June 01, 2021

新株発行無効確認請求?

株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(会社法828条1項2号。平成17年改正前商法280条ノ15では、新株発行の無効の訴え)は、確認の訴えではなく、形成の訴えだ。だから、これを「新株発行の無効確認の訴え」などと呼ぶと、同訴えのことが全然理解できていない人だと思われてしまう。

ところが、裁判例の事件名を見ていると、時々、「新株発行無効確認請求事件」といった表示に出くわす。Westlaw Japan で事件名に「新株発行無効確認」と入力して検索すると、34件ヒットする。「新株発行無効」とだけ入力する場合は108件ヒットするので、マジョリティは「新株発行無効請求事件」「新株発行無効等請求事件」といった表示だということになるが、108件中34件で「確認」という語が使われており、これは結構な割合だ。

上記の34件の裁判例には、一番古いものとして最判昭和31・11・15裁判集民事24号91頁、一番新しいものとして名古屋高金沢支判平成31・3・27判タ1465号82頁が含まれており、「確認」という語が使われる裁判例の出現時期にバラつきもないようだ。ごく最近でも「確認」という語が使われるのは、いったいなぜなのか。単なる間違いなのか、深い理由があるのか、理由を知っている方は教えてください。

*ついでに合併無効の訴えについて同じように調べてみると、「合併無効確認」で7件ヒット、「合併無効」で20件ヒットします。

assam_uva at 13:40|PermalinkComments(0)││研究 

March 26, 2021

勤務校の桜

天気はいいのですが、風が強く、花が散ってしまいそうです。

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assam_uva at 12:46|PermalinkComments(0)││雑感その他 

March 25, 2021

リークエ会社法第5版での改訂ポイント

昨日は『会社法《Legal Quest》〔第5版〕』の発売日でした。ここ数日引きこもっているため、まだ大学生協などへの偵察はしていませんが、きっと並んでいることでしょう。

今回の改訂の目玉は令和元年改正への対応と、第4版以降の重要な判例等の織り込みでして、4人の執筆者それぞれに、いろいろと加筆訂正をすべき点がありました。私の部分については、たとえば、次のようなところが大きな改訂ポイントでしょうか:

・取締役の報酬等についてのルールは、令和元年改正の主要な改正点の1つでしたので、やや頑張って加筆訂正をしました。取締役の報酬等についての改正の目的は、報酬等の決定がインセンティブ付与の機能を有することを正面から認めた上でのルールの補充ですので、リークエの記述にも、それがなるべく反映されるように試みました。たとえば、今までと違い、取締役の個人別の報酬等の決定をめぐる記述を、新しく見出しを立ててまとめています。また、そろそろその時期かなと思い、取締役の報酬等についての私の年来の主張を何箇所かに記しています。

・第4章第7節(役員等の義務と責任)の最後に、「7 補償契約と役員等賠償責任保険契約」という見出しを立てて、これらについてこの場所でまとめて記しました。今までは任務懈怠責任のところで扱っていた問題ですが、会社法に新たな規定が設けられたこともあり、また、論理的にはこれが正しいので(補償契約も役員等賠償責任保険契約も、役員等の会社に対する責任だけでなく、第三者に対する責任にも関係するものです)、少し迷った末、こういう記述順にしました。

・主な点というわけでもないのかもしれませんが、第10章第2節の企業グループの管理についての記述を補充しました。第4版のここの記述は、親会社に指図権を認める趣旨だと誤解されることがあったので、そうではなく、「子会社は親会社の指図に従う法的な義務はない(=指図権はない)。しかし、子会社は、通常は親会社の指図に従うだろう。また、親会社が指図をすること自体は違法ではない」ということ、また、「親会社が子会社の業務の是正のための指図をしたとしても子会社がそれに従う法的な義務はない。しかし、そうであるとしても、親会社取締役としては、事実上可能な措置はとるべきである。だから、親会社取締役が子会社に対して必要な指図をしなかった場合は、親会社に対する任務を怠ったと評価されることはありうる」といった書き方をしています。

assam_uva at 17:50|PermalinkComments(0)││雑感その他 

March 18, 2021

見本到着

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私の手元に見本が届きました。できたての本って、ピシっとして気持ちいいですよね。

トータル574ページですが、本文自体は508ページで、第4版に比べて20ページ増えました。

3月24日発売です。

assam_uva at 10:51|PermalinkComments(0)││雑感その他 

March 17, 2021

退社した無限責任社員の消極持分についての支払債務

最判令和元・12・24民集73巻5号457頁(以下では「令和元年最判」という)の判例評釈の依頼を受けた。

令和元年最判では、無限責任社員が合資会社を退社した場合に、消極持分について会社に支払債務を負うのかが問題になった。

退社というのは、持分会社の存続中に、特定の社員の社員としての資格が絶対的に消滅することをいう(神田秀樹編『会社法コンメンタール(14)持分会社(1)』(商事法務、2014年)212頁[小出篤])。会社法では、社員の意思による退社(任意退社)について定められる(会社法606条)ほか、一定の事由が発生した場合に社員が当然に退社するものと定められる(法定退社。会社法607条)。令和元年最判では、問題になった無限責任社員は、後見開始の審判を受けたことによって合資会社を法定退社した(同条7号)。

令和元年最判は、次のように述べる。

「無限責任社員が合資会社を退社した場合には、退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項)、その結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには、当該社員は、その持分の払戻しを受けることができる(同条1項)。一方、上記計算がされた結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は、当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である。」

つまり、合資会社を退社した無限責任社員について、当該社員の出資の価額よりも当該社員が負担すべき損失の額が大きければ(消極持分)、当該社員は、消極持分について会社に対して支払いをしなければならないとされたわけだ。この結論自体は、会社法制定前からの通説で、平成17年改正前商法の下で合名会社・合資会社の内部関係に準用されていた民法上の組合に関する規定について一般的に理解されていたところとも同様であって、特に問題はないように思う。

同判決について問題があると思われるのは、そのような結論の根拠づけの仕方だ。同判決は、続けて、次のように述べる。

「このように解することが、合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること(同法576条3項、638条2項2号、639条2項)、各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)などの合資会社の制度の仕組みに沿い、合資会社の社員間の公平にもかなうというべきである。」

見出しを付けて整理すると、同判決では、前記のように解することが、(A)(ア)「合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること(同法576条3項、638条2項2号、639条2項)」、(イ)「各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)」などの、「合資会社の制度の仕組みに沿い」、(B)「合資会社の社員間の公平にもかなう」ことが、根拠とされるわけだ。

しかし、先行評釈(伊藤雄司「判批」私法判例リマークス62号(2021年)104頁)でも指摘されるように、このような根拠づけは、成功しているようには思えない。まず、(A)の(ア)は、合資会社の定義を述べるにすぎない。また、(イ)で指摘される会社法622条は、会社に生じた損益が、計算上、各社員に分配される(各社員の利益剰余金に反映される)ことを前提として、その割合についてデフォルト・ルールを定めるものにすぎない 。そして、(ア)と(イ)からは、(A)にいう「合資会社の制度の仕組み」としてどのような内容が考えられているのかは明らかにならないし、そのような「合資会社の制度の仕組み」から、前記のような本判決の示すルールがどのように導き出されるのかも明らかではない。

退社した合資会社の無限責任社員が消極持分について会社に支払債務を負うことは、むしろ、以下に述べるように、退社した持分会社の社員と会社の財産関係の清算についての一般ルールによって根拠づけられるのではないかと思われる。

平成17年改正前商法には、会社法611条に相当する規定はなく、合名会社・合資会社の内部関係について、民法上の組合に関する規定が準用されていた(平成17年改正前商法68条・147条)。民法681条では、脱退した組合員と組合の財産関係の清算について、会社法611条2項〜4項と同様に、「出資の払戻し」だけを想定した定めがされる。しかし、組合員の脱退についても、かねてから、脱退する組合員は消極持分については組合に支払債務を負うと解されてきた。会社法611条は、会社法制定時に持分会社に固有の規定として新設されたものだが、同条の新設は、従来の理解を改めることを意図するものではない 。同条の文言が持分の払戻しを想定したものになっているのも、民法の規定を参考にした結果にすぎないのだろう。

以上のように、会社法611条は、従来から認められてきた、退社した持分会社の社員と会社の財産関係の清算についての一般ルールの一部を明文化するものではあるが、そのような一般ルールのうち同条に明示されていない部分を否定するものではないと考えられる。退社した無限責任社員が消極持分について会社に支払債務を負うことも、明文化されなかった一般ルールに含まれる。

前記の(B)にいう「合資会社の社員間の公平」は、以上のように退社した無限責任社員が消極持分について会社に支払債務を負うと考えることの、実質的な根拠を説明するものと捉えなおすことができるだろう。ただし、ここでは無限責任社員と有限責任社員の間の公平は問題にならない。有限責任社員は、退社時の持分が消極持分であっても、出資額を超えて現実に支払いをする必要はないと考えられており、そのことは、無限責任社員が支払債務を負うかどうかとは関係がないからだ。ここで関係があるのは、複数いる無限責任社員の間の公平だろう。退社した無限責任社員が消極持分について支払債務を負わないとすれば、残存する無限責任社員の負担部分が増えることになり、それは妥当ではない 。

もっとも、令和元年最判の事例では、問題になった無限責任社員は、その合資会社で唯一の無限責任社員だったようだ。そのため、その者について後見開始の審判が確定した(これによってその者が退社した。会社法607条1項7号)日に、その会社は合同会社になっている(会社法639条2項による定款のみなし変更だろう)。そうすると、令和元年最判の事案では、複数いる無限責任社員の間の公平も問題にならないことになる。もっとも、そのような場合、会社債権者は、会社法のルール上、612条の責任(退社した社員の会社債権者に対する責任)を頼るしかない。同条の責任は、退社の登記後2年以内に請求または請求の予告をしない会社債権者に対しては、当該登記後2年を経過したときに消滅する(同条2項)。それだけでは会社債権者の利益が十分には保護されない可能性もあり、この場合、退社した無限責任社員に消極持分について会社に対する支払債務を負わせる必要性は高いといえそうだ。

assam_uva at 00:23|PermalinkComments(0)││研究