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 今回は2020年東京オリンピック・パラリンピックの試合会場「有明アリーナ」について検証を行います。

【都議会のドン:内田茂の五輪利権「有明アリーナ」の検証と真偽】
(1)東京都庁の「技術提案型総合評価方式」
(2)逆転落札を生んだ「技術点」の謎
(3)東光電気工事の監査役は「地方自治法」違反?

 なお最初に明言しておくと、表題の「真偽」について断定はおろか、示唆される情報すら今回検証では見つかりませんでした。
 しかし本疑惑に限定されない、この整備事業や落札業者に関する疑問について整理していきます。


1.東京都庁の入札形態「技術提案型総合評価方式」

  2020年大会やその試合会場の全体概要については、ここで説明するまでもないため省略します。

 大会会場で最も脚光を浴びるのは新国立競技場ですが、これは国(JSC:文部科学省の外局)の整備。
 その一方で2020年五輪を招致した東京都自身は、大会に向け3施設の整備を事業中。それが「海の森水上競技場」「オリンピックアクアティクスセンター」、そして今回の「有明アリーナ」。

 今回着目したのは、その発注・落札方法。

 これら施設について発注というと、当初の杜撰な要件設定のため莫大な規模・費用となった新国立を白紙撤回し、短い工期で五輪に間に合わせるため採用された「デザインビルド方式(DB)」が思い出される。
 通常は設計業務と施工業務に分けて発注される施設整備に対し、その工期短縮や設計・施工の連携度向上のため用いられる一括発注の手法であり、東京都庁の上記3施設についても採用された。
(備考:同じDBと銘打っても、新国立と都立3施設の手法は異なるもので、管理人も専門外のため詳細な説明は省略します。)

 しかし今回のテーマはDBではなく、業者間の競争方法について。

 通常の公共事業は「競争入札」、複数の希望業者が金額を提示し(札入れ)、その中の最安値で落札される方法が一般に採用されていますが、これら施設では通常と異なる「総合評価方式」が使用されている。

 これにも施工能力審査型、技術力評価型、そして今回の技術提案型など多数種類があるものの、簡単に言えば単純な価格競争だけでなく、その業者の技術力や提案力を入札時に審査し数値化した「技術点」と、入札額を数値化した「価格点」を足し合わせ比較することで落札業者を決める方法です。

 長い前置きは終わり、3施設のひとつ「有明アリーナ」について落札結果の公表資料を見ていきます。
20160728_05_02_01
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2016/01/20q1f100.htm
設計・施工一括発注技術提案型総合評価方式の結果について
平成28年1月14日 東京都オリンピック・パラリンピック準備局
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2016/01/DATA/20q1f101.pdf
有明アリーナ(仮称)(27)新築工事 P1

 発注額360.9億円に対し、落札額360.2億円。落札率にして99.8%と、ほぼ発注額イコールの落札。
 ただし発注額は案件公示時に一般公表されているため、口利き云々のものではありません。
 なお後に関わりますが、今回の3施設では最低制限価格も設けられていませんでした

 落札業者は、建設の竹中、給排水の朝日、空調の高砂、そして電気の「東光電気工事」で構成されるJV。本案件に限らず、高額の案件では複数業者で「ジョイントベンチャー」を構成します。

 ではこのJVは、ほかの参加JVとどのような競争を行ったのか。
20160728_05_02_02
P2

 有明アリーナ入札に参加したのは、竹中・東光JVと、鹿島JV。その入札額は「税込み」で

  発注:36,095,448,960(100%)
  竹中:36,028,800,000(99.8%)
  鹿島:35,100,000,000(97.2%)

 注意点ですが、P1の金額は税込みで、P2の金額は税抜き。これをきちんと読まず勘違いしたか、発注額を超えて竹中・東光が落札したかのようなデマが流れていますのでご注意ください。

 両JVとも落札比率は高いものの、元が360億円という大工事のため、両JVの差額は税込約9.3億円にもなる。
 9.3億円分安価な入札をしたのは鹿島JV。しかしこの金額差を逆転し、今回の「技術提案型総合評価方式」で落札したのは竹中・東光JV。詳細を見てみると、
20160728_05_02_02_01ed
P2拡大

 この入札は「価格点」と「技術点」の和で判定され、両JVの点数は
 
 竹中:0.1107+60.000(+100)=160.1107
 鹿島:1.6546+53.400(+100)=155.0546

 価格が安かった鹿島の方が価格点が高いものの、竹中・東光の方が技術点が高く、合計値で上回った竹中・東光が落札した。これが有明アリーナの落札の結果です。(技術点の+100は差がつかない共通)

・・・

 9.3億円の差があるのに、価格点の差がたったの1.54??

 両JVとも、技術点は50点を上回っていながら、価格点の差はおろか点数自体もたったの0や1台。
 この価格点はどうやって算定しているんだ?
20160728_05_02_02_02
P2拡大

 最終評価値は、60点満点の価格点と、実質60点満点の技術点を足したもの。
 技術点については両JVとも、満点60点に対しまあ妥当かという数値である一方(※ただし竹中・東光の技術点”満点”の疑義については次回後述)
 価格点、これも60点満点なのに、なぜ両JVともたったの0や1?

 肝心のこの価格点の算定方法が本資料に記載されていない。「東京都技術提案型総合評価方式実施要綱」http://token.or.jp/news/20150716_02.pdfにも具体的方法が記載されておらず、どうやら案件ごとに設定しているらしい。
 その算定式は、案件公示時には公表されていたはずが、現在は見られず。一体どんな式か・・・

 と考える必要がないほど単純だった。

 「1-(入札額/発注額(予定価格))×60」。これだけ。

 両JVとも落札率は9割後半、いや100%近くであり、技術点がほぼゼロなのも納得が行く。
 ただしそれは、この式を本案件で用いるのが適切であるならば。

 ・・・
 この式を使うことが、本案件にとって本当に適切なのか?

 少額の案件ならまだしも、このような国家規模の案件でオフザケの低価格入札されるなどあり得ない。参加者がある水準以上の金額で札入れしてくるはず。

 その目安に通常の案件でなるのが「最低制限価格」。これは一般の競争入札において、発注時に金額直接か予定額に対する比率であらかじめ公表されており、組織や案件にもよりますが例えば83%程度の値。

 一方で本案件では、価格点で満点を取るには「0円」という札入れをするしかなく、まともな次元で札入れ出来る金額を最低制限価格で想定すれば、価格点は(1-0.83)*60=10点しか取れない。
 価格点は満点60点と見せかけながら、実質的にはせいぜい10点程度ということ。

 価格点と技術点のバランス。この特殊方式について当然想定される問題ですが、これについては上記要綱でも多少言及されている。
20160728_07_01_05
http://token.or.jp/news/20150716_02.pdf
東京都技術提案型総合評価方式実施要綱 P4

 「なお、技術点の配点は価格点の配点を上回らないこととする」。いくら総合評価方式で技術力を評価するといっても、やはり最大の要素である価格競争の意義を希釈するものではないと自ら謳っている。
 しかし、確かに表面上の配点こそ同じ60点満点ながら、価格点は実質的に10点満点。これは自らの要綱の意図に背いているのではないのか?
(※もちろん技術点も実質的な点数範囲は60点より遥かに小さいものの、価格点のベースである実際の費用差との整合性が妥当かの問題がある)

 それならば、もっと妥当な価格点算定方法があるのでは?
 例えば、上記の公表済み最低制限価格で入札すれば満点にするとか・・・
20160728_01_04_01
https://www.e-procurement.metro.tokyo.jp/indexPbi.jsp
東京都入札情報サービス
※有明・アクアティクス・海の森の3施設も検索可能

 それは東京都庁自身が採用していた。調べると出てくる。
 おそらく技術提案型ではない別の総合評価方式ですが、価格点を見るに、最低制限で入札すると満点30点が付与される模様。こちらの方が有明より遥かに「総合評価方式」の名に相応しい比較を行えている感がある。

 一方、上述のように今回有明には、最低制限価格が設定されていない。デザインビルドという例のない特殊方式のため、最低額の設定自体が困難であることは間違いない。

 しかし、だからといって本案件の価格点算定に選択の余地がないわけではない。本来の最低制限価格が設定できなくとも、80%~90%程度の水準値を決めて、その金額での入札に60点満点を付与するようにしていたら?
 その水準値自体の設定が必要にはなるものの、事前に公表しておけば競争の妨げにはならない。

・・・

 せっかくなので、独自に仮想最低制限価格での価格点すえ直しを行ってみます。
 満点価格を83.3%に設定(税込30,079,533,600円)。そうすると両JVの価格点は、(発注額-入札額)/(発注額-満点価格)×60で算定でき、

 竹中:0.6647
 鹿島:9.9281
 差分:9.2634

・・・上記のとおり、両JVの技術点の差は6.6。
 そう、この方法であれば総合評価逆転今回の竹中・東光ではなく、鹿島が受注していた!!

 これは表題の五輪利権や疑惑云々の話ではなく、単純に9.3億円安価な金額で契約できる可能性があったということ。
 予定360億円から見れば3%以下の端金かもしれないが、この高額さ、そして費用縮減が喫緊かつ最重要課題として挙げられている五輪準備において、この差を軽視できるのか?
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P2拡大(再掲示)

 本案件の「技術提案型総合評価方式」、確実な施工のためその技術力を評価するための方法である結果と主張するかもしれない。
 では、両JVの技術点の差6.6点をひっくり返すのに必要な価格差は幾らになるのか?これは単純に(6.6/60)×発注額で算出でき、

 ・・・39億7千万円!!
 竹中・東光より約40億円安く札入れしなければ、鹿島は勝てなかったということ。
(※もちろん、鹿島がもう少し札入れ金額を上げ、その分技術提案を高度にすれば勝利していた可能性があり、(作為がなければ)同じ土俵で勝負している以上その戦略を鹿島が誤ったとは言える)


 両JVの技術提案の差は、本当にこの40億円に見合う程度のものだったのか?
 ここで問題となるのが、「技術点」の妥当性。今回はここまで、次回はその検証を行います。

 初回最後に注記しておくと、
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東京都議会議員・都議会自民党幹事長:
「都議会のドン」内田茂(html)

 初回と次回については、内田茂の疑惑よりも、問題なのは東京都庁の公共事業の発注方法。これを踏まえて整理していきます。

【都議会のドン:内田茂の五輪利権「有明アリーナ」の検証と真偽】
(1)東京都庁の「技術提案型総合評価方式」
(2)逆転落札を生んだ「技術点」の謎
(3)東光電気工事の監査役は「地方自治法」違反?