本ブログについて

現在は「理想的な自転車利用環境の実現に必要な情報発信」を行っています。
国内外の事例紹介、政策や研究の検証、設計手法や提言は、主要記事まとめをご覧ください。
※記事内容に疑義や誤りがある場合は、コメントでご指摘願います。

. 平成28年12月9日に成立した「自転車活用推進法」を検証する本記事シリーズ。
 第3回となる今回は、本法を法律の体裁の観点から見た疑義について検証します。


4-1. 用語の定義をしない欠陥法律

自転車活用推進法(htmlpdf)

第八条
 自転車の活用の推進に関して、重点的に検討され、及び実施されるべき施策は、次に掲げるとおりとする。
一 良好な自転車交通網を形成するため必要な自転車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の十四第二項に規定する自転車専用道路をいう。)、自転車専用車両通行帯等の整備


二 路外駐車場(駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)第二条第二号に規定する路外駐車場をいう。)の整備及び時間制限駐車区間(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第四十九条第一項に規定する時間制限駐車区間をいう。)の指定の見直し
 (2)で取り上げた”自転車レーン”、(3)で取り上げた駐車場の箇所ですが、ここでは法律としての疑義の観点から。

 自転車専用道路については「道路法」からの引用と明記があり、路外駐車場は「駐車場法」から、時間制限駐車区間は「道路交通法」からの引用であると明記がある。

 しかし、なぜ「自転車専用車両通行帯」だけ明記がない?引用元が不明、用語の定義も不明、法律としてありえない。

 加えて実は、「自転車専用車両通行帯」という用語も法的には存在しない。
327_4_2109_6_2
【規制標識】普通自転車専用通行帯(327の4の2)
【規制標示】専用通行帯(109の6)(※自転車用にレイアウト修正)

 自転車レーンに関する正式な名称は、標識令における「普通自転車専用通行帯」。
 「自転車専用車両通行帯」という謎の存在は用語も存在せず、この自転車活用推進法で何を実施するのかも分からない状態。

 この用語は実は、後述のいわゆる”駐輪場法”からそのまま横引きされてきたものであり、そちらでも定義・引用元について未記載。
 今回の自活法では、附則で関連法の条文改定も同時に行っているのだから、そちらと合わせて適正化すべきだった。

 更に加えて、本法では「自転車専用車両通行帯」を「整備」となっているものの、現在の日本の法律で「自転車専用車両通行帯」は「整備」する存在とはなっておらず(道路構造令等に記載なし)、単に道路交通法・標識令に基づき交通規制を「指定」するだけの存在。(これは駐輪場法ではきちんと記載)
 本法に関連する自転車団体は、「道路構造令」等への自転車専用通行帯の反映という法令整備を求めてきたにも関わらず、いざ自分たちの法律を作る段になればそれら法令用語の整合性を無視。

 本法は行政指針でもガイドラインでもない、れっきとした「法律」であり、法治国家日本の最大規範となるもの。その杜撰さは本法の法律としての正当性を毀損することになる。


4-2. なぜ「駐輪場」に一切言及しない??

 この法律が実施する施策を列記した第8条において、

第8条第3号:「シェアサイクル」
第8条第5号:「安全な自転車供給」
第8条第6号:「人材育成」「資質(教育)」
第8条第7号:「ITによる自転車管理」
第8条第8号:「(自転車利用者に対する)安全教育」
第8条第9号:「健康増進」
第8条第11号:「公共交通連携」
第8条第12号:「災害時活用」
第8条第14号:「国内外観光増進」
第8条第15号:その他
(上記欠番は他記事で説明)

 などの事項が記され、(詳細に見れば多々の疑義はあれど)上記は法律規定としても大きな問題はない。

 しかしこの第8条、そして法律全体において、もっとも理解に苦しむ問題がある。自転車の法律として奇怪な問題。

なぜ駐輪場について一切言及しない?



 自転車レーンからシェアサイクルから観光まで、更には第9・10・11条で「自転車活用推進計画」という総合的なの自転車計画策定を謡っていながら、不気味なまでに駐輪場(自転車駐車場)について一言も記載なし。

 実は、駐輪場については前述の”駐輪場法”、正式名称「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(html)」という法律が既に存在しており、そちらとの記載重複の回避のためと考えられるが、

 ならなぜ法律を一本化しなかったのか。例えば駐輪場法には以下の条文があるものの、

第1条(目的)自転車等の利用者の利便の増進に資する
第4条「良好な自転車交通網」
第5条「自転車等の駐車対策の総合的推進」
第7条「自転車等駐車対策」の「総合計画」
第10条「都市計画等における配慮(※公共交通含む)」
第11条「交通安全活動の推進」
第12条「自転車等の利用者の責務」
第13条・第14条「自転車の安全性の確保」

 今回の自転車活用推進法と内容が被りまくり
 駐輪場では駐輪対策計画を定めることになっているものの、自活法ではそれを包括する自転車活用推進計画を定めることになっており、駐輪場法が単独で存在している意味がなく非効率。

 更に細部を見れば、本法の雑則で定めている第14条「自転車月間」「自転車の日」は、既に駐輪場法の施行を記念して民間で使用されているものであり、そのイベントには国土交通省も後援済み。
※ウィキペディア「自転車月間
※財団法人の説明→http://www.toj.co.jp/?tid=100205http://www.toj.co.jp/?tid=100849
 ある法に起因する記念日が、他法で指定されるという難解な作り。なぜ統一しなかったのか。


 実は過去、次回最終検証で触れる団体は、駐輪場法を発展させる形での「自転車活用推進法」の成立を検討していたものの、
http://cyclists.jp/about/suggestion.html
 結局今回の自活法は、駐輪場法の改定一切なし、駐輪場法への言及も一切なし、完全に別個独立した日本の法律を併存させるという状況に至らせてしまった。

道路交通法と道路構造令の用語不一致に苦しめられてきた自転車行政が、
今度は基本的理念や政策の点でも二つの法律の整合性への配慮を強いられるという、同じ過ちの繰り返し。


4-3. いちスポーツを法律が支援明言する異常性

 最後は端的に。第8条には以下の項目もあるものの、

自転車活用推進法(htmlpdf)
第二章 自転車の活用の推進に関する基本方針

第八条
 自転車の活用の推進に関して、重点的に検討され、及び実施されるべき施策は、次に掲げるとおりとする。

四 自転車競技のための施設の整備
十 学校教育等における自転車の活用による青少年の体力の向上
 自転車活用推進のため重点的に検討し実施されるべき施策が、なぜ自転車競技のための施設整備

 基本的理念で健康増進があるものの、それはわざわざ法律で自転車という一手段を明記するものではなく、学校教育に法律で盛り込むことを明記するものでもない。自転車のために外される他の体育種目は何になる?それは自転車より青少年体力向上において劣る存在なのか?

 自転車イベントの開催で自転車活用推進を目指すという主張かもしれないが、ツール・ド・フランスのフランス、ジロ・デ・イタリアのイタリア、両国とも一般自転車利用環境の環境整備が立ち遅れた自転車後進国。イベント開催が活用推進を直接生み出せるものでもない。

 それに、自転車競技のための施設とはそもそも何なのか。ロードレースは交通規制で公道で行われるものであり、ならばケイリン場の整備を推進するとでもいうのだろうか。ケイリンやBMXを見せることが国民の自転車活用推進に向けた重点施策なのか。
 或いは郊外のサイクリングロードは、自転車競技のために整備推進されるものでもない。

 いちスポーツに過ぎない運動としての自転車を、法律に明言するのは法治国家日本の法律として異常。

 このような意味不明な条文に至るのも、結局は(1)での目的や基本的理念をはき違えているため。
 自転車活用推進とは、自転車自体に興味がなくとも、長距離を歩く体力のない子供や高齢者であっても、誰もが安全で快適に自転車を使える環境さえ整備すれば勝手に推進されるもの。

 そこに青少年体力向上やら自転車競技やら環境負荷低減を持ち込むのは、安全で快適な環境整備から目を背けたバーターとして自転車配慮を見せかけるため。
 自転車活用推進を実現する抜本的環境整備から逃げ、些末なソフト対策で不十分な推進を図ろうとする。


 これも結局は、本法成立を主導した集団、スポーツ自転車愛好家集団の利益誘導の手段という本法の真の存在目的に起因するもの。
 次回最後の検証です。


【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)

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国道19号の自転車走行空間整備(※③-2も事業完了)

 名古屋市における国道19号自転車走行空間の現地調査。今回は桜通の後期整備区間「自転車レーン」の検証を行います。


2-1. 桜通(後期区間)の自転車レーン

 伏見通との交差点から桜通を東に進み、自転車道の整備箇所が終わりに近づくと、
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 自転車道の中に青赤の自転車ナビラインが登場。そこから
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 左側の青矢羽が車道に、右側の赤矢羽が歩道に、なんと位置が逆転。そこから青ナビラインは
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 車道左端を渡っていき、
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 二段階右折用のスペースが設けられた交差点を抜けると、
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 その先は、桜通後期区間となる自転車レーンが整備。


2-2. 自転車に使われない欠陥形態

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 車両である自転車は車道走行が原則、法律を表面的になぞった主張により行政・警察が全国的に整備推進している路面ペイント。

 しかし本区間においては、いや本区間においても、全国の先行事例とまったく同じ失敗が繰り返される。
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(※駐輪場の出入口が完全に歩道側だけという設計思想の矛盾)
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 自転車が自転車レーンを使わない。大半が歩道走行。
 自転車レーンを走行する自転車はわずか2割程度。前回(1)で利用率3割の伏見通自転車道を欠陥としたが、使われないという観点ではこの自転車レーンの方がそれを超える欠陥形態。
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 道路交通法に基づき業務を行う路上駐車監視員さえ、自転車レーンを使う気なし。
 この自転車レーンは整備からもう2年弱経過し、市民への浸透が未達という言い訳も通用しない。

 自転車に見放された欠陥インフラ、その結果として
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 従来通りの歩行者と自転車の混在が発生。

 前回(1)の桜通自転車道が走路分離をほぼ100%達成、歩行者にとっても優れたインフラとなっている一方、
 今回(2)の桜通自転車レーンは、自転車の快適も歩行者の安全も担保しない、欠陥整備となり果てている。
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 本区間の歩道走行で特に多いのが右側通行(→車道走行推進派は”逆走"と呼称)だが、ここは片側4車線+中央分離帯の超広幅員、そして横断歩道も数百00mに1か所程度しかなく、右側通行を志向する短距離移動の自転車への配慮が欠如。
 一般自転車の安全性も利便性も軽視し、このような失敗に至るなど最初から分かっていること。


2-2. 路上駐停車と自転車レーンが誘発する「ドアクラッシュ」

 ただし本路線の光景は、従来の自転車レーンとは大きく異なる点があった。
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 自転車レーンを潰す路上駐停車。その時間長短に関わらず自転車の走行を阻害し、自転車レーンの致命的な欠陥要因であるものの、

 本路線での路上駐停車の大部分は、これと異なる。
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 自動車が、自転車レーンを避けて駐停車している。本路線のそれの大半がこの停め方をしていた。
 整備直後のストリートビューでは全てレーン上駐停車だったものの、整備から2年程度の経過により、このような配置へと変化したらしい。
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 結果、一見すると自転車走行空間が確保され、安全な環境が実現しているかのように見える。
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日本での既往事例:品川駅港南口地区
※出典:駐車需要を考慮した都道480号線の自転車専用レーン
kosuke miyata氏 togetter 20160306 より

 この配置は、東京都の品川駅付近にある自転車レーンでも存在。駐車枠を明示し位置を誘導しているものの、

 しかしこの自転車レーンは安全な存在とはならない。それどころかこの駐停車の配置によりかえって、自転車が走ってはならない、自転車を走らせてはならない危険な空間が生み出されてしまう。
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NEW YORK POST 20140427: City cyclists injured or killed when ‘doored’ by careless drivers

 それはこの「Door Zone」の存在が原因。「Dooring」としてWikipedia記事ができ、「Doored」「Door Crash」など多様な呼称をされ、国外では危険な空間として認知されている。

 ドアクラッシュを避けるため、ドアゾーンを明確に回避させるペイント形態すら存在。
 この空間を走行すると、例えば自転車は10km/h以下で走りなどしない限り、ドア開閉による事故リスクを自転車自身は避けようがない。一見安全に見えて高い事故リスクが潜む存在になる。

 本区間は自転車レーンの幅1.5mで、ドアゾーンは0.8m程度。レーンの左端を走ればギリギリ回避はできるものの、
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 このような駐停車をされると万事休す。自転車はドア衝突に怯えながら、博打の左側通過を強いられることに。

 一方でこのドアクラッシュの事故リスクを抜本的に除去するため、世界各都市で導入が進んでいるのが「緩衝帯」。
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(非段差分離・ペイントタイプ)ゼブラペイント
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(段差分離・かさ上げタイプ)写真左側の段差
アメリカの構造分離自転車走路ガイドライン:「Separated Bike Lane Planning and Design Guide」より

 これは路面上へのペイントでもよく、縁石かさ上げでもいい。幅1.0m以上、最低でも0.8m以上のバッファー空間=「緩衝帯」を設けることで、ドア激突のリスクを封じることができる。

 この緩衝帯は自転車の安全向上だけでなく、自動車への乗降のスペース確保、荷卸しスペース確保、交差点での自転車と自動車の離隔確保など、多様な機能を発揮。本来の自転車走行空間に必須の要素と言っても過言ではない。


 残念ながらこの緩衝帯は、未だ日本での明確な整備事例が一つも存在せず、(1)の桜通自転車道でも旧態依然のガードパイプ設置であり導入への兆しが見えない。

 自転車の走行性を確保しつつ、駐停車へも一定の配慮を行うため、今後導入が望まれる形態です。



2-3. 最大の愚行:道路改修による自転車レーン整備と幅員浪費

 検証最後、この桜通後期区間の自転車レーン整備における、最大の問題について。
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(再掲示)

 この整備は、自転車の行動特性も通行台数も安全性も一切無視し、幅1.5mの自転車レーンで済ませるという思考停止がもたらしたもの。

 では何故、幅3.0mの自転車道ではなく、1.5mの自転車レーンで妥協したのか。

 自動車の車線削減を忌避したから?それは違う。3+1車線ある車道は削減の余地があるものの、本整備における最大の問題は車線削減ではない。
 車線を削減などせずとも、この区間で自転車道など本来、余裕で整備できていた。
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 自転車道整備を放棄した最大の元凶は、この道路空間のえげつない浪費と無駄遣い。
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 歩行者と自転車のために割くべき貴重な道路空間、その中で無様に氾濫した植樹に植樹帯。これが都市景観の一体何に寄与しているんだ?
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 絶句物の無残な植樹によって分断された通行空間、その車道側は一応のスペースになっているものの、
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 1.0mもない狭小空間を自転車がみじめに通行。普通自転車通行可の歩道において自転車は車道寄りを走る必要があり、道路交通法に基づく走行がこのような状況に。
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 前期区間における充実した島式バス停処理は何だったのか。バスベイに思考停止の自転車レーンを塗っただけ。
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 自転車道を整備しなかった釈明として考えられそうなのが、このような歩道橋や地下鉄出入口があるということ。
 しかし双方向通行(対面通行)自転車道なら、幅3.0mの走路を上下車線1.0~1.5mに分離し、この支障物を両側から避けて連続させればいいだけの話。
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 そしてこの欠陥の元凶は設計者だけでなく、自転車レーン指定した愛知県警も加担。自転車と歩行者の完全分離を実現できる自転車道の実現を放棄し、自分は本来自転車道があるべきスペースにのうのうと合法的路上駐車スペースを作らせるという傲慢ぶり。

 十分すぎる幅員がありながら、思考停止に無駄遣いを重ね、自転車のみならず歩行者の安全・快適を実現する走行空間の整備を放棄したということ。

 そして悲劇はこれだけにとどまらない。本区間はよりにもよって、
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 歩道上のタイルも縁石も、すべて新品に再整備。
 道路改修で自転車レーンを作ってしまうという最低最悪の愚行をやらかした。

 一度道路改修を下手に行ってしまうと、欠陥形態が取り返しのつかないことになる致命的問題。これは構造分離自転車道ばかりが批判されるものの、その悪質さは自転車レーンであっても何ら変わらない。

 自転車の安全が確保されない、歩行者と自転車の分離も実現しない、自転車交通量増加時の対応も出来ない、この欠陥形態が次の道路改修までの30年、名古屋の都市空間を縛り続けることになってしまった。

【参考】
疋田智「宇都宮の「自転車道」に考える」の検証:”まずは車道左側走行”が破壊する自転車利用
P2028246
 こんな看板を立てようと、使われないものは使われない。前期区間のように看板など無くても使われるものは使われる。


 以上が、桜通後期区間における、目を覆いたくなる悪夢のような思考停止自転車レーンの惨状。

 前回に前期区間の自転車道を奇跡的、何かの間違いと書いたのは、この後期区間の愚策を前提とするが故。前期区間の自転車道はたまたまマグレで誕生しただけ。

 国土交通省名古屋国道事務所の、本事業の設計担当者、それに決済印を押した管理職は、一体自転車と歩行者の何を考えて設計したんだ?どこまで何も考えなかったんだ?何をどう思考停止すれば、ここまでの悪質極まりない道路改修にたどり着くことができるんだ?


 この整備後、名古屋国道事務所では次期整備のプレスなどはない。しかし自転車レーン至上主義に染まり切った現在の国土交通省の自転車政策では、次も思考停止自転車レーンを繰り返すことは必至。

 現在の日本の自転車政策の破綻を象徴するような、絶望的な走行空間整備。そしてこの失敗は全国で繰り返されていきます。


【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)

20150608_04_01
国道19号の自転車走行空間整備(※③-2も事業完了)

 国土交通省名古屋国道事務所が整備・管理する国道19号「伏見通」と「桜通」。
 平成29年1月下旬、平日の07:30~09:00に現地調査した様子を2回に分けて記事にします。

 今回(1)は伏見通と桜通の「自転車道」。今回の自転車道は、おおむね過去記事で事前調査した印象通りの整備状況でした。
名古屋国道事務所:国道19号伏見通り・桜通りの「自転車道」と「自転車レーン」



1-1. 伏見通の劣悪な自転車道

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 南北に走る伏見通での整備形態。これは事前調査のとおり本当に劣悪。
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 わざわざ自転車の走行を拒むために作られたかのような自転車道、理不尽な屈曲の連発。

 そして本区間は整備の一貫性すらない。南側区間でのこの屈曲は交差点滞留部やバス停などへの自転車の直進を阻害し、歩行者の安全を守る建前のために設けられたと推測されるものの、
 先に進んだ北側区間では
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 北側個所ではなぜか屈曲がなくなり、横断歩道待機部に自転車を突撃させる「道路構造令自転車道」の典型的な欠陥形態に。
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 そして言うまでもないもう一つの欠陥、これだけ車道と歩道に空間を割きながら自転車道はたった2.0m。

 本形態の欠陥は、自転車の自転車道利用率によって即座に露呈する。
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 せいぜい10km/h程度でしか交差点を走行できない中、けなげに自転車道を走る自転車も居るものの、
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 半数以上が自転車道より広い歩道を走行。自転車道を走る自転車はせいぜい3割。

 現地で見て言葉を失うほどの欠陥自転車道ながら、かろうじてまともな点を探そうとすると、
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 次の桜通自転車道と共通し、自転車道に併設された駐輪場は(現地調査の限りでは)利便性が高そう。沿道に連続点在しており、自転車道の走行も誘導する配置。
 しかしにも関わらず、自転車に使われない欠陥自転車道である事実は変わらない。

 次の桜通と連続して調査すると、改めてこの伏見通のひどさが分かる。なぜこんな形態になってしまったのか・・・


付録. 従来通りの歩行者と自転車の混在

 次の桜通に行く前に、交差する道路を眺めた様子。
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 自転車走行空間がまったく確保されず、歩道で自転車が歩行者と混在する様子。
 道路幅員を無駄に削る、支柱や街路樹の撤去や再配置で改善はできるだろうに。


1-2. 桜通(前期区間)の高規格な自転車道

 伏見通を北上すると、桜通との交差点に。
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 伏見通の西側から北上。自転車道が分断され、歩道橋にスロープはあるものの、自転車の横断は容易でない。
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 加えてこの交差点は、横断歩道も100m程度離れた位置にしかなく、自転車はおろか歩行者の横断も自動車に阻害される。自動車大国名古屋を象徴するかのような交差点。
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 一方の伏見通東側は、歩道橋の脇を縫うように続いていき、
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 交差点隅切り部を走っていき、
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 東西を走る国道19号桜通に接続。
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 伏見通とは世界が一変。幅員3.0mの高規格な自転車道に。

 一方の交差点処理については、
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 屈曲形状自体は伏見通と同じ、自転車の走行性に配慮したものではないものの、
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 その線形は伏見通より遥かにマシ。20~25km/hぐらいで通行でき、対向自転車がいなければスポーツ自転車でもまったく走行に問題なし。
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 そして自転車走路を車道から離して離隔をとっているおかげで、右左折自動車の待機ポケットができ、自転車の走行阻害を最小化。ドライバーから自転車が見やすくもなり事故リスク低減に貢献。
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 そして線形以前に、この桜通は交差点での自転車道の分断が一切なし。後述の相模原自転車道をはじめ、日本の自転車道の大半が行っている走路分断がなく、全箇所で自転車道が連続している。
 もちろん、効果的な配置で自転車横断帯を用いることで可能となる。
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 歩行者の待機位置も明確なので、自転車道が歩行者に潰される問題も解消。

【参考記事:交差点を含む自転車走行空間の設計手法について】
改定自転車道設計基準(案)
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 バス停処理についても、歩道と島式バス停の間を貫通する連続形態。点字ブロックも設置され横断位置も明示。
 惜しむらくは、本路線も自転車道と車道の間をバス停以外は横断抑止柵で固めてしまい、荷卸しの邪魔だという声が少なくないようであること。
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(非段差分離・ペイントタイプ)ゼブラペイント
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(段差分離・かさ上げタイプ)写真左側の段差
アメリカの構造分離自転車走路ガイドライン:「Separated Bike Lane Planning and Design Guide」より

 これら形態のように、かさ上げの有無に関わらず、柵などつけなくとも構造分離は可能。荷卸しの阻害も最小限。要はバス停部以外も全線にわたってスペース確保=「緩衝帯」を設置すれば解決します。

 伏見通とはまったく設計の次元が異なり、現在の日本ではもっともまともな部類に入る走行空間。その成果は伏見通と同じく、自転車の自転車道利用率に即座に現れ、
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 自転車の自転車道利用率はほぼ100%。それだけでなく自転車道内の左側通行率もほぼ100%。特段の啓発を行わなくとも、自転車インフラが自転車ルールの定着を促している。
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 結果として、自転車と歩行者のほぼ完全な導線分離に成功。歩道は歩行者の手に取り戻され、歩行者にも自転車にも安全で快適で便利な道路が実現している。
 これは首都圏における神奈川県相模原市:国道16号とまったく同じ効果。

【参考】
国道16号「相模原自転車道」の整備形態(1)双方向通行自転車道の真価
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 こんな法定外サインなど無くとも、自転車が走りたくなるインフラを作れば自転車は勝手に誘導される。
 逆にこのサインの無意味さは次回の自転車レーンで露呈。

 この桜通前期区間はほかにも、
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 歩道への自転車乗り出しを防ぎ、自転車道へのアクセスを容易にする駐輪場も完備。これも次回の後期区間とは比にならない。


 最初の伏見通、そして次回の桜通後期区間の惨状からは考えられない、何かの間違いで生じたこの桜通前期区間。
 現在の日本の道路行政及び交通警察の設計手法では、このような形態が実現する可能性はほぼゼロ。つまり道路と警察の手違いで生じた走行空間ともいえ、日本有数の成果を発揮している整備区間と言えます。


 この前期区間の成果を元に、名古屋に自転車走行空間整備が広がっていく・・・しかし残念ながら、その望みは脆くも費える。
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 桜通後期区間の自転車レーン整備。
 今回冒頭の伏見通自転車道を超える欠陥インフラ、この自転車レーンの検証は次回。

【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)

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