December 22, 2018

上場規程で定められる事項の限界

12月のJPX金商法研究会では、「近年の有価証券上場規程の改正」と題して、取引所の方にご報告をいただいた。報告後の質疑では、特に後半に、議決権種類株式の上場をめぐって議論が盛り上がったが、私が気になったのは、むしろ最初のほうに話題になった、上場規程で定められる事項に限界はないのか、たとえば、上場会社のガバナンスに関する要求を上場規程で定められるというのは、どこに根拠があるのかという話。司会をやっていたこともあったし、その場でうまく考えがまとまらなかったので発言はしなかったのだが(という以上に、なかなか発言のタイミングがつかみづらい研究会でもあったりするのだが…)、後で考えてみると、次のような感じになった。

研究会では、取引所の自主規制業務について定める金商法84条からは、上場規程でたとえば会社情報の適時開示について定めることが可能であることは分かるが(同条1項には「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護するため」とある)、独立役員を置くことを要求するといったことがなぜできるのか、という発言があった。たしかに、同条1項は取引所の自主規制業務の目的を「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」ことと定めており、2項が定める自主規制業務の内容に、独立役員を置くことを要求することなど、個別の会社のガバナンスについて一定の事項を要求することが含まれるとは、ただちには読めないかもしれない。

しかしながら、このような捉え方は、上場規程というものの意味の一部しか見ていないように思える。たしかに、金商法84条は、上場規程について、取引所の自主規制業務として、これに関する定めを置いている。しかし、どのような会社の株式を上場するか、つまり、どのような会社の株式を商品として投資者に提供するかということは、本来は、取引所が自由に決められることのはずだろう。取引所は、当該取引所で提供される商品の内容・品質についての条件を上場規程によって定め、上場契約によって上場規程の遵守を上場会社に約束させることで商品の内容・品質を保持するということだ。上場契約については、基本的に、契約の自由が妥当する、と言うこともできる。

もちろん、契約の自由だといっても、どんなことでも上場契約で定め、上場規程で上場会社に要求できるということにはならない。上場契約にはもちろん契約内容についての民法上の制約がかかるし、さらに、金商法84条は、「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」という観点から、上場規程について外部的な制約を設けていると捉えられる。しかし、それは、「取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護する」という目的に反する事項を上場規程で定めることは許されないという制約であって、そのような目的に直接つながらない事項を上場規程で定めてはいけないという制約ではないはずだ。

乱暴なたとえをすると、漬物屋は自分の店に並べる漬物について、自分で基準を作ることができる。たとえば、店に並べる漬物は、農薬を一定量以下しか使っていない野菜を原料にするものに限ることにして、漬物を納入する業者との間で、農薬を一定量以下しか使っていない野菜を原料にする漬物しか納入しないことを約束させるということもできるだろう。たしかに漬物屋が販売する漬物については食品衛生法上の制約がかかるが、漬物屋は、食品衛生法上の制約の他にも、いろいろな制約を自分のところで扱う漬物について自分で課すことができるということだ。取引所がここでいう漬物屋、上場会社がここでいう漬物の納入業者、上場契約・上場規程がここでいう漬物屋と納入業者の間の契約、金商法がここでいう食品衛生法のようなものだ。

assam_uva at 01:15|PermalinkComments(0)││研究 

October 14, 2018

学会終了

勤務校の仕事を済ませて、学会1日目の夜に仙台到着、東西懇親会はラスト30分ほど参加できました。2日目の今日はシンポジウムで報告。何とか大過なく報告とその後の質疑を乗り切れた…はず…。

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assam_uva at 22:29|PermalinkComments(0)││雑感その他 

October 12, 2018

明日から学会

明日から私法学会。10年近く前に勤務校の仕事で行って以来の仙台。1日目から行きたかったのですが、勤務校の仕事があるので、私は2日目のシンポジウムのみ参加です。東西懇親会には…途中で顔を出すことはできるかも…。写真は今日の勤務校。

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assam_uva at 12:09|PermalinkComments(0)││雑感その他 

September 19, 2018

代理権濫用の手形行為補足

改正民法との関係で分からないことがあると昨年書いた、代理権濫用の手形行為

(1)その後さらに調べたところ、無権代理だとみなされて民法117条が適用される場合の考え方は、前の記事に書いたうち[乙]の考え方であることが分かった(法制審議会民法(債権関係)部会第76回会議議事録36頁以下[金関係官])。

(2)最近改訂された川村正幸『手形・小切手法〔第4版〕』(新世社、2018年)69頁以下に、関連する記述があった。同書によれば:

(A)代表権限の濫用についても民法107条の「類推適用が考えられる」。

(B)民法107条によって無権代理行為とみなされた場合、「相手方は、民法117条により、代理権限を濫用した者に請求することもできる」。

(C)「悪意・過失ある相手方からさらに手形を取得する第三取得者に対しては、手形法17条が適用さあれて、同条但書の悪意が存するのでなければ、本人(法人)は当該権限濫用の抗弁を対抗することはできないと解して、従来の判例・学説の立場を維持する必要があろう」。

他方で、同書では、上記の(B)に関連して、手形法8条・77条2項の適用については、特に書かれていないようだ。

assam_uva at 11:57|PermalinkComments(0)││研究 

September 11, 2018

夏の仕事

ご無沙汰しております。長期間記事を書いていませんでしたので、最近の様子だけでも。

7月以降、以下のような仕事を主にしていました:

(1)私法学会シンポジウムのための論文「株主総会に関する近年の裁判例−決議の効力を争う訴えに関する論点−」商事法務2175号29頁(2018年)の原稿執筆と校正
=原稿を出す直前に、さらにいろいろ思いついてしまうなど、今回は遅れ気味でした

(2)『会社法コンメンタール(15)持分会社(2)』の校正
=昨年末にピンチヒッターの依頼を受け、1〜3月の時間が空いた時に執筆したもの。頑張っていろいろ書いてしまったためにページ数がやや多くなり、校正もそこそこ時間がかかりました

(3)金商法のコンメンタールの改訂の校正

(4)商事法務9月25日号と次の号に掲載予定の、某判決の評釈の原稿執筆と校正

(5)商法の判例百選の改訂
=締め切りはかなり先ですが、今後のスケジュールを考えて前倒しで。もう15年以上前に書いたもので、今読み直すといろいろ変えたいところが出てきて、結局、解説部分はほとんど書き直しました

また、こういう仕事をしつつ、勤務校内の委員会の仕事と、秋学期の講義準備(「商法概論」はひとまず完了して、今は「手形法・小切手法」の講義ノート・レジュメの見直しとアップデート)をぼちぼちやっています。

assam_uva at 10:53|PermalinkComments(0)││雑感その他