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石川)自転車走行指導帯、範囲拡大へ 事故防止に効果
朝日新聞デジタル 2017年3月10日(html)

 車道左端における自転車の通行位置を示した路面ペイント、これは平成24年11月29日策定の全国基準「自転車ガイドライン」で規定される、一般に”自転車ナビライン”と呼ばれるもの。
 この路面ペイントのプロトタイプとして、基準の元になったのが、石川県金沢市内において平成19年1月10日に試験設置された「自転車走行指導帯」。

 この試験施工以降、実施主体の国土交通省金沢河川国道事務所、地元自治体の石川県、金沢市らで構成される「金沢連合体」は「自転車の車道走行推進」に注力していき、金沢は”自転車通行環境先進都市”として持て囃されることが多くなった。

【参考】
・金沢レーンの奇跡はこうして起きた!・・・路線バスと共存する自転車レーン
  平成26年11月7日 CYCLE MODE international 2014 チームキープレフトブース(html)
・2014年度第7回自転車活用研究会は「金沢の奇跡!」
「加賀百万石・金沢市発祥のバス・自転車レーン登場の秘密」
  平成26年11月6日 NPO法人自転車活用推進研究会(html)
・走行帯を色分け 事故減少
  平成27年12月25日 読売新聞 関西発(html)
・石川)自転車走行指導帯、範囲拡大へ 事故防止に効果
  朝日新聞デジタル 平成29年3月10日(html)

 しかしこの金沢の実情について、事業実施から現在まで、その過程や成果を網羅的にまとめた資料は存在しない。
 そして全国で成功事例として持ち上げられる「金沢の奇跡」、この実態や評価について適切に検証されたこともない。

 本シリーズではこの金沢における自転車走行空間整備を取り上げ、公表資料等からその実態を検証していきます。

【記事シリーズ:金沢市内の自転車走行空間整備】
(1)自転車走行指導帯とバス専用レーン
(2)東金沢駅前の自転車レーン
(3)50m道路の自転車歩行者道
(4)自転車政策の目的は「事故減少」なのか
(5)主導者「三国成子」と「自転車の車道走行原理主義」



1-1. 国道159号「自転車走行指導帯」自転車とバスの道路シェア

 最初に金沢市内における自転車政策の歴史を、簡単に年表にしておきます。(青字は全国の動向)

平成14年5月 「地球の友・金沢」三国成子が「金沢自転車マップ」を市内高校に配布
平成17年4月 道の点検簿:国道159号浅野川大橋~山の上を要対策個所に抽出
平成18年12月11日 「自転車の路肩走行指導強化」プレ社会実験
平成19年1月10日 国道159号(浅野川大橋~東山~山の上)交通安全対策協議会 第1回
(※第4回まで実施)
平成19年3月19日 「自転車走行指導帯」社会実験開始
平成19年10月1日 「自転車走行指導帯」正式運用
平成23年2月23日 金沢自転車ネットワーク協議会 第1回
(※国道159号協議会の後継、数ヶ月置きに開催、配布資料は完全非公開)
平成23年3月 「金沢市まちなか自転車利用環境向上計画」策定
平成23年10月25日 警察庁「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」
(※警察庁による”自転車の車道走行推進通達”)
平成24年11月29日 国土交通省「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」策定
(※「自転車ナビライン」を規定、三国が検討委員として介入)

平成25年8月 「金沢自転車通行空間整備ガイドライン」策定
平成27年3月 「金沢自転車通行空間整備ガイドライン」改訂
平成28年3月31日 国土交通省「自転車ネットワーク計画策定の早期進展と安全な自転車通行空間の早期確保に向けた提言」
(※三国が検討委員として介入)
平成28年7月19日 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン改訂
(※「暫定形態」を規定)

平成29年3月 「金沢自転車通行空間整備ガイドライン」再改訂


 それでは、金沢の自転車政策の嚆矢となった国道159号の説明に。
(※平成20年4月1日に路線番号が変更となり、現在は国道359号(参考)となっています。)

 正式な発端となったのは、平成17年4月頃に実施された「道の点検簿」。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料4 道の点検簿(htmlhtmlpdf)

 これは金沢市内の国道を管理する国土交通省の出先機関「金沢河川国道事務所(以下「金国」)」が中心となり、警察・県・市及び市民と共同で、事前に行っていた事故危険個所の抽出図「安全マップ」の対策状況をまとめたもの。

 この点検簿で大きな問題として取り上げられたのが、国道159号浅野川大橋~山の上における、自転車の走行状況。
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「自転車走行指導帯」社会実験前の様子
引用元:
・社会実験前 平成18年11月10日(金) 朝8時頃(html)
・道の点検簿:浅野川大橋交番前交差点~山の上交差点まで(htmlhtmlhtmlhtml)
等より

 自転車の車道逆走、2台並走、歩道上の歩行者ニアミス等、一般に「自転車の交通ルール違反・危険運転」と呼ばれる状況。
 この問題は、車道に走行空間がなく、一方で歩道も通学路でありながら有効幅員2.0mすらない狭小、自転車がまともに走れる空間が存在しなかったこと。また高校生の通学や社会人の通勤など、ラッシュ時に時間を急ぐ自転車の台数が多いこと。
 そして加えて、
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引用元:同上

 本路線は朝ラッシュ時にバス専用レーンの規制がかかり、自転車の車道走行が考えられる状況ではなかったこと。これらの複合的な問題を抱えた路線だった。

 この中で金国が幹事を務める「国道159号(浅野川大橋~東山~山の上)交通安全対策協議会」(html)(以下R159協議会)が中心となり、交通環境改善のための方策が取られた。

 それが、この金沢の自転車政策の先駆けとなる
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引用元:後述

 「自転車走行指導帯」の試験設置。
 まず平成18年12月11日に「自転車の路肩走行指導強化」として自転車の車道左側端走行を行うプレ実験を行い、平成19年1月10日の第1回R159協議会を経て、平成19年3月19日に「自転車走行指導帯」を路面ペイントし社会実験を開始。
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「自転車走行指導帯」社会実験中の様子
平成19年04月26日(金) 朝8時頃(html)
等より

 なお社会実験時は上記のような四角形のペイントであり、その後の正式運用と全国基準「自転車ガイドライン」策定後、薄くなったペイントを矢羽状(=自転車ナビライン)に塗り直して現在に至る。

 この走行指導帯について、実験の成果として様々なデータが上がっているため検証すると、
【朝】
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料2 事後調査結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
P6(朝のバスレーン時間帯の通行割合変化)
【夕】
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P8(夕方ピーク時の通行割合変化)

 実験前は低い割合だった車道左側走行の自転車が、走行指導帯実験により大きく増加。バスレーン規制がかかり朝ラッシュ時だけでなく、(バスレーン規制のない)夕方ピーク時にも車道左側走行割合が増え、歩行者の安全性が大幅に高まった。

 ・・・ように見えるが、実はこのデータにはカラクリがある。

 大々的に成果を誇示する上記の棒グラフは、あくまで各日ごとの通行割合。
 では、実際に歩行者の危険性の指標となる、歩道走行する自転車の台数はどうなったか?下にちいさくちいさく書かれた台数データを読み取ると以下の通り。

【朝】
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料2 事後調査結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
P6 朝のバスレーン時間帯の自転車通行台数の変化(CCTV1)
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P6 朝のバスレーン時間帯の自転車通行台数の変化(CCTV2)
【夕】
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料2 事後調査結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
P8 夕方ピーク時の自転車通行台数の変化(CCTV1)
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P8 夕方ピーク時の自転車通行台数の変化(CCTV2)

 朝については学校で交通指導を受ける高校生が多いため、歩道走行の台数も大きく減少している。
 一方の夕方については、歩道台数にほとんど変化なし。それどころか街頭指導を行った日でさえ、実験前と台数に差がないという結果に。

 尤もこれは、高校3年生が卒業間近+極寒のため自転車利用が少ない2月・3月と、高校生入学後で暖かくなる4月以降とで直接比較は出来ないものの、(※本来は前年同日と比べるべきだが、金国が計測していないorデータ非公表のため不可能)
 夕方は指導を行った日さえ効果が僅少である事実に変わりはない。歩道走行の割合が下がったのは、他路線を走行していた等の自転車が本路線に経路変更し車道台数が増えたがため。

 この国道159号の”特殊条件”とは、ルール遵守教育の効果が出やすい高校生が通行者の主体で、車道も自転車への強制配慮がかかる路線バス専用レーンであるというもの。この条件下での朝ラッシュ時は効果はあった。
 一方でこの特殊性が薄まる夕方ピーク時では、街頭指導を行いながらも「歩行者を守るため歩道走行の自転車を減らす」という数値成果は殆ど上がらなかったということ。


 本実験では自転車の台数調査以外に、実験前後において歩行者・自転車へのアンケートヒアリングも行っている。
 まずは自転車へのアンケート。実験前は

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国道159号交通安全対策協議会 第2回 平成19年3月5日
資料2-1 事前アンケート結果報告(htmlhtmlpdf)
朝の自転車へのアンケート
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国道159号交通安全対策協議会 第2回 平成19年3月5日
資料2-1 事前アンケート結果報告(htmlhtmlpdf)
夕方の自転車へのアンケート

次に実験開始後は

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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
朝の自転車へのアンケート
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
夕方の自転車へのアンケート

 自転車にとって、安全だとは朝20.7%、夕方21.3%しか感じなかったのが、実験開始後は朝36.2%、夕方33.3%が安全と感じるように。
 一方で、危険と感じている割合は実験前半数以上だったのが、事後は半数を切ったため一定の効果はあったものの、上記のように安全だとする回答は1/3に留まっている。自転車にとっても心理的負担の大きい方策だと考えられる。

 一方の歩行者アンケート。まず実験前は

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国道159号交通安全対策協議会 第2回 平成19年3月5日
資料2-1 事前アンケート結果報告(htmlhtmlpdf)
朝の歩行者へのアンケート
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国道159号交通安全対策協議会 第2回 平成19年3月5日
資料2-1 事前アンケート結果報告(htmlhtmlpdf)
夕方の歩行者へのアンケート

 次に実験開始後は

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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
朝の歩行者へのアンケート
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
夕方の歩行者へのアンケート

 実験前は朝15.8%、夕方17.5%の歩行者しか安全と感じなかったのが、実験開始後は朝69.9%、夕方63.7%もの歩行者が安全と言えるように。
 結果的に、歩行者の安全確保については大きな成果を収めた。

 ・・・ように一見思えるが、実はこのアンケートにもウラがある。問題なのは集票結果。
 アンケート調査方法はもちろん明記されており、まずは事前のもの。
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国道159号交通安全対策協議会 第2回 平成19年3月5日
資料2-1 事前アンケート結果報告(htmlhtmlpdf)
P1

 主要な回答主は、高校生が6割、地元町会が2割。
 
 一方で実験開始後アンケートについては
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国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
P1

 地元町会が1割を切るまで激減し、高校生が8割を超えるという集票結果。
 いずれの対象へも実験前・実験開始後で同数配布したものの、なぜか地元町会の回収率が激減したため。

 理由は不明ながら、結果として実験前後を比較するには不適格な欠陥アンケートになったと共に、多くの歩行者で構成されるであろう地元町会の結果が反映さず、歩行者の安全意識を把握できなかったという結果に。

 本事業について、朝のバスレーン時における歩行者の安全確保に一定の効果があったことまで疑うものではない。しかしそれ以外の時間や、実験全体について、これだけ大々的に行いながら調査結果が不十分であったのは落胆を隠せない。

 なおアンケート調査の自由意見において、危険性への様々な不安、本事業への疑念や改善要求が寄せられている。
国道159号交通安全対策協議会 第3回 平成19年6月4日
資料5 事後アンケート結果(参考資料)(htmlhtmlpdf)
◆自転車が危険になった(夕方や夜間は特に危険)。
◆クルマと接触しそうで怖い(特にバスや大型車)。共存は無理がある。
◆歩行者・自転車・クルマのそれぞれの走行位置を物理的に区分すべき。
◆危険の対象が歩行者から自転車に移っただけであまり意味がない。
◆自転車をよけるため、ウインカーをつけずに少し右側車線に入る車が増え、事故の可能性が増えた。
◆バスが急に進路を右側へ入ってくるために何度となく急ブレーキを踏んだことがある。
◆路上駐車が多く走りにくい。
◆指導帯を左側通行しているが、後方からバス等がくるとどうしても歩道に乗り上げないと危険なのでもう少し何か考えてほしい。
◆自転車走行指導帯が狭すぎる。
◆自転車走行指導帯に融雪装置があり、走りにくい。
◆浅野川大橋~東山交差点では車が左へ寄るため、歩道を走行せざるを得ない。
◆朝、右側車線にクルマがいる場合、バスは自転車の後ろを走るので遅れる。
 他に動画から見える問題点も。
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引用元:同上

 これら写真を見ると、なぜ朝のバスレーン内に乗用車が?と思いますが、実はバスレーンは交差点では解除され、普通自動車も入り込むただの直左車線となっている。
 結果として、左折自動車による自転車の通行阻害、自転車の通行を考慮しない混沌の空間に。
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引用元:同上

 そしてこちらは、バスレーン時間中でも路上駐停車が発生。アンケート自由意見にもあるように、自転車レーン・自転車の車道走行で防ぐ方法がない根本的な問題。

 なおこれ以降、交通量調査等の継続した事業効果計測が行われたか不明で、少なくとも公表資料には何も存在しない。
 本記事での検証は、現地を最低一度は見てみなければ不十分であり、著者の今後の課題とします。



1-2. 道路交通法のウソルールと「自動車交通最優遇政策」

 その一方で本事業は、公表資料だけからでも分かる大きな疑義が存在している。
 以下、通行方法に関する説明資料から。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)

 まずは停車バスを追い越す際の自転車の通行方法。
 ・・・バスが発車するまで、自転車は後方で「待機!」を強要する内容。理由は「大変危険!」だから。

 なぜ右側車線の自動車に対し、手信号や路面ペイントで注意喚起等を行うという選択肢は一切ないのだろうか。自転車にとっては、バスという車両に通行を阻害され、自動車という車両に右側追い越しを封じられ、一方的に割を食う。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)

 次の路上駐停車に対する自転車の通行についても、自転車は右側車線から事実上追い越すなという強要。

 なぜ違法駐車の自動車に通行を阻害された自転車が、右側追い越しさえ自動車に封じられなければならないのか。

 それに上記で、駐停車のすぐ右脇を追い越すのが安全かのような指導を行っているものの。これは重大な死亡事故リスクをまったく理解していない。
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 これは自転車に車道走行しか許さない都市において、危険な事故形態として認知されている「ドアリング」。何の違反もしていない自転車が、下手をすると開閉ドアに激突→車道に投げ出され自動車に轢かれ一撃死。

 日本ではこの危険度がほとんど理解されておらず、にも関わらず本例のように軽々しく自動車の真横をすり抜けさせる交通ルール強要がまかり通り、全国で杜撰な施策が繰り返されている。

【参考記事】
東京都「自転車推奨ルート」整備計画の検証(1)皇居周辺地区
国道19号名古屋の自転車走行空間現地調査(2)桜通の自転車レーン

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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)

 こちらも自動車最優先政策は同様、自転車が自転車を追い越すことすら「後方からくるクルマ」が危ないから一律に禁止させようとする、自転車抑圧の徹底ぶり。
 朝ラッシュ時は確かに速度が似通った通勤・通学自転車が多いかもしれないが、これも本路線の「特殊条件」下特有のものに過ぎない。

 そして通行方法の”デタラメ”の最後、本路線での通行方法についての根本的な疑義。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)

 本路線はバス専用レーン=専用通行帯が存在しているため、「車両通行帯」指定も同時にかかっている。

 自転車をバスや自動車が追い越す方法。自転車位置や路肩走行指導強化帯(自転車走行指導帯の旧名)に入らないよう、車線またぎか、右に車線変更して追い越す方法が挙げられているものの、

 本路線での車線またぎの追い越しは、道路交通法第20条第3項「車両通行帯」に抵触するれっきとした道路交通法違反行為。
 そして本来、第120条第3項に基づき5万円以下の罰金処分。

【参考記事:自転車の交通ルール】
(1-1)用語の定義:「車両通行帯」について
(2)自転車の通行位置:「キープレフト」と「車両通行帯」
(4)バス専用レーンにおける通行方法

 更にこれはバスレーン規制時間中だけでなく、それ以外も含めた終日適用される。(バスレーンは朝の時間限定であっても、その指定の土台となる「車両通行帯」に時間指定はないため。詳細は上記記事参照)

 「車両である自転車は車道走行が原則である」という、道路交通法を盾にした大義名分で進めた事業でありながら、その根幹で道路交通法違反行為を平然と助長しているあり得ない状況。
 あげくこの金沢R159協議会には地元県警も当然関与しており、金沢市のおまわりさんが道交法違反行為に何の是正も行わないという絶句の事態。

 もちろん車両通行帯という難解な制度自体にも数多の問題があるものの、安全や快適性への配慮もなく原理主義的に「自転車は道路交通法に基づき車両であり車道を走れ」とする日本の自転車政策に、車両通行帯の規定に疑問を呈される謂れはない。

 そして更に、もう一つの重大な問題は自転車の通行位置強要への疑義。
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図2: バス専用レーン内の自転車の通行位置のパターン
出展:上記参考記事

 実は自転車はバス専用レーン内において、車線内のどの位置を走ってもいい。上記と同じ第20条、道路交通法に基づくもの。
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再掲示:実験開始後の様子
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料7: 安全対策とルール(htmlhtmlpdf)

 なのでバス専用レーン内での自転車の左端走行強要は、道路交通法に記載のない完全なウソルール。

 もし自転車が車線右端を走ってしまえば、後ろの自動車の邪魔だろうと感じますが、だからこそ道路交通法の車両通行帯では右側車線からの完全追い越しを義務化している。それが道路交通法の考え方。

 限られた空間を自動車と自転車でシェアするための手段、その方法論自体を否定しているわけではない。本路線の特殊条件下では選択肢の一つ。
 ここでの最大の疑義は、単なる手続き論と看過できないレベルでの法運用の杜撰さ。なぜ道路交通法に違反する行為を助長させる?なぜ道路交通法に記載のないウソルールを、あたかも道路交通法に基づくかのように偽装する?

 そして後述ながら、この金沢の事業は「成功事例」「金沢の奇跡」と担ぎ上げられ、上記道路交通法違反行為助長までも全国に氾濫することになる。
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国道246号「自転車ナビライン」:バスレーン時間帯の現地状況調査より
※自転車の左側帯通行はウソルールで、車線跨ぎ追い越しは道交法違反

 ここまでの通り、本事業の目的は自転車の安全で快適な走行空間を創出するものではない。あくまで現在の自動車交通を堅持したまま、自動車交通最優先の思想の元、自転車をその秩序に組み込ませようとするもの。

 この金沢の方針は、整備形態検討の際にも表れている。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料10 参考資料 冒頭資料(htmlhtmlhtmlpdf)
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 これが整備前の断面で、
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 これが案①、都市計画道路実現時のイメージだが、道路状況を考えれば不必要な車線幅3.25mにこだわる自動車至上主義ぶり。
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 これは案②、2車線化させる案ですが、自動車交通量に対して容量オーバーという理由から、既存の自動車交通をあくまで堅持する思想のために棄却。

 なお本路線の外縁部において、
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・石川県 道路事業(外環状道路)(html)
・金沢外環状道路「山側環状」の整備効果について 国土交通省金沢河川国道事務所(pdf)

 山側環状という事実上のバイパス路線が整備され、市内(本路線R159)の交通量も減少した効果はあったものの、より一層交通を転換しR159の自動車交通秩序を変革しようとする意思はない模様。

 そして2車線化において、朝ラッシュ時にバス(+自転車)レーン専用にするという提案もなし。
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 これは案③の3車線化案だが、こちらも車線3.25mにこだわり、また②と同様自動車交通量を捌けないという自動車優遇策の理由で却下。
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 これが案④の走行指導帯で、「安価で短期間に整備することが可能」と採用。

 そして「あえて自転車と自動車の混合交通を許容することにより、交通安全意識の高揚と自転車利用のマナー
アップが期待できる」と、自転車に相応の心的負担をかけることがマナー向上を生むという根拠不十分な持論でこの案を採用。
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国道159号交通安全対策協議会 第1回 平成19年1月10日
資料11:路肩走行指導強化帯の整備イメージ(htmlhtmlhtmlpdf)

 結果、このような断面に。自転車走路だけでなく、自動車の渋滞を起こしてでも歩道を拡幅するという選択肢は金沢連合体には存在しなかったということ。

 シリーズ終盤で示しますが、これはあくまでバスレーン+多量の通学高校生という「特殊条件下」において、歩道上の歩行者と車両交通を分離するという単一目的のため実施されたものに過ぎない。

 「”安全”で”快適”な自転車利用環境創出」ではなく、あくまで既存の自動車を最優先した交通秩序に、自転車を組み込むもの。
東山指導帯1[1]
浅野川大橋界隈にて自転車走行指導帯&歩道拡幅の整備完了♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2016.05.08(html)

 繰り返しながらこの整理はシリーズ後半で。


1-3. 「自動車走行指導帯」という無思慮の同一扱い

 今回(1)の最後。金沢の成功事例としてこの「自転車走行指導帯」が持ち出され、それはバスと自転車の共存空間であるとされることが多いですが、

 単に「自転車走行指導帯」と言っても、金沢で行われている整備はその箇所ごとにまったく特性が異なるもの。

cyuuousyougakkou[1]
owaricyou[1]
seseragi[1]
自転車通行空間整備について(html)
※詳細は次回

 細街路における整備事例、これは整備延長から見ても、路線ごとの効果や整備妥当性からみても、(おそらく)事故低減効果から見ても、「自転車走行指導帯」として役割が大きいのはこちら。

 これが「成功事例」とされるのは、(自転車・歩行者をこの程度の道で端に追いやる手法の疑義はあれど)否定されるものではない。
 しかし、細街路と幹線道路の違い、道路種別もわきまえずただ「自転車走行指導帯」と同一視し、全国でとにかく左端を塗ればいいという杜撰な事業の乱発に金沢が利用され続けているのが日本の現状。


 今回(1)は以上。次回に続きます。

【記事シリーズ:金沢市内の自転車走行空間整備】
(1)自転車走行指導帯とバス専用レーン
(2)東金沢駅前の自転車レーン
(3)50m道路の自転車歩行者道
(4)自転車政策の目的は「事故減少」なのか
(5)主導者「三国成子」と「自転車の車道走行原理主義」

【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)