January 31, 2019

森本説はさらに変化していた

先日の記事の補足。先日の記事を書いた時には、森本説として、先生が会社法コンメンタールに書かれたものを引用したのだが、先生のご見解はその後さらに変化していた。森本滋『企業統治と取締役会』(商事法務、2017年)257頁以下には、次のように記されている。

 「経営政策の相違を理由とする場合であっても、代表取締役の解職が問題となるときは、当該取締役には、特別の心理状態が認められるように思われる。そのようなことにも配慮して、最高裁は、特別利害関係人となると解したのであろう。とりわけ、可否同数の場合は、解職決議は成立しない。当該取締役を反対者にカウントすることにより、可否同数として解職決議の成立を阻止することに積極的な意味があるようには思われない。背任行為その他の違法・不適切な行為を理由に代表取締役の解職提案がされたが、当該代表取締役の議決権行使により可否同数となり、解職決議が成立しなかった場合、否決された決議の効力を争うことはできないのである。
 これは難問であるが、特別利害関係取締役の議決権排除問題は所有と経営の分離を前提とする取締役会設置会社に特有の法的問題であり、取締役会設置会社においては、とりわけ、取締役の職務執行の公正さが求められる。また、非公開会社であっても、その会社は、定款において、取締役会設置会社となることを選択したのである。したがって、解職対象者の議決権行使を否定すべきであろう。もっとも、この場合においても、解職対象者である取締役の意見を十分に聞いた上で、当該取締役以外の取締役が解職の是非を判断することが妥当である。不利益な取扱いを受ける者には、原則として、弁明の機会が与えられるべきである。」

つまり、先生は、解職対象者は特別利害関係取締役に含まれるとする説に戻ったのだ。この森本最新説の理由付けは、基本的には会社法コンメンタール(8)の362条の注釈[落合誠一]221頁以下と同様であり、さらに、解職対象者を含めれば可否同数になってしまう場合について、あえてそのように可否同数として決議の成立を阻止させることに積極的な意味はないということが論拠として付け加えられている。

私もこの森本最新説を支持すべきだと思うのだが、一番最後の「もっとも」以下の文に述べられていることは、「実務としてはできればこうする方がよい」といった程度の記述なのだと捉えるべきだと思う。

assam_uva at 12:30|PermalinkComments(0)││研究 

January 21, 2019

代表取締役の解職と特別利害関係

もうすぐ締め切りが来る判例研究と関連して、「代表取締役を解職する取締役会決議(会社362条2項3号)の際に、解職の対象とされる代表取締役が、会社法369条2項にいう『特別の利害関係を有する取締役』に該当するか」という論点について、ここしばらく考えていた。

これについては、最判昭和44年3月28日民集23巻3号645頁が、そのような代表取締役は「特別の利害関係を有する取締役」に該当するとしており、判例は固まっている。

これに対して、学説では、同最判の以前から、そのような代表取締役は「特別の利害関係を有する取締役」には該当しないとする見解(反対説)も有力で、最近では反対説の方が現在の多数説だと述べる文献もある(落合誠一編『会社法コンメンタール(8)機関(2)』(商事法務、2009年)294頁[森本滋])。もっとも、その文献は、反対説が「現在の多数説」だとしながら、反対説の文献として引用する論文等が少ないので、本当に反対説が多数説なのかは、怪しいかもしれない。

反対説の論拠は、上記の文献を手掛かりに、判例評釈等を調べたところ、次の3つといえそうだ。

(a)「特別利害関係」とは取締役の任務と矛盾する個人的な利害関係をいうのであって、代表取締役の選定・解職について、解職対象とされる代表取締役はそのような利害関係を有しない(大隅健一郎=山口幸五郎『総合判例研究叢書商法(4)』(有斐閣、1958年)101頁)。「代表取締役の選任・解任は、会社の利益と取締役個人の利益とが衝突する場合ではない。利益の衝突は取締役間に存在するのであり、これを超克するために選挙の形をとって代表取締役の選任が行なわれ、解任もちょうどその裏面にほかならない。」(龍田節「判批」民商法雑誌62巻1号(1970年)127頁以下)というのも、上記と同様のことを述べているのだろう。この方向で、さらに詳細な根拠付けを試みるのが、吉本健一「代表取締役解任の取締役会決議と特別利害関係」和歌山大学編『新しい時代の企業像』(和歌山大学経済学部、1980年)226頁以下だ。

(b)閉鎖型のタイプの会社を念頭に置く限り、代表取締役の解職は、取締役会の監督権限の行使というよりは業務執行(経営方針等)を巡る二派の争いそのものである例が多いと思われるので、解職対象とされる代表取締役の議決権を排除すべき理由はない(江頭憲治郎『株式会社法〔第7版〕』(有斐閣、2017年)422頁注15)。

(c)解職対象とされる代表取締役については、同取締役を審議に参加させることが必要だが、「特別の利害関係を有する取締役」だと解してしまうと同取締役の審議への参加が確保されないので、「特別の利害関係を有する取締役」と解するべきではない(落合編・前掲295頁[森本])。

このように、反対説はいろいろと論拠を述べているわけだが、まず、(b)については、「閉鎖型のタイプの会社を念頭に置く限り、代表取締役の解職は、…業務執行(経営方針等)を巡る二派の争いそのものである例が多い」ということについて客観的な証拠が示されているわけでもなく(「〜と思われる」と言われているだけ)、これが特定の解釈論を支持する論拠になるとは思えない。落合編・前掲221頁[落合誠一]では、そういう紛争の方が多いのか「実証的には明確とは言い難い」とされる。

また、(c)も、解職対象とされる代表取締役をどうしても審議に参加させなければならない理由を述べておらず、根拠としてどこまで説得的なのかは分からない。たとえ「特別の利害関係を有する取締役」とされても、取締役会の他のメンバーが認めれば審議に参加することができるし、それ以上の審議参加「権」のようなものを保障する必要はないように思える。(c)を述べる論者は、解職対象とされる代表取締役を審議に参加させるため、同取締役が「特別の利害関係を有する取締役」に該当しないと考えるべきだとしつつ、「この場合において、取締役会の審議が公正になされたか慎重に検討されるべきであり、議決権を行使しないことが善管注意義務ないし忠実義務から要請される場合もあろう」と述べる。しかし、そこまで言うのであれば、解職対象とされる代表取締役は「特別の利害関係を有する取締役」であり、取締役会の他のメンバーが認めれば審議に参加できるにとどまるが、個別の事案で解職対象とされる代表取締役を審議にさせなかったことから、取締役会決議の方法が著しく不公正であったと評価されることはありうる(落合編・前掲298頁[森本]参照)、と考えるのと大きく変わらない。

結局、反対説の論拠として一番重要なのは、やはり、昔から言われている(a)なのだろう。(a)は、「特別の利害関係を有する取締役」の議決権排除ルールの根拠を、狭い意味での忠実義務の違反(取締役と会社の利益が衝突する場面で取締役が自己の利益を図ること)の予防に求め、代表取締役の解職においてはそのような忠実義務の違反が問題になっているわけではないと捉える。

これに対して、上記の昭和44年最判は、次のように述べる。

「代表取締役の解任に関する取締役会の決議については、当該代表取締役は、商法二六〇条ノ二第二項により準用される同法二三九条五項にいう特別の利害関係を有する者にあたると解すべきである。
 けだし、代表取締役は、会社の業務を執行・主宰し、かつ会社を代表する権限を有するものであつて(商法二六一条三項・七八条)、会社の経営、支配に大きな権限と影響力を有し、したがつて、本人の意志に反してこれを代表取締役の地位から排除することの当否が論ぜられる場合においては、当該代表取締役に対し、一切の私心を去つて、会社に対して負担する忠実義務(商法二五四条三項・二五四条ノ二参照)に従い公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、かえつて、自己個人の利益を図つて行動することすらあり得るのである。それゆえ、かかる忠実義務違反を予防し、取締役会の決議の公正を担保するため、個人として重大な利害関係を有する者として、当該取締役の議決権の行使を禁止するのが相当だからである。」

「けだし」以下の表現からすれば、同最判は、「忠実義務」という語を、「受任者として職務の遂行の際に会社の利益のみを図る義務」といった意味で用いており、取締役会で議決権を行使する際に自己の利益を図ることが忠実義務違反だと捉えられているようである。つまり、最高裁は、「特別の利害関係を有する取締役」の議決権排除ルールの根拠を、狭い意味での忠実義務の違反の予防ではなく、より広く、取締役会決議の公正確保とでもいったことに求めている。もちろん、「取締役会決議の公正確保」というのは、あまりにも漠然とした捉え方なのだが、最高裁は、少なくとも代表取締役の解職については、解職対象とされる代表取締役の議決権行使を認めれば、そのような代表取締役が自己の保身を図って議案に反対する可能性も少なからずあり、そのような取締役の議決権行使を許すべきではないと考えたということだ(奈良次郎「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和44年度』913頁以下参照。落合編・前掲221頁以下[落合]は、こういった方向での詳しい根拠付けを展開しているように思う)。

あとは、(a)のように考えるべきか、最高裁を支持すべきかということなのだが、会社法369条2項の趣旨を狭い意味での忠実義務違反の予防と捉える必要もないように思うし、背任行為等を理由に代表取締役の解職の提案がされる場合を考えれば、やはり解職対象とされる代表取締役の議決権行使を認めない方がよい(また、そのような代表取締役の審議への参加は、取締役会の他のメンバーが認めた場合に限る方がよい)と思うので、結局、最高裁の立場の方が支持できる、というのが今のところの結論だ。

assam_uva at 15:12|PermalinkComments(0)││研究 

December 22, 2018

上場規程で定められる事項の限界

12月のJPX金商法研究会では、「近年の有価証券上場規程の改正」と題して、取引所の方にご報告をいただいた。報告後の質疑では、特に後半に、議決権種類株式の上場をめぐって議論が盛り上がったが、私が気になったのは、むしろ最初のほうに話題になった、上場規程で定められる事項に限界はないのか、たとえば、上場会社のガバナンスに関する要求を上場規程で定められるというのは、どこに根拠があるのかという話。司会をやっていたこともあったし、その場でうまく考えがまとまらなかったので発言はしなかったのだが(という以上に、なかなか発言のタイミングがつかみづらい研究会でもあったりするのだが…)、後で考えてみると、次のような感じになった。

研究会では、取引所の自主規制業務について定める金商法84条からは、上場規程でたとえば会社情報の適時開示について定めることが可能であることは分かるが(同条1項には「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護するため」とある)、独立役員を置くことを要求するといったことがなぜできるのか、という発言があった。たしかに、同条1項は取引所の自主規制業務の目的を「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」ことと定めており、2項が定める自主規制業務の内容に、独立役員を置くことを要求することなど、個別の会社のガバナンスについて一定の事項を要求することが含まれるとは、ただちには読めないかもしれない。

しかしながら、このような捉え方は、上場規程というものの意味の一部しか見ていないように思える。たしかに、金商法84条は、上場規程について、取引所の自主規制業務として、これに関する定めを置いている。しかし、どのような会社の株式を上場するか、つまり、どのような会社の株式を商品として投資者に提供するかということは、本来は、取引所が自由に決められることのはずだろう。取引所は、当該取引所で提供される商品の内容・品質についての条件を上場規程によって定め、上場契約によって上場規程の遵守を上場会社に約束させることで商品の内容・品質を保持するということだ。上場契約については、基本的に、契約の自由が妥当する、と言うこともできる。

もちろん、契約の自由だといっても、どんなことでも上場契約で定め、上場規程で上場会社に要求できるということにはならない。上場契約にはもちろん契約内容についての民法上の制約がかかるし、さらに、金商法84条は、「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」という観点から、上場規程について外部的な制約を設けていると捉えられる。しかし、それは、「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」という目的に反する事項を上場規程で定めることは許されないという制約であって、そのような目的に直接つながらない事項を上場規程で定めてはいけないという制約ではないはずだ。

乱暴なたとえをすると、漬物屋は自分の店に並べる漬物について、自分で基準を作ることができる。たとえば、店に並べる漬物は、農薬を一定量以下しか使っていない野菜を原料にするものに限ることにして、漬物を納入する業者との間で、農薬を一定量以下しか使っていない野菜を原料にする漬物しか納入しないことを約束させるということもできるだろう。たしかに漬物屋が販売する漬物については食品衛生法上の制約がかかるが、漬物屋は、食品衛生法上の制約の他にも、いろいろな制約を自分のところで扱う漬物について自分で課すことができるということだ。取引所がここでいう漬物屋、上場会社がここでいう漬物の納入業者、上場契約・上場規程がここでいう漬物屋と納入業者の間の契約、金商法がここでいう食品衛生法のようなものだ。

assam_uva at 01:15|PermalinkComments(0)││研究 

October 14, 2018

学会終了

勤務校の仕事を済ませて、学会1日目の夜に仙台到着、東西懇親会はラスト30分ほど参加できました。2日目の今日はシンポジウムで報告。何とか大過なく報告とその後の質疑を乗り切れた…はず…。

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assam_uva at 22:29|PermalinkComments(0)││雑感その他 

October 12, 2018

明日から学会

明日から私法学会。10年近く前に勤務校の仕事で行って以来の仙台。1日目から行きたかったのですが、勤務校の仕事があるので、私は2日目のシンポジウムのみ参加です。東西懇親会には…途中で顔を出すことはできるかも…。写真は今日の勤務校。

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assam_uva at 12:09|PermalinkComments(0)││雑感その他