正直取り乱している。
初めての経験なのだ。
KOZAの前の店である「アリーバ」時代からKOZAでの15年・・・およそ20年の間に
ライブで俺の店に来てくださったミュージシャンの訃報に接するのは初めてのこと。
もう二度とあのプレイを目の前で見ることが出来ないのか・・・そう思うだけで胸が張り裂けそうだ。
もっと一緒に飲みたかった。
もっといろんな話を聞かせて欲しかった。
もっと素晴らしいプレイを見せて欲しかった。
すべては遅きに失するのだが・・・。

一瞬一瞬を大切にしなきゃな。
また次があるさなんて何の保証もない約束に過ぎないんだ。

DSC09653

日倉士歳朗さん・・・
あなたに初めて会った時のことを俺はこう書いているんだよ。

2004年秋、俺の店、アリーバで一人のアーティストと出会った。

日倉士歳朗。ブルースマンでスライドギターの名手だという。

エリック・クラプトンがロバートジョンソンをカバーしたアルバムを出したばかり。
うん、まぁ、あんな感じか・・・と思っていた俺は。

事前に貰った音源を聞いた瞬間、何かに取り憑かれたような感覚に陥った。

声?ギターの音色?楽曲全体?答えはライブを見て分かった。

 

Devil of SlideGuitar・・・

 

日倉士歳朗の声は悪魔の声である。
歌で俺の心を殴りつけ、歌で俺の情けなさを笑い、歌で俺の体内にバーボンを流し込む。

 

日倉士歳朗の声は天使の声である。
歌で俺の心を癒し、歌で俺の情けなさを慰め、歌で俺を葬り去る。

 

日倉士歳朗のギターは悪魔である。
聞きゃあ分かる。あの音に絡まれたら知らない間に溺れてる。あの音で溺れたら誰だって素面じゃいられないぜ。

 

日倉士歳朗のワイゼンボーンは天使である。
見りゃあ分かる。あんなに優しく楽器を愛撫したら、天使だってむせび泣くぜ。

 

気がつけば

俺は・・・日倉士歳朗に名を借りた悪魔に取り憑かれ、天使に守られている。

 

2005年春、再びアリーバにやって来た日倉士歳朗を前に、俺は必死だった。

バーボンで泥酔状態になりながら俺は自分が何者なのかを喋っていた。

芝居をやっていること。沖縄を描き続けていること。自分の生き様。そして日倉士歳朗の音に取り憑かれていることを。

まるで神様に懺悔でもしているように吐き出した。

 

すると黙って相づちをうっていた日倉士歳朗が言った。

「俺も仲間に入れてくれよ」。

ブルースマンが微笑みながら、「作りてぇよなぁ。一緒に。」と言ってくれた。

また俺は葬られた。

 

夢の中でワイゼンボーンが鳴り響く。天使が喘ぐ。

何度も強く激しくスライドされるボトルネック。

叩き出される悪魔の咆吼。

 

日倉士歳朗が奏でる、甘く切なく気怠い音が「KOZA」の中で生きている。

その瞬間、俺たちの舞台は天使と悪魔に守られているのだ。



ちょうどKOZAって芝居の再演が決まって稽古に突入していたので劇中の挿入歌をお願いした。 
場面としては3つ。
どれも涙無しには見られない美味しい場面。
ここに日倉士さんのスライドが被ったら・・・鳥肌が立つような興奮を覚えたよ。

お願いはしたものの忙しい日倉士さんをせっつくことだけはしないと決めていた。
ところが曲はあっと言う間に届いた。
あまりにも場面にハマりすぎていて稽古しながら泣いてしまった。
役者のセリフとセリフの間を縫うようなスライドギターが何とも言えない相乗効果を生み出していた。
嬉しかった。
俺の芝居をさらに素敵なものへと昇華させてくれた日倉士さんの曲が嬉しかった。
なにより本気で俺の芝居に向き合ってくれた日倉士さんの気持ちが嬉しかった。


その後、ちむどんどんの結成10周年を祝うパーティーにも出演してくれた。
KOZAのこけら落としは日倉士さんの参加するジャグバンド MADWARDSだった。 
ちむどんどん横浜公演では同じステージに出て貰った。
KOZAでのライブは2回ほど・・・その後少し疎遠になる。

久しぶりの再会は2018年のライブ・・・実に10年ぶり!
MCで「スライドギターが好きすぎて・・・俺の人生もスライドしっぱなしだぜ!」と呟く日倉士さんにシビれたよ。

鼓動とも交わってくださった。
ライブ終了後、ギターに興味津々の鼓動にスライドギターを教えてくれた。

素敵な映像が残ってた。
「次に会うときは一緒にやろうな!スィートホームシカゴだぞ!」
約束は果たされないまま日倉士さんは旅立ってしまった。



こんなにも寂しいもんなんだなぁ・・・。
一緒にお仕事させて貰った方ともう二度と会えないってことは・・・
こんなにも心身にダメージを負うことなんだね。

さよならって言いたくないなぁ(涙)
また「たーくちゃーん!酒飲もうよー!」って現れそうだもんなぁ。
馬鹿話してガハハハって笑ってさ・・・



日倉士歳朗
悪魔のようなスライドギター
ジーザスのような微笑み
きっと今夜もどこかのバーの片隅で飲んだくれてるはずさ。

DSC09676

いつか・・・また一緒に飲みましょう。
どうか安らかに眠ってください。