昭和って良かったなあって書くと
 すぐに懐古厨と一般化するバカもいますが、
 まあ、昭和はなんだかんだ言って良かったす。


 むかし、わしがまだ小学生の頃、
 街にはよく人攫いが出ると言われてました。
 北朝鮮の拉致なんてのも人攫いだから
 そういう意味では本当にあったわけですけどね。


 とはいえ、子供達は子供たちで結構好きに歩き回っていたし
 大人もいい感じで適当に放っておいてくれたので
 いろいろな遊びも子供たちの中で流行しました。


 女子はゴム跳びとかリアルにやってたしね。
 男子はゴムボールを使ったロクムシってやつをやってた。

 
 gm


 わしもいろいろやっていたけれども、
 そこはわし。


 わしのお気に入りはルンペン狩りでありました。
 当時はホームレスとは言わず一般的には乞食と言ってましたが、
 はだしのゲンを読んだ仲間達は
 なぜか乞食とは言わずにルンペンと言い始めたんすよね。
 たぶん、ルンペンって響きがいいからだと思う。


 そして、このルンペンが強かった。
 わしらが根城にしていた公園にいつもおるルンペンで
 子供たちはいつもこのルンペンに泣かされよった。
 特に強いのはオリバーという怪物で
 なんか子供たちの間ではオリンピック選手やったらしいとw
 まあ、そういう噂がまことしとやかに流れるくらい。


 ある日、学校が半ドンで引けてから
 自宅で昼食を済ませたわしらは
 校区にある遺跡発掘現場に盗掘に出かけた。
 何時代か分からないけれども
 とにかく遺跡発掘現場であるとのことで
 悪童数名でこの発掘現場に侵入したわけである。


 しかし、ここはオリバーの根城とも言われており、
 小学生であるわしらにとっては敵地でもある。
 見張りをひとり立たせて発掘現場を小さなスコップで掘り始めたわしら。
 今考えると、あらかた掘り尽くされたであろう現場なのだが、
 小学生のわしらには宝の山。
 みな一心不乱にスコップで穴を掘る。


 その時、見張りの「オリバーが来た!」という声で
 みな一斉に見張りの指差す方を振り返る。
 まだ遥か遠方ではあるけれども
 明らかに敵意を示しつつオリバーが肩をいからせ
 髪を振り乱しつつ走って来る!


 悪童達は口々に「逃げろ!」と叫びつつ
 蜘蛛の子を散らすように四方に展開して逃走を始めた。
 わしは買ってもらったばかりの自慢のギア付き自転車で来ていたので
 当然に自転車に飛び乗って現場離脱をしようとしたのだが……。

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 こんなやつ


 緊急時に鍵は開かない(by マーフィー)絶賛作動中。
 解錠に手間取っているわしに狙いを定めて
 オリバーが猛烈な勢いで走ってくる。


 わしは愛車を見捨てて、うわーーっと半べそで市電の線路を超えて商店街へと逃げ込んだ。
 路地を素早く左に曲がりこみ、民家の植木鉢の傍に身を隠す。
 そこから通りを見ていると、オリバーがわしを探しながら歩き回っているのが見える。
 しばらくそこに身を隠し、近所の煙草屋の同級生の家に逃げ込んだ。
 そこには現場から離脱してきた仲間たちがすでに集合しており
 みな口々に「怖かったー」と顔を見合わせていた。
 煙草屋の同級生のお母さんが炭酸ジュースをくれたので
 そのジュースを飲みながらどうやって逃げたのかをみなで報告しあった。


 そこで決定したのがオリバーに仕返しをするということだった。
 まず工作の得意なAを中心にバズーカ砲を作ろうということになった。
 Aは小学校に侵入して工作室にあった排水パイプを失敬し
 これを手頃な大きさに切断してまず砲身を拵えた。
 わしらは小遣いを出し合って固定式ロケット花火を数個購入。
 このロケット花火をバズーカ砲に元込めしてから発射するのだ。


 さらに青い松ぼっくりを集めてきて
 これの芯をくり抜いておく。
 オリバーと遭遇した時にはすばやく爆竹をこの穴に差し込み
 点火してオリバーに投擲する。
 最初から差し込んでおくと湿気てしまうので
 いざという時に着火しないのだ。


 近接武器としては水風船を準備。
 ひとり2つほどの水風船をもって有事に備える。
 

 こうしてわしらはオリバー討伐に出かけたのである。
 オリバーと遭遇したのは討伐も何度目かだったと記憶するが、
 とにかくオリバーを発見したわしたちは
 よく訓練された兵卒のようにキビキビと動き、
 わしらに猛然と突っ込んで来るオリバーに向かって
 バズーカ砲の照準をぴたりと当てた。

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 わしはバズーカ砲の砲身を支えるために
 左肩を貸すのが仕事だった。
 身の危険を顧みず片膝ついて腰を落とし、
 左手で砲身を支えて安定させる。
 なぜか右手は腰に当てていた。
 形から入るタイプである。
 仲間たちは、松ぼっくり爆弾や水風船でオリバーの接近を阻止する。


 ピューーーーという爆音とともに
 バズーカ砲がオリバー目掛けて飛んでいく。
 煙がもうもうと立ち込める。
 やったーー、めいちゅうーーー!!
 歓声を挙げる仲間たち。


 しかし、少しだけ怯んだオリバーは
 すぐに態勢を立て直して再び攻撃に転じてくる。
 爆竹投げろー!
 バズーカー、弾を込めろー!
 仲間たちが第二次攻撃の準備を始める。
 爆竹20連発が投げつけられ、
 水風船が投げつけられるがオリバー怯まない。


 わしの仕事は左肩を貸す重要な任務である。
 わしが逃げ腰になるとバズーカ砲は安定しない。
 勇敢なるわしは腹を据えて


  Aちゃん、オリバー来るよ、オリバー来るよ。
  もうそこまで来よるよ!
 

 バズーカの砲身を左手で支え
 右手は腰に当てたままAに叫ぶ。

 
  わかっとる、焦らせんな!
  火つけるぞ!


 Aがマッチで着火する。
 再び、ヒューーーという音と続いてバンという破裂音が響く。
 オリバー、少し怯む。
 その隙に「逃げろーー!」と悪童は撤収。


 わしらは予め約束しておいた待ち合わせ場所に集まり、
 また三々五々、煙草屋の同級生の家に集まったのである。
 みな困難な任務を達成した達成感で満たされていた。
 ひとりの怪我人も出すことなく部隊は解散。


 また、同級生の母ちゃんがジュースを持ってきてくれる。
 子供たちが何をしてきたかは先刻知っていたはずのお母さんだが、
 そこは敢えて何も野暮なことは言わない。
 ただ一言。
 
  お母さん心配しとるけん、これ飲んだらみんなお帰り

 fnt


 とまあ、昭和という時代はゆるくて子供にとっても天国のような時代だったというわけ。
 ましてや大人なら尚更に天国のような時代だったに違いないね。