最判平成24年4月24日グレート・ギャッツビー

June 06, 2012

書面投票制度採用会社の株主総会における会社側からの修正動議提出の可否

たとえば、書面投票制度採用会社で、株主総会の招集通知の発送後に、監査役候補者が死亡した場合、株主総会において、会社側から監査役候補者を変更する旨の修正動議を提出する(つまり、議案を変更する)ことが許されるか。これが許されないとする見解がある(以下、修正違法説と呼ぶ)。

修正違法説の根拠は、そのような会社では参考書類が株主に交付され(会社301条1項)、参考書類には監査役候補者に関する事項が記載されなければならない(会社則76条)にもかかわらず、株主総会の場で会社側がそのような議案を修正することは、総会に出席していない株主の利益を害する(結局、事前の情報開示が行われなかったのと同じだから)というところに求められる(稲葉威雄ほか編著『実務相談株式会社法2〔新訂版〕』(商事法務研究会、1992年)590頁。会社法の下でこの考え方について触れるものとして、商事法務編『株主総会ハンドブック〔第2版〕』(商事法務、2012年)381頁)。

そうはいっても、死亡した監査役をそのまま候補者とした監査役選任議案について決議をしても仕方がない。修正違法説を前提に、なおかつ、「株主総会の場で議案を修正する」という結果を実現するための方法として、株主から修正動議を出してもらうということがいわれる(中村直人「株主総会の議案の取り下げ、変更について」東京証券代行HP)。

以上のような、「修正違法説+株主からの修正動議という便法」という話を聞いたときに、私が持った感想は、「なんだかおかしい」というものだった。何がおかしいと思ったかというと、(1)合理的な理由があれば会社側からであれ議案の変更は当然に認められるべきなのではないか、修正違法説の根拠は本当に説得的なのか、ということ、それから、(2)株主からの修正動議という便法は、修正違法説の発想とは相容れないのではないか、というところだ。

まず、(1)の点から。調べてみると、こういう場合について、総会の承認を得て原案の撤回をした上で修正案を提出することができるという見解もある(以下では修正適法説という)。しかもこれは、私の師匠の見解だ(森本滋「書面投票の制度的意義と機能」上柳還暦『商事法の解釈と展望』(有斐閣、1984年)119頁、125頁)。上記の修正違法説の根拠への反論としては、「[平成17年商法改正前]参考書類等規則[の規定は]…取締役会提出の原案…について規定しているにすぎず、修正動議の取扱いは[平成17年改正前]商法(および商法特例法)の解釈に委ねられている」といわれる。同じようなことを違う言い方で言えば、次のように言えるだろう。書面投票制度採用会社において招集通知に際して参考書類の交付が義務付けられる(会社301条1項)のは、書面投票を行う株主への情報提供を十分に行うためだが、そのような法の趣旨は、会社側の原案について必要な情報が提供されればそれで実現される。それを超えて、株主総会の場での会社側からの議案の修正が禁止されるということを、参考書類制度の趣旨から基礎づけることはできない。一定の会社に書面投票を義務付けることによって株主による議決権行使の機会を確保するという法の趣旨は、少なくとも、合理的な議案の修正を会社側が行うことを禁じるということまでも命じるものではない。

そして、(2)の株主からの修正動議という便法。仮に、上記の例で、株主からの修正動議がなされた場合、そのような修正動議について、会社側の原案に賛成であった書面投票は、「棄権」ないし「反対」と扱われる(少なくとも、「欠席」とは扱われない。上記株主総会ハンドブック383頁)。そうすると、たとえ株主からの修正動議という形で議案の変更をしたとしても、それを可決するためには、大株主が修正動議に賛成してくれるなり(上記中村コラム)、(大株主の)委任状を得る(上記株主総会ハンドブック381頁、森本滋『会社法〔第2版〕』(有信堂、1995年)206頁注14)しかない。そして、そのような方法で修正動議が可決される場合、「可決」という方向で議決権を行使できているのは、総会に出席した株主ないし委任状を出した株主だけであって、書面投票をした株主(のうち総会出席株主・委任状提出株主を除く者)の意思は、いずれにしてもそこには反映されていない。そして、このことは、そもそも修正違法説が書面投票をした株主への参考書類による情報提供ということを重視していることとは、矛盾するように思えるわけである。もちろん、修正適法説をとったとしても、会社側が出した修正動議を可決するためには同じことをしなければならないわけだが、修正違法説+株主からの修正動議という組み合わせが、気持ち悪いのだ。

assam_uva at 19:21│Comments(3)││研究 

この記事へのコメント

1. Posted by とーりすがり   June 18, 2012 09:16
大変勉強になります。ありがとうございます。

一点疑問なのですが、このような場合に備えて補欠監査役を選任しておくことは有効でしょうか。
補欠監査役は、正規の監査役が選任された後にこれが欠けた場合が頭に置かれているとは思いますが、このような場合にも使えていいように思います。

2. Posted by いとうY   June 29, 2012 10:25
そうですね、それができないと考える理由はないと思います。329条2項の「欠くこととなる」には、記事に書いたような事情によって定時総会決議の時からすでに「欠くこととなっている」場合も含むと解釈するのでしょうね。間違っているかもしれませんが。
3. Posted by S.N.   October 28, 2012 08:16
本記事を種にブログ記事を書きましたので、ご連絡申し上げます。
http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/19/

要旨は以下のとおりです。
1)会議参加者が本源的に持っている議案提案・修正権を信義則上制限することは許される
2)本源的に持っている提案権の強さに鑑み、会議主催者の議案変更権をより強く制限することも信義則上正当化できる
3)会議主催者による修正に代えて株主による修正動議を許容することも、株主の意図が存する以上論理矛盾とまでは言えない。
4)議場での議案修正(修正動議)により現実に弊害が発生していることに鑑み、別のアプローチとして、書面投票会社においては議場における議案修正を法の明文をもって禁止すべきである

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