August 09, 2016

ファンドとマネージャーの分離:投資ファンドの構造と規制に関する理論

John Morley, The Separation of Funds and Managers: A Theory of Investment Fund Structure and Regulaion, 123 Yale L. J. 1228 (2014)

投資ファンド(ミューチュアル・ファンド、ヘッジ・ファンド、プライベート・エクイティ・ファンドetc.)の本質は、その投資資産の性質にある(資産の大部分を証券等々に投資するのが投資ファンド)のではなく、ファンドとマネージャーの分離(投資資産・負債とマネジメント資産・負債とが別の法主体に帰属し、それぞれを異なる所有者が所有)という組織構造にある(そのような組織構造をとるものが投資ファンド)として、そのような分離が果たす機能を説明し、規制についての示唆を述べる論文。

I. 投資ファンドについてのイントロダクション

この論文が対象にする投資ファンドについての概観

これまでの研究は、投資ファンドの種類ごとの研究が主流で、投資ファンドを横断的に見てその本質が「ファンドとマネージャーの分離」にあるとするものはなかった

II. ファンドとマネジャーの分離についてのイントロダクション

大きなファンド・ファミリーの場合、マネジメント会社が多数のファンドを管理。個々のファンドとマネジメント・会社は別の法主体、所有者も別

ファンドとマネジャーの分離の帰結
1) マネジメント会社の債権者・負債へのファンド資産のエクスポージャーを制限(資産分離)
2) マネジメント会社の残余収益(利益)に対するファンド投資家の請求権を制限
3) ファンド投資家にマネジメント会社の残余コントロールを行使させない

III. ファンドとマネジャーの分離の説明

ファンドとマネジャーの分離というパターン
=上記の三つの帰結を達成するために生じたもの。これによって、投資企業全体の価値を最大化、マネジャーにも大きな利益、投資家の費用も小さく

ファンドとマネジャーの分離は、二つの最適化問題への固有のアプローチ
・資産分離の程度
・所有権の割り当て

投資ファンドの場合にこのような状態になった要因

1) 退出権とパフォーマンス・インセンティブ

・ファンド投資家には強力な退出権が与えられる(退出権の強力さは、ミューチュアル・ファンド>ヘッジ・ファンド>プライベート・エクイティ・ファンド>>事業会社)

・ヘッジ・ファンドとプライベート・エクイティ・ファンドの場合、退出権の弱さを補うため、マネジャーにパフォーマンス・インセンティブが与えられる

2) ファンド投資家にとってリスクの正確な tailoring の必要性が高い

3) マネジャーが同時にまたは連続的に多数のファンドを管理することによる規模と範囲の経済

ファンドとマネージャーの分離によって、あるファンドのリスクが他のファンドに及ぶことが防止され、マネジメント会社がゴーイング・コンサーンとして維持され、ファンド間の利益衝突への対処が効率的に行われる

IV. 特別な事例と反論

A. 特別な事例

1.クローズド・エンド型ファンド

退出権がない=オープン・エンド型と違うところ
だからこそ、クローズド・エンド型は今ではマイナーな存在、純資産価値よりも低い価格で取引される

2.資産証券化ビークル

ファンドとマネージャーの分離、その動機は投資ファンドと同様

投資者が支配権の制限を受け入れる理由
・エクイティではなくデットとして構成=コントロールの代わりに、固定的な受益権を有する
・資産証券化ビークルが保有するのは、キャッシュ・フローが非常に予測しやすい、比較的固定された資産(モーゲージ、自動車ローン、クレジット・カード債権etc.)

3.寄付トラスト

トラストを利用する目的
・資産分離
・受益者のコントロールの制限=こちらが主な目的

B. 反論

ファンドとマネジャーの分離についての III で述べたような説明へのありうる反論

1.税制によってそうなっているのだ

しかし、ファンドとマネジャーの分離という現象は、かなり以前からあるもので、それから現在までの間に税制は変更されてきているのだから、税制がすべてを説明できるわけではない

2.規制がそうさせているのだ

税制による説明と同様の問題点

3.リミテッド・パートナーシップという形態がそうさせているのだ

プライベート・エクイティ・ファンドやヘッジ・ファンドはリミテッド・パートナーシップとして組織されることが多い
→投資者はリミテッド・パートナーシップ形態による有限責任を享受する代わりにコントロールの制限を受け入れているのだ、という説明が行われることあり

しかし、コントロールの制限がいやなら、LLC か、ビジネス・トラストの形態をとればよいだけ

4.バンガードではファンドとマネジャーの分離が行われていない

バンガードでは、ファンドがマネジメント会社の株式を保有
=投資資産とマネジメント資産が別の法主体に帰属するが、所有権は統合

しかし、実際の状況と契約上の道具によって、バンガードのファンド投資者は、マネジメント会社について残余コントロールと残余利益への権利を意味のある形では行使できず
=バンガードのファンドの所有者は、経済的現実としては、マネジメント会社の所有者とはいえない

→バンガードのマネジメント会社の真の所有者はだれ?
・所有者はいない?=こう考えれば、バンガードは、一種のコマーシャル・ノンプロフィット
・所有者は実質的にはバンガードの従業員と役員といえるのだろう

V. 政策上の示唆

A. ファンドとマネージャーの分離という現象は、基本的には良いもの

B. 投資ファンド規制の機能

投資ファンドが「資産の大部分を証券に投資する」ことからくる問題への対処とともに、「ファンドとマネージャーの分離という組織形態ないしエージェンシー関係への対処」が重要な機能

実際、ファンドとマネージャーの分離があってはじめて意味を持つようなルールが、投資会社法には多い

C. 投資ファンドの定義

現在の投資会社法による「投資会社」の定義
=投資資産による定義

しかし、これでは、不必要に多くのものが「投資会社」になってしまう
→その結果、一貫性のない例外や弥縫策を重ねなければならないことに

そこで、「投資会社」の定義としては:

(1)投資資産による定義+(2)ファンドとマネージャーの分離

この二つを両方充たしたものを「投資会社」とすべき
・(2) をどのように法的に定義するかは難しい問題だが…
・(1) を残すのは政治的実行可能性から。もっとも、(2) だけで「投資会社」を定義する方向もなお模索すべき

D. オープン・エンド型とクローズド・エンド型の区別

現在の投資会社法=オープン・エンド型とクローズド・エンド型をほとんど同様に扱う
歴史的には、投資会社法は、クローズド・エンド型の問題点に対処するために制定された
しかし、現在では、投資資産額でいうと、オープン・エンド型の方が圧倒的多数

→オープン・エンド型のミューチュアル・ファンドについては、クローズド・エンド型よりも軽い規制にすべき

J. Janus 判決

Janus Capital Group v. First Derivative Traders, 131 S. Ct. 2296 (2011) は適切ではなかった

同判決では、ミューチュアル・ファンドとマネジメント会社は別個のものなので、ファンドが交付した目論見書の虚偽記載について、マネジメント会社はルール10b-5による責任を負わないとされた
しかし、実際上、また、組織デザイン上、マネジャーがファンドを支配しているのであり、ファンドには独立性なし

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August 05, 2016

公開会社における株主の優生学

Edward B. Rock, Shareholder Eugenics in the Public Corporation, 97 Cornell L. Rev. 849 (2012)

会社の株主ベース(どのような株主がその会社の株主になっているか)が会社の価値に影響を与えるものだとすれば、会社にとっては、望ましい株主ベースを形成すること(望ましい者に株主になってもらうこと+既存の株主に望ましい者になってもらうこと)が重要であるとして、そのような望ましい株主ベースの形成のためにどのような手段が利用可能か、その手段にはどのようなダウンサイドがあるか、規制上の障害はあるか、といった点を概観する論文。論文の内容は結びに要約されているので、その一部(pp.904-905)をざっと訳すと、次のとおり([ ]内は私の補足):

株主は、コーポレート・ガバナンスの三角形の一つの頂点を占める。その比喩が示唆するように、そして私がこれまでに論じてきたように、株主のアイデンティティと、それが取締役会および経営者(残り二つの頂点)とフィットすることが、企業価値にとって潜在的に重要である。そうすると、この分析が法政策および企業にとって有する示唆は、何であろうか?実務にとって得られるものはあるだろうか?いくつかのものがあると思う。

第1に、公開会社は、どのような株主ベースが生じるにせよそれを受動的に受け入れてそれについて不平を述べるというのではなく、会社が株主として望む者は誰か、そして、それはなぜかを、考えるべきである。私がこれまでに示しているように、会社は、生産的な株主ベースを選び形成するためにできることがたくさんある。

第2に、いったん会社がどのような種類の株主を望むのかを決めたならば、望ましい株主ベースを作り出す方法についてシステマティックに考えるべきである。株主ベースが企業価値にもたらす潜在的な影響を前提とすれば、最適な株主ベースを形成することは、会社にとっての戦略的な決定である。会社の本拠、証券取引所、パブリック・イメージ、開示ポリシー、株価、重要性、その他多くの要素が、どのような種類の株主が特定の会社に引き付けられるかに影響する。たとえば、株式分割を行う前に、取締役会は、それが株主ベースにどのように影響するか、特に、流動性の増加という便益が、より短期の株主へのシフト[株式の流動性が増せば、より短期的な株主から好まれるようになる]からの害を相殺するものかどうかを、考えるべきである。

第3に、様々な形態でのIR機能は、株主ベースを形作る上で鍵となるパートである。四半期の利益報告ではなく、会社の戦略およびポリシーの基礎的な問題をめぐって関係を構築することは、対立的な関係を、より協働的で生産的な関係へと変えるポテンシャルを有する。…

第4に、会社のアーキテクチャー[株主ベースの作り方]は強い力を持つ可能性がある。ある会社の構造が特定の仕方で株主に力を与える(力を鎮める)のであれば、そのような会社の構造は特定の種類の株主を引き付ける。株主を利益衝突のある取引のモニターとして形作る法的ルールは、利益衝突のある取引について訴訟を提起する意思のある株主を作り出す。上場後の一株一議決権からの乖離の禁止のような、アーキテクチャーについての実験を禁じる法的規制は、取り除かれるべきである。

第5に、法は、コミュニケーションを委縮させ、株主と取締役会の関係を法律家主導の不毛の相互作用に変容させることを、避ける必要がある。たとえば、定義された「ハイ・レベルの」トピックについてレギュレーションFDのセーフ・ハーバーを設けることは、生産的なコミュニケーションを促進するかもしれない。利益のような株価に影響を与えやすい情報を除いて、閉鎖会社におけるプライベート・エクイティ・ファンドまたはベンチャー・キャピタリストと経営者の間の関係が、そのモデルとなるべきである。

第6に、経営者、取締役会、投資家、そして規制者は、新しいものや通常でないものすべてについての不信を控える必要がある。我々は、取締役会と株主の間のすべてのコミュニケーションについて疑いを持つ必要はない。…投資家は必ずしも重要な非公開情報にもとづいて取引をしようとしているわけではない。大口投資家は、取締役会および経営者への特権的なアクセスを得る場合に、必ずしも小口の投資家に不利益を与えるものではない。

第7に、投資家と会社の間の生産的な関係は会社に固有のものであろうから、画一的な解決が可能なものではないだろう。「ベスト・プラクティス」は有益な出発点かもしれないが、投資家および会社は代替的なアプローチをとることが認められるべきである。



株主ベースの構成と会社株主間の関係が重要であると信じる十分な理由があるにもかかわらず、株主ベースへの関心は、大部分、コーポレート・ガバナンスの議論の外にあった。本稿は、この問題を議論の俎上に上げる試みである。実際、会社がどのようにその株主ベースを形作るのかについて考え始めれば、それをする多数の方法があることが明らかになる。法がそれを助けることがあれば、阻害することもある。この準備的な研究において、私は、景観を地図に書きおこし、その顕著な特徴のいくつかを評価しようと試みてきた。ウォーレン・バフェットが示唆するように、第一印象に反して、株主の優生学は全く望みのない企てだというわけではないのである。

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August 04, 2016

誰が指令を出す?

Stephen Choi, Jill Fisch & Marcel Kahan, Who Calls the Shots? How Mutual Funds Vote on Director Elections, 3 Harv. Bus. L. Rev. 35 (2013)

対抗提案が出ていない取締役選任の場合のミューチュアル・ファンドの議決権行使(棄権をするかどうか)に焦点を当てて、ミューチュアル・ファンドによる議決権行使が実際にどの程度 ISS の勧告どおりなのか、といったことを検討する論文。ミューチュアル・ファンドによる議決権行使の複雑な状況、ミューチュアル・ファンドのファミリーによって議決権行使に関する決定の集権化の度合いが違うこと(全体的には、規模が小さいほど集権化の度合いは大きい)、議決権行使の決定に関するショート・カット(会社側提案に全面的に従う or ISS の勧告に全面的に従う)を用いるところもあるが ISS の勧告に全面的に従っているところは信じられているほどは多くないことを述べた後で、3大ファンド・ファミリー(バンガード、フィデリティ、アメリカン・ファンズ)による議決権行使に関する実証研究の結果が示される。結びの一部(p.67)をざっと訳すと、次のとおり:

本稿は、ますます重要になっている問いを扱う。すなわち、どのような要素が、ミューチュアル・ファンドの議決権行使を説明するのか、という問いである。従来の研究と異なり、我々は、ファンドによる議決権行動の特にクリーンなテストとして、対抗提案が出ていない取締役選任にとりわけ焦点を合わせる。ミューチュアル・ファンドの経済的・構造的な現実を考慮して、我々は、ミューチュアル・ファンドの議決権行使メカニズムと現実の議決権行使に関する決定について検討し、ファンド・ファミリーがその議決権行使を集権化する程度と、議決権行使費用を削減するためにショート・カットを用いる程度の両方を特定する。

我々は、かなりの数のファンドが、…ショート・カットを用いるが、これらの戦略が比較的小規模のファンド・ファミリーにおいてより一般的であることを見つける。ファンドが運用する資産ベースでは、ISSへの依存よりも経営陣への依存の方が重要であるようであり、ISS の勧告に自動的に従って議決権を行使するファンド資産は、かなり小さなパーセンテージしか占めないようである。おそらく、より重要なことに、ISS の勧告は、投資者の注意を潜在的に問題を含む取締役にフォーカスさせる点において、最も重要であるように思われる。

我々は、ミューチュアル・ファンドの議決権行使においてかなりの非同質性を見つける。3大ファンド・ファミリー…はそれぞれで実質的に統一した議決権行使を行うが、3大ファンド・ファミリーは、棄権をする全体的な傾向という点でも、それらの議決権行使を説明する要因の点でも、互いにかなり異なる議決権行使パターンを示す。最後に、我々は、ISS による棄権の勧告と結びついて、どの取締役が30%を超える棄権票を受ける可能性があるかを説明する、4つの要因を特定する。これらの発見は、そのように当惑するような高い棄権票を避けたい会社および取締役にとって、とりわけ重要である。

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August 03, 2016

会社法とコーポレート・ガバナンスにおける事実と虚構

Michael Klausner, Fact and Fiction in Corporate Law and Governance, 65 Stan. L. Rev. 1325 (2013)

会社法に関する contractarian の考え方(会社は「nexus of contract」、市場の力によって最適なガバナンスの取り決めが行われ最適な法ルールが採用される)がここ20年ほどの実証研究によって支持されるものなのかを論じる(ついでに、実証研究をする者が法制度を適切に理解していないことを示す)論文。結び(pp.1369-1370)の一部をざっと訳すと、次のとおり([ ]内は私の補足):

このエッセーが扱ってきた主な問いは、過去20年に蓄積されてきた実証研究の証拠が、contractarian の理論を支持するかどうか、というものである。その問いへの答えは、ノーだ。IPO 時の基本定款は、contractarian の理論がそうであろうと示唆したようなイノベーションとカスタマイゼーションの泉ではない。そうではなく、IPO 時の基本定款は、経営者をデフォルト・ルール、そして、しばしば、期差取締役会にコミットさせる、プレーン・バニラの文書である。

州間競争というものも、―頂点へのものであれ底辺へのものであれ―存在しない。デラウェアは競争に直面していない。企業は地元の州で設立されるかもしれないが、その決定は、地元の州の法がデラウェア法よりも優れているという判断を反映したものには見えない。それにもかかわらず、デラウェアは価値増加的な会社法を作り出すという結論について、実証的な根拠が存在する。

このエッセーと以前の論文で、私は、なぜデフォルト・ルールのカスタマイズされた定款条項よりも魅力的であるのか、そして、なぜデラウェアが、たとえ他州が競争を試みても、支配的な設立州であり続けることが予想されるのかを説明するための、ネットワーク経済学にもとづく理論を提供してきた。デフォルト・ルールとデラウェアでの会社設立は、カスタマイズされた契約とデラウェア以外の州での会社設立が提供することのできないネットワーク便益を提供する。ネットワーク外部性は、contractarian の理論が発展した時期には理解されていなかったのであり、私の見解では、会社法と会社に関する契約締結におけるネットワーク外部性の存在が、contractarian の理論が記述的な理論として有効でない理由―したがって、規範的な理論としても有効でない理由を、説明する。

会社法とコーポレート・ガバナンスの記述的な説明としてのネットワーク外部性理論には、少なくとも2つの示唆がある。第1に、既存のコーポレート・ガバナンスの取り決めは、必ずしも、contractarian の理論が断定するような、社会的に最適なものとは限らない。第2に、会社法のインパクトは、contractarian の理論が示唆するよりも、はるかに大きいかもしれない。会社は、他の会社が社会的に最適なガバナンスの取り決めを自社と同様に採用するかどうかについて確信できない場合には、社会的に最適なガバナンスの取り決めを採用せず、社会的に最適でないデフォルト・ルールを採用するだろう。そのように最適ではない均衡は、集合行為問題の結果である。会社は、革新的なガバナンスの取り決めに関してネットワークを形成するために行動を調整することが難しい。その結果、規範的な問題として、会社法のデフォルト・ルールの変更や、標準化されたガバナンス選択のメニューを提供するための会社法について主張する余地が存在する。…

ネットワーク外部性は、IPO 段階での期差取締役会の採用を説明しない。この現象は謎のままである。Johnson et. al. [William C. Johnson et. al., The Bonding Hypothesis of Takeover Defenses: Evidence from IPO Firms]は、長期の事業関係へのコミットメントにもとづく部分的な解答を提供するように見えるが、説明されない期差取締役会が多く残る。…

近年の驚くべき展開は、majority voting のイノベーションと、その急速かつ広範な採用である。このイノベーションは、すでに公開されている会社をめぐって生じている…。アクティビスト・ヘッジ・ファンドの誕生とガバナンスの取り決めについての可視性の高い議論とともに、会社は、ガバナンスのデファクト・スタンダードの設計と採用について行動を調整することができるかもしれない。さらに、majority voting そのものが、株主の要求への経営陣の抵抗を減少させるかもしれない。このように、中間ステージは、IPO ステージよりも、イノベーションの場所としてより良いものと証明されたのかもしれない…。

最後に、このエッセーの第2のテーマは、contractarian の理論を支持する者も、実証研究者も、制度的な事実に十分に注意を払ってこなかったということである。contractarian の理論を支持する者は、IPO 時の基本定款に期差取締役会が含まれ、イノベーションやカスタマイゼーションが含まれないことに気付くべきことであった。しかし、誰もそれを見なかった。実証研究者にとって、買収防衛策のメカニズムは、学べることであった。しかし、多くのコーポレート・ガバナンスのモデラー達は、いまだその努力をしていない。その結果、買収防衛策は、正しくない仕方で、モデルに…組み込まれている。そのようなときには、モデルは信頼できない。

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July 29, 2016

仲介者資本主義の時代における株主の議決権行使

Paul H. Edelman, Randall S. Thomas & Robert B. Thompson, Shareholder Voting in an Age of Intermediary Capitalism, 87 S. Cal. L. Rev. 1359 (2014)

近年の米国の公開会社における株式所有構造の変化・株主総会の変化(機関投資家による持株割合の増大、アクティビスト株主、[short slate の株主提案、期差取締役会廃止の株主提案、Say on Pay など]株主が議決権行使をする機会の増加)を背景に、株式所有構造が分散した公開会社における株主の議決権行使の役割を説明する記述的な理論を提示する論文。そんなにすごい「理論」が示されているわけでもなさそうですが。序論で論文の内容がまとめられているので、そこを大雑把に訳すと、次のとおり(pp.1363-1365):

Part I は、株主の議決権行使に関する我々の理論を展開する。我々は、株主が会社の利害関係者のうちでその投資のリターンが会社の株価に直接に結び付けられる唯一の者であるがゆえに、株主は(そして株主だけが)議決権を与えられてきたのだと主張する。株価が当該企業の残余価値に正の相関を有するのであれば、株主はその企業の残余価値を最大化させることを望み、それに応じて議決権を行使する。このように、株主の議決権行使は、当該企業全体にとって価値を最大化する決定に導くはずである。

しかし、そのことは、株主がすべての事柄について議決権を行使すべきだということを意味するわけではない。経済理論と、一般に受け入れられた会社法の原理とが我々に語るところによれば、会社の役員が公開会社において日々の経営権限を行使し、取締役会は役員を監督する広範な権限を有する。この枠組みにおいて、株主の議決権行使は、モニターとしてのその相対的な価値によって説明される。決定される問題が会社の株価、または、長期的価値に影響し、そして、株主の議決権行使が取締役会または市場によるモニタリングよりも優れた、またはそれを補うものである可能性がある場合に、株主の議決権行使は、補完的なモニタリングの役割を果たす。このことは、とりわけ、会社の役員または取締役会に利益衝突がある場合、または、その他、会社の犠牲において私的な便益を追及するかもしれない場合に、あてはまる。このように、株主の議決権行使は、価値減少的な取引を阻止することを助けることによって、モニタリング装置としての消極的な役割を果たすことができる。

しかし、モニタリングは、株主の議決権行使についての唯一の理論的正当化ではない。我々は、議決権行使がモニタリングを超えた意思決定を強化するということから会社における議決権行使について積極的な理由を与える二つの追加的な説明を提示する。株主の議決権行使は、次のものを提供することができる。すなわち、(1) 正しい決定について不確実性が存在する場合の、株主が保有する私的情報に関する優れた情報集積装置、および、(2) 当該決定が株主に差別的な影響を与える場合の、異質な選好を集積する効率的なメカニズム、である。

Part II において、我々は、現代の株主が我々の理論が想定する役割を果たすことができるような特徴を有するのかを検討する。特に、我々は、今日の仲介者達に議決権を行使しない理由、または、それらによる議決権行使を歪める可能性がある衝突を与えるビジネスプランについて検討する。同様の注意が、この現実への対応として成業してきた規制および市場の変化、すなわち、政府によって要求される仲介者による議決権行使、この議決権行使をより効率的にさせるための議決権助言会社、および、ヘッジ・ファンドの戦略(この戦略が、ヘッジ・ファンド自身と、ミューチュアル・ファンドや年金基金のようなその他の仲介者にとって、議決権行使を割に合うものにする)、に与えられる。

Part III において、我々は、我々の理論を、株主による議決権行使が正当化されるのはどのようなときかということを示すために用いる。Part III A で、我々は、問題が「額の大きい」決定[株主の議決権行使が会社の株価または会社の長期的価値に直接に大きな影響を与えるような決定のこと]である場合の議決権行使の役割に焦点を合わせる。我々は、ヘッジ・ファンドによるアクティビズムをこのシナリオの例として用い、それが我々の議決権行使の理論のそれぞれの部分にいかにフィットするかを示す。ここでは、議決権行使が、我々の理論の想定するモニタリングの役割を果たすことを見るが、機関投資家達がヘッジ・ファンドのイニシアティブに従うかどうかを決定する際に、株主の間の異質な選好を集積するという重要な役割もある。Part III B は、ヘッジ・ファンドが方程式から抜け落ちる場合、つまり、Say on Pay、取締役選任について majority voting を求める株主提案、期差取締役会の廃止を求める株主提案のような、株価または会社の長期的価値に小さな影響しか与えない決定の際の、株主の議決権行使について、より明白でない根拠を示す。ここでは Say on Pay に焦点を合わせるが、これらの議決権行使が企業価値、そして、潜在的には、長期的価値を増加させるかなりの証拠がある。

要するに、本稿は、今日存在する姿での議決権行使について、記述的な理論を提供するものである。その際に、この理論は、仲介者資本主義を作り出した株式所有の巨大な変動と、議決権行使を効率的なものにする上での政府の規制と市場参加者の重要な役割を直接に扱う。同時に、この理論は、会社の経営者に会社の意思決定についての一番大きな部分を保持させ、株価に影響を与える利益衝突状況での議決権行使を用いる株主のアクティブなモニタリングに服させるものである。

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