2007年11月

2007年11月23日

11月23日 由良川・大谷一ボケ

古屋三国岳登山道から古屋方面古屋三国岳登山道から古屋方面






古屋三国岳登山道から古屋方面古屋三国岳登山道から古屋方面






P941m北側P941m北側







由良川 一ノ壷の上由良川 一ノ壷の上












一ノ壷一ノ壷







一ボケ連瀑帯一ボケ連瀑帯












一ボケ源流一ボケ源流







一ボケ源頭から傘峠方面一ボケ源頭から傘峠方面







経ヶ岳と伊吹山経ヶ岳と伊吹山







比良の山並比良の山並







コミネカエデコミネカエデ







株立ちするナメコ株立ちするナメコ







普通のナメコ普通のナメコ







ルート:久多(岩屋谷出合)〜三国岳分岐〜トコ迫出合付近〜ツボ谷出合〜大谷一ボケ遡行〜府立大学演習林南縁尾根〜久多(岩屋谷出合)
天候:曇り(朝のうち雨山上部は雪・午後から時々晴れ)
出逢った果実:ナナカマド・ソヨゴ・クロソヨゴ・ケンポナシ・カナクギノキ・クサギ・テンナンショウ
出発時から小雨が降っていた。この雨は山の上では雪なのだろう、下から見上げると山上部は白く冠雪している。岩屋谷林道から久良谷出合に下り、岩屋谷と久良谷との中尾根を登ることにした。ヒノキが植えられた急な斜面を少し登ると、岩屋谷側に心許ないユリ道現れる。これを辿って行くといつの間にか水平に近くなってきたので、適当なところから尾根に這い上がった。この辺りから雪が現れ始め、この僅かな積雪のために足が滑って歩き辛いことこの上ない。木に掴まりながら何とか尾根まで登ってきた。尾根上には刈分道のようなものがあって、薮漕ぎはほとんどする必要はない。先程よりも傾斜は随分緩くなったが、それでも足が滑りやすいことには変わりなく、雪が無い場合の倍くらい疲れる。経ヶ岳の稜線近くになると急に雪が深くなり、靴が雪に食い込んで歩きやすくなってきた。稜線付近の積雪は20cmあまり、この冬最初に味わう雪の感触だ。この頃には雪も止み、懸かっていたガスも取れ始めて針畑側が時々望めるようになって来た。下界にはまだ紅葉が残っており、新雪に覆われた木立の合間からそれらを見下ろすと、モノクロの世界にカラーの世界が割り込んで来たかの如く鮮やかだ。三国岳には寄らず古屋からの登山道を北へ進み、P941m西尾根を辿ることにする。P941mの北斜面は真冬のように雪に覆われ、積雪は30cmほど、ちょっとしたラッセル気分だ。西尾根の途中から、トコ迫出合付近へ下る枝尾根に入り、雪の上の心地よい感触を楽しみながらどんどん尾根を下る。由良川沿いの登山道まで下ってくると、雪はほとんど消えていた。しかし由良川の水量はいつもの2倍近くあり、長靴を履いたまま渡渉できるか心配である。下ツボ谷下で1回目の渡渉、流れの中の石を飛んで辛うじて成功。2回目の大谷出合上での渡渉、同じように流れの中の石を飛んだが長靴に少し水が入ってしまった。この程度で済めばよしとしよう。大谷出合で少し食事を摂り、今回も大谷に入る。ここもいつもの2倍ほどの水量だが、渡渉に難渋することまではない。二ボケ、三ボケと続けて行ったので、今日は一ボケを登ることにする。出合の少し上から始まる連瀑帯、長靴では越えられそうにないので、大きく右岸を巻くことにした。尾根まで上がると、昔大谷に人が住んでいたときの歩道跡があり、しばらくこれを辿り途中から谷に下る。歩道跡は谷の中に途切れ途切れに現れるが、ほとんど消えてしまっているので全く当てにできない。斜滝の懸かる二俣を左に採り、最後は雪の斜面に足を食い込ませながら城丹国境稜線に上がる。この頃には空の所々に青いものも見出せるようになり、僅かながら陽も射すようになっていた。府立大学演習林南縁尾根分岐手前の笹原はすっかり雪に覆われ、どこでも歩けるほどだ。分岐からの展望は素晴らしく、比良の山々や、遠く伊吹山まではっきりと望むことができた。しばらく眺望を楽しんだ後、いつものように府立大学演習林南縁尾根をまっすぐ下った。

途中で株立ちしたナメコを見た。20年あまりナメコを見ているが、こんな状態のナメコに出会ったのは始めてである。形状から推測すると、栽培の、それもおが屑栽培のナメコ菌ではないかと思われる。味も淡白で普通のナメコにある土臭さが感じられない。もしも栽培品種のナメコであるとしたら、菌類の生態系を撹乱していることになりどのような影響が出るか心配だ。新しいブナの倒木からはナメコが発生しなくなっている状況と併せて考えると、芦生の森のキノコの世界にも異変が起こっているように思われる。
久多(岩屋谷出合)=1時間20分=三国岳分岐=1時間30分=ツボ谷出合=1時間15分=大谷一ボケ出合=1時間25分=府立大学演習林南縁尾根分岐=1時間25分=久多(岩屋谷出合)



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2007年11月18日

11月18日 由良川源流・大谷三ボケ

保谷林道で保谷林道で







保谷林道で保谷林道で







小ボケ出合を見下ろす小ボケ出合を見下ろす







岩谷出合上流(ヤマボウシの紅葉)岩谷出合上流(ヤマボウシの紅葉)






由良川(岩谷出合とツボ谷出合の中間)由良川(岩谷出合とツボ谷出合の中間)






由良川(ツボ谷出合上流)由良川(ツボ谷出合上流)







ツボ谷出合ツボ谷出合







三ボケの滝三ボケの滝







三ボケ大滝の巻道から三ボケ大滝の巻道から







ロノロノ谷源頭ロノロノ谷源頭







P941m西尾根(薄っすらと雪化粧)P941m西尾根(薄っすらと雪化粧)






P941m北側(ヤマボウシの紅葉)P941m北側(ヤマボウシの紅葉)






保谷南尾根(シロモジの黄葉)保谷南尾根(シロモジの黄葉)




 

保谷南尾根(コナラ林)保谷南尾根(コナラ林)







ウバユリの果実ウバユリの果実







ルート:古屋(保谷林道)〜水道施設尾根〜P811m〜小ボケ出合付近〜岩谷出合〜ツボ谷出合〜大谷出合〜三ボケ・ロノロノ谷出合〜P941m北側〜保谷南尾根〜古屋
天候:雨が降ったり止んだり(午後から山上部は雪)
出逢った果実:ナナカマド・サワフタギ・ユズリハ・テンナンショウ
少し悪寒がする。風邪かも知れないのであまり無理ができない。天気予報だと冬型の気圧配配置となって冷たい雨が降りそうだ。出発の準備をしながら、犬の散歩をされていた地元の方としばらく山の話をする。保谷林道脇では、もう花も果実もほとんど見られなくなってしまったので歩みも自然と速くなる。コナラの林は黄葉でオレンジ色に染まり、その下を歩くと見も心もオレンジ色になりそうだ。水道施設尾根を登り、国境稜線からP811mを経て小ボケ出合付近に下る。由良川まで下ると、冷え込みが強くないのかまだ紅葉の名残があちこちに見られた。由良川の水量はいつもより少し多め程度、岩谷出合まで川沿いに下るが困難な事は無い。だが雨が降り始めて石が濡れると、滑る石なのかそうでないのかの見分けが難しくて神経だけは使わなければならない。岩谷出合に植えたドングリを見るが、動物に食べられたり踏みつけられたりした形跡は見られず、今のところ安心だ。しばらく流れに沿って下り、最初に左岸から小谷を入れるところで登山道に登る。乾いていても険しい山道、雨が降っているとなおさら歩き辛い。下るほどに紅葉も増えてまだまだ鑑賞に堪えるほどだ。が、光が無くて輝きのないのは如何ともし難い。大谷出合から大谷に入り、今日は三ボケを長靴のまま登ることにする。最初の滝だけは登るが後は高巻くことになり、地層の綺麗なスクリュー状の滝からは、右岸をロノロノ谷出合まで一気に巻き上がった。普通は左岸を巻くのだが、変化を求めて右岸側から登り始めると、立ち木に掴まらないと上れない急登と足場の悪いトラバースが待っていた。ここで体力と神経をかなり使ったが、途中に視界の開けたところがあり、そこから見下ろす大谷方面は絶景で苦労の甲斐があったというものだ。ロノロノ谷出合に降り立ち、時間の関係で今日はロノロノ谷を詰めることにする。出合からすぐに小滝が連続するが、その後はほとんど滝がなく、また谷が幾つにも分かれるので水量がすぐに減り、三ボケよりも早く稜線に上がれる。源流を詰めていたとき、雨が白いものに変わり始めた。雪だ!雪に変わったのだ!この冬最初に見る雪に思わず手を叩いて喜んでしまった。稜線近くなると落ち葉にもう雪が積もり始め、靴が滑ってとても歩き辛い。P941m北側は薄っすらと雪化粧、このまま降れば20cmほどは積もるだろう。三国岳登山道に出合い、いつものように保谷南尾根を通って帰ることにする。尾根の上部にはシロモジの樹が多く、その黄葉は暗い林の中で光が射しているかのように輝いていた。古屋の集落が眼下に見える頃、純林か見紛うほどコナラの多いオレンジ色の林に入っていく。カシノナガキクイムシの被害に遭いながらも、全てのコナラが生き続けていたからこそ、この鮮やかな色彩の中に身を没することができたことに感謝しないではいられない。出発地に戻り着いたときも、依然小雨が降り続いていた。
古屋=1時間25分=P811m=30分=小ボケ出合付近=25分=岩谷出合=1時間05分=ツボ谷出合=1時間10分=一ボケ出合=1時間30分=三ボケ・ロノロノ谷出合=1時間=三国岳登山道=1時間20分=古屋


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2007年11月10日

11月10日 大谷・植橋谷

三ボケ最初の滝三ボケ最初の滝












大谷大谷







由良川由良川







由良川由良川







植橋谷植橋谷







イチゴ谷山方面イチゴ谷山方面







トクワカソウの狂い咲きトクワカソウの狂い咲き







ガスの中のコミネカエデガスの中のコミネカエデ







陽を受けるコミネカエデ陽を受けるコミネカエデ







アワブキの黄葉アワブキの黄葉







タカノツメ 甘ったるい匂いがするタカノツメ 甘ったるい匂いがする






カエデの葉カエデの葉 左上から ウリハダカエデ・コミネカエデ・イタヤカエデ・ハウチワカエデ・コハウチワカエデ・ヒナウチワカエデ・オオモミジ・オオモミジ


ヒメコマユミヒメコマユミ







ロクショウグサレキン 枯れ木を緑青色に染めるロクショウグサレキン 枯れ木を緑青色に染める






チャワンタケの仲間チャワンタケの仲間







アシグロタケアシグロタケ







モエギタケモエギタケ







スギエダタケスギエダタケ







ルート:久多(岩屋谷出合)〜城丹国境稜線〜二ボケ出合〜大谷出合〜七瀬〜カズラ谷出合〜植橋谷遡行〜城丹国境稜線〜P927m〜久多(岩屋谷出合)
天候:曇りのち晴れ(朝のうち山上部はガス)
出逢った果実:ナナカマド・アズキナシ・ウラジロノキ・ケンポナシ・ヒメコマユミ・サワフタギ・テンナンショウ
雨上がり、まだ空を雲が覆っているので薄暗い。先週と同じく岩屋谷の林道を終点まで歩く。登山道が岩屋谷を離れて上り始めるところ、今日は左より入る谷の左股を上がることにした。小滝程度のものしかなく、長靴のままでも何とか登ることが出来る。しかし、登るに従い傾斜が次第に強くなり、最後はルンゼ状となって登り辛い。僅かな水量だがなかなか涸れず、いつまででも岩が滑っているから余計だ。水が涸れると、今度は樹に掴まるか鹿道を通るかしないと登れないほど傾斜がきつくなる。今日最初の登りだからいいが、途中でこんな登りが出てくると一気には上れないだろう。やがて城丹国境稜線、濃いガスが懸かっている。稜線上の紅葉は少しピークを過ぎただろうか、それでもコミネカエデやウリハダカエデはちょうど見頃だ。白いガスの中で、赤く色付くそれらの姿がぼんやりと浮かび上がっている。こういう紅葉も幻想的でなかなかいいものだ。稜線を南下しながら、先週拾ったドングリを植えた。二日間水に浸け、冷蔵庫で保存していたのだが、伸び始めた根の先端が黒くなっており無事芽生えるか心配だ。冷蔵庫では冷え過ぎるのかも知れない。P936mから二ボケ出合に向かって尾根を下っていくと、半ば辺りからガスが取れ、紅葉の大谷上部が現れてきた。下りながら観察すると、稜線からずっとナラ枯れの被害木が見当たらなかったが、出合直前になってフラスを出して枯れている3本のミズナラの樹を見つける。今はナラ枯れの見当たらない二ボケ源頭も、来年には一気に被害が広がるかもしれない。二ボケ出合に下り着き、三ボケ最初の滝を往復してから大谷を下る。先週に引き続いての大谷、あまり変化がないように思えるのは赤く色付く木が少ないからだろう。由良川本流を下ってアイノ谷出合付近まで来ると、5名のパーティに出会った。少しお話をすると、このブログを見ていただいているとの事、今日は下ツボ谷出合付近で泊まりだそうだ。お別れしてなおも由良川を下るが、長靴で歩くのは楽ではない。棒切れ一本持って岩を飛び、浅そうなところを滑らないよう気遣いながら渡渉する。これの繰り返しだ。この辺りの紅葉は今がピークだろう、赤く色付く木が少ないのが少し寂しいが。七瀬から登山道を歩き、カズラ谷出合で食事を摂りながら少し休憩する。ここにはケンポナシの樹があり、その下にはその実がたくさん落ちている。拾って食べてみるとそろそろ食べ頃、渋くて少し苦いのを苦にしなければ、甘くてなかなか美味しい。いくつか食べて舌を慣らすと、苦味や渋みが少し和らぐが、まだまだ修行が足りないのか私にはたくさん食べられない。カズラ谷から支流の植橋谷を遡るが、渓流足袋に履き替えるのは面倒なのでそのまま長靴で歩き通す。滝場を過ぎてしばらく登り、南側に入る枝谷にルートを採ったので最後の詰めがとても急であった。この頃には上空にも青空が覗き始め、陽を受けると全てが生き返ったかのように輝き、殊に逆光で見る紅葉は立ち止まらせるほど美しい。P927mから北東尾根をP829m経由で下る。長瀬谷を隔ててイチゴ谷山方面の展望が大きく開け、見下ろす紅葉の山肌は赤く色付く樹が多いのか正に錦の織物のようだ。しかし、日没は間近、薄れゆく光りに急きたてられるように尾根を下った。
久多(岩屋谷出合)=1時間05分=城丹国境稜線=1時間40分=二ボケ出合=1時間05分=大谷出合=1時間30分=七瀬=45分=カズラ谷出合=2時間15分=城丹国境稜線=40分=P927m=1時間05分=久多(岩屋谷出合)



ashunomori at 23:03|PermalinkComments(4)TrackBack(0) 大谷とその支流 | 由良川源流とその支流(大谷を除く)

2007年11月06日

芦生の森が危ない!パンフレット

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先日地蔵峠で配ったパンフレットです。
本文は次のようなものでした。

芦生の森が危ない!
    最近10年の間に何が起こったのか!

 芦生の森で出会う人から、「森が荒れたねえ」「昔はもっと緑が多かった気がする」という言葉をよく聞くようになりました。確かに森は荒廃し、緑は激減してしまったのです。これには2つの大きな原因があります。1つは鹿の食害、もう1つはナラ枯れです。
鹿の食害は、適正数を超えて生息する鹿が、低層の草木や樹皮を食べることにより発生するもので、次から次へと新たな植物がその犠牲になっています。既に芦生から消えてしまった植物もあるでしょう。また、渓谷沿いの崖にだけ辛うじて残っている種もあるでしょう。『大きな木の下はわずかな低木があるだけで、ほとんど裸地となって表土がむき出し』という光景が芦生中に広がっていますが、これは鹿の採食の結果なのです。地表から植物が消えたために多くの生物(昆虫など)が生息地を無くし、森の保水力がなくなって樹が倒れたり降雨で川の水が濁りやすくなったりしています。
鹿が増え過ぎた原因は2つ考えられます。1つは天敵であるニホンオオカミが絶滅し、その代役を務めなければならない人間が野生動物の頭数管理を誤ったことです。適正数や生息数に関する調査を十分せず、減ってしまった鹿の保護のために安易に禁猟を続けてきました。もう1つは暖冬による積雪量の減少です。動物にとって厳しい冬は人間以上に過酷であり、深い雪の中で餌を探す大変さは想像以上のことでしょう。その中で、足を滑らせて崖から転落したり、雪の壁に囲まれた谷に下りて這い上がれず凍えたりして、毎年多数の鹿が死んでいました。豪雪であった平成17年の冬に20頭以上、平成18年の冬に15頭以上鹿の死体を見つけましたが、雪が極度に少なかった平成19年の冬には2頭の子鹿の死体を見たに過ぎません。3年間ほぼ同じように歩いておりましたのでその差は歴然であり、暖冬によって死ぬ鹿が減ってしまったのは間違いありません。
次にナラ枯れです。カシノナガキクイムシという昆虫が媒介するナラ類の伝染病で、芦生では数年前に発生し、ほぼ北西から南東方向に被害が拡大して現在では被害のない地域はなくなってしまいました。カシノナガキクイムシが健康なミズナラの幹に穴を開け、体についた菌を樹に植えるために起こる病気で、その菌が拡がると水が樹上へ上がらなくなってミズナラは枯れてしまいます。この病気に感染した樹の根元には、カシノナガキクイムシの掘った木屑と糞からなる「フラス」という白い粉が雪のように堆積しており、直径1mを超す大木がこのような粉を涙のように流して枯れている様は、あまりにも残酷で直視することはできません。激甚被害地では既にミズナラの9割以上が枯れ、森の墓場の如き光景を作っています。最終的には芦生のミズナラの7〜8割が枯れるものと思われ、枯れた跡地は裸地のままで残るか、あるいは鹿の食べないシダ類だけが独占するものと考えられます。本来であれば幼樹や稚樹が待機しており、それらが一斉に成長を始めて世代交代するのですが、鹿にすっかり食い尽くされて次代を担うべき樹が育っていないのです。また、原因は分かりませんが最近ブナが枯れ始めています。ミズナラとブナという芦生を代表する大木が次々に枯れ倒れている状態が続けば、「芦生原生林」という言葉もやがては死語となりかねません。ナラ枯れが大発生した理由には諸説があり、確かな原因ははっきりとしていませんが、本来九州や四国などの温暖地に生息していたカシノナガキクイムシが北方に移動して来たことを考えると、人間が介在して移動を助けたということの他に昨今の気温上昇現象を無視できないでしょう。
このような状況の中、時を同じく芦生を訪れる人が激増してきました。これはマスコミやガイドブックによる紹介、商業ツアーの開催によるものが大きく、鹿の食害に痛めつけられた森に大挙して人間がなだれ込んだのです。殊に滋賀県側の入口である地蔵峠からの入林者は激増し、一旦生杉ブナ原生林付近にゲートを設けて入林制限をしたのですが効果はなく、京都大学は昨年6月から地蔵峠からの入林を禁止するに至りました。地蔵峠は、「最も芦生らしい」と言われていた上谷に近く、簡単に入林できることから入林者が集中したようですが、鹿の食害で既に低層の植物が僅かとなっていた上谷に多数の人間が押し寄せ、いたるところを踏みつけて完全に裸地化してしまったのです。このため、このまま放置しておくと回復不可能なダメージを森に与える恐れがあり、最も入林者の多い地蔵峠からの入林を禁止すれば、この地を訪れる人間は激減するとの考えからこのような措置に至りました。
鹿の食害もナラ枯れも、間接的には人間の手によるものであり、私達よりもはるかに長い年月を生きてきた木々の命をこうして私達の手によって断ち切ってきました。森と接することによって安らぎを感じ、疲れた心が癒されます。しかし、活力を失った森にはその力はなく、過度の入林は森への負荷を与えるに過ぎません。
かつて緑に覆われていた森があったことを、うっそうと茂る森があったことを思い浮かべながら、今までとは違う視点で森を眺めて下さいませんでしょうか。
京都大学は決して全ての入林を禁止しているのではありません。地蔵峠からの入林は禁止していますが、研究林事務所のある須後からの入林は原則認めています。自然を愛して下さる皆さんなら、きっと時間や労力は厭われないでしょう。「皆がやっている」という集団心理は、緑の回復を遅らせることに繋がります。芦生の森に再び命の灯の点ることを願い、どうぞ今後は地蔵峠からの入林をご遠慮下さいますようお願いします。



ashunomori at 12:58|PermalinkComments(8)TrackBack(0)

2007年11月04日

11月4日 三国岳 大谷二ボケ

三国岳北側三国岳北側







三国岳北側三国岳北側







岩谷上部岩谷上部







岩谷出合下流岩谷出合下流












渕谷出合付近渕谷出合付近







一ノ壷一ノ壷







すべり台の滝すべり台の滝







大谷大谷







二ボケ二ボケ







二ボケ源頭二ボケ源頭












コミネカエデコミネカエデ







アシウテンナンショウアシウテンナンショウ







クリタケクリタケ







ナメコナメコ







シイタケシイタケ







ムキタケムキタケ






ルート:久多(岩屋谷出合)〜三国岳〜岩谷出合下流〜ツボ谷出合〜大谷二ボケ遡行〜府立大学演習林南縁尾根〜久多(岩屋谷出合)
天候:曇り時々晴れ
出逢った果実:ナナカマド・カマツカ・アズキナシ・コシアブラ・クサギ・ユズリハ・アオハダ・サワフタギ・タンナサワフタギ・テンナンショウ・アシウテンナンショウ
今朝もよく冷えている。道路沿いの温度計は5℃、そろそろ霜が降りてもおかしくない頃だ。岩屋谷出合に車を止めて岩屋谷の林道を歩く。花がないので道草をする必要はなく、お陰で一気に三国山頂まで登ってしまった。昨日の今日で少し疲れが残っているが、ここまでは一応順調だ。山頂北側に広がる三ボケ源頭の紅葉はちょうど盛りだが、昨年同様あまり綺麗には色付いていない。秋がなかなか来なかったせいだろう、せめて冬には雪がたくさん降ってもらいたいものだ。P941m西尾根から岩谷出合下流へ尾根を下る。由良川辺りまで下ると、紅葉は来週ぐらいがピークだろうか、まだまだ木々の葉は青い。由良川沿いの険路をツボ谷出合までの半ば辺りまで下って来ると、4名のパーティーに出会った。歩道が分からなくなって探しておられるところであり、歩道の在りかを案内する。5月のゴールデンウイークと秋の紅葉の時期以外には通る人が稀なので、だんだんと不明瞭になっていくようだ。ツボ谷出合で軽く食事を摂る。一ノ壷を眺めながらつい先日はここで泳いだものだと、季節の流れ行く速さを感じずには要られない。大谷出合から大谷に入る、思えば久しぶりの大谷だ。二ボケ出合までは長靴でも何とか来られたが、この先は渓流足袋を履かないと難しい。ウレタン地の靴下を履いて渓流足袋に履き替える、それでも水はかなり冷たい。出来るだけ濡れないように、深みには入らないようにして登るので、沢登りの楽しさは全くなく、単に稜線へのアプローチに過ぎないかのようだ。途中で、先日倒れて谷を塞いでいたブナの樹の枝をノコギリで切り落とす。誰かが先に切っていたが、これだけだと膝上辺りまで水に浸からなければならず、濡れずに済むルートを新たに拓いた。ナメ滝の連続する滝場を越えた二俣で長靴に履き替える。二俣を左に入って稜線に向かって登っていると、ミズナラのドングリがたくさん落ちていた。今年のドングリ植えはもう終わりにしていたが、これだけのドングリを前にするとほっておくことができず、120個ほどを拾って持ち帰ることにする。自宅で水に浸け、冷蔵庫で保存してから来週植えに来よう。紅葉の季節でナラ枯れの状態は分かり難いが、二ボケ源頭付近では被害木が見当たらない。このまま被害を受けずに済めばいいのだが。城丹国境尾根に上がり、いつものように府立大学演習林南縁尾根を下った。
今日試食した木の実
 カマツカ=味のないカスカスのリンゴのようだ。少し熟したほうがおいしそう。
 コシアブラ=最初は水っぽくて何の味もなかったが、少しすると新芽のてんぷらのような味がしてくる。さらに噛んでいると急に苦味が表れて気分が悪くなった。
久多(岩屋谷出合)=1時間15分=三国岳=1時間15分=岩谷出合下流=1時間=ツボ谷出合=50分=大谷出合=2時間40分=府立大学演習林南縁尾根分岐=55分=久多(岩屋谷出合)


ashunomori at 20:58|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 三国岳周辺 | 大谷とその支流

2007年11月03日

11月3日 三国峠 入林者調査

三国峠から生杉方面三国峠から生杉方面







枕谷の上部枕谷の上部







P818m北峰より東方P818m北峰より東方







ツチグリツチグリ







チャナメツムタケチャナメツムタケ







シロナメツムタケシロナメツムタケ







ヤマブシタケの古くなったものヤマブシタケの古くなったもの






ヌメリイグチヌメリイグチ







コガネタケコガネタケ







テンナンショウテンナンショウ







ミヤマガマズミミヤマガマズミ







梅ノ木にある通行止表示梅ノ木にある通行止表示







シカの食害防止網を掛けられたスギシカの食害防止網を掛けられたスギ






地蔵峠の入林禁止表示地蔵峠の入林禁止表示






ルート:生杉〜三国峠〜地蔵峠〜P818m〜生杉
天候:曇り時々晴れ
出逢った花:<盛り>リンドウ
出逢った果実:ナナカマド・カマツカ・アズキナシ・ウラジロノキ・ミヤマガマズミ・クサギ・ユズリハ・ノブドウ・アオハダ
梅ノ木から針畑川沿いに北上する道路は、工事のため途中小川辺りで通行止めとなっており、遠回りだが朽木市場・能家経由で生杉に入った。クチクボ峠への登り口付近にある駐車場に車を止め、谷沿いの道を歩く。急に冷え込んで、晩秋のような冷たい風が吹いている。三国峠まで一気に上がる、雪のない季節にここを訪れるのは2年ぶりぐらいだろうか、久しぶりだ。山頂からはブナ原生林方面に少し下り、江丹国境尾根を南下するが、分岐に「高島トレイル」のま新しい標識が着けられている。このルートは、京大の了解を得て設けられたとは思えず、最後の地蔵峠への下りで突然消えてしまった。まっすぐ下れば地蔵峠のゲート内へ下りてしまうので、苦労してゲート外へ下ったが、この辺りに高島トレイルの登山口を表示する標識が着けられていないのは、京大から了解を得ていないことのあらわれだ。その上、道中明らかに芦生側と思われる木が切られており、恐らく許可なく切ったものだろう。地蔵峠で今日の目的である「入林者のアンケート調査」をした。午前9時頃から12時過ぎまで、風は冷たく陽もほとんど射さずに寒かったが。予期に反して入林者は少なく、総数で33名。内14名の団体があり、その方々は一応京大の了解を得ておられるとのことであったため、実質許可なく入林されたのは7組9名に過ぎなかった(後で分かったことだが、ブナ原生林付近には30台もの乗用車が止まっており、三国峠経由で入林されるほうがはるかに多いらしい)。7組のうち地蔵峠からの入林が禁止になっていることを知っておられたのは2組で、5組の方は知らなかったとのことである。知っておられた方は今後も入林するつもりらしく、
1.須後からは遠すぎるし、違反してもそれほど悪いこととは思わない。
2.国民の財産であり入林禁止にするのはおかしい。
がその理由であった。後者の方は、研究林内に調査に用いた資材が調査後も放置されたままになっていることを怒っておられたが、その点については同感だ。
入林禁止を知らずに来られた方は、これからは地蔵峠からの入林はしないとおっしゃっていた。お会いした方には、『芦生の森が危ない!』というタイトルのパンフレットを作って持っていったので、お配りしてご理解をお願いする。
昼を過ぎたので調査は終了し、帰路は江丹国境稜線をP818mまで歩き、北東尾根を通って帰った。前述したように、禁止が解かれた三国峠からの入林者は今も多く、彼らは地蔵峠からの入林禁止を既に知っているリピーターではないかと思う。京大は何故三国峠からの入林禁止を解いたのか?抜け道を作ってしまったため禁止の効果は完全に薄められてしまったようだ。このような措置を取るなら、地蔵峠からの入林禁止も解いて、上谷・枕谷・野田畑谷への立ち入りだけを禁止するほうがはるかに趣旨にかなうと思うのだが。
生杉=40分=三国峠=1時間=地蔵峠=1時間20分=P818m=1時間25分=生杉


ashunomori at 22:11|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 三国峠周辺