. 京都市「京都・新自転車計画」(改訂京都市自転車総合計画見直し)の検証、シリーズ第2回です。
 前回第1回に引き続き、見直し検討部会の理事である自転車活用推進研究会:ツーキニスト疋田智と古倉宗治について、その主張と根拠を検証します。

 今回取り上げるのは、見直し検討部会第2回の協議資料P17。
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出典:第2回「改訂京都市自転車総合計画の見直し検討部会」
協議資料 P17 (html及びpdf)

 自転車の車道走行と歩道走行、どちらが危険かを論じているページです。
 この中で「自転車の歩道走行はドライバーに気づかれにくいため、車道走行より危険」という”持論”の主張がされており、右の円グラフがその「根拠らしきもの」として掲載されています。

 その下に出典として「成功する自転車まちづくり:役立つ具体策」とありますが、これは古倉宗治の著書。この資料も古倉の関与により作成されたものと考えられます。
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 自転車配慮型道路の幅員構成が自動車走行特性に及ぼす影響に関する研究
鈴木美緒・屋井鉄雄(東京工業大学大学院)
土木計画学研究・論文集 No.25 No.2 pp.479-486 2008(pdf)

 京都府資料では古倉自らが行ったかのように見せかけていますが、実態はこの論文から引用してきたものです。
 著者は「鈴木美緒」。東京工業大学助教で、自転車関連で博士取得。要は屋井教授の弟子です。

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 この鈴木論文では、簡単に言うと「自転車が走っている道路で自動車がどう感じるか」について研究しており、その調査項目の一つが「自動車は左折時に自転車に気付くか」です。

 ではその調査方法はどのようなものか。どんな道路で調べたのか。論文に書いてある。







ド ラ イ ビ ン グ シ ミ ュ レ ー タ ー


 これは屋井も開発に関わっている、東京工業大学の道路走行環境分析ツール「MOVIC-T4」。

 そう、この論文及び古倉宗治が京都市見直し部会第2回で掲載している円グラフは、実際に道路を走ったわけでなく、モニター上での調査結果です。

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 ただし、今回はドライビングシミュレータの使用自体が最大の問題ではありません。

 今回の問題は、DSの使用自体でも、そのDSの性能でもなく、この研究の「調査方法」
 実験は「事故危険に直結しない条件下」で行われたため、この結果から「歩道が車道より危険だとは言えない」
ということです。

 ここで「調査方法」の確認のため、論文の中身を読んでみます。
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出典:鈴木論文
※調査方法の該当箇所を管理人抜粋


 該当箇所はこの通りですが。漫然と読んでいては不審箇所に気づかない。その個所を抜き出すと

 首を振る動作によるHMD独特の負担や、左折の操作時に現実との乖離が生じる可能性も残っているため、
 このことを考慮して、左折直前に巻き込む可能性のある自転車を発見したかのみに着目して分析を行なった。
(※HMD:ヘッドマウントディスプレイ)

 分かりにくい日本語ですが、要は「頭が重い状態で左折の操作をすると、現実と違う結果になる恐れがあるので」、今回は「「左折動作を始める前」に自転車を見つけたか分析した(=データ化した)」ということです。

 そしてこの条件では、自転車の歩道走行と車道走行の危険性の比較はできない
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図1:(左)①鈴木論文における「自転車を発見したかの調査位置」と、
(中)②車道走行の自転車の事故を防ぐ「限界点」
(右)③歩道走行の自転車の事故を防ぐ「限界点」

 ①:この研究で「自転車を発見したか」は、「左折直前」で判断したものと書かれている。HMD着用による動作と現実との乖離を考慮し、左折動作を行う前に判定した。
 しかし現実には、鈴木研究における調査位置の「左折直前」で自転車を見落としたとしても、即事故にはならない。図1の通り、自転車の走行レーンに侵入する寸前の「限界点」までに気付けば回避できるからです。

 ②:ただし図中央の「車道走行」自転車に対しては、左折直後に気付かなければ直ちに走行レーン手前の限界点に達し、自転車を巻き込む。
 今回研究結果に基づけば、「気付かなかった: 30.2%」とそう変わらない確率で事故危険が生じます。

 ③:一方で図右側の「歩道走行」自転車に対しては、左折直前から限界点まで距離・時間の余裕がある。加えて自動車は左折により、自転車を視認しやすい向きに回っていくため、左折直前と比べて視野も大きく広がる。
 つまり、研究結果の「気付かなかった: 59.3%」よりも、見落し率が大きく減少すると考えられます。

 つまり、この研究結果から「自転車の歩道走行は車道走行よりも事故につながる見落としが多い」とは言えない。事故につながる見落としについて、歩道と車道を比較できるものではありません。

 この鈴木論文が、恣意的にこのような条件設定を行ったかは分からず、今回これ以上は追求しません。
 ただし鈴木美緒と屋井鉄雄という、「自転車の車道走行至上主義者」「自転車の構造分離不要論者」によって書かれた論文であることは留意しておく必要があります。

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 今回の京都市資料が掲載したデータは、歩道と車道の危険性の比較の根拠となるものではなく、更にこの資料では「ドライビングシミュレータの使用」「首振りなし・左折直前での判定」という重要な要素も隠蔽している。

 京都市が導く結論ありきで用意された、資料の1ページに過ぎないものです。
 今回検証は以上です。