◆本日の「夢の扉」と私の研究の夢・目標


 本日の夢の扉は、「酵素の知られざる力で超やわらか食品」を開発している研究者升永さんの話だった。モットーは、「できないからこそ、こだわる」だそうだ。


 これだけを聞いても何も響かないのだが、このモットーの由来を聞くととても感動した。企業の研究者である升永さんは、もともとあるプロジェクトを担当して いた。その研究に情熱を注いでいたのだが、ある日突然会社から「超やわらか食品を作れ」との辞令が届いて、「こんなの無理だ」と心が折れ、自分を見失 いかけたそうである。しかし、升永さんはある医学者との出会いがきっかけで、健康上固いものを噛んで食べられない人々がこのやわらか食品の到来を望んでいる ことを知り、これを機に「できないからこそ、こだわる」をモットーに研究に打ち込み、現在の「あいーと(超やわらか食品の名称)」という成果に至ったとの ことだった。やはり人との出会いは、研究人生(本当は研究だけではないのですが)を大きく変えるようである。


 それにしても、このプロフェッショナルである升永さんの研究は、ものを噛んで食べられない人たちのための研究で、明らかに人に直接役立つことなのである。なので、「自由な遊び心」を モットーなどと言っている在野研究家の私とは、研究のスタンスや志が大きく違うのかもしれないと思う。とりわけ文化昆虫学のような基礎科学は、直接は人の役に立つことはない。かつては、文化昆虫学の知見を役立てようと、「応用文化昆虫学」なるものをかかげたこともあった。


 しかしながら、文化昆虫学の本質に少しだけ触れ ることができた私は、「大衆文化や趣味的文化に目をむける」という自身の文化昆虫学の研究の原点(研究初期の考え)に帰り、文化昆虫学に別の可能性を見出すことができた。実は、文化昆虫学が文学や美術など教養的文化に限らず、一般の人々にとって身近な漫画やアニメ、ゲーム、食品デザイン、便所など大衆文化や趣味 的文化を取り扱えることこそが、文化昆虫学の最高の強みのひとつだった。


 私の研究目標のキャッチコピーは、「誰もが気軽に楽しむことができる『大衆学問』:文化昆虫学」。誰もが気軽に触れられる大衆文化や趣味的文化を取 り扱えることができるからこそ、かかげやすい目標だと思っている。もちろん、かなりハードルの高い目標なので、目標に届かなかったり頓挫してしまう可能性 の方が高い。ただ、こんな目標をたてても、私はマイペースで文化昆虫学の研究を楽しむだけだ。こんな大それた目標はたてても、目標に縛られる必要はなく、目標を達成できなくでもよいと思っている。やっぱり、「自由な遊び心」こそが私の研究モットーだから。