くなかったようです。事前の宣伝で「産経色」が出過ぎてしまい、ノンポリの音楽ファンに敬遠されてしまったのでしょうか。
 プレトークをされた新保祐司先生は決して「産経的愛国保守」な方ではなく、むしろ産経のようなメディアにしか自分の見識を理解してもらえないことをもどかしく思っておられることが、「信時潔」その他の著作を読むと分かります。「海道東征」は、狂信的愛国保守の人ばかりでなく、ごく普通の日本人が聴いて感動できる曲です。昨年の熊本公演は普通の人たちにより演奏され普通の人たちが聴いて感動しました。今後、政治的主張の目立たない穏やかな「海道東征」演奏会が各地で行われるようになることを、心から願います。

【2016.1.10追記】
 今回の公演については、大阪フィル合唱指揮者・福島章恭先生よりメールをいただき、演奏に至る事情を伺うことができました。その詳細な内容をここで公開することはできませんが、「産経新聞の主催ということで、大阪フィルにやる気がなかった、或いはメンバーを落としたという事実は全くない」と強調されていました。
 それでも今回のような演奏になってしまったのには、別の事情があったとのことです。福島先生は御自身のブログ記事の中でその事情をそれとなく匂わしておられます。通常の定期演奏会のようにはいかないものがあったようです。

【おすすめ!】
《CD》
 SP音源復刻盤 信時潔作品集成
 オーケストラ・ニッポニカ 第2集
 2015年12月6日現在購入可能な「海道東征」の音源。,1941年、△2003年の録音。
 海ゆかばのすべて
 「海ゆかば」の録音ばかり25本収録。現在は黙殺されているこの名曲、戦前は様々に歌われてきた。
《本》
 信時潔
 ハリネズミの耳 音楽随想
 シベリウスと宣長
 「海ゆかば」の昭和
 今回公演でプレトークをされた新保祐司先生の音楽に関する著作群。,録時潔に関する唯一無二ともいえる評伝。日本音楽史上において信時潔が何故どのように偉大なのか、これを読めばわかる。はシベリウスの音楽が他の作曲家のものとどう違うのか、真にあるべき音楽とはどのようなものかを力説。新保先生が信時潔に入れ込んでいる心情も分かる。
 信時潔音楽随想集──バッハに非ず (叢書ビブリオムジカ)
 信時潔の孫・信時裕子さんの編集した、信時潔の随想集。音楽に対する信時の考えや、信時の時代の日本の音楽の状況が分かる。

戦後三度目の「海道東征」@熊本 観賞しました

 ツイッター上で偶然、こんな催しがあることを知りました。ネット時代に感謝!
kaidoutousei封印された名作「海道東征」上演へ 建国記念の日、熊本県立劇場(2014.1.31産経)
 「海ゆかば」を作曲した信時潔が曲を作り、詩人の北原白秋が作詞を手掛けた交声曲(伴奏付き声楽曲、カンタータ)の「海道東征」が建国記念の日の2月11日、熊本市の熊本県立劇場で上演される。日本神話を歌い上げる不朽の名作だが、戦後は愛国主義を極端に忌避する動きの中で、封印されてきた。来年、信時潔没後50年を迎えることから、関係者は「歴史に埋もれかけた不遇の名曲をよみがえらせたい」と意気込んでいる。
 「本当に素晴らしい。70年前に心を込めて歌い上げた、あの響きが熊本の地から再び海道を上がってくる。この興奮を抑えきれない
 東京音楽学校(現・東京芸大)在学中に、信時から指導を受けた作曲家の大中恩氏(89)は、「海道東征」復活にこうメッセージを寄せた。
 海道東征は、昭和15年の皇紀2600年を祝う奉祝曲として初演された。「高千穂」「大和思慕」「速吸(はやすい)と菟狭(うさ)」など全8楽章からなる。日本書紀や古事記を基に、国産みから天孫降臨、神武東征をクラシック・ロマン派の様式に、雅楽など日本独自の旋律を取り込んだ雄大な叙事詩となっている。演奏は管弦楽とピアノ、独唱、混声4部合唱で構成する。
 初演後は国内で広く演奏され、8枚組のSPレコードも発売されたが、戦後のナショナリズムを極端に避ける動きの中、長く演奏されなかった。(以下略)

 「海道東征」は好きな曲で、CDでは何度も聴きましたが、生演奏を聴いたことがありませんでした。それもそのはず、戦後完全な形で演奏されたのは昭和37年と平成15年の2度だけだったとのこと。今回11年ぶりに戦後3度目の上演が行われるとのことで、熊本まで日帰りで行ってきました。


 2月11日(祝)午前、ANAで熊本へ。熊本空港到着を知らせるアナウンスの後、続けて「本日建国記念の日は、神武天皇が即位された日として、1966年に祝日と定められたそうでございます」「ソチ五輪で日本代表が活躍中です。今日は日の丸を振って応援しましょう」というアナウンスが!若い女性の客室乗務員によるアナウンスでした。驚くとともに、「そうだよな、本来こういうのが普通であってしかるべきだよな」と、何だか嬉しいような哀しいような気持ちで飛行機を降りました。

 空港から連絡バスで熊本市内へ。降りたバス停の前にあったのが「味噌天神」。ビルの谷間にある古くて小さな神社。「味噌にご利益がある日本唯一の神社」とのことで参拝。


 そして熊本県立劇場へ。1983年築の、「地方都市の古いホール」って雰囲気の建物。
 座席は8割程度埋まっていました。観客は高齢者比率が高く、また、地元の方や出演者(合唱団)の友人知人のような方も多いようでした。終戦記念日の靖国神社に集まるような熱心な愛国保守らしき人はほとんど見られませんでした。しかし私の周囲(1階10列台)数名だけは、どうやら私のような「この曲を聴きにわざわざ遠くから来たぜ!」的なヲタっぽいのが固まっていたようで…たぶんチケットの購入方法によりそうなったのでしょう。

 以下、当日のプログラム順に、聴いた曲の感想。
 (※これは、学生時代まで少しばかり音楽をやっていたものの、今は楽器も弾けないばかりか楽譜の読み方すら忘れてしまった音楽のド素人による感想です。音楽に詳しい方から見れば的外れな内容も含まれているかと思います。その点御承知願います。)

(1)絃楽四部合奏(信時潔作曲)
 信時の作品中、唯一の弦楽四重奏曲。存命中に演奏された記録はなく、楽譜が公刊されたのも没後だとか。地味でゆったりした曲でした。公演の「前奏曲」として聴くにはまあまあ、といったところか。後で指揮者の山田和樹氏がこの曲の説明をして下さった際、「いい曲だったでしょ?…(聴衆微妙な反応)…あれ、そうでもなかった?…(聴衆苦笑い)」…てな場面がありました。マニアックな弦楽合奏曲を十分理解して楽しめるほど音楽に精通した客層ではなかったのでしょう。

(2)交響曲第5番ハ短調作品67「運命」(ベートーヴェン作曲)
 プログラム中、唯一信時の作品でなかった曲。何で運命?と不思議でしたが、プログラムを組んだ指揮者山田氏によれば「信時はドイツ音楽を学ぶべくベルリンに留学したが、当時のドイツはシェーンベルクらの現代音楽が主流となっていて、古典的な音楽を学ぶ環境になかった。しかし信時は終生、ドイツの古典派やロマン派の作風を貫いた」ということだそうで。信時には声楽やピアノ、弦楽の作品はあっても、純粋な管弦楽の作品はありません。そこで信時作品演奏会のプログラムを組むにあたり、信時が管弦楽曲を作るとしたらどんな曲か、あるいは信時が最も気に入っていたであろう管弦楽曲はどれか、という視点でこの曲を選んだのでしょうか。
 指揮者もオーケストラ(横浜シンフォニエッタ)のメンバーも皆若いせいか、すごく新鮮で若々しい、軽快な演奏でした。私の知っている「運命」とはかなり違って聴こえました。
 パンフレットには「第1楽章冒頭の旋律は“運命が叩く扉”ではなく“鳥のさえずり”であるらしい」という趣旨の解説がありました。この有名な交響曲第5番は、運命というような深く重々しいものを表現した曲ではなく、本当はこんな感じのすっきりした明るい曲だったのかもしれないと思えてきました。特に第4楽章の、「終わりそうでなかなか終わらない、終わったかと思うとまだまだ続く」じれったい終結部を聴いていると、作曲者のちゃめっ気のようなものが感じられますし。

  《ここで15分間の休憩》

(3)「木の葉集」より(信時潔作曲)
 全15曲の小品から成るピアノ曲集「木の葉集」から、「楽想乱舞」「口笛」など10曲を抜粋しての演奏。可愛らしい曲が多く、子供の頃のピアノ発表会を思い出しました。

(4)あかがり(信時潔作曲)
 神楽歌に作曲したわらべ歌のような曲で、単純でユニークで好きです。私のブログでも過去に取り上げました。今回は熊本県庁合唱団の皆様による、少人数での輪唱。歌っている方々はニコニコしてとても楽しそうでした。

(5)帰去来(北原白秋作詞、信時潔作曲)
 昭和16(1941)年、交声曲「海道東征」の作詞者・北原白秋に福岡日日新聞社の文化賞が贈られることになり、白秋は授賞式のために九州を訪れ、各地を旅しました。その旅立ちの前に作られたのが、「山門(やまと)は我が産土(うぶすな) 雲騰(あ)がる南風(はえ)のまほら…」に始まる「帰去来」の詩。翌1942年に白秋は死去。戦後の1947年に白秋の故郷・柳川にこの「帰去来」の歌碑を建てることとなり、信時が作曲。歌碑の除幕式で初演されました。
 故郷の柳川ではよく歌われてきた曲だそうですが(動画はこちら)、私は不勉強で初めて聴く曲でした。行儀のよい唱歌のような曲。パンフレットに書かれていた詞は格調高いものでしたが、曲は…歌詞がブツブツ切れる曲なのが気になって…ちょっと歌いにくくて耳に残りにくい曲かも。

(6)海道東征(北原白秋作詞、信時潔作曲)
 さていよいよ本日のメイン、最終曲の「海道東征」。曲や歌詞の解説等はこちらのサイトさんに詳しいので読んで下さい。今回の演奏の感想のみを書きます。

 演奏前、オケ用の椅子や譜面台を並べている間に、ナビゲーターの原武博之氏(熊本放送アナウンサー)が「この曲は、和楽器を使うといった小手先の方法をとらず、西洋の楽器のみによって演奏されるよう作られている。それでいて完全に日本の旋律、日本の音楽。表現されているのはまさに古の日本である」というお話をされました。なるほどその通りですね。普通のオーケストラの楽器だけで演奏可能だからこそ、本来日本のどこででも、いや海外ででも演奏されてしかるべき「日本の音楽」なのです。
 そして、「歌詞(+現代語訳)のパンフレットは家に帰ってからじっくり読んでください、ここではとにかく日本語の響きを味わいましょう」という御注意があって、聴衆一同クスクス笑い。古事記や万葉集等の古典の言葉だけで綴られた歌詞、和語のみで綴られ漢字語の一切ない歌詞。細かい意味は訳文読まないと分かりませんから…。

 第1章「高千穂」。「海道東征」の曲を象徴する章です。
 冒頭の、雅楽の笛の音を思わせるフルートの旋律に、「おお、始まったぜー!」とワクワク。遠白き神代の、高千穂の峰の光景が想像されます。そしてバリトンが渋い声で「かみーまーしきー、あおーぞらーと、ともーにたかーくー…」と歌い出します。続けて合唱が「はーるーかなーりー、わがーなかぞらー…」と歌います。
 曲も詞も均整が取れて格調高く、全曲中最も美しい曲。目の前で生演奏されるのを聴いてただただ感激!!

 合唱団は、女2:男1の割合の人数。一般公募で男性がなかなか集まらずこうなってしまったようです。でも終始声がよく揃っていて、美しく聴かせてくださいました。
 余計なことですが…声の高いテノール(大澤一彰氏)が背が高くがっしりした体格で、声の低いバリトン(春日保人氏)の方が背が低くて華奢、という組み合わせが何だかちぐはぐでおかしく思えました。

 第2章「大和思慕」。「大和は国のまほろば…」とソプラノが歌う。女声のみの澄んだ曲。
 第3章「御船出」。冒頭の金管楽器によるファンファーレが効いて、元気のよい曲。「潮もかなひぬ、御船出今ぞ」と歌う。
 第4章「御船謡」。「ヤアハレ〜」「ヤ!」という掛け声の効いた、面白い船歌。
 第5章「速吸と菟狭」。児童合唱が登場。「亀の甲に揺られて〜」と童歌風に歌う。
 第6章「海道回顧」。「かがなべて、日を夜を海原渡り〜」というテノールの歌い出し。この辺、いかにも「昭和初期の歌謡」って感じの雰囲気。
 第7章「白肩の律(つ)上陸」。ちょっと調子が変わり、スキップで駆け上がるようなリズムに。金管楽器による印象的な旋律が挟まる。
 (自宅では代表的な第1章ばかりを聴くことが多く、第2章以降はあまり聴いていなかったのですが、今回生演奏で第2〜7章をじっくり聴き、「楽しい曲だなあ!」と気付かされました。)

 そして最後、第8章「天業恢弘(てんぎょうかいこう)」。第1章の旋律が最後に戻ってきました。静かだった第1章に比べ、オーケストラもソリスト(バリトン・テノール)も音量がぐんと上がりました。何度でも聴きたい、印象的な旋律。特に真ん中あたりの「道ありき、古(いにしへ)もかくぞ響きて…」の箇所、繰り返しの旋律が少し変化して、高さの異なる声が綺麗にかさなる箇所ですが、「ああ、いいところだなー」と惚れ惚れ。
 指揮者は全身で指揮棒を振り回し、合唱団もすごく張り切って歌い、最終章を盛り上げていました。ただし…ちょっと力が入りすぎ、しつこすぎでは…?そこまで頑張らなくてもいいのに…って気もしました。もう少し抑え目にして終わらせた方が余韻が残って良かったのではと思うのですが…。

 パンフレットには「初演当時の音楽的評価」について記載がありました。「楽的表現が簡潔平明」「日本楽壇の輝かしい発展の成果」「健康で、大らかで、そして何よりも真実がある」等々の賛辞に交じって、「中には『冗長』『退屈』『オーケストレーションが弱い』『終始唱歌調』といった批判もあった」と正直に書いてありました。確かにそうかもしれません。
 この曲、オーケストラがオーケストラらしいのは一部(第3章冒頭や第7章など)だけで、後はオケは決して主役ではないのです。オケが休んでいてピアノ伴奏で歌われる箇所もあって、あれっと思いました。同じカンタータでもオルフの「カルミナ・ブラーナ」では、オケ単独の曲も挟まれていて、終始オケが華やかです。「カルミナ」は「合唱+オケの曲」という印象ですが、「海道東征」は完全な「声楽曲」ですね。信時はオーケストラにはあまり興味がなかったのかもしれません。
 また、第3章から第6章までは、それぞれの曲は面白いのですが、「似たような調子の曲が続くなあ」という感は否めません。第5章の一部に児童合唱が入りますが、十分に生かされていないように思われます。第5章は例えば、ショスタコーヴィチ「森の歌」の「ピオネールたちは木を植えている」のような完全に児童合唱だけの曲にでもすれば、はっきり変化がついて飽きさせない曲になったのではないでしょうか。

 しかし幾つかの欠点はあっても、この曲は十分に歴史的名曲です。日本の記紀万葉の世界と西洋音楽とが美しく融合した曲。明治維新以降70年の間、日本人が欧米列強の学問や文化を吸収し自分らのものにしようと、一方で日本の言葉や伝統を守っていこうと、奮闘し続けた成果の一つがこの曲であると言えるでしょう。
 そして…。一般公募で集まったアマチュアの合唱団の方々が、「み身(み)坐(ま)しきすめらみおや」とか「すめぐにぞ豊葦原」とか、この歌ならではの詞…ある意味時代錯誤な詞の数々を、あんなに晴れやかな顔をして歌っている光景を目の当たりにし、呆然としてしまいました。戦後生まれの私がこれまで生きてきた社会、受けてきた教育、見聞きしてきたメディアの報道、それらとは全く別の世界が今ここにあるのだ、と。

 演奏が終わると、私も他の方々と同様、心から拍手を送りました。「良いものを聴かせて下さってありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいでした。拍手は長く続き、出演者の方々は何度もお辞儀をされていましたが、アンコールはありませんでした…「海ゆかば」か何かあるかなと思っていたのですが。でもそれでよかったと思います。チャンネル桜や日本会議の催しではなく、本当に地元音楽家の手作り感の漂う「普通の」公演だったのですから。

 終演後にロビーで、県立劇場隣のフランス菓子店の名物、長さ36cmのシュークリーム「県劇ブラボー」を購入。さらに空港の売店で、ゴマをたっぷり使った煎餅「胡麻太鼓」を購入。どちらも大変美味しかった!熊本土産としておすすめの菓子です。


 この公演の模様は、産経新聞が大きく取り上げました。
kaidou-sankei日本神話歌う名作「海道東征」戦後3度目の上演 熊本(2014.2.11産経)
 皇紀2600年(昭和15年)を祝う奉祝曲として作られた「海道東征」が、建国記念の日の11日、熊本市の熊本県立劇場で上演された。日本神話を朗々と歌う名作は、戦後民主主義の“圧力”により封印されてきたが、平成に入り、新たな感動を呼びつつある
 (中略)
 フルオーケストラでの演奏は戦後3回目。熊本市の声楽家、春日幸雄氏(63)が主宰する音楽団体「グルッポ・ヴィーヴォ」の創立25周年記念事業として企画。気鋭の指揮者、山田和樹氏(35)と管弦楽団「横浜シンフォニエッタ」を迎え、熊本県内11の合唱団の120人が集まり実現した。
 その荘厳な響きに聴衆約1300人は魅了され、演奏が終わると拍手が鳴りやまなかった。86歳の女性は「もう一度聞けるとは思わなかった」と涙ながらに語った。
 春日氏の妻、信子さん(62)は「今の時代にようやく演奏できたのは日本人が日本人の良さを見直すようになったからだと思います。これを機会にもっとこの名曲が広まってくれれば…」と語った。

 歴史的公演だというのに、産経以外にはまともに取り上げたメディアは見当たりません。地元の熊本日日新聞は、記者が当日来場していたのを見かけましたが、十数行のベタ記事のみ。それ以外の社は、熊本支局を置いている社はいくつもあるはずなのに、地方版記事すら見つかりません。いったい何をしてるんでしょう。

 と思いきや、思わぬところから反響が。
日 ‘건국기념의 날’ 금기시됐던 ‘천황’ 찬양곡 공연(韓国語原文)
日‘建国記念の日’ダブー視された‘天皇’称賛曲公演(web日本語訳)
[ヘラルド経済=チョン・イェソン記者]
 日本の右傾化が極端に駆け上がる中で日本‘建国記念の日’に古代天皇を称賛する曲が公演されて波紋が生じている。
 12日産経新聞によれば、建国記念の日である去る11日熊本県熊本市、熊本県立劇場でカンタータ‘海道東征’が公演された。
 海道東征は1940年に神武天皇の即位2600年を記念して初演されたことで、内容は日本書紀に基づいて建国神話から‘神武東征’(神武天皇が九州で近畿地域に進出して征伐するという正月)までを扱っている。
 問題はこの曲が2次大戦以後天皇制に対する批判的な雰囲気の中でダブー視されてきたが再び復活したのだ。保守指向の産経は“日本神話を朗々とするように詠じる名曲が前後民主主義の圧力によって封印されてきた”として戦後三番目に開かれた海道東征オーケストラ公演で“荘厳な響きに聴衆1300人が魅了された”と美化した。(以下略)

 「波紋が生じている」!? 日本のメディアには殆ど黙殺されてるしネット上でもさっぱり話題になってないのに?地元選出の国会議員でも来るかと思ったけど誰もいませんでしたよ?ひょっとして「波紋」の意味を知らずに使っているのか? 最近の韓国人は漢字が読めなくて漢字語の意味が正確に理解できないらしいですから…。

 朝鮮人が嫌がるくらいですから、今回の公演は間違いなく日本人にとって価値があるものだったのでしょう。これからは、新保祐司氏が主張するように「第九の代わりに海道東征を」とまでは思いませんが、せめて毎年建国記念の日に日本のどこかで必ず演奏される程度には知られる曲になってほしいものです。

(追記)
 公演当日の模様を書いた、私以外の方のブログ記事を2つ見つけました。合わせてお読みいただくと、公演当日の様子がより良く分かるでしょう。
 
 感無量!!
 バリトンのソリストとして当日舞台に立たれた、春日保人さんのブログ記事。
 信時潔『海道東征』を熊本県立劇場で聴く
 私と同様、関東から観賞に駆けつけた瑠璃子さんのブログ記事。

(追記2)
 2016.4.22、この公演のライヴ録音CDが発売されました! この素晴らしい公演にいらっしゃれなかった方、ぜひお聴きください。
   
「海道東征」信時潔 作品集
横浜シンフォニエッタ 山田和樹
オクタヴィアレコード
2016-04-22


【おすすめ音源】
 SP音源復刻盤 信時潔作品集成
 戦前の録音を復刻した6枚組CD。合唱曲、独唱曲、小学唱歌、ピアノ曲、校歌など、信時の代表作を収録。現在ではほとんど演奏されなくなった曲も多く入っている。今回公演の曲のうち、東京音楽学校(現・東京芸術大学)生徒による混声四部合唱の「あかがり」、「木の葉集」、木下保指揮による「海道東征」が収録されている。
 木の葉集~信時潔ピアノ全曲集
 信時潔のピアノ作品を40曲収録したCD。2004年発売。演奏は花岡千春。「木の葉集」 を全曲収録。
 邪宗門・帰去来 [第11集]
 北原白秋作詞の歌曲を収録したCD。歌唱は山本健二。今回上演された「帰去来」を収録。
 オーケストラ・ニッポニカ 第2集
 2003年2月23日に紀尾井ホールで行われた「芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ」第2回公演のライヴ録音CD。戦後初の「海道東征」オーケストラフルバージョン録音である。
 海道東征のホームページにようこそ
 昭和44年10月6日に北九州混声合唱団がピアノ伴奏により上演した「海道東征」全曲録音を聴けるサイト。指揮者は木下保。
【おすすめ楽譜】
 信時潔合唱曲集
 混声四部合唱及び女声四部合唱の「あかがり」を収録。
 信時潔 ピアノ曲集
 「木の葉集」全15曲を収録。
 信時潔「海道東征」 vocal score
 今回公演のために復刻された合唱用スコア。当日ロビーでも販売されていました。私は買いませんでしたが隣の席の方は休憩時間に買っていました。
【おすすめ書籍】
 音楽青年誕生物語―繰り返せない旅だから〈2〉
 バリトン歌手・畑中良輔の自叙伝。「日本初の一大カンタータ≪海道東征≫」の章に、東京音楽学校の生徒として「海道東征」を歌った貴重な証言が綴られている。

自民党比例・宇都隆史候補、7/10(土)東京・埼玉・千葉で最後の街頭演説!

uto いよいよ今週末7/11(日)に迫った参院選、比例区自民党から立候補している35歳の元航空自衛官・宇都隆史(うと・たかし)さん(=写真)に投票しましょう!
 普天間問題、中国の台頭、韓国による対馬侵略・・・。今ほど日本に国防が重要な時はありません。「生まれ変わるなら、また日本がいい」をスローガンに掲げる真性保守の元自衛官・宇都隆史さんを、私たちの代表として国会に送りましょう!

宇都隆史さん公式HP
Google 未来を選ぼう 参院選 2010: 宇都隆史

 さて、宇都さんの票田は自衛隊関係であるせいか、三橋貴明さんのように大都市の駅街頭などで演説されることは多くなく、この選挙期間中も主に地方を回られていたようです。

 しかし宇都さん、選挙戦最終日の7/10(土)には東京・埼玉・千葉を回られるとのこと。ひょっとして関東在住の一般人である我々も宇都さんのお姿を拝見できるかも!?
 思い切って事務所に問い合わせてみましたところ、7/10(土)の詳細な日程を教えていただけました。以下の通りだそうです。関東地方在住の憂国系有権者の皆様、宇都さんの応援に馳せ参じましょう!!
《7月10日(土) 宇都隆史さん遊説時間と場所》

0800〜0850 東立川駐屯地・官舎地区(東京都立川市)
0910〜0930 小平官舎(東京都小平市)
1100〜1130 田柄官舎(東京都練馬区)
1300〜1315 練馬駐屯地(東京都練馬区)
1315〜1345 練馬官舎(東京都練馬区)
1415〜1445 和光官舎(埼玉県和光市
1450〜1530 朝霞駐屯地(埼玉県和光市)
1800〜1900 二俣官舎(千葉県市川市)
1900〜2000 西船橋駅

※上記日程は予定につき、道路状況や諸事情により急遽変更になる場合あり。

 上記のうち、場所が最も分かりやすいのは19時からの西船橋駅でしょう。しかもこちらのブログさんによれば、「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員も応援に駆けつけられるとか。これは見応えアリ!
 他の場所は、官舎よりは駐屯地が分かりやすいと思います。おそらく正門前で演説なさるでしょう。

 今朝の産経の報道によれば、民主党からも自衛隊OBが出馬していて、宇都さんの基礎票を奪おうと必死で活動しているとか。絶対許せません! 民主党から自衛隊出身者など当選させてはなりません! 皆さん、家族友人知人に宇都さんへの投票を呼びかけて下さい!

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