H2903_01_07
⑦県道東金沢停車場線(htmlpdf)
(自転車専用通行帯(=自転車レーン))

 「自転車環境先進都市」と持ち上げられる金沢市、その整備状況を検証するシリーズです。
 今回は東金沢駅前の「自転車レーン」を取り上げます。

【記事シリーズ:金沢市内の自転車走行空間整備】
(1)自転車走行指導帯とバス専用レーン
(2)東金沢駅前の自転車レーン
(3)50m道路の自転車歩行者道
(4)自転車政策の目的は「事故減少」なのか
(5)主導者「三国成子」と「自転車の車道走行原理主義」


2-1. 金沢連合体の「自転車の車道走行推進政策」

 前回(1)で取り上げた国道159号線の自転車レーンは、ルール順守効果が働き易い通学高校生が利用主体、バス専用レーンでの採用という「特殊条件」下で、一定の目的から見た効果は挙げたもの。

 この後、金沢河川国道事務所、石川県、金沢市を中心とする金沢連合体は、市内での環境整備を進めていく。
201703_01_01
金沢市内の自転車通行空間整備状況(H29.3時点)
国土交通省金沢河川国道事務所(htmlpdf)

 この「自転車通行空間」には、様々な形態が存在している。
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③市道本町白菊線(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)
cyuuousyougakkou[1]
自転車通行空間整備について(html)
市道中央小学校西側
(自転車走行指導帯)
owaricyou[1]
自転車通行空間整備について(html)
市道尾張町
(自転車走行指導帯)
seseragi[1]
  自転車通行空間整備について(html)
市道せせらぎ通り
(自転車走行指導帯)

 これら自動車速度が30km/hに満たない(or抑制すべき)細街路、空間分離の必要が高くない道路においては、路面ペイントという手法自体は否定されるものではない。

 ほかにもこれら路線には以下のような事例もありますが、
31b93ec535586573ecc23bde431fc16f
金沢市の自転車通行環境
Slow Mobility Life Project 2014年12月10日(html)

 どの程度機能しているかは不明。
 そう、問題は一体どの程度機能しているのか。これについて金沢連合体ではなく、全国版自転車ガイドラインの検討の場でデータで公開されているが、
02_02_09
第2回安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会
資料1 第1回委員会の主な指摘事項と今後の進め方(案) P9(htmlpdf)

 左二つが金沢。左側通行の割合が65%から80%、58%から64%に。
・・・この結果で、全国版検討会では完全な成功事例扱いで、検討委員が疑問視する声も一切なし。
なお上記検討会検証記事でさんざん検証しているように、資料に出てくるデータは必ず何らかの誇張や情報隠蔽を行っているもので、このデータもどのような条件で行われたかは不明で信ぴょう性がない。

 次に、これより自転車への負担が増える路線については、
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②市道昭和町線26号・27号(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)
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④県道倉部金沢線(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)
H2903_01_05
⑤市道有松・四十万線(htmlpdf)
(自転車専用通行帯(自転車レーン))
arimatsu3[1]
自転車通行空間整備について(html)
同路線
(自転車専用通行帯(自転車レーン))
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⑥県道窪野々市線(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)
ootemachi[1]
自転車通行空間整備について(html)
市道大手町
(自転車走行指導帯)

 これら路線、片側1車線で自動車交通量も速度もそれほど高くない道路について、自転車の車道走行を完全に否定するものではない。
 金沢の整備は現時点で、通学高校生が多い特定条件下で、日本の他地域に比べると一定の効果を見込める路線を慎重に絞り選定している印象がある。
 これは(4)で触れますが、特定条件下での交通秩序掲載という単一目的のための手法として、選択肢にはなるもの。

 ただ上記路線はいずれも、自動車の重交通路線で行われたものではなく、
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⑧国道359号(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)
H2903_01_09
⑨国道359号(htmlpdf)
(自転車走行指導帯)

 交通量が多くとも(1)で検証した国道359号(平成20年4月1日に159号から番号変更(参考))程度と思われ、この路線も山側環状道路の開通で物流車両などの大型車通行は減少しており、そして「特殊条件」による整備事例に過ぎない。

 金沢連合体による事業は、一定の効果を期待できる選定により行っているものの、一方で重交通の幹線道路には走行環境を創出できていないと思われる。



2-2. 東金沢駅前の自転車レーン

  今回はそのような連合体の事業の代表例、東金沢駅の自転車レーンを取り上げます。
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)

 これは東金沢駅から東に延びる路線に、石川県が整備した自転車レーン(自転車専用通行帯)。
 当該箇所はもともと自動車4車線だったものの、
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一般県道東金沢停車場線 金沢市小坂 自転車通行環境整備モデル地区
自転車レーンを見てみよう!(html)
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一般県道東金沢停車場線 金沢市小坂 自転車通行環境整備モデル地区
自転車レーンを見てみよう!(html)

 自動車交通量の少なかった駅側では、車線を潰し自転車レーンに転換。

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東金沢駅自転車レーン:整備前
石川県の道路管理の取組み~のと里山海道・道路施設の長寿命化・自転車通行環境整備~
石川県土木部道路整備課 道路行政セミナー 2013.10(pdf)

1310_03_02
東金沢駅自転車レーン:整備後
石川県の道路管理の取組み~のと里山海道・道路施設の長寿命化・自転車通行環境整備~
石川県土木部道路整備課 道路行政セミナー 2013.10(pdf)

 また全線で自転車レーンは幅2.25mと広めに取っており、路上駐停車があまり生じていない路線ということもあり、本事例としては全国でもまともな通行環境。朝ラッシュ時の歩行者と自転車の通行分離もある程度なされている。

 ちなみに本個所は、平成20年1月に全国で指定された自転車通行環境整備モデル地区の一つ。

【参考】
自転車通行環境整備モデル地区:「自転車レーン」の整備事例
「自転車レーンは最も安全効果が高い」の検証:モデル地区整備結果の実態

 本事業は平成21年度末に整備完了、平成22年4月9日にオープニングセレモニー。
 以降毎年、通学高校生らを対象に現地ルール啓発が行われており、
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)

 一定の効果を上げているように見える、少なくともそう主張されている。

 しかし開通から7年、高校生利用が多くルール啓発や走行順守が効きやすい”特定条件”下でありながら、
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東金沢自転車レーンで街頭指導♪
金沢レンタサイクルまちのりスタッフブログ 2017.04.16(html)

 自転車の歩道走行や車道逆走が根絶されてはいない模様。

 そもそも本当に成功した事業であるなら、なぜ整備から7年も経ちながら、未だに毎年人員を動員してルール啓発を行わなければならないのか。
 整備直後に行われた調査からその理由が見えてきます。まずは通行位置について。
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自転車通行環境整備に伴う自転車利用者の意識と経路選択行動の変容に関する分析
 ―県道東金沢停車場線の自転車レーンを事例として― より抜粋
埒正浩・山道明・高山純一・片岸将広・中野達也
土木計画学研究・講演集,Vol. 43, 2011(pdf)

 これだけ恵まれた特定条件下のわりに、自転車の通行遵守効果には微妙さが色濃い。
 高校生が多い朝ピークですら、車道左側走行は2/3弱。日中では半数程度に留まる。

 特に目を引くのは車道右側通行の多さ。これは高校生ヒアリング結果にも表れており、
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同上(pdf)

 学校に着くのが遅くなったという不満。これは自転車レーンによって右側通行を封じられたことが大きく、このデメリットを甘受できない高校生が車道右側に出ていると思われる。

 本事業では、自転車の右側通行の需要が高いことは従前から分かっていたはず。にも関わらず車道着色やルール啓発によって「高校生の自分本位で我儘な交通ルール違反行為」を封じ込めると踏んでいたのだろうが、結果は必ずしも理想には至っていない。

 この路線における一方通行の自転車レーンという整備手法が、本当に適切だったのか。
 ここでは全線で自転車レーンに2.25mもの幅、4車線区間でも広い歩道に中央分離帯・植樹帯があり、これだけの幅があれば幅2.5m+緩衝帯付きの「対面通行(双方向通行)自転車道」を整備することができた。

 これは金沢だけの問題ではなく、車道着色の自転車レーンを安全にしようとすればするほど、必要な幅員も増え、結果的に対面通行自転車道を作れる幅に達するという。
 自転車レーンがあくまで、自転車の安全で快適な空間を確保”しない”場合の、暫定的な手段に過ぎないことが見えてくる問題です。



2-3. 幹線道路に走行空間を創出していない「自転車先進都市」

 この東金沢自転車レーンについても、金沢連合体が期待し、全国で「好事例」と紹介されるに見合うほどの結果は必ずしも得られていない。

 そしてこの金沢市内では、平成29年3月時点でも未だ、自動車速度が50km/hを超え、交通量2万台を超え、貨物大型車が多数闊歩するような重交通路線では、自転車走行空間の整備を一つも行っていない。

 最も自転車の安全と快適を実現しなければならない幹線道路において、初期実験から10年経った現在でも、成果に表れていない。これで「自転車先進都市」を名乗れるのが、残念ながら日本の自転車政策の現状。

 しかし実は1路線だけ、金沢市内で幹線道路上の自転車空間創出に成功した事例がある。
 次回に続きます。

【記事シリーズ:金沢市内の自転車走行空間整備】
(1)自転車走行指導帯とバス専用レーン
(2)東金沢駅前の自転車レーン
(3)50m道路の自転車歩行者道
(4)自転車政策の目的は「事故減少」なのか
(5)主導者「三国成子」と「自転車の車道走行原理主義」

【参考】
ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)