2009年06月

2009年06月19日

偽りの「景気底打ち宣言」

政府は17日に発表した月例経済報告で、「一部に持ち直しの動きが見られる」として、主要先進国のなかでいちばん早く「景気底打ち宣言」をしました。

「景気底打ち」を判断した主な原因は、4月の鉱工業生産指数が前月比で56年ぶりに高い伸び率を記録したことにあるようです。与謝野経済財政担当相は、「輸出・生産は明らかに1〜3月が底だった」と述べています。

政府が「景気底打ち宣言」をするのはほぼ間違いないだろうと思っていました。東京都議会選挙と衆議院選挙が迫っているので、「自民党の景気対策により景気が回復している」と国民に印象付けるために、景気判断のマジックを仕掛けざるをえなかったのです。景気判断をするときに、どの経済指標を使うかによって、いくらでも結果を変えることは可能です。

そして今回の判断が、6月6日の記事で取り上げたマジックの事例とほぼ同じ内容になったことも、興味深いです。完全失業率が下落傾向であったとしても、鉱工業生産指数が1ヶ月でも上向きになったのであれば、鉱工業生産指数に根拠を置いて説明し、景気は底打ちしたと判断することができるのです。それが、早くも具体的に証明されました。

現状は、悪化ペースの速度は弱まったものの、悪化は止まっていないと思われます。政府がいう「一部持ち直し」の側面には、昨年秋以降の悪化のペースの加速が激しかったためにその反動で持ち直している側面と、景気対策の効果がある程度出ている側面の二つがあると考えられます。

前者の側面は「株価が急落した後に自律反発する」のと何ら変わりありませんし、後者は財政支出した金額の1/3程度の効果しか見込めず、効果の長続きも期待できません。むしろ、需要の先食いによる反動のほうが心配されます。

こういう大事な判断を選挙の支援材料として歪めてしまうのは、甚だ国民を馬鹿にしています。

いつも実体経済に遅れ気味の政府の景気判断が今回に限って異常に早いのは、不思議だとは思いませんか?

外需に大きく依存する日本経済が、先進国のなかでいちばん早く景気底打ちを宣言できるのは、おかしいとは思いませんか?

政府がこれと同じことを3年後あるいは4年後に行おうと思えば、いくらでもできてしまうのです。だから、消費税は景気の回復が実感できる状態ではなくても、引き上げることができるのです。

国民はいい加減な判断をする政治に対して、もっと厳しい目を向ける必要があると思います。

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2009年06月12日

高値の予想は難しい

日経平均株価が10000円を超えて、市場ではさらに強気の予想が出始めています。根拠のない上昇がいつまで続くのかはわかりませんが、はっきりしていることは、4月30日の記事における私の日経平均株価の高値予想が外れたということです。記事では、「高値は10000円が精一杯になると見ている」と書きました。

昨年の4月から6月までの戻り相場のときも、私は日経平均株価の高値を14000円と予想して、その前後では株式のポジションを積極的に整理するように、このブログ上で主張しました(2008年6月7日の記事参照)。

しかし、実際の株価は14500円まで上昇し、一時的ではあったとしても、このブログを見ているみなさんをヤキモキさせてしまったと思います。たとえ500円であっても、「もっと高く売れたのに」と思う人間の心理は当然だからです。人間は欲張りな生き物です。

当時の私の分析では、「FRBの大胆な金融緩和策が市場に予想以上の歪みを与えたこと」が500円の差になって現れた原因であるとしましたが、今回の予想でも、金融緩和とそれがもたらす過剰流動性を少し甘く見ていたようです。ひょっとしたら、今回も500円くらいは外してしまうかもしれません。

それでも、10000円を超える局面では、ポジション整理をする絶好の機会だと捉えています。

ブログでこう断言することは、かなり勇気がいることです。できれば今後の重圧になるかもしれないこの種の発言は、書かないほうが楽なのかもしれません。しかし、それが私のブログで果たすべき責任であると感じています。

昨年の戻り高値の頃と同じことを書きますと、私の経験からはここは欲を抑えないと危ないところだと考えています。市場の楽観が悲観に変わるのは一瞬であると思います。

ただし、誤解がないように付け加えますと、昨年と今年の明らかに違うところは、ここから日経平均株価が半値になる可能性はほとんどないということです。ですから、レバレッジを効かせた投資をしない限り、市場から退場になるようなことはないでしょう。

今回の予想でも、高値の予想をぴったり当てることの難しさを改めて痛感しました。「安値で買って、高値で売るのは不可能である」と常日頃から著作等では書いていますが、それを踏まえたうえで、私自身はできる限り予想を外さないようにしなければならないと考えています。いつも予想をするたびに、重い責任を感じているからです。

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2009年06月08日

やっぱり消費税は3年後に上がる

麻生首相は大型の景気対策を策定する際に、「3年後に景気が回復すれば、国民に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べました。

しかし、実際に景気が回復しなくても、消費税を引き上げることができるマジックがあります。それは、景気判断をするときに、どの経済指標を使うかによって、いくらでも結果を変えることが可能だからです。

拙書『サブプライム後の新世界経済』の中でも、「使う経済指標によって経済の分析結果は異なる」ことは触れましたが、政府は景気回復のシナリオに説得力を持たせるために、都合の良い指標を持ち出してきて、さも説得力があるかのような説明をすることができるのです。

例えば、完全失業率が悪化傾向であったとしても、鉱工業生産指数が数ヶ月でも上向きであったならば、鉱工業生産指数に根拠を置いて説明し、景気は回復したと判断することができるでしょう。

例えば、日銀短観が停滞傾向にあったとしても、GDPが前期に比べて改善したならば、GDPの回復を強調して、景気回復を正当化することができるでしょう。

これでは、何のための景気判断かということになってしまいます。まさに本末転倒です。

日本国内の経済指標では、「景気と連動性が強く、かつ速報性が高い指標は日銀短観以外には見当たらない」と言っても過言ではありませんが、せめて消費税導入を後押しするためのインチキな判断と説明だけは控えてもらいたいと思っております。

現在の日本の社会システム、経済システムを変えていこうとしない限りは(5月25日の記事参照)、単なる消費税の引き上げは経済を悪化させてしまうだけです。

1997年に橋本政権が消費税を5%に引き上げた後で、日本経済が奈落の底に落ちていったことを、私たちは決して忘れてはいけません。

歴史の教訓から学ばずに、同じ過ちを繰り返すことだけは何としても避けたいところですが、仮に今年の衆議院選挙で自民党が勝利した場合は、私たち国民は相当の覚悟をする必要があるでしょう。

※なかなか記事の更新ができず、申し訳ございません。7月からは更新のペースを上げることができると思います。当ブログを今後ともよろしくお願い申し上げます。

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